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Oracle® Database 2日でセキュリティ・ガイド
11g リリース2(11.2)
B56296-05
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4 ユーザー権限の管理

この章の内容は次のとおりです。


関連項目:

  • 『Oracle Databaseセキュリティ・ガイド』

  • 『Oracle Label Security管理者ガイド』


権限管理について

ユーザー権限は、次のように制御できます。

  • 個々の権限の付与および取消し。UPDATE SQL文を実行する権限など、個々の権限を個々のユーザーまたはユーザーのグループに付与できます。

  • ロールの作成と権限の割当て。ロールは、ユーザーまたは他のロールに一括で付与する関連権限の名前付きグループです。

  • セキュア・アプリケーション・ロールの作成。セキュア・アプリケーション・ロールを使用すると、データベース・ロールを有効にできるタイミングを制御する条件を定義できます。たとえば、セキュア・アプリケーション・ロールを使用すると、ユーザー・セッションでデータベース・ロールを有効にするのを許可する前に、そのセッションに関連するIPアドレスをチェックできます。

権限付与のガイドライン

権限は、表の更新や削除などの特定のアクションを実行する権利であるため、データベース・ユーザーに必要以上の権限は付与しないでください。権限の管理の概要は、『Oracle Database 2日でデータベース管理者』の「ユーザー権限とロールについて」を参照してください。『Oracle Database 2日でデータベース管理者』では、権限を付与する方法の例も示されています。

つまり、最小権限の原則とは、ユーザーに、効率的かつ簡潔に作業を行うために実際に必要な権限のみを与えることです。最小権限の原則を実践するために、次の制限を可能なかぎり行ってください。

  • データベース・ユーザーに付与するシステム権限およびオブジェクト権限の数

  • データベースにSYS権限で接続するユーザーの数

たとえば、通常、CREATE ANY TABLE権限はデータベース管理者権限を持っていないユーザーには付与されません。

ユーザーへのロール付与のガイドライン

ロールは、ユーザーまたは他のロールに一括して付与する関連権限の名前付きグループです。ロールの管理の基礎については、『Oracle Database 2日でデータベース管理者』の「ロールの管理」を参照してください。『Oracle Database 2日でデータベース管理者』の「例: ロールの作成」も参照してください。

ロールは、複数のユーザーに権限を迅速かつ簡単に付与するために役立ちます。Oracle Databaseで定義されているロールを使用することもできますが、必要な権限のみを含む独自のロールを作成すると、より継続的な制御が可能になります。Oracle Databaseで定義済のCONNECTロールの権限は変更または削除される可能性がありますが、このロールには現在、CREATE SESSION権限しかありません。以前は他に8個の権限がありました。

定義したロールに含まれる権限が、特定の職務に必要な権限のみであることを確認します。アプリケーション・ユーザーが既存のロールに組み込まれている権限のすべては必要としていない場合は、適切な権限のみを含む異なるロールのセットを適用してください。または、権限をさらに制限するロールを作成して割り当てます。

ユーザーSCOTTなどの通常のユーザーには、CREATE DATABASE LINK権限などの強力な権限は付与しないでください。(SCOTTはよく知られているデフォルトのユーザー・アカウントで、侵入されやすい可能性があるため、特にこのユーザーにはいずれの強力な権限も付与しないでください。)かわりに、データベース・ロールに権限を付与してから、その権限を使用する必要があるユーザーにそのロールを付与してください。また、ユーザーが必要とする最小限の権限のみを付与するように注意してください。

PUBLICロールの権限処理のガイドライン

PUBLICロールから、不要な権限とロールを取り消す必要があります。PUBLICロールは、すべてのデータベース・ユーザー・アカウントに自動的に割り当てられます。デフォルトでは、このロールに割り当てられる権限はありませんが、多くのJavaオブジェクトに対する権限があります。PUBLICロールを削除することはできず、ユーザー・アカウントには常にこのロールが割り当てられるため、このロールの手動での付与または取消しに意味はありません。PUBLICロールは、すべてのデータベース・ユーザー・アカウントに割り当てられるため、DBA_ROLESおよびSESSION_ROLESデータ・ディクショナリ・ビューに表示されません。

すべてのユーザーがPUBLICロールを持っているため、すべてのデータベース・ユーザーがこのロールに付与されている権限を実行できます。この権限によって、最小限の権限を持つユーザーが、この権限なしでは直接アクセスできない関数にアクセスして実行できるようになる可能性があります。

セキュア・アプリケーション・ロールによるアプリケーション・アクセスの制御

セキュア・アプリケーション・ロールは、認可されたPL/SQLパッケージによってのみ有効にできるロールです。PL/SQLパッケージ自体は、アプリケーションへのアクセスを制御するために必要なセキュリティ・ポリシーを反映します。

この項の内容は次のとおりです。

セキュア・アプリケーション・ロールについて

セキュア・アプリケーション・ロールは、認可されたPL/SQLパッケージによってのみ有効にできるロールです。このパッケージは、アプリケーションへのアクセスを制御する1つ以上のセキュリティ・ポリシーを定義します。ロールおよびパッケージは通常、作成者(通常はセキュリティ管理者)のスキーマに作成されます。セキュリティ管理者は、データベースのセキュリティを維持する責任があるデータベース管理者です。

セキュア・アプリケーション・ロールを使用する利点は、ロール自体に付与された権限に加えて、アプリケーション・アクセスにセキュリティの追加レイヤーを作成できることです。セキュア・アプリケーション・ロールを使用すると、パスワードがアプリケーション・ソース・コードに埋め込まれたり表に格納されないため、セキュリティが強化されます。このため、データベースが行う決定はセキュリティ・ポリシーの実装に基づいて行われます。これらの定義はアプリケーションではなくデータベースにまとめて格納されるため、各アプリケーションのポリシーを変更するのではなく、このポリシーを一度に変更します。ポリシーはロールにバインドされているため、データベースに接続しているユーザー数に関係なく、結果は常に同じになります。

セキュア・アプリケーション・ロールには次のコンポーネントがあります。

  • セキュア・アプリケーション・ロール自体。このロールを作成するには、CREATE ROLE文をIDENTIFIED USING句とともに使用してPL/SQLパッケージに関連付けます。次に、一般的にロールに付与する権限をこのロールに付与します。

  • セキュア・アプリケーション・ロールに関連付けるPL/SQLパッケージ、プロシージャまたはファンクション。PL/SQLパッケージは、データベースへのログインを試行する人物にロールを付与またはロールを拒否する条件を設定します。PL/SQLパッケージ、プロシージャまたはファンクションは、定義者の権限ではなく実行者の権限を使用して作成する必要があります。実行者の権限のプロシージャは現行ユーザー(プロシージャを実行するユーザー)の権限で実行されます。このユーザーには、PL/SQLパッケージからアクセスされる、基礎となるオブジェクトに対するEXECUTE権限が付与されている必要があります。実行者の権限のプロシージャは、特定のスキーマにバインドされません。様々なユーザーがこのようなプロシージャを実行でき、集中化されたアプリケーション・ロジックを使用することで複数のユーザーが自身のデータを管理できます。実行者の権限のパッケージを作成するには、プロシージャ・コードの宣言部でAUTHID CURRENT_USER句を使用します。

    ユーザーのロールを有効(または無効)にするために、PL/SQLパッケージにはSET ROLE文またはDBMS_SESSION.SET_ROLEコールも含まれている必要があります。

    PL/SQLパッケージを作成してから、適切なユーザーにパッケージに対するEXECUTE権限を付与する必要があります。

  • ユーザーがログオンしたときにPL/SQLパッケージを実行する方法。PL/SQLパッケージを実行するには、ユーザーがロールによって付与される権限を使用する前に、アプリケーションから直接PL/SQLパッケージをコールする必要があります。ユーザーがログオンしたときにPL/SQLパッケージを自動的に実行するログオン・トリガーは使用できません。

ユーザーがアプリケーションにログインすると、必要に応じて、パッケージ内のポリシーによるチェックが行われます。チェックを通過したユーザーにはロールが付与され、アプリケーションへのアクセスが許可されます。ユーザーがチェックを通過できない場合、アプリケーションへのアクセスは拒否されます。

チュートリアル: セキュア・アプリケーション・ロールの作成

このチュートリアルでは、2人のユーザーMatthew WeissとWinston TaylorがOE.ORDERS表から情報を取得する場合を説明します。この表へのアクセス権は、EMPLOYEE_ROLEセキュア・アプリケーション・ロールで定義されています。MatthewはWinstonのマネージャで、OE.ORDERS表内の情報にアクセスできますが、Winstonは情報にアクセスできません。

このチュートリアルでは、次の手順を実行します。

手順1: セキュリティ管理者アカウントを作成する

セキュリティを強化するためには、システム管理者に職務を割り当てる際に、責務分離の概念を取り入れる必要があります。このマニュアルのチュートリアルでは、sec_adminというセキュリティ管理者アカウントを作成し、使用します。

sec_adminセキュリティ管理者アカウントを作成するには、次のようにします。 

  1. Database Controlを起動します。

    Database Controlを起動する手順については、『Oracle Database 2日でデータベース管理者』を参照してください。

  2. 管理者のユーザー名(SYSTEMなど)とパスワードを入力し、「ログイン」をクリックします。

    SYSTEMユーザーの場合は、Normalとして接続します。

    データベースのホームページが表示されます。

  3. 「サーバー」をクリックして、「サーバー」サブページを表示します。

  4. 「セキュリティ」で、「ユーザー」を選択します。

    「ユーザー」ページが表示されます。

  5. 「作成」をクリックします。

    「ユーザーの作成」ページが表示されます。

  6. 次の情報を入力します。

    • 名前: sec_admin

    • プロファイル: Default

    • 認証: Password

    • 「パスワードの入力」および「パスワードの確認」: 「パスワードの作成要件」に示されている要件を満たすパスワードを入力します。

    • デフォルト表領域: SYSTEM

    • 一時表領域: TEMP

    • ステータス: UNLOCKED

  7. 「ロール」をクリックして「ユーザーの編集: SEC_ADMIN」ページを表示します。

  8. 「リストを編集」をクリックします。

    「ロールの変更」ページが表示されます。

  9. 「使用可能なロール」リストからSELECT_CATALOG_ROLEロールを選択し、「移動」をクリックして「選択したロール」リストに移動します。次に「OK」をクリックして、「ユーザーの編集」ページに戻ります。

  10. 「システム権限」をクリックして、「システム権限」サブページを表示します。

  11. 「リストを編集」をクリックします。

    「システム権限の変更」ページが表示されます。

  12. 「使用可能なシステム権限」リストから次の権限を選択し、「移動」をクリックしてそれぞれを「選択したシステム権限」リストに移動します。(複数の権限を選択するには、[Ctrl]キーを押したままにします。)

    • CREATE PROCEDURE

    • CREATE ROLE

    • CREATE SESSION

    • SELECT ANY DICTIONARY

  13. 「OK」をクリックします。

    「ユーザーの作成」ページが表示されます。

  14. 「管理者オプション」では、ボックスを選択しないでください。

  15. 「OK」をクリックします。

    「ユーザー」ページが表示されます。「ユーザー名」リストにユーザーsec_adminが表示されます。

手順2: このチュートリアルで使用するユーザー・アカウントを作成する

MatthewとWinstonは、どちらもHR.EMPLOYEESスキーマの従業員のサンプルです。従業員のマネージャIDや電子メール・アドレスなどの情報を含む列があります。以降でセキュア・アプリケーション・ロールをテストするため、これら2人の従業員のユーザー・アカウントを作成する必要があります。

ユーザー・アカウントを作成するには、次のようにします。 

  1. 「ユーザー」ページで、「作成」をクリックします。

    「ユーザーの作成」ページが表示されます。

  2. 次の情報を入力します。

    • 名前: mweiss(Matthew Weissのユーザー・アカウントを作成するため)

    • プロファイル: DEFAULT

    • 認証: Password

    • 「パスワードの入力」および「パスワードの確認」: 「パスワードの作成要件」に示されている要件を満たすパスワードを入力します。

    • デフォルト表領域: USERS

    • 一時表領域: TEMP

    • ステータス: Unlocked

  3. 「システム権限」をクリックして、「システム権限」サブページを表示します。

  4. 「リストを編集」をクリックします。

    「システム権限の変更」ページが表示されます。

  5. 「使用可能なシステム権限」リストからCREATE SESSION権限を選択し、「移動」をクリックして「選択したシステム権限」リストに移動します。

  6. 「OK」をクリックします。

    CREATE SESSIONがユーザーmweissのシステム権限としてリストされた状態で「ユーザーの作成」ページが表示されます。

  7. CREATE SESSIONの「管理者オプション」が選択されていないことを確認し、「OK」をクリックします。

    「ユーザー」ページが表示されます。

  8. ユーザー・リストからユーザーMWEISSのオプションを選択し、次に「アクション」リストから「類似作成」を選択します。次に「実行」をクリックします。

  9. 「ユーザーの作成」ページで、次の情報を入力してWinstonのユーザー・アカウントを作成します。このアカウントはMatthewのユーザー・アカウントとほぼ同じになります。

    • 名前: wtaylor

    • 「パスワードの入力」および「パスワードの確認」: 「パスワードの作成要件」に示されている要件を満たすパスワードを入力します。

    ユーザーwtaylorに対し、デフォルト表領域および一時表領域、またはCREATE SESSIONシステム権限を指定する必要はありません。すでに指定されているからです。

  10. 「OK」をクリックします。

    wtaylorCREATE SESSION権限を付与する必要はありません。これは、この処理が「類似作成」アクションによって実行されているためです。

  11. Database Controlからログアウトします。

これで、Matthew WeissとWinston Taylorの両方にユーザー・アカウントが作成され、同じ権限が与えられました。

手順3: セキュア・アプリケーション・ロールを作成する

これで、employee_roleセキュア・アプリケーション・ロールを作成する準備ができました。これを実行するには、セキュリティ管理者sec_adminとしてログインする必要があります。sec_adminアカウントの作成方法については、「手順1: セキュリティ管理者アカウントを作成する」を参照してください。

セキュア・アプリケーション・ロールを作成するには、次のようにします。 

  1. SQL*Plusを起動し、セキュリティ管理者sec_adminとしてログオンします。

    SQLPLUS sec_admin
    Enter password: password
    

    SQL*Plusが起動し、デフォルトのデータベースに接続してから、プロンプトが表示されます。

    SQL> 
    

    SQL*Plusの起動の詳細は、『Oracle Database 2日でデータベース管理者』を参照してください。

  2. 次のセキュア・アプリケーション・ロールを作成します。

    CREATE ROLE employee_role IDENTIFIED USING sec_roles;
    

    IDENTIFIED USING句では、関連付けられているPL/SQLパッケージ(この場合はsec_roles)内でのみ有効(または無効)にするロールを設定します。この段階では、sec_roles PL/SQLパッケージが存在している必要はありません。

  3. ユーザーOEとして接続します。

    CONNECT OE
    Enter password: password
    

    OEがロックされているというエラー・メッセージが表示された場合は、OEアカウントのロックを解除し、次の文を入力してパスワードをリセットします。セキュリティを考慮して、以前のリリースのOracle Databaseで使用していたパスワードと同じパスワードは再利用しないでください。「パスワードの作成要件」に示されているパスワードのガイドラインに従って、任意のセキュアなパスワードを入力します。

    CONNECT SYS/AS SYSDBA
    Enter password: sys_password
    
    PASSWORD OE  -- First, change the OE account password.
    Changing password for OE
    New password: password
    Retype new password: password
    Password changed.
    
    ALTER USER OE ACCOUNT UNLOCK; -- Next, unlock the OE account.
    

    次の構文を使用して、ユーザー・アカウントのロック解除と新規パスワードの作成する方法もあります。

    ALTER USER account_name ACCOUNT UNLOCK IDENTIFIED BY new_password:
    

    これで、ユーザーOEとして接続できます。

    CONNECT OE 
    Enter password: password
    
  4. 次の文を入力して、OE.ORDERS表に対するSELECT権限をEMPLOYEE_ROLEロールに付与します。

    GRANT SELECT ON OE.ORDERS TO employee_role;
    

    ユーザーに直接ロールは付与しないでください。ユーザーがセキュリティ・ポリシーの条件を満たしている場合、ロールの付与はPL/SQLパッケージにより行われます。

手順4: 参照ビューを作成する

employee_roleロールを付与するユーザーを決定するプロシージャを作成します。このプロシージャは、マネージャID 100のSteven Kingに報告を行うマネージャにのみemployee_roleを付与します。この情報はHR.EMPLOYEES表にあります。ただし、この表には給与情報などの機密データが含まれており、また、使用した場合すべてのユーザーがアクセスする必要があるため、このプロシージャでは使用できません。実際にはほとんどの場合に、必要な情報のみが含まれている参照ビューを作成します。(参照表を作成することはできますが、ビューに最新データが反映されます。)このチュートリアルでは、従業員の名前、従業員ID、マネージャIDのみを含む独自の参照ビューを作成します。

HR.HR_VERIFY参照ビューを作成するには、次のようにします。

  1. SQL*Plusで、ユーザーHRとして接続します。

    CONNECT HR
    Enter password: password
    

    HRがロックされているというエラー・メッセージが表示された場合は、そのアカウントのロックを解除し、次の文を入力してパスワードをリセットします。セキュリティを考慮して、以前のリリースのOracle Databaseで使用していたパスワードと同じパスワードは再利用しないでください。「パスワードの作成要件」に示されているパスワードのガイドラインに従って、任意のセキュアなパスワードを入力します。

    CONNECT SYSTEM
    Enter password: password
    
    PASSWORD HR 
    Changing password for HR
    New password: password
    Retype new password: password
    Password changed.
    
    ALTER USER HR ACCOUNT UNLOCK;
    
    CONNECT HR
    Enter password: password
    
  2. 次のCREATE VIEW SQL文を入力して参照ビューを作成します。

    CREATE VIEW hr_verify AS 
    SELECT EMPLOYEE_ID, FIRST_NAME, LAST_NAME, EMAIL, MANAGER_ID 
    FROM EMPLOYEES;
    
  3. 次のSQL文を入力して、このビューに対するEXECUTE権限をmweisswtaylorおよびsec_adminに付与します。

    GRANT SELECT ON hr.hr_verify TO mweiss;
    GRANT SELECT ON hr.hr_verify TO wtaylor;
    GRANT SELECT ON hr.hr_verify TO sec_admin;
    

手順5: PL/SQLプロシージャを作成してセキュア・アプリケーション・ロールを設定する

次に、セキュア・アプリケーション・ロールのプロシージャを作成します。多くの場合、プロシージャを格納するパッケージを作成しますが、このチュートリアルは、1つのセキュア・アプリケーション・ロールのみをテスト(プロシージャで定義)するシンプルなチュートリアルであるため、プロシージャのみを作成します。複数のプロシージャを作成してロールをテストする場合は、パッケージ内にプロシージャを作成します。

PL/SQLパッケージを使用すれば、SQL文からアクセスできる特定の関連プロシージャやタイプを、単純で明確なインタフェースとして定義できます。またパッケージを使用することでコードが再利用可能になり、メンテナンスもしやすくなります。パッケージをセキュア・アプリケーション・ロールに使用した場合の利点は、複数のセキュリティ・ポリシーを1つのグループにまとめることで、アプリケーション保護のための堅牢なセキュリティ計画を実装できることです。セキュリティ・ポリシーに失敗したユーザー(潜在的な侵入者)については、監査チェックをパッケージに追加して、その失敗を記録できます。

セキュア・アプリケーション・ロールのプロシージャを作成するには、次のようにします。 

  1. SQL*Plusでユーザーsec_adminとして接続します。

    CONNECT sec_admin
    Enter password: password
    
  2. 次のCREATE PROCEDURE文を入力してセキュア・アプリケーション・ロールのプロシージャを作成します。(最初の行のCREATE OR REPLACEの前にカーソルを置くことで、このテキストをコピーして貼り付けることができます。)


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    CREATE OR REPLACE PROCEDURE sec_roles AUTHID CURRENT_USER
     AS
    v_user varchar2(50); 
    v_manager_id number :=1;
     BEGIN    
      v_user := lower((sys_context ('userenv','session_user')));
      SELECT manager_id 
         INTO v_manager_id FROM hr.hr_verify WHERE lower(email)=v_user;
       IF v_manager_id = 100
        THEN 
         EXECUTE IMMEDIATE 'SET ROLE employee_role';  
        ELSE NULL; 
       END IF;        
      EXCEPTION  
       WHEN NO_DATA_FOUND THEN v_manager_id:=0;  
       DBMS_OUTPUT.PUT_LINE(v_manager_id);
    END;
    /
    

    この例では、次のとおりです。

    • 1行目: CREATE PROCEDURE文に、実行者の権限を使用してプロシージャを作成するAUTHID CURRENT_USER句を追加します。AUTHID CURRENT_USER句は、現在のユーザーの権限を使用し、実行者の権限を使用してパッケージを作成します。

      パッケージを機能させるには、実行者の権限を使用する必要があります。実行者の権限は、パッケージがアクセスするすべてのオブジェクトに対するEXECUTE権限をユーザーに与えます。

      実行者の権限のプロシージャ内で有効になっているロールは、プロシージャが終了した後でも有効なままですが、ユーザーは、セッションを終了するとセキュア・アプリケーション・ロールに関連付けられている権限を失います。この場合は、セッションの残りでロールを有効にする専用プロシージャを持つことができます。

      ユーザーは、定義者権限のプロシージャ内のセキュリティ・ドメインを変更できないため、セキュア・アプリケーション・ロールは実行者権限のプロシージャ内でのみ有効になります。

      実行者の権限を使用したプロシージャの作成の重要性については、「セキュア・アプリケーション・ロールについて」を参照してください。

    • 3行目: ユーザーのセッション情報を格納するv_user変数を宣言します。

    • 4行目: v_userユーザーのマネージャIDを格納するv_manager_id変数を宣言します。

    • 6行目: ユーザー・ログオンのユーザー・セッション情報(この場合は、MatthewまたはWinston)を取得します。ユーザー・セッション情報を取得するには、SQLファンクションSYS_CONTEXTをネームスペース属性USERENV('userenv'、session_attribute)とともに使用して、この情報をv_user変数に書き込みます。

      このファンクションから返される情報は、ユーザーが認証された方法、クライアントのIPアドレスおよびユーザーがプロキシを介して接続したかどうかを示します。SYS_CONTEXTの詳細は、『Oracle Database SQL言語リファレンス』を参照してください。

    • 7から8行目: 現行ユーザーのマネージャIDを取得します。SELECT文によって、マネージャIDがv_manager_id変数にコピーされ、HR.HR_VERIFYビューで現行ユーザーのマネージャIDがチェックされます。従業員の電子メール・アドレスはユーザー名と同じであるため、この例では従業員の電子メール・アドレスを使用します。

    • 9から13行目: IF条件により、ユーザーにsec_rolesロールを付与すべきかどうかテストされます。この例の場合は、MatthewのマネージャであるSteven King(従業員番号は100)に報告を行うかどうかが条件となります。Matthewのように、Kingに報告を行う場合、ユーザーにはセキュア・アプリケーション・ロールが付与されます。報告を行わない場合は、ロールは付与されません。

      結果として、Matthew WeissはSteven Kingの直属の部下であるためセキュア・アプリケーション・ロールを付与されますが、WinstonはSteven Kingの直属の部下ではないためロールは付与されません。

    • 10から12行目: IF条件内では、THEN条件によってSET ROLE文がすぐに実行され、ロールが付与されます。これが実行されない場合は、ELSE条件により、権限付与が拒否されます。

    • 14から15行目: データが検出されない場合は、EXCEPTION文を使用してv_manager_id0に設定します。

    • 16行目: マネージャID(ここでは0)をバッファにコピーしてすぐに使用できるようにします。


    ヒント:

    PL/SQLコードが正常に作成または実行されない場合は、そのOracle Databaseのトレース・ファイルを確認します。USER_DUMP_DEST初期化パラメータにトレース・ファイルの現在の位置が示されます。このパラメータの値は、SQL*PlusでSHOW PARAMETER USER_DUMP_DESTを実行すると確認できます。トレース・ファイルの詳細は、『Oracle Databaseパフォーマンス・チューニング・ガイド』を参照してください。

手順6: MatthewとWinstonのプロシージャにEXECUTE権限を付与する

この段階で、MatthewとWinstonはOE.ORDERS表にアクセスを試行できますが、アクセスはできません。次の手順で、彼らにsec_rolesプロシージャのEXECUTE権限を付与し、sec_rolesプロシージャは実行できますが、OE.ORDERS表から選択したときに、アクセスが許可または拒否されます。

sec_rolesプロシージャのEXECUTE権限を付与するには、次のようにします。 

  • SQL*Plusで、ユーザーsec_adminとして次のGRANT SQL文を入力します。

    GRANT EXECUTE ON sec_admin.sec_roles TO mweiss;
    GRANT EXECUTE ON sec_admin.sec_roles TO wtaylor;
    

手順7: EMPLOYEE_ROLEセキュア・アプリケーション・ロールをテストする

MatthewとWinstonとしてログオンし、OE.ORDERS表にアクセスを試行して、employee_roleセキュア・アプリケーション・ロールをテストします。MatthewとWinstonがログオンすると、OE.ORDERS表でSELECT文を発行する前に、sec_rolesプロシージャが実行されてロールの検証が行われます。

ユーザーMWEISSとしてemployee_roleセキュア・アプリケーション・ロールをテストするには、次のようにします。 

  1. ユーザーmweissとして接続します。

    CONNECT mweiss
    Enter password: password
    
  2. 次のSQL文を入力してsec_rolesプロシージャを実行します。

    EXEC sec_admin.sec_roles;
    

    この文により、現行セッションに対してsec_rolesプロシージャが実行されます。(実際のシナリオでは、ユーザーがアプリケーションにログインしたときに、この文は自動的に実行されます)。

  3. OE.ORDERSで次のSELECT文を実行します。

    SELECT COUNT(*) FROM OE.ORDERS;
    

    MatthewにはOE.ORDERS表へのアクセス権があります。

      COUNT(*)
    ----------
           105
    

次に、Winstonがセキュア・アプリケーションにアクセスしようとします。

ユーザーWTAYLORとしてemployee_roleセキュア・アプリケーション・ロールをテストするには、次のようにします。 

  1. SQL*Plusでユーザーwtaylorとして接続します。

    CONNECT wtaylor
    Enter password: password
    
  2. 次のSQL文を入力してsec_rolesプロシージャを実行します。

    EXEC sec_admin.sec_roles;
    

    この文により、現行セッションに対してsec_rolesプロシージャが実行されます。

  3. OE.ORDERSで次のSELECT文を実行します。

    SELECT COUNT(*) FROM OE.ORDERS;
    

    WinstonはSteven Kingに直接報告を行わないため、OE.ORDERS表へのアクセス権がありません。SELECT文を実行した場合でも、ORDERS表に含まれる実際の注文数はわかりません。

    ERROR at line 1:
    ORA-00942: table or view does not exist
    

手順8: このチュートリアルで使用したコンポーネントを削除する(オプション)

このチュートリアルで作成したコンポーネントを削除します。

コンポーネントを削除するするには、次のようにします。 

  1. SQL*PlusでユーザーSYSTEMとして接続します。

    CONNECT SYSTEM
    Enter password: password
    
  2. 次のDROP文を入力します。

    DROP USER mweiss;
    DROP USER wtaylor;
    

    ユーザーsec_adminは削除しないでください。このマニュアルの以降のチュートリアルで、このユーザーが必要になります。

  3. SQL*Plusでユーザーsec_adminとして接続します。

    CONNECT sec_admin
    Enter password: password
    
  4. 次のDROP SQL文を入力します。

    DROP ROLE employee_role;
    DROP PROCEDURE sec_roles;
    
  5. ユーザーHRとして接続してから、HR_VERIFYビューを削除します。

    CONNECT HR
    Enter password: password
    DROP VIEW hr_verify;
    
  6. SQL*Plusを終了します。

    EXIT
    

権限セキュリティに使用される初期化パラメータ

表4-1に、ユーザー権限を保護するために使用する初期化パラメータを示します。

表4-1 権限セキュリティに使用される初期化パラメータ

初期化パラメータ デフォルト設定 説明

O7_DICTIONARY_ACCESSIBILITY

FALSE

SYSTEM権限に対する制限を制御します。このパラメータの詳細は、「データ・ディクショナリ保護の有効化」を参照してください。

OS_ROLES

FALSE

オペレーティング・システムが各ユーザーのロールを識別および管理するかどうかを決定します。

MAX_ENABLED_ROLES

30

他のロールに含まれるロールを含め、ユーザーが有効にできるデータベース・ロールの最大数を指定します。

REMOTE_OS_ROLES

FALSE

オペレーティング・システム・ロールがリモート・クライアントに対して許可されるかどうかを指定します。デフォルト値のFALSEを指定すると、Oracleでリモート・クライアントのロールが識別および管理されます。

SQL92_SECURITY

FALSE

UPDATE文やDELETE文などを実行するためにユーザーにSELECTオブジェクト権限が付与されている必要があるかどうかを指定します。


初期化パラメータを変更するには、「初期化パラメータ値の変更」を参照してください。初期化パラメータの詳細は、『Oracle Databaseリファレンス』および『Oracle Database管理者ガイド』を参照してください。