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Oracle® Database 2日でデータ・レプリケーションおよび統合ガイド
11g リリース2(11.2)
B56305-03
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1 データ・レプリケーションと統合の概要

管理するデータベースが複数あるデータベース管理者は、必要なときに必要な場所で情報を使用可能にする責任を持ちます。

この章は次の項で構成されています。

このマニュアルについて

『2日でデータ・レプリケーションおよび統合ガイド』では、各種のデータ・レプリケーションおよび統合環境を構成および管理するために必要な一般的なタスクの実行方法について説明します。環境のタイプについては、「データ・レプリケーションと統合の概要」および「データ・レプリケーションと統合の機能の概要」を参照してください。

このマニュアルは、最適なデータ・レプリケーションおよび統合環境を判断するのに役立ちます。また、一般的なタイプのデータ・レプリケーションおよび統合環境を構成、メンテナンス、監視およびトラブルシューティングするための基本的なタスク指向の方法も示します。

このマニュアルで使用するプライマリ・インタフェースは、Oracle Enterprise ManagerとSQL*Plusです。

この項の内容は次のとおりです。

このマニュアルを使用する前に

このマニュアルを使用する前に、次の必要があります。

  • 『Oracle Database 2日でデータベース管理者』を読んで理解していること

  • Oracle Databaseソフトウェアをインストールし、2つ以上のデータベースを構成しておくこと

このマニュアルでは、複数のデータベースにおけるデータ・レプリケーションと統合について説明するので、このマニュアルで説明されるほとんどのタスクでは複数のデータベースが必要です。

このマニュアルの対象外

『Oracle Database 2日でデータ・レプリケーションおよび統合ガイド』は、タスク指向のマニュアルです。目的は、データ・レプリケーションおよび統合の一般的なタスクについて説明することです。必要に応じて、現在のタスクを理解して実行するために必要な概念を説明します。

データ・レプリケーションおよび統合には、複数のOracle Database機能が関係します。これらの機能には、分散SQL、Oracle Database Gateway、Oracle Streamsおよびマテリアライズド・ビューが含まれます。このマニュアルでは、これらの機能に関する詳細情報は提供しません。これらの機能の詳しい概念情報およびこれらの機能の詳細な使用方法は、適切なOracleマニュアルを参照してください。

  • 分散SQLの詳細は、『Oracle Database管理者ガイド』を参照してください。

  • Oracle Database Gatewayの詳細は、『Oracle Database Heterogeneous Connectivity User's Guide』を参照してください。

  • Oracle Streamsの一般的な情報は、『Oracle Streams概要および管理』を参照してください。

  • Oracle Streamsをレプリケーションに使用する方法は、『Oracle Streamsレプリケーション管理者ガイド』を参照してください。

  • レプリケーション用のマテリアライズド・ビューの詳細は、『Oracle Databaseアドバンスト・レプリケーション』および『Oracle Databaseアドバンスト・レプリケーション・マネージメントAPIリファレンス』を参照してください。

  • Oracle Streamsをメッセージ・キューイングに使用する方法は、『Oracle Streamsアドバンスト・キューイング・ユーザーズ・ガイド』を参照してください。

また、このマニュアルでは、Oracle Enterprise Managerで利用できるデータ・レプリケーションおよび統合機能の一部の使用方法を説明しますが、Enterprise Managerの詳細な情報は提供しません。Enterprise Managerの詳細は、Enterprise Managerオンライン・ヘルプを参照してください。

データ・レプリケーションと統合の概要

組織が大きくなる場合、複数のデータベースおよびアプリケーションで情報を共有できることが重要になります。データ・レプリケーションおよび統合によって、分散環境において必要なときに必要な場所で情報にアクセスできるようになります。Oracle Databaseには、データベース、アプリケーションおよびユーザー間での通信を可能にする安全な標準メカニズムが用意されています。これらのメカニズムには、キュー、データ・レプリケーション、メッセージング、および同機種環境と異機種環境両方での分散アクセスが含まれます。

このマニュアルでは、分散SQL、レプリケーション、メッセージ・キューイングについて説明します。これらの機能を使用して次のタイプのタスクを実行することにより、コンピューティング・リソースを効率よく使用できます。

Oracle Databaseには、特定の要件に対処するために次のタイプのデータ・レプリケーションおよび統合ソリューションが用意されています。


関連項目:

  • 『Oracle Database 2日でReal Application Clustersガイド』

  • 『Oracle Database 2日でセキュリティ・ガイド』


データ・レプリケーションと統合の機能の概要

組織が組織のデータすべてを1つのデータベースに統合することが常に可能ということはありません。データが地理的に複数のロケーションに分散され、場所によっては、プライマリ・サイトへの安全な接続が確保できない場合があります。また、データが統合されていても、最適なアプリケーションが相互に通信するためのメソッドが必要な場合があります。ただし、これは、組織が異なる場所やアプリケーション間で情報を共有する必要がある理由の一例にすぎません。

Oracle Databaseでは、組織がデータ・レプリケーションおよび統合を実現するための手段が用意されています。ここでは、組織にとって最適なデータ・レプリケーションおよび統合オプションを決定する際に役立つ情報を示します。

次の項では、データ・レプリケーションおよび統合の様々な機能をいつ使用するかについて説明します。

前述の機能から要件に合う機能を選択し、個別にまたは組み合せて使用できます。


注意:

このマニュアルで説明されているデータ・レプリケーションと統合の機能に加えて、Oracle Warehouse Builderでは、情報の統合に使用できる別のオプションがあります。Oracle Warehouse Builderは様々なデータ統合計画を設計し、デプロイできるフレキシブルなツールです。一般的にWarehouse Builderを使用して実装されるプロジェクトは、ミッション・クリティカルな操作システム、移行シナリオ、異なった操作システムの統合および従来のデータ・ウェアハウスなどです。Oracle Warehouse Builderには、データの統合のソリューションの実装を支援する一連のGraphical User Interfaceが含まれています。『Oracle Warehouse Builder概要』を参照してください。

複数のデータベース内の情報のアクセスおよび変更時期

最善の試みで情報を統合したにもかかわらず、多くの組織は複数で分散したデータベースを検出します。これらの組織がこのデータを集中管理する場合でも、少なくとも短期間では不可能な場合があります。このような組織に対して、単一で集中管理されたデータベースであるかのように分散したデータ・ソースにアクセスする方法が必要です。分散SQLを使用して、単一のOracle Databaseであるかのように、アプリケーションおよびユーザーは複数のOracleまたはOracle以外のデータベースにアクセスし情報を変更できます。

情報を移動またはコピーする必要がないので、分散SQLを使用して分散したデータ・ソースをフェデレートすることで、組織に最も早く簡単な情報統合のパスを提供します。情報を後で移動する場合はアプリケーションをリライトする必要はありません。統合アプローチに遷移している組織には特に有用ですが、現在分散したデータにアクセスする方法が必要です。

たとえば、適切なOracle Database Gatewayでの分散SQLを使用した場合、アプリケーションは、Oracle Databaseにレガシー・データがインポートされるのを待たずに、レガシー・データに即時アクセスできます。分散SQLは非定型問合せを実行する組織にも有用で、他の場所に適切に存在するまれにアクセスされるデータを更新します。

Oracle Streamsでのデータのレプリケート時期

接続性に問題がない場合、組織はデータをリアルタイムに近い方法でレプリケートする可能性があります。そうすることで、できるかぎり早い時点で、すべてのロケーションにあるデータが最新であることを保証します。Oracle Streamsは、組織の特定の要件に応じて、様々な構成でリアルタイムに近いデータのレプリケーションをサポートします。Oracle Streamsレプリケーション環境では、自動的にデータベースが相互に変化をプッシュします。

Oracle Streamsレプリケーションの一般的な使用例を次に示します。

  • 主要なオンライン・トランザクション処理(OLTP)サイトから処理をオフロードするためのレポート・サイトの作成

  • コール・センターまたは同様のアプリケーションへのロード・バランシング、スケーラビリティおよび可用性の提供

  • 特定のビジネス要件を満たすためのロケーション間でのサイト自律性の提供

  • 支社などの複数のロケーションにあるデータの変換および統合

  • 異なるプラットフォーム間、Oracle Databaseリリース間、およびWide Area Network(WAN)でのデータのレプリケート

Oracle Streamsレプリケーション構成には、n-wayおよびハブアンドスポークという2つの一般的なタイプがあります。特に、データのスケーラビリティおよび可用性を必要とする組織ではマルチマスター(n-way)構成が頻繁に使用されます。これらのアプリケーションでよく使用されるのが世界中のレプリカを使用するfollow the sunモデルです。たとえば、米国、欧州およびアジアにコール・センターがあり、それぞれに顧客データの完全なコピーがあるとします。顧客からの電話は、時刻に応じて適切なコール・センターにルーティングされます。各コール・センターからは、データに対する高速かつローカルなアクセスを確保しています。サイトがなんらかの理由で使用不可能になった場合、トランザクションは存続しているロケーションにルーティングできます。このタイプの構成は、複数のロケーション間でロード・バランシングの提供にも使用します。

もう1つの一般的な構成として、ハブアンドスポークがあります。たとえば、保険会社が本社と販売代理店で顧客データを共有する場合にこの構成を使用します。この構成のネットワーク・バーションはエンド・スポークとハブの接続性が制限されている場合、特に有用です。販売代理店には本社に接続する支社へ直接の接続性があっても、本社への直接の接続性がないとします。このネットワーク・ルーティングのタイプは、すべてのロケーションに直接接続する場合に発生する一部の複雑さを排除します。ハブアンドスポーク構成はデータ・ウェアハウス環境にも有用です。データ・ウェアハウス環境では、詳細データが各ストアまたはスポークで維持され、より高レベルのデータはデータ・ウェアハウスまたはハブで共有されます。

n-wayおよびハブアンドスポークのどちらの場合でも、組織は、複数のロケーションでレプリケート・データを更新できるようにOracle Streamsレプリケーションを構成できます。このレプリケーション環境では、データが競合する可能性があります。Oracle Streamsには、自動的にこれらの競合を解消する競合解消メソッドが用意されています。

Oracle Streamsはメッセージおよびレプリケーションなどの要件を共有するすべての情報のフレキシブルなインフラストラクチャを提供するので、変更が必要なときに組織は簡単に構成を変更できます。

マテリアライズド・ビューでのデータのレプリケート時期

このシステムは1つの場所に格納されたデータにアクセスするすべてのユーザーに対して実用的であるわけではありません。たとえば、外交販売担当者が会社のデータベースに直接アクセスせずに、顧客サイトで価格リストにアクセスする必要がある場合です。プライマリ・データベースまたはマスター・データベースに接続できなくても、発注処理をする必要がある場合があります。このようなユーザーには、データベースのレプリカまたはデータベースの一部が必要です。

Oracle Streamsレプリケーションとは異なり、マテリアライズド・ビューは常にデータを連続的にレプリケートするわけではありません。マテリアライズド・ビューは、トランザクション上一貫性のある時点にリフレッシュされる表または表のサブセットのレプリカです。リフレッシュ中は、マスター表の更新回数に関係なく、変更された行の最終値のみが取得され、マテリアライズド・ビューに適用されます。これによって、リモート・サイトがマスター・サイトに接続する必要がある時間が削減されます。

マテリアライズド・ビューは、マスター・サイトへの接続が制限されている場所で特に有用です。接続不可能な場合でも、更新可能なマテリアライズド・ビューでは、これらの場所が独立して機能します。複数の場所で更新する場合、更新の競合を回避するため場所間で所有権は通常パーティション化されます。競合が発生した場合でも、競合を自動的に解消できる競合解消メソッドが用意されています。

切断した計算のサポートに加え、組織はマテリアライズド・ビューを使用して、データへのローカル・アクセスを提供し、プライマリ・ロケーションで処理の負荷を取り除き、パフォーマンスおよびスケーラビリティを改善できます。たとえば、1つ以上のマテリアライズド・ビューを使用して、受注システムからレポート・アクティビティの負荷を取り除きます。

データベース間のメッセージの送信時期

通常、組織は大きくなるにつれて、処理を自動化しタスクを管理する様々なアプリケーションを開発します。これらアプリケーションがデータを直接共有しなくても、完全に独立して動作するわけではありません。これらのアプリケーションにはタスクを調整し、情報を交換してお互いに通信する方法が必要です。

Oracle Streams Advanced Queuing(AQ)を使用すると、非同期方法でお互いに安全で確実な通信ができます。Oracle Streams AQは、複数コンシューマのキュー、公開およびサブスクライブ、コンテンツ・ベースのルーティング、インターネット伝播および変換などの、メッセージ・キューイング・システムの標準機能のすべてをサポートします。たとえば、製品が発送されると、発送部門は簡単に請求部門に通知でき、顧客は適宜請求されます。

Oracle Streams AQと適切なメッセージング・ゲートウェイを結合して、アプリケーションは、TIBCO Rendezvous、IBM Websphere MQなどの、その他のメッセージ・キューイング・システムとの同時運用もできます。この機能はビジネス・パートナまたは顧客と情報の共有が必要な場合、特に有用です。