Oracle Fusion Middleware Oracle Application Development Framework Webユーザー・インタフェース開発者ガイド 11gリリース1(11.1.1) B52029-02 |
|
![]() 戻る |
![]() 次へ |
この章では、JSFとADF Facesのライフサイクルとアプリケーションでの適切な使用方法について説明します。
この章に含まれる項は次のとおりです。
ADF Facesリッチ・クライアント・フレームワーク(RCF)はJSFフレームワークの拡張であるため、ADF Facesリッチ・クライアント・フレームワークを使用して構築したアプリケーションでは標準JSFライフサイクルが使用されます。ただし、ADF Facesフレームワークではライフサイクルが拡張され、クライアント側の値のライフサイクル、1つのページに複数のフォームを使用する弊害(ユーザーの編集内容の消失など)なしに独立して送信可能な領域をページに作成できるサブフォーム・コンポーネント、追加スコープなどの追加機能を提供します。
ADF Facesリッチ・クライアント・フレームワークで提供されるライフサイクルの拡張を説明する前に、標準JSFライフサイクルを理解することが重要です。この項では概要のみを説明します。詳細は、http://java.sun.com
でJSFの仕様を参照してください。
JSFページが送信され、新しいページがリクエストされると、JSFリクエスト・ライフサイクルが起動されます。JSFライフサイクルでは、ページの値の送信、コンポーネントの検証、ナビゲーション、コンポーネントの結果ページへの表示および状態の保存とリストアが処理されます。JSFライフサイクル・フェーズでは、UIコンポーネント・ツリーを使用してfacesコンポーネントの表示を管理します。このツリーはJSFページのランタイム表現で、ページ内の各UIコンポーネント・タグがツリーのUIコンポーネント・インスタンスに対応します。FacesServlet
オブジェクトで、JSFアプリケーションのリクエスト・ライフサイクルが管理されます。FacesServlet
オブジェクトで、リクエスト処理に必要な情報を含み、ライフサイクルを実行するオブジェクトを起動するFacesContext
と呼ばれるオブジェクトが作成されます。
図4-1に、ページ・リクエストのJSFライフサイクルを示します。ここに示すとおり、各フェーズの前後でイベントが処理されます。
JSFアプリケーションでは、ライフサイクルは次のようになります。
ビューのリストア: コンポーネント・ツリーが構築されます。これが初めてのレンダリングでない場合(ページがサーバーに送り返された場合)、適切な状態でツリーがリストアされます。これが初めてのレンダリングの場合、コンポーネント・ツリーが作成され、レスポンスのレンダリング・フェーズに移ります。
リクエスト値の適用: ツリーの各コンポーネントでリクエスト・パラメータから新規の値が(decodeメソッドを使用して)抽出され、ローカルに格納されます。関連するイベントの大半が、後の処理用にキューイングされます。コンポーネントのimmediate
属性がtrue
に設定されている場合、検証、変換およびコンポーネントに関連付けられているイベントがこのフェーズで処理されます。詳細は、4.3項「immediate属性の使用」を参照してください。
検証の処理: コンポーネントのローカル値が、入力タイプから基礎のデータ型に変換されます。コンバータが失敗した場合、このフェーズが続行されて完了します(残りのすべてのコンバータ、バリデータおよび必要なチェックが実行されます)が、完了時にライフサイクルがレスポンスのレンダリング・フェーズに移ります。
失敗がない場合、コンポーネントのrequired
属性が確認されます。値がtrue
で、関連付けられているフィールドに値が含まれている場合、関連付けられているバリデータが実行されます。値がtrue
で、フィールド値がない場合、このフェーズは完了します(残りのすべてのバリデータが実行されます)が、ライフサイクルがレスポンスのレンダリング・フェーズに移ります。値がfalse
の場合、値が入力されていないかぎり(この場合は検証が実行されない)、フェーズが完了します。変換と検証の詳細は、第6章「入力の検証および変換」を参照してください。
このフェーズの最後に、変換後のローカル値が設定され、検証および変換のエラー・メッセージとイベントがFacesContext
にキューイングされ、値変更イベントが配信されます。
ヒント: 要約すると、編集可能な入力コンポーネントの検証の処理フェーズでのプロセスは次のとおりです。
|
レスポンスのレンダリング: ツリー内のコンポーネントがレンダリングされます。後続のリクエストおよびビューのリストア・フェーズ用に状態情報が保存されます。
ライフサイクルの説明の一環として、ユーザーが日付を入力し、コマンド・ボタンをクリックして入力値を送信する単純な入力テキスト・コンポーネントを持つページを考えてみます。valueChangeListener
メソッドもコンポーネントに登録されています。例4-1に、この例のコードを示します。
例4-1 JSFライフサイクルを説明するためのサンプル・コード
<af:form> <af:inputText value="#{mybean.date}" valueChangeListener="#{mybean.valueChangeListener}"> <af:convertDateTime dateStyle="long"/> </af:inputText> <af:commandButton text="Save" actionListener="#{mybean.actionListener}"/> </af:form>
ユーザーが文字列「June 25, 2005」を入力し、送信ボタンをクリックするとします。図4-2に、値がライフサイクルでどのように受け渡され、各イベントがどの時点で処理されるかを示します。
immediate
属性を使用して、ライフサイクルのリクエスト値の適用フェーズまでコンポーネントの処理を進めることができます。immediate
に設定されているactionSource
コンポーネント(commandButton
など)の場合、アプリケーションの起動フェーズではなくリクエスト値の適用フェーズでイベントが配信されます。actionListener
ハンドラでレスポンスのレンダリング・フェーズがコールされ、検証およびモデルの更新フェーズが省略されます。
たとえば、取消ボタンをimmediate
として構成し、前のページに戻るために使用される文字列をアクションで返すとします(ナビゲーションの詳細は、第18章「ナビゲーション・コンポーネントの使用」を参照)。ユーザーが取消ボタンをクリックすると、すべての検証が省略され、入力されたデータでモデルが更新されません。図4-3に示されているように、ユーザーは見込みどおりにナビゲートされます(ナビゲーションが設定されていない場合も同様です。actionListener
ハンドラでレスポンスのレンダリング・フェーズが起動されます)。
注意: ナビゲーションを提供せず、immediate に設定されているコマンド・ボタンは、レスポンスのレンダリング・フェーズに直接進みます。したがって、検証、モデルの更新、アプリケーションの起動のフェーズは省略され、新しい値はサーバーにプッシュされません。 |
表示イベントを起動するコンポーネント(showDetail
コンポーネントなど)の場合、イベントはリクエスト値の適用フェーズに送られます。editableValueHolder
コンポーネント(inputText
コンポーネントなどの変更可能な値を保持するコンポーネント)の場合、変換、検証およびvalueChangeEvents
イベントの配信が、ライフサイクルの前半のリクエスト値の適用フェーズで行われます。
注意: editableValueHolder コンポーネントの場合、ライフサイクルのフェーズは省略されません。 |
図4-4に、immediate
属性がtrue
に設定されている入力コンポーネントのライフサイクルを示します。入力コンポーネントは文字列として入力された日付を取得し、コマンド・ボタンがクリックされたときにDateオブジェクトとしてその日付を格納します。
入力コンポーネントのimmediate
属性をtrue
を設定すると、1つ以上の入力コンポーネントをその他のコンポーネントより前に検証する必要がある場合に役立ちます。これらのコンポーネントの1つで無効なデータが検出されると、同じページの他の入力コンポーネントの検証が省略されます。これにより、ページに表示されるエラー・メッセージの数が削減されます。
別の例をあげます。あるフォームに、検索の実行を起動するように構成されているコマンド・ボタンを使用した文字列の検索に使用される入力コンポーネント、および日付の送信に使用される関連付けられたコマンド・ボタンを使用した日付の入力に使用される別の入力テキスト・コンポーネントが設定されているとします。この例では、検索入力コンポーネントとボタンの両方をimmediate
に設定します。これにより、日付入力コンポーネントのコンバータが起動されないため、日付フィールドに無効な文字列が入力されている場合でも、ユーザーは検索を実行できます。また、検索入力テキストがimmediate
に設定され、日付入力フィールドはimmediateに設定されていないため、検索入力テキストのみ処理されます。両方のフィールドは同じフォーム内にあるため、ユーザーが日付フィールドに有効な日付を入力し、その後、検索を実行して「保存」ボタンをクリックしない場合、検索結果が表示されるときに、入力した値が引き続き表示されます。例4-2に、2つのフィールドと2つのボタンに使用されるコードを示します。
例4-2 immediateを使用する入力コンポーネントとコマンド・コンポーネント
<af:form> <af:inputText immediate="true" label="Search" value="#{mybean.search}" valueChangeListener="#{mybean.searchValueChangeListener}"/> <af:commandButton immediate="true" text="search" actionListener="#{mybean.searchActionListener}"/> [.... tags to render search result ....] <af:inputText label="Date" value="#{mybean.date}" valueChangeListener="#{mybean.valueChangeListener}"> <af:convertDateTime dateStyle="long"/> </af:inputText> <af:commandButton text="save" actionListener="#{mybean.actionListener}"/> </af:form>
図4-5に、ユーザーが次のことを行う場合のこのページのライフサイクルを示します。
binky
を「日付」入力フィールドに入力する(これは有効なエントリではありません)。
dress
を「検索」フィールドに入力する。
「検索」ボタンをクリックして、dress
の検索を実行する。
「保存」ボタンをクリックして、値binky
を日付として保存する。
同じページのeditableValueHolder
およびactionSource
コンポーネントにimmediate
属性を使用する場合、次の点に注意する必要があります。
editableValueHolder
コンポーネントがimmediate
とマークされている場合、モデル値の更新フェーズの前に実行されます。immediateなactionSource
コンポーネントにeditableValueHolder
コンポーネントからのデータが必要な場合、editableValueHolder
コンポーネントに入力されたデータはモデルの更新フェーズまでモデルで使用できないため、これが問題となる場合もあります。immediateなactionSource
コンポーネントがあり、このコンポーネントでデータが必要な場合、editableValueHolder
フィールドのimmediate
も設定します。こうすることで、editableValueHolder
コンポーネントのgetValue
メソッドをコールでき、ローカル値が返されます。モデルにはまだプッシュされていませんが、コンポーネントで使用できます。
immediateなeditableValueHolder
コンポーネントが検証に失敗した場合でも、immediateなactionSource
コンポーネントは実行されます。
JSFページで、immediateにするコンポーネントを選択します。
プロパティ・インスペクタで、「動作」セクションを開き、immediate
属性をtrue
に設定します。
ADF Facesには、ページの特定のコンポーネントにのみライフサイクル(変換と検証を含む)を実行する場合に使用できる最適化されたライフサイクルが用意されています。たとえば、必須属性がtrue
に設定されたinputText
コンポーネントがページにあるとします。同じページにラジオ・ボタンがあり、選択すると、図4-6に示すようにoutputText
コンポーネントのテキストをページに表示または非表示します。
また、ユーザーは、フィールドに必須テキストを入力する前に、ラジオ・ボタンを選択できるとします。ラジオ・ボタン・コンポーネントで送信アクションを自動的にトリガーするよう設定し、immediate
属性をtrue
に設定してinputText
コンポーネントの前に処理されるようにします。また、valueChangeEvent
リスナーを追加し、ここでレスポンスのレンダリング・フェーズをコールして入力テキスト・コンポーネントで検証が実行されないようにする必要もあります。
このコードをリスナーに記述するかわりに、ADF Facesでは、ページに境界を設定してライフサイクルが境界内のコンポーネントでのみ実行されるようにすることができます。境界を判断するために、処理するコンポーネントのルートをフレームワークに通知する必要があります。これは、次の2つの方法で決めることができます。
コンポーネント: ポップアップ・ダイアログは、フレームワークで境界が認識されるコンポーネントの1つの例です。ダイアログ内でトリガーされたイベントに関係なく、ライフサイクル外のコンポーネントでライフサイクルは実行されません。
イベント: 特定のイベントはルートであるコンポーネントを示します。たとえば、showDetail
コンポーネントの展開または縮小(8.8項「コンテンツの動的な表示および非表示」を参照)時に送信される表示イベントは、showDetail
コンポーネントがルートであることを示します。展開または縮小時に、showDetail
コンポーネントと子コンポーネントまたはイベントをリスニングするよう構成されているコンポーネントでのみライフサイクルが実行されます。ルート・コンポーネントのイベントをリスニングするようコンポーネントを構成して処理することは、クロスコンポーネント・リフレッシュと呼ばれます。
クロスコンポーネント・リフレッシュでは依存性が設定され、あるコンポーネントからのイベントが別のコンポーネント(ターゲットと呼ばれる)のトリガーとして機能します。トリガー・コンポーネントでイベントが発生すると、ターゲット・コンポーネントと、トリガーおよびターゲットの両方の子コンポーネントでライフサイクルが実行され、これらのコンポーネントのみがレンダリングされます。これは、部分ページ・レンダリング(PPR)とみなされます。
ラジオ・ボタンの例では、例4-3に示すように、ラジオ・ボタンをトリガーとし、出力テキストを含むpanelGroupLayout
コンポーネントをターゲットとして設定します。
例4-3 クロスコンポーネント・レンダリングの例
<af:form> <af:inputText label="Required Field" required="true"/> <af:selectBooleanRadio id="show" autoSubmit="true" text="Show" value="#{validate.show}"/> <af:selectBooleanRadio id="hide" autoSubmit="true" text="Hide" value="#{validate.hide}"/> <af:panelGroupLayout partialTriggers="show hide" id="panel"> <af:outputText value="You can see me!" rendered="#{validate.show}"/> </af:panelGroupLayout> </af:form>
ラジオ・ボタンのautoSubmit
属性がtrue
に設定されているため、ボタンが選択されると、SelectionEvent
が起動され、ラジオ・ボタンがルートとみなされます。panelGroupLayout
コンポーネントが両方のラジオ・コンポーネントのターゲットとして設定されているため、イベントが起動されると、selectOneRadio
(ルート)、panelGroupLayout
コンポーネント(ルートのターゲット)とその子コンポーネント(outputText
コンポーネント)のみライフサイクルの処理が行われます。outputText
コンポーネントは表示ラジオ・ボタンの選択時にのみレンダリングされるよう構成されているため、ユーザーは、ラジオ・ボタンの上の必須入力フィールドにテキストを入力しなくても、ラジオ・ボタンを選択して出力テキストを表示できます。
ADF FacesフレームワークでのPPRの使用方法とアプリケーションでのPPRの使用方法の詳細は、第7章「部分ページ・コンテンツの再レンダリング」を参照してください。
PPRで特定のコンポーネントの検証を回避できない場合があります。たとえば、例4-4に示すように、panelGroupLayout
コンポーネント内にoutputText
コンポーネントのかわりにinputText
コンポーネントを使用し、このrequired
属性をtrue
に設定するとします。
例4-4 クロスコンポーネントPPRで検証されるpanelGroupコンポーネント内のinputTextコンポーネント
<af:form>
<af:selectBooleanRadio id="show2" autoSubmit="true" text="Show"
value="#{validate.show2}"/>
<af:selectBooleanRadio id="hide2" autoSubmit="true" text="Hide"
value="#{validate.hide2}"/>
<af:panelGroupLayout partialTriggers="show2 hide2">
<af:inputText label="Required Field" required="true"
rendered="#{validate.show2}"/>
</af:panelGroupLayout>
</af:form>
この例では、ライフサイクルはルート(selectOneRadio
コンポーネント)、ターゲット(panelGroupLayout
コンポーネント)とターゲットの子(inputText
コンポーネント)で実行されるため、inputText
コンポーネントは検証されます。inputText
コンポーネントが必須としてマークされているため、値がないと、検証が失敗し、エラーがスローされます。エラーのため、ライフサイクルはレスポンスのレンダリング・フェーズに移り、モデルは更新されません。このため、ラジオ・ボタンの値が更新されず、panelGroupLayout
コンポーネントは表示または非表示にできません。
このような場合、ラジオ・ボタンのimmediate
属性を使用して検証を省略できます。つまり、inputText
コンポーネントの検証フェーズの前にボタンのvalueChangeEvent
が実行されます。レスポンスのレンダリング・フェーズをコール(その結果、入力コンポーネントの検証を省略)するvalueChangeListener
ハンドラ・メソッドを追加し、ラジオ・ボタンと入力コンポーネントに値を設定します。例4-5に、これを行うJSFコードを示します。
例4-5 immediate属性とvalueChangeListenerの使用
<af:form> <af:selectOneRadio immediate="true" valueChangeListener="#{validate.toggle}" id="show2" autoSubmit="true" text="Show" value="#{validate.show2}"/> <af:selectOneRadio id="hide2" autoSubmit="true" text="Hide" value="#{validate.hide2}"/> <af:panelGroupLayout partialTriggers="show2 hide2"> <af:inputText label="Required Field" required="true" rendered="#{validate.show2}"/> </af:panelGroupLayout> </af:form>
例4-6に、valueChangeListener
のコードを示します。
ADF Facesフレームワークでは、クライアント側の変換と検証が提供されます。JavaScriptベースの独自のコンバータとバリデータを作成してページで実行できます。サーバーへの送信は不要です。
クライアント側検証を使用して、特定のクライアント・イベントがキューイングされたら、適切なフォームまたはサブフォームのクライアント検証がトリガーされるようにすることができます(サブフォームの詳細は、4.6項「サブフォームを使用したページでの領域の作成」を参照してください)。このクライアント検証が失敗した場合、既知のエラーがあるため、通常サーバーに伝播されるイベント(フォームの送信時のコマンド・ボタンのactionEvent
など)がサーバーに送られません。イベントが配信されないということは、なにも送信されないということでもあります。したがって、クライアント・リスナーはコールされません。これは、サーバーで検証が失敗すると、ライフサイクルがレスポンスのレンダリング・フェーズに移り、キューイングされているアクション・イベントが配信されず、actionListener
ハンドラ・メソッドがコールされないという意味では、サーバー側検証と同様です。
たとえば、ADF Facesで入力コンポーネントにrequired
属性を用意し、この検証がクライアントで実行されるとします。この属性をtrue
に設定すると、コンポーネントの値がnull
の場合、フレームワークでページにエラーが表示され、サーバーへの送信は必要ありません。例4-7に、inputText
コンポーネントのrequired
属性をtrue
に設定し、actionListener
属性がマネージドBeanのメソッドにバインドされているコマンド・ボタンを含むコードを示します。
例4-7 簡単なクライアント側検証の例
<af:form> <af:inputText id="input1" required="true" value="a"/> <af:commandButton text="Search" actionListener="#{demoForm.search}"/> </af:form>
このページを実行した場合、inputText
コンポーネントの値のフィールドをクリアし、フィールドからタブ移動すると、フィールドが赤い縁取りで再表示されます。フィールドをクリックすると、図4-7に示すように、値が必要なことを示すエラー・メッセージが表示されます。サーバーへの送信はなく、エラーの検出とメッセージの生成はすべてクライアントで行われます。
この例では、値のフィールドをクリアし、検索ボタンをクリックすると、必須フィールドが空でエラーが発生するため、ページが送信されません。アクション・イベントは配信されず、アクション・リスナーにバインドされているメソッドは実行されません。検証がサーバーで失敗することがクライアントでわかっている場合にページを送信する必要はないため、この処理は必要です。
クライアント側の検証と変換の詳細は、第6章「入力の検証および変換」を参照してください。
JSF参照実装では、ページの領域を別個に送信する場合、複数のフォームを使用する必要があります。ただし、複数のフォームにはページの状態の複数のコピーが必要なため、送信されないフォームでのユーザーの編集内容が失われる可能性があります。
ADF Facesには、別個に送信可能なページの領域を示すサブフォーム・コンポーネントのサポートが追加されています。サブフォームのコンテンツは、サブフォーム内のコンポーネントでページの送信を行う場合にのみ、検証(または処理)されます。これによって、別のフォーム要素を使用するという妥協をすることなく、検証され、モデルへプッシュされるコンポーネントをきめ細かく制御できます。サブフォームを使用するページの送信時に、ページの状態が一度だけ書き込まれ、すべてのユーザー編集内容が保持されます。
サブフォームでは、リクエスト値の適用フェーズが子コンポーネントで常に(ページがサブフォーム以外のコンポーネントで送信された場合でも)実行されます。ただし、検証の処理およびモデル値の更新フェーズは省略されます(これは、通常のフォーム・コンポーネントと異なります。フォームでは、送信されない場合、リクエスト値の適用フェーズは実行できません)。サブフォーム以外のコンポーネントで送信アクションが行われたときにサブフォームのコンポーネントで検証の処理およびモデル値の更新フェーズを処理できるようにするには、default
属性を使用します。サブフォームのdefault
属性をtrue
に設定すると、他のサブフォームとほぼ同様に動作します。ただし、ページのどのサブフォームでも適切なイベントが子コンポーネントで発生しない場合、default
がtrue
に設定されているサブフォームは、子コンポーネントの1つで送信が行われた場合と同様に動作します。サブフォームの詳細は、9.2項「formの定義」を参照してください。
実行時、ページがデータにアクセスできるオブジェクト・スコープに必要なデータを格納することで、データをページに渡します。スコープによってオブジェクトの存続期間が決まります。オブジェクトをスコープに置くと、EL式を使用してスコープからアクセスできます。たとえば、foo
という名前のマネージドBeanを作成し、Beanをリクエスト・スコープに存続させるよう定義するとします。このBeanにアクセスするには、#{requestScope.foo}
という式を使用します。
標準JSFアプリケーションには、次の3種類のスコープがあります。
標準JSFスコープに加え、ADF Facesには次のスコープが用意されています。
pageFlow
Scope
: オブジェクトは、ユーザーがあるページから別のページへのナビゲートを続けるかぎり使用できます。ユーザーが新たなブラウザ・ウィンドウを開いてナビゲートを始めた場合、そのウィンドウで別のpageFlowScope
スコープを持ちます。
backingBean
Scope
: これは、ページ・フラグメントと宣言コンポーネントのみに対するマネージドBeanに使用します。オブジェクトは、HTTPリクエストから、レスポンスがクライアントに返るまでの間使用できます。これは、複数のページ・フラグメントと宣言コンポーネントがページにある場合があり、値の競合を避けるために別々のスコープ・インスタンスに値を保持するために必要です。このため、すべてのページ・フラグメントまたは宣言コンポーネントのマネージドBeanでbackingBeanScope
スコープを使用する必要があります。
view
Scope
: オブジェクトは、現在のビューのIDが変更されるまで使用できます。viewScope
スコープを使用して特定のページの値を保持します。requestScope
スコープは、あるページから次のページまで必要とされる値の格納に使用できますが、viewScope
スコープに格納されデータは、ビューIDが変更されると失われます。
注意: これらは標準JSFスコープではないため、EL式には、Beanを参照するためのスコープを明示的に含める必要があります。たとえば、pageFlowScope スコープからMyBean マネージドBeanを参照するには、#{pageFlowScope.MyBean} という式になります。 |
オブジェクト・スコープは、プログラミング言語のグローバル変数およびローカル変数のスコープに相当します。スコープが広いほど、オブジェクトの可用性が高くなります。存続期間の間、これらのオブジェクトで特定のインタフェースの公開、情報の保持および他のオブジェクトへの変数とパラメータの受渡しを行うことができます。たとえば、sessionScope
スコープに定義されているマネージドBeanは、複数のページ・リクエストの間使用できます。しかし、requestScope
スコープに定義されているマネージドBeanは、1つのページ・リクエストの間のみ使用できます。
図4-8に、各タイプのスコープが有効な期間およびページ・フローとの関係を示します。
マネージドBeanを登録するスコープまたは値を格納するスコープを決める場合、可能なかぎり狭いスコープを常に使用するようにします。sessionScope
スコープは、ユーザー情報やコンテキスト情報などのセッション全体に関係する情報にのみ使用します。あるページから別のページへの値の受渡しには、sessionScope
スコープは使用しないようにします。
注意: フルFusionテクノロジ・スタックを使用している場合、様々な構成ファイルにマネージドBeanを登録するためのオプションがあります。詳細は、『Oracle Fusion Middleware Oracle Application Development Framework Fusion開発者ガイド』のFusion WebアプリケーションでのマネージドBeanの使用に関する項を参照してください。 |
注意: フルFusionテクノロジ・スタックを使用していて、ADFバインド・タスク・フローのページ間またはADFリージョンとページの間での値の受渡しについての情報が必要な場合は、『Oracle Fusion Middleware Oracle Application Development Framework Fusion開発者ガイド』の「ADFタスク・フローの概説」を参照してください。 |
ADF FacesのpageFlowScope
スコープを使用すると、あるページから別のページへの値の受渡しが簡単になるため、マスター/ディテール・ページをより簡単に開発できます。pageFlowScope
スコープに追加された値は、ユーザーがあるページから別のページにナビゲートしても、自動的に継続して使用可能になります。これは、redirect
ディレクティブを使用している場合にも当てはまります。ただし、session
スコープとは異なり、これらの値は現在のページ・フローまたはプロセスでのみ表示可能です。ユーザーが新しいウィンドウを開いてナビゲーションを開始すると、その一連のウィンドウは独自のプロセスを持ちます。つまり、各ウィンドウで格納された値は他からの独立性を保ちます。
標準JSFスコープに格納されているオブジェクト同様、pageFlow
スコープに格納されているオブジェクトもEL式を介してアクセスできます。pageFlow
スコープとの唯一の違いは、オブジェクト名にpageFlow
Scope
接頭辞を使用する必要があることです。たとえば、ボタンのラベルをpageFlow
スコープに格納されているマネージドBeanで指定し、ボタンが選択されるとBeanのメソッドがコールされるようにする場合は、ページに次のコードを使用します。
<af:commandButton text="#{pageFlowScope.buttonBean.label}" action="#{pageFlowScope.buttonBean.action}"/>
pageFlowScope
は、Javaコードからアクセスされるjava.util.Map
オブジェクトです。setPropertyListener
タグでスコープにプロパティ値を設定できます。また、タグがリスニングするイベントも定義できます。たとえば、type
属性をaction
に設定したsetPropertyListener
タグを使用すると、ナビゲーション前にアクション・ソース(commandButton
など)で値を設定する宣言的方法が提供されます。pageFlowScope
スコープとsetPropertyListener
タグを組み合せて使用して、バッキングBeanにJavaコードを記述することなく、あるページから別のページへ値を受け渡すことができます。たとえば、setPropertyListener
タグとコマンド・コンポーネントを使用してpageFlowScope
スコープに値を設定するページと、テキスト・コンポーネントでpageFlowScope
スコープを使用して値を取得する別のページを持つことができます。
pageFlowScope
スコープを使用して、ダイアログなどの2つ目のウィンドウ間で値を設定することもできます。commandButton
コンポーネントなどから2つ目のウィンドウを起動する場合、launchEvent
イベントおよびpageFlowScope
スコープを使用して、親プロセスの値をオーバーライドせずに2つ目のウィンドウとの間で値を受け渡すことができます。
pageFlow
スコープは、アプリケーションのJavaコード内からアクセスできます。終了したら、スコープを必ずクリアしてください。
注意: アプリケーションでOracle ADF Controllerが使用されている場合は、スコープを手動でクリアする必要はありません。 |
pageFlowScope
スコープへの参照を得るために、org.apache.myfaces.trinidad.context.RequestContext. getPageFlowScope()
メソッドを使用します。
たとえば、pageFlowScope
スコープからオブジェクトを取得するには、次のJavaコードを使用します。
import java.util.Map; import org.apache.myfaces.trinidad.context.RequestContext; . . . Map pageFlowScope = RequestContext.getCurrentInstance().getPageFlowScope(); Object myObject = pageFlowScope.get("myObjectName");
pageFlowScope
スコープをクリアするには、スコープにアクセスしてから手動でクリアします。
たとえば、次のJavaコードを使用してスコープをクリアします。
RequestContext afContext = RequestContext.getCurrentInstance(); afContext.getPageFlowScope().clear();
Javaコードを記述せずにpageFlowScope
スコープを使用するには、setPropertyListener
タグとコマンド・コンポーネントを組み合せて使用し、スコープに値を設定します。setPropertyListener
タグでは、リスニングするイベント・タイプを定義するtype
属性を使用します。このタイプに合致しないイベントはすべて無視されます。設定後は、ページ・フロー内の別のページからその値にアクセスできます。
ヒント: (以前のバージョンのADF Facesで使用されていた可能性がある)setActionListener タグを使用するかわりに、setPropertyListener タグを使用し、イベント・タイプをaction に設定します。 |
値の設定元のページで、コンポーネント・パレットを使用してコマンド・コンポーネントを作成します。
コンポーネント・パレットからsetPropertyListener
をドラッグし、コマンド・コンポーネントの子としてドロップします。
または、コンポーネントを右クリックし、「Buttonの中に挿入」→「ADF Faces」→「setPropertyListener」と選択します。
「プロパティ・リスナーの設定の挿入」ダイアログで、「自」フィールドに別のコンポーネントに設定される値を設定します。
たとえば、従業員の名前を格納するMyBean
という名前のマネージドBeanがあり、次のページに値を受け渡すとします。「自」フィールドに#{myBean.empName}
と入力します。
「至」フィールドにpageFlowScope
スコープでの値を設定します。
たとえば、「至」フィールドに#{pageFlowScope.empName}
と入力します。
タイプ・ドロップダウン・メニューから「Action」を選択します。
これによって、リスナーで、コマンド・コンポーネントに関連付けられているアクション・イベントをリスニングできます。
pageFlowScopeスコープから値にアクセスする手順:
値のアクセス元のページに、値を表示するコンポーネントをドロップします。
コンポーネントの値を、setPropertyListener
タグで設定したTo
値と同じ値に設定します。
たとえば、outputText
コンポーネントで従業員名にアクセスするには、このコンポーネントの値を#{pageFlowScope.empName}
に設定します。