即時利用可能なEnterprise Managerでは、エンタープライズ環境で使用されている最も一般的なハードウェアおよびアプリケーション(ターゲット・タイプ)を監視できます。IT環境に存在する可能性のあるすべてのターゲット・タイプを予測することは不可能であるため、Enterprise Managerでは、監視機能を拡張するための管理プラグインというモジュール化された方法を用意しています。
管理プラグインでは、自社に固有のアプリケーションまたはハードウェアをEnterprise Managerコンソールから直接監視できるカスタム・ターゲット・タイプを作成できます。管理プラグインを企業全体の管理エージェントにデプロイするだけです。
この章の内容は次のとおりです。
管理プラグインを使用して、Enterprise Managerで監視するカスタム・ターゲット・タイプを定義し、すべての管理情報をコンソールに集中化できます。デフォルトでは、Enterprise Manager管理および監視機能は、管理プラグインで定義されているタイプのターゲット・インスタンスに自動的に拡張されます。次に例を示します。
アラート、ポリシー、ブラックアウト、管理テンプレート、ジョブなどのコア・フレームワーク機能
グループおよびシステム
構成管理
SYSTEMレポート
これらの機能およびその他の機能により、企業全体で問題を関係付けできるため、可用性とパフォーマンスの問題をより適切に診断できます。
Enterprise Managerに追加される各ターゲット・インスタンスには、包括的なターゲット・タイプ固有のホームページが自動的に提供されます。コーディングは不要です。デフォルトのターゲット・ホームページでは、ターゲットの可用性およびアラートの統合ビューが提供されます。「監視構成」、「メトリックとポリシー設定」、「アラート履歴」などの関連監視情報へのリンクもあります。図1-1に、Microsoft SQL Serverデータベース用のデフォルトのターゲット・ホームページを示します。
管理プラグインは、Enterprise Managerコマンドライン・インタフェース(EM CLI)を使用して管理プラグイン・アーカイブに追加されたターゲット定義ファイルのグループです。ターゲット定義ファイルは、アーカイブに追加された場合にのみ、正式な管理プラグインになります。管理プラグイン・アーカイブ・ファイル(.jarファイル)は、ターゲット定義ファイルを真の管理プラグインとして相互に関連付けます。また、管理プラグイン・アーカイブ・ファイルは複数の管理プラグインから構成される場合があります。
管理プラグインは、Enterprise Managerフレームワーク内の異なる層の特定の機能を処理する複数のタイプのファイルから構成されます。ターゲット・タイプ・メタデータ・ファイルは、新しいターゲット・タイプを定義する際に不可欠な部分です。EM CLIは、管理プラグイン・アーカイブに新しい管理プラグインを作成するために、デフォルトの収集ファイルに加えてターゲット・タイプ・メタデータ・ファイルを必要とします。新しい管理プラグインを作成するには、最低でもターゲット・メタデータおよび収集ファイルが必要です。一方、ターゲット・タイプ固有の監視およびレポート機能に必要な可能性のあるその他のファイル・タイプもサポートされています。
次のURLにあるOracle Technology Network(OTN)のOracle Enterprise Manager 10g Grid Control Extensions Exchangeから、すぐに使用できる管理プラグインを入手できます。
http://www.oracle.com/technology/products/oem/extensions/index.html
このサイトは、すべてのEnterprise Manager拡張性情報の集中情報ソースです。チュートリアルおよび最新ドキュメントに加えて、Oracleおよびサード・パーティ・インテグレータが開発したすぐに使用できる管理プラグインをダウンロードできます。
現在使用可能な管理プラグインとして、次のものがあります。
BEA WebLogicプラグイン
チェック・ポイント・ファイアウォール・プラグイン
F5 BIG-IPロード・バランサ・プラグイン
IBM DB2データベース・プラグイン
IBM WebSphereプラグイン
Juniper Netscreenファイアウォール・プラグイン
Microsoft SQL Serverプラグイン
NetApp Filerプラグイン
このリストは今後も更新されるため、Extensions Exchangeサイトを定期的に確認する必要があります。
他のカスタム・コード実装と同様に、管理プラグインには開発およびデプロイという2つの異なるライフサイクルがあります。
このガイドの主要項目である開発ライフサイクルは、4つのステージから構成されます。
設計: ターゲット、アラートのしきい値および収集スケジュールの監視に必要なメトリックを判断します。
開発: ターゲット・タイプ・メタデータと収集ファイル、および監視スクリプトやレポート定義ファイルなどの必要なサポート・ファイルを定義することにより、メトリックの取得に使用されるメソッドを作成します。
検証: 提供されているXML検証ツール(ILINT)を使用して、ターゲット・メタデータおよび収集ファイルの定義に使用されるXMLを検証します。管理エージェントのメトリック・ブラウザを使用して、メトリック・データを検証します。
パッケージ: EM CLIを使用して管理プラグイン・アーカイブを作成します。
デプロイ・ライフサイクルは、Enterprise Managerコンソールから管理され、次の4つのステージから構成されます。
管理プラグインを管理プラグイン・アーカイブからインポートします。
管理プラグインを1つ以上の管理エージェントにデプロイします。
管理プラグインにより定義されたターゲット・インスタンスを管理エージェントのホームページから追加または削除します。
管理プラグインをアップグレード/ダウングレードします。管理エージェントは、デプロイされた最新の管理プラグイン・バージョンを使用します。
注意: 管理プラグインおよびデプロイ・ライフサイクルの詳細は、Enterprise Managerのオンライン・ヘルプを参照してください。 |
図1-2に、完全な管理プラグイン・ライフサイクルを示します。
拡張ガイドでは、読者にEnterprise Manager Grid Controlフレームワーク、そのコンポーネントおよび機能についての十分な知識があることを前提としています。また、XMLおよびPL/SQLに精通していることも前提としています。Enterprise Manager Grid Controlの詳細は、『Oracle Enterprise Manager概要』およびEnterprise Manager Grid Controlのオンライン・ヘルプを参照してください。追加情報は、OTNのEnterprise Managerドキュメント・エリアおよびExtensions Exchangeから入手できます。
HTTP://www.oracle.com/technology/products/oem/extensions/index.html
拡張ガイドは、2つの部に分かれています。第I部には、管理プラグインの作成に関する詳細な手順が記載され、第II部には、管理プラグインの開発時に必要になる可能性のある参照情報が記載されています。このガイドの他の章の内容を次に示します。
第2章: 必要なターゲット・メタデータ・ファイルおよび収集ファイルの定義方法。管理エージェントのメトリック・ブラウザの使用方法も、この章で説明しています。
第3章: ターゲット・メタデータ・ファイルおよび収集ファイルの作成に使用されるXMLを検証するためのILINTの使用方法。
第4章: 管理プラグインに含めるレポート定義ファイルの作成方法。詳細なInformation Publisher PL/SQL APIは、この章に文書化されています。
第5章: OJMX fetchletを使用して、Webサービス管理インタフェースを公開しているターゲットを監視する方法。
第6章: Enterprise Managerの管理リポジトリに格納されている情報へのアクセスに使用されるすべての管理ビューのリファレンス。
第7章: 使用可能なfetchlet(メトリック・データ抽出メカニズム)のリファレンス。