この節では、Sun Cluster HA for SAP を構成する手順について説明します。
表 9–5 と 表 9–6 の拡張プロパティを使用して、リソースを作成します。リソースを作成するときは、コマンド行 scrgadm -x parameter=value を使用して、拡張プロパティを構成します。すでにリソースを作成してある場合は、第 15 章「データサービスリソースの管理」 の手順を使用して拡張プロパティを構成してください。拡張プロパティの中には動的に変更できるものもありますが、それ以外の拡張プロパティは、リソースを作成するか無効にするときにしか更新できません。「調整」の欄には、そのプロパティをいつ変更できるかが示されています。Sun Cluster の全プロパティの詳細は、付録 A を参照してください。
表 9–5 Sun Cluster HA for SAP 拡張プロパティ (セントラルインスタンス)
プロパティの種類 |
プロパティ名 |
説明 |
---|---|---|
SAP 構成
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SAPSID |
SAP システム ID または SID。 デフォルト:なし 調整:無効になっている時 |
Ci_instance_id |
2 桁の SAP システム番号。 デフォルト:00 調整:無効になっている時 |
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Ci_services_string |
セントラルインスタンスサービスのリスト。 デフォルト:DVEBMGS 調整:無効になっている時
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SAP の起動
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Ci_start_retry_ interval |
セントラルインスタンスを起動する前にデータベースとの接続を試みる間隔 (秒単位)。 デフォルト:30 調整:無効になっている時 |
Ci_startup_script |
SIDadm ホームディレクトリにおけるこのインスタンスの SAP 起動スクリプトの名前。 デフォルト:なし 調整:無効になっている時 |
|
SAP の停止
|
Stop_sap_pct |
SAP プロセスの停止に使用される停止タイムアウト変数の割合。プロセスの停止には SAP 停止スクリプトが使用されます。その後で、Process Monitor Facility (PMF) が呼び出されてプロセスが停止され、終了されます。 デフォルト: 95 調整:無効になっている時 |
Ci_shutdown_script |
SIDadm ホームディレクトリにおけるこのインスタンスの SAP 停止スクリプトの名前。 デフォルト:なし 調整:無効になっている時 |
|
検証 |
Message_server_name |
SAP Message Server の名前。
デフォルト:sapms SAPSID 調整:無効になっている時 |
Lgtst_ms_with_ logicalhostname |
SAP lgtst ユーティリティで SAP Message Server を検査する方法です。lgtst ユーティリティでは、SAP Message Server の場所としてホスト名 (IP アドレス) が必要です。このホスト名は、Sun Cluster の論理ホスト名でもローカルホスト (ループバック) 名でもかまいません。このリソースプロパティに TRUE が設定されている場合は、論理ホスト名を使用する必要があります。それ以外の場合は、ローカルホスト名を使用します。
デフォルト:TRUE 調整: 任意の時点 |
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Check_ms_retry |
SAP メッセージサーバーの検査に何回失敗したなら、これを完全な失敗として報告し、Resource Group Manager (RGM) を起動するか。
デフォルト: 2 調整:無効になっている時 |
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Probe_timeout |
検証のタイムアウト値 (秒)。
デフォルト:120 調整:任意の時点 |
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Monitor_retry_count |
障害モニターに許されている PMF 再起動の回数
デフォルト: 4 調整:任意の時点 |
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Monitor_retry_ interval |
障害モニターを再起動する間隔 (分)。
デフォルト: 2 調整: 任意の時点 |
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開発システム
|
Shutdown_dev |
RGM が開発システムをシャットダウンしてからコアインスタンスを起動すべきかどうかの指定。
デフォルト:FALSE 調整:無効になっている時 |
Dev_sapsid |
開発システムの SAP システム名。Sun Cluster HA for SAP では、Shutdown_dev が TRUE に設定された場合、このプロパティが必要です。
デフォルト:なし 調整:無効になっている時 |
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Dev_shutdown_script |
開発システムの停止に使用されるスクリプト。Sun Cluster HA for SAP では、Shutdown_dev が TRUE に設定された場合、このプロパティが必要です。
デフォルト:なし 調整:無効になっている時 |
|
Dev_stop_pct |
起動タイムアウトの割合がどのくらいになったら、Sun Cluster HA for SAP が開発システムをシャットダウンしてコアインスタンスを起動するかの指定。
デフォルト:20 調整:無効になっている時 |
表 9–6 Sun Cluster HA for SAP 拡張プロパティ (アプリケーションサーバー)
プロパティの種類 |
プロパティ名 |
説明 |
---|---|---|
SAP 構成
|
SAPSID |
アプリケーションサーバーの SAP システム名または SAPSID。
デフォルト:なし 調整:無効になっている時 |
As_instance_id |
アプリケーションサーバーの 2 桁の SAP システム番号。
デフォルト:なし 調整:無効になっている時 |
|
As_services_string |
アプリケーションサーバーサービスのリスト。
デフォルト:D 調整:無効になっている時 |
|
SAP の起動
|
As_db_retry_interval |
アプリケーションサーバーを起動する前にデータベースとの接続を試みる間隔 (秒単位)。
デフォルト:30 調整:無効になっている時 |
As_startup_script |
アプリケーションサーバーの SAP 起動スクリプトの名前。
デフォルト:なし 調整:無効になっている時 |
|
SAP の停止
|
Stop_sap_pct |
停止タイムアウト変数の割合がこの値に達すると、SAP プロセスが停止されます。プロセスの停止には SAP 停止スクリプトが使用されます。その後で、Process Monitor Facility (PMF) が呼び出されてプロセスが停止され、終了されます。
デフォルト: 95 調整:無効になっている時 |
As_shutdown_script |
アプリケーションサーバーの SAP 停止スクリプトの名前。
デフォルト:なし 調整:無効になっている時 |
|
検証 |
Probe_timeout |
検証のタイムアウト値 (秒)。
デフォルト:60 調整: 任意の時点 |
Monitor_retry_count |
この検証の間に障害モニターが実行可能な PMF 再起動の回数。
デフォルト: 4 調整: 任意の時点 |
|
Monitor_retry_ interval |
障害モニターを再起動する間隔 (分単位)。
デフォルト: 2 調整: 任意の時点 |
次の手順を使用して、Sun Cluster HA for SAP (セントラルインスタンス) を登録して構成します。
セントラルインスタンスが動作するクラスタノードの 1 つでスーパーユーザーになります。
セントラルインスタンスのリソースタイプを登録します。
# scrgadm -a -t SUNW.sap_ci | SUNW.sap_ci_v2 |
このリソースグループの中に SAP セントラルインスタンスリソースを作成します。
# scrgadm -a -j sap-ci-resource -g sap-ci-resource-group \ -t SUNW.sap_ci | SUNW.sap_ci_v2 \ -x SAPSID=SAPSID \ -x Ci_instance_id=ci-instance-id \ -x Ci_startup_script=ci-startup-script \ -x Ci_shutdown_script=ci-shutdown-script |
どのような拡張プロパティがあるかについては、Sun Cluster HA for SAP 拡張プロパティ を参照してください。
SAP セントラルインスタンスリソースが含まれているフェイルオーバーリソースグループを有効にします。
# scswitch -Z -g sap-ci-resource-group |
開発システムを停止するようにセントラルインスタンスのリソースを構成した場合、次のコンソールメッセージが表示されます。
ERROR : SAPSYSTEMNAME not set Please check environment and restart |
このメッセージは、開発システムがインストールされておらず、またセントラルインスタンスを実行する予定でないノードで、セントラルインスタンスが起動された場合に表示されます。SAP はこのメッセージを表示しますが、これは無視できます。
Sun Cluster HA for SAP の登録と構成 (フェイルオーバーデータサービス) または Sun Cluster HA for SAP の登録と構成 (スケーラブルデータサービス)に進みます。
次の手順を使用して、Sun Cluster HA for SAP をフェイルオーバーデータサービスとして構成します。
アプリケーションサーバーが動作するクラスタノードの 1 つでスーパーユーザーになります。
フェイルオーバーアプリケーションサーバーのリソースタイプを登録します。
# scrgadm -a -t SUNW.sap_as | SUNW.sap_as_v2 |
このフェイルオーバーリソースグループの中に SAP アプリケーションサーバーリソースを作成します。
# scrgadm -a -j sap-as-resource -g sap-as-fo-resource-group \ -t SUNW.sap_as | SUNW.sap_as_v2 \ -x SAPSID=SAPSID \ -x As_instance_id=as-instance-id \ -x As_startup_script=as-startup-script \ -x As_shutdown_script=as-shutdown-script |
どのような拡張プロパティがあるかについては、Sun Cluster HA for SAP 拡張プロパティ を参照してください。
SAP アプリケーションサーバーリソースが含まれているフェイルオーバーリソースグループを有効にします。
# scswitch -Z -g sap-as-fo-resource-group |
Sun Cluster HA for SAP のインストールと構成の確認 (セントラルインスタンス)に進みます。
次の手順を使用して、Sun Cluster HA for SAP をスケーラブルデータサービスとして構成します。
アプリケーションサーバーが動作するクラスタノードの 1 つでスーパーユーザーになります。
アプリケーションサーバーのスケーラブルリソースグループを作成します。
# scrgadm -a -g sap-as-sa-appinstanceid-resource-group \ -y Maximum_primaries=value \ -y Desired_primaries=value |
スケーラブルデータサービスとして構成された Sun Cluster HA for SAP では、共有アドレスを使用しません。SAP ログオングループが、アプリケーションサーバーの負荷分散を行うからです。
このスケーラブルアプリケーションサーバーリソースグループの SUNW.RGOffload リソースタイプを使ってアプリケーションサーバーの負荷分散を行なう場合は、Desired_primaries=0 を指定します。 SUNW.RGOffload リソースタイプの使用については、重要ではないリソースグループを取り外すことによるノードリソースの解放を参照してください。
スケーラブルアプリケーションサーバーのリソースタイプを登録します。
# scrgadm -a -t SUNW.sap_as_v2 |
このスケーラブルリソースグループの中に SAP アプリケーションサーバーリソースを作成します。
# scrgadm -a -j sap-as-resource -g sap-as-sa-appinstanceid-resource-group \ -t SUNW.sap_as_v2 \ -x SAPSID=SAPSID \ -x As_instance_id=as-instance-id \ -x As_startup_script=as-startup-script \ -x As_shutdown_script=as-shutdown-script |
どのような拡張プロパティがあるかについては、Sun Cluster HA for SAP 拡張プロパティ を参照してください。
SAP アプリケーションサーバーリソースが含まれているスケーラブルリソースグループを有効にします。
このアプリケーションサーバーで RGOffload リソースタイプを使用しない場合は、次のコマンドを使用します。
# scswitch -Z -g sap-as-sa-appinstanceid-resource-group |
このアプリケーションサーバーで RGOffload リソースタイプを使用する場合は、次のコマンドを実行します。
# scswitch -z -h node1, node2 -g sap-as-sa-appinstanceid-resource-group |
このアプリケーションサーバーで SUNW.RGOffload リソースタイプを使用する場合は、 (-j オプションではなく) -z オプション を使って、このリソースをどのノードでオンラインにするのかを指定する必要があります。