1


DR の概要

「はじめに」で紹介した Sun Fire ハイエンドシステムおよびミッドレンジシステムは、固有のオペレーティングシステムを実行し、独立したコンピュータとして機能する複数のドメインに配備することができます (動的システムドメインを参照)。動的再構成 (DR) 機能では、ドメインを実行しながら、そのシステムボード、入出力ボード、および特定のコンポーネントの有効/無効を切り替えることができます。

DR の一部はドメイン内の Solaris ソフトウェアで実行され、cfgadm(1M) コマンドで管理されます。DR の別の部分は、システムコントローラ (SC) で実行されます。

この章では、以下のトピックについて説明します。


Sun Fire ハイエンドおよびミッドレンジシステムでの DR

ミッドレンジシステムのシステムボードは、「CPU/メモリーボード」とも呼ばれます。これらは、ハイエンドシステムのボードと同じものです。このマニュアルでは、「システムボード」という用語で統一して記述します。システムボードは、ハイエンドプラットフォームとミッドレンジプラットフォーム間で交換可能です。

ハイエンドシステムの入出力ボードとミッドレンジシステムの I/O アセンブリには、共通点と相違点があります。このマニュアルでは、特に区別する必要がないかぎり、どちらも「入出力ボード」という用語で統一して記述します。

ハイエンドシステムの入出力ボード上の入出力バスは、PCI カードまたは hsPCI+ カードと、MaxCPU ボードをサポートします。MaxCPU ボードには CPU は 2 つありますが、メモリーは搭載されていません。このボードは、スロット 1 に入ります。

ミッドレンジシステムの入出力ボードは、PCI カードまたは CompactPCI カードをサポートします。

このマニュアルでは、特に区別する必要がないかぎり、hsPCI+ カードと CompactPCI カードをどちらも「PCI」と呼びます。


DR の機能

DR には、以下のような機能があります。

たとえば、障害の発生したシステムボードを論理的に切り離したあと、システムのホットプラグ機能を使って物理的に取り外すことができます。交換用ボードの取り付けが完了したら、DR を使って、このボードをドメイン用に構成することができます。DR 機能を使ってシステムボードやコンポーネントを追加または削除すると、これらのボードまたはコンポーネントは、常に既知の構成状態になります。システムボードとコンポーネントの構成状態については、状態と条件を参照してください。

負荷均衡処理を行なったり、特定のタスクの追加機能を利用するため、システムボードや入出力ボードを別のドメインに割り当てることもできます。

一般的な DR 操作の概要

DR ソフトウェアでは、以下のタスクを実行できます。

上記のアクションをサポートする DR 操作は、大きく分けて、接続、構成、構成解除、および切り離しの 4 種類です。


表 1-1 主な DR 操作

操作

説明

Connect

ボードが取り付けられているスロットに電力が供給され、ボード温度の監視が開始されます。

Configure

オペレーティングシステムにより、ボードに機能上の役割が割り当てられ、このボードとこのボードに接続されているデバイスのデバイスドライバが読み込まれます。構成操作には、接続操作が含まれます。

Unconfigure

オペレーティングシステムからボードが論理的に切り離されて、関連するデバイスドライバがオフラインになります。環境の監視は引き続き行われますが、システムはボード上のいずれのデバイスも利用することはできません。

Disconnect

ボードが取り付けられているスロットの電源が切断され、ボードの監視が停止します。切断操作には、構成解除操作が含まれます。


 

注 - 使用中のシステムボードの電源を切断するには、まず使用を中断し、ボードをドメインから切り離す必要があります。新しいシステムボードまたはアップグレードしたシステムボードをスロットに挿入し、電源を投入したら、接続点 (接続点を参照) を接続し、オペレーティングシステムで使用できるように構成します。DR 操作の詳細は、共通の DR ボード操作を参照してください。




DR を使用する

DR 操作は、以下のいずれかの方法で実行できます。

ミッドレンジシステム上で DR を実行するときは、DR 操作の前、または実行中に、showplatformshowboards のようなミッドレンジシステムの SC コマンドを 1 つ以上実行する必要が生じることがあります。これらのコマンドの使用方法は、このマニュアルにも簡単に記載されていますが、詳細は、『Sun Fire ミッドレンジシステムコントローラコマンドリファレンスマニュアル』を参照してください。



caution icon

注意 - ミッドレンジシステムの SC コマンド addboardおよび deleteboardは、ハイエンドシステムの同名の SMS コマンドとは違って、DR コマンドではありません。これらのミッドレンジシステムの SC コマンドを安全に使用できるのは、ドメインへの電力供給が停止している場合だけです。上記のコマンドを含むミッドレンジシステムの各種 SC コマンドについては、『Sun Fire ミッドレンジシステムコントローラコマンドリファレンスマニュアル』を参照してください。




ホットプラグハードウェア

ホットプラグ可能なデバイスは、システムの実行中に論理的に接続または切断することができます。ホットスワップ可能なデバイスは、システムの実行中に物理的に接続または切断することができます。ホットプラグ可能なボードとモジュールには、ボードまたはモジュールに電力を供給してからデータピンに電流を通す特殊なコネクタがあります。ホットプラグコネクタのあるボードやデバイスは、システムの実行中に着脱できます (ホットスワップ可能)。

システムボードと入出力ボードは、ホットプラグデバイスです。しかし、周辺電源装置など、ホットプラグ対応モジュールでないデバイスもあり、これらのデバイスは、システムの実行中には着脱できません。


自動 DR (ADR)

自動 DR (ADR) を使用すると、ユーザーの介入なしで、アプリケーションが自動的に DR 操作を実行できます。ADR は、Reconfiguration Coordination Manager (RCM) とシステムイベント機能 sysevent を含む拡張 DR フレームワークを使用します。RCM は、アプリケーション固有のロード可能なモジュールがコールバックを登録できるようにします。これらのコールバックは、DR 操作前の準備タスク、DR 操作中のエラー回復アクション、DR 操作後のクリーンアップを実行できます。システムイベントフレームワークでは、アプリケーションにシステムイベントを登録しておくことで、これらのイベントの通知を受けることができます。

ADR は、RCM および sysevent と連携して、アプリケーションがリソースの構成を解除する前に自動的にそれらを解放したり、ドメインに新しいリソースが構成されたときに自動的にそれらを獲得できるようにします。

アプリケーションがドメインから cfgadm(1M) コマンドを実行することを「ローカル ADR」と呼びます。また、ハイエンドシステムで、アプリケーションが SC から SMS DR コマンドを実行することを「グローバル ADR」と呼びます。ハイエンドシステムでは、グローバル ADR を使って、システムボードを別のドメインに移動したり、ドメインにホットスワップ可能なボードを構成したり、ドメインからシステムボードを削除したりできます。


Capacity on Demand (COD)

Capacity on Demand (COD) オプションを使って、Sun Fire システムに取り付けた COD システムボードに CPU リソースを追加できます。Sun Fire COD high-end serverには、標準システムボードと COD システムボードの両方を取り付けることができます。システムの各ドメインにアクティブな CPU が 1 つ以上必要です。

DR を使用する場合も、標準システムボードの場合と同じ方法で、COD ボードをドメインに取り付けたり、ドメインから取り外したりできます。ただし、COD ボード上の CPU を使用するには、そのための RTU (right-to-use) ライセンスを購入する必要があります。COD RTU ライセンスごとに COD RTU ライセンスキーを取得でき、これにより、単一のシステムの COD ボード上で特定の数の CPU を使用できるようになります。

DR を使ってドメインに COD ボードを構成するときは、対象ドメインの RTU ライセンス数に十分余裕があり、COD ボード上のアクティブな CPU をすべて有効にできることを確認してください。COD ボードの追加時に RTU ライセンス数が不足していると、ドメイン内で有効にできない CPU ごとにステータスメッセージが表示されます。

ハイエンドシステムの COD オプションについては、『System Management Services (SMS) 1.4 管理者マニュアル』を参照してください。


Solaris ソフトウェアでの DR

このマニュアルでは、Solaris 8、Solaris 9、および Solaris 10 ソフトウェアリリースで実行される最新の DR バージョンについて説明しています。最新のパッチについては、SunSolveSM のデータベース (http://sunsolve.sun.com) で確認してください。



注 - 優れたパフォーマンスを実現し、最新の拡張機能を利用するためには、Sun のすべてのソフトウェアを最新版にすることをお勧めします。



以下の節では、特定の Solaris リリースで DR を使用する場合の注意事項を示します。

Solaris 9 または Solaris 10 OS を実行しているドメインでの DR

UltraSPARC IV+ システムボードは、Solaris 10 ソフトウェアでは Solaris 10 3/05 HW1 OS 以降、Solaris 9 ソフトウェアでは Solaris 9 9/05 OS 以降でサポートされます。古いボードが構成されているドメインに UltraSPARC IV+ ボードを追加することは可能ですが、すべて UltraSPARC IV+ ボードで起動されたドメインに、DR を使って古いボードを追加することはできません。あらかじめドメインを停止しておけば UltraSPARC IV+ ボードで起動されたドメインに古いボードを追加することができます。

Sun Fire ミッドレンジシステム上の UltraSPARC IV+ ボードでのドメイン制限に関する追加情報は、Firmware Release 5.19 の『Sun Fire ミッドレンジシステムプラットフォーム管理ガイド』を参照してください。

Solaris 8 OS を実行しているドメインでの DR

入出力ボードの DR は、Solaris 8 ソフトウェア リリースの Solaris 8 2/02 以降でサポートされます。また、DR は、Sun Fire ハイエンドシステム上の System Management Services (SMS) 1.3 以降で完全にサポートされます。Solaris 8 2/02 以降のバージョンを実行しているドメインで DR の全機能を利用するためには、ドメインにパッチと新しいカーネルアップデートをインストールし、ハイエンドサーバーのシステムコントローラ (SC) に最新版の SMS ソフトウェアをインストールする必要があります。UltraSPARC IV+ ボードは、Solaris 8 OS ではサポートされません。