Sun Studio 12 Update 1: C++ ユーザーズガイド

14.3.1 iostream を使用した出力

iostream を使用した出力は、通常、左シフト演算子 (<<) を多重定義したもの (iostream の文脈では挿入演算子といいます) を使用します。ある値を標準出力に出力するには、その値を定義済みの出力ストリーム cout に挿入します。たとえば someValue を出力するには、次の文を標準出力に挿入します。


cout << someValue;

挿入演算子は、すべての組み込み型について多重定義されており、someValue の値は適当な出力形式に変換されます。たとえば someValuefloat 型の場合<< 演算子はその値を数字と小数点の組み合わせに変換します。float 型の値を出力ストリームに挿入するときは、<< を float 型挿入子といいます。一般に X 型の値を出力ストリームに挿入するときは、<<X 型挿入子といいます。出力形式とその制御方法については、ios(3CC4) のマニュアルページを参照してください。

iostream ライブラリは、ユーザー定義の型をサポートしていません。独自の方法で出力しようとする型を定義する場合は、それらを正しく処理する挿入子を定義する (つまり、<<operator を多重定義する) 必要があります。

<< 演算子は反復使用できます。2 つの値を cout に挿入するには、次の例のような文を使用できます。


cout << someValue << anotherValue;

前述の例では、2 つの値の間に空白が入りません。空白を入れる場合は、次のようにします。


cout << someValue << " " << anotherValue;

<< 演算子は、組み込みの左シフト演算子と同じ優先順位を持ちます。ほかの演算子と同様に、括弧を使用して実行順序を指定できます。 実行順序をはっきりさせるためにも、括弧を使用するとよい場合がよくあります。次の 4 つの文のうち、最初の 2 つは同じ結果になりますが、あとの 2 つは異なります。


cout << a+b;              // + has higher precedence than <<
cout << (a+b);
cout << (a&y);            // << has precedence higher than &
cout << a&y;            // probably an error: (cout << a) & y

14.3.1.1 ユーザー定義の挿入演算子

次のコーディング例では string クラスを定義しています。


#include <stdlib.h>
#include <iostream.h>


class string {
private:
    char* data;
    size_t size;

public:
    // (functions not relevant here)

    friend ostream& operator<<(ostream&, const string&);
    friend istream& operator>>(istream&, string&);
};

この例では、string クラスのデータ部が private であるため、挿入演算子と抽出演算子をフレンド定義しておく必要があります。


ostream& operator<< (ostream& ostr, const string& output)
{    return ostr << output.data;}

前述の定義は、string クラスに対して多重定義された演算子関数 operator<< の定義です。


cout << string1 << string2;

operator<< は、最初の引数として ostream& (ostream への参照) を受け取り、同じ ostream を返します。このため、次のように 1 つの文で挿入演算子を続けて使用できます。

14.3.1.2 出力エラーの処理

operator<< を多重定義するときは、iostream ライブラリからエラーが通知されることになるため、特にエラー検査を行う必要はありません。

エラーが起こると、エラーの起こった iostreamエラー状態になります。その iostream の状態の各ビットが、エラーの大きな分類に従ってセットされます。iostream で定義された挿入子がストリームにデータを挿入しようとしても、そのストリームがエラー状態の場合はデータが挿入されず、iostream の状態も変わりません。

一般的なエラー処理方法は、メインのどこかで定期的に出力ストリームの状態を検査する方法です。そこで、エラーが起こっていることがわかれば、何らかの処理を行います。この章では、文字列を出力してプログラムを中止させる関数 error をユーザーが定義しているものとして説明します。error は事前定義された関数ではありません。error 関数の例は、「14.3.9 入力エラーの処理」を参照してください。iostream の状態を調べるには、演算子 ! を使用 します。iostream がエラー状態の場合はゼロ以外の値を返します。たとえば、次のようにします。


if (!cout) error("output error");

エラーを調べるにはもう 1 つの方法があります。ios クラスでは、operator void *() が定義されており、エラーが起こった場合は NULL ポインタを返します。したがって、次の文でエラーを検査できます。


if (cout << x) return; // return if successful

また、次のように ios クラスのメンバー関数 good を使用することもできます。


if (cout.good()) return; // return if successful

エラービットは次のような列挙型で宣言されています。


enum io_state {goodbit=0, eofbit=1, failbit=2,
badbit=4, hardfail=0x80};

エラー関数の詳細については、iostream のマニュアルページを参照してください。

14.3.1.3 出力のフラッシュ

多くの入出力ライブラリと同様、iostream も出力データを蓄積し、より大きなブロックにまとめて効率よく出力します。出力バッファーをフラッシュする場合、次のように特殊な値 flush を挿入するだけでフラッシュできます。たとえば、次のようにします。


cout << "This needs to get out immediately." << flush;
 

flush は、マニピュレータと呼ばれるタイプのオブジェクトの 1 つです。マニピュレータを iostream に挿入すると、その値が出力されるのではなく、何らかの効果が引き起こされます。マニピュレータは実際には関数で、ostream& または istream& を引数として受け取り、そのストリームに対する何らかの動作を実行したあとにその引数を返します。「14.7 マニピュレータ」を参照してください。

14.3.1.4 バイナリ出力

ある値をバイナリ形式のままで出力するには、次の例のようにメンバー関数 write を使用します。次の例では、x の値がバイナリ形式のまま出力されます。


cout.write((char*)&x, sizeof(x));

この例では、&xchar* に変換しており、型変換の規則に反します。通常このようにしても問題はありませんが、x の型が、ポインタ、仮想メンバー関数、またはコンストラクタの重要な動作を要求するものを持つクラスの場合、前述の例で出力した値を正しく読み込むことができません。