Solaris ボリュームマネージャの管理

第 21 章 Solaris ボリュームマネージャで構築可能な最善の記憶装置構成

この章では、Solaris ボリュームマネージャを使用して構築できる最善の記憶装置構成について、現実的な構成例を示して説明します。まず一般的な構成について説明し、次にその構成の分析を行い、最後に要件にもっとも合った推奨 (最善の) 構成を示します。

この章では、次の内容について説明します。

小規模なサーバーを運用する場合の構成例

分散コンピューティング環境では、複数の場所に類似または同一のサーバーを配置しなければならないことがよくあります。このような環境としては ISP、地理的に分散している営業所、電気通信のサービスプロバイダなどが挙げられます。分散コンピューティング環境に配置されたサーバーは、次のようなサービスを提供します。

これらの小規模なサーバーは、次のような共通する要件を満たす必要があります。

最初の例として、SCSI バスを 1 つ、内蔵ディスクを 2 つ備えた NetraTM サーバーを取り上げます。これはそのまま使用できる構成なので、分散型サーバーの出発点に適しています。Solaris ボリュームマネージャを使えば、一部またはすべてのスライスをミラー化し、冗長記憶領域を構成することにより、ディスク障害に対する保護機能を簡単に強化できます。次の図に、この小規模サーバー構成の例を示します。

図 21–1 小規模なシステム構成

SCSI コントローラを 1 つ装備した単一システムで、2 つのディスクをミラー化し、冗長記憶領域を実現しています。

この構成では、ルート (/)、/usrswap/var および、/export ファイルシステムに加え、状態データベースの複製 (ディスクごとに 1 つ) をミラー化できます。したがって、ミラーの片側で障害が発生しても、必ずしもシステム障害にはつながりません。また、最大 5 つの個別の障害に耐えられます。しかし、このシステムは、ディスクやスライスの障害に対して十分に保護されているとはいえません。さまざまな潜在的な障害によって致命的なシステム障害が引き起こされ、オペレータの介入が必要になる場合があります。

この構成は致命的なディスク障害に対してある程度の保護機能を備えていますが、次のような重大な単一点障害が存在します。

結論として、このシステムについては、1 つのコントローラと 1 つのハードドライブを追加した構成が「最善の構成」となります。このように構成を修正すると、耐障害性が大幅に向上します。

ネットワーク接続された記憶装置に対する Solaris ボリュームマネージャの使用方法

Solaris ボリュームマネージャは、ネットワーク接続された記憶装置、特に、構成可能な RAID レベルと柔軟なオプションを備えた記憶装置に対しても使用できます。通常、Solaris ボリュームマネージャとこのような装置を組み合わせると、一方だけの場合よりも優れた性能と柔軟性が得られます。

通常、ハードウェアで RAID-1、RAID-5 ボリュームなどの冗長性を提供する記憶デバイス上には、Solaris ボリュームマネージャの RAID-5 ボリュームを設定しないでください。よほど特殊な状況でもないかぎり、性能が低下します。また、冗長性や可用性向上の面でも、メリットはほとんどありません。

一方、ハードウェアで RAID-5 ボリュームを構成する記憶デバイスは、きわめて有効です。Solaris ボリュームマネージャボリュームに最適な土台が得られます。ハードウェア RAID-5 によって、Solaris ボリュームマネージャの RAID-1 ボリューム、ソフトパーティション、またはその他のボリュームの冗長性が強化されます。


注 –

類似したソフトウェアデバイスとハードウェアデバイスをいっしょに構成しないようにします。たとえば、ハードウェア RAID-1 デバイス上にソフトウェア RAID-1 ボリュームを作成しないでください。類似したデバイスを使用すると、性能が低下し、信頼性が向上することもありません。


構成要素であるハードウェア記憶デバイスで構築されたSolaris ボリュームマネージャの RAID-1 ボリュームは、RAID-1+0 ではありません。Solaris ボリュームマネージャ は構成要素の記憶装置を十分に認識できないので、RAID-1+0 の機能は提供しません。

ハードウェア RAID-5 デバイスに Solaris ボリュームマネージャの RAID-1 ボリュームを作成し、さらにその上にソフトパーティションを作成すると、柔軟で耐障害性に優れた構成になります。