Solaris のシステム管理 (ネットワークサービス)

ダイアルアップ PPP の概要

もっともよく使用される PPP 構成は、ダイアルアップリンクです。ダイアルアップリンクでは、ローカルピアがリモートピアをダイアルアップして接続を確立し、PPP を実行します。ダイアルアッププロセスでは、ローカルピアがリモートピアの電話番号を呼び出してリンクを開始します。

一般的なダイアルアップの使用例では、ユーザーの自宅にあるコンピュータが、着呼を受信するように構成されている ISP 側のピアを呼び出します。別のダイアルアップの使用例では、企業サイトでローカルマシンが PPP リンクを使用して、別の建物内にあるピアにデータを転送します。

このマニュアルでは、ダイアルアップ接続を開始するローカルピアは、ダイアルアウトマシンと呼びます。着呼を受信するピアは、ダイアルインサーバーと呼びます。このマシンは実際にはダイアルアウトマシンがターゲットにするマシンに過ぎず、真の意味でのサーバーではない場合もあります。

PPP はクライアントサーバープロトコルではありません。PPP のドキュメントの中には、通話の確立に言及する場合に「クライアント」や「サーバー」という用語を使っているものもあります。ダイアルインサーバーは、ファイルサーバーやネームサーバーのような真の意味でのサーバーではありません。ダイアルインサーバーという用語は、ダイアルインマシンが複数のダイアルアウトマシンにネットワークでのアクセス可能性を「提供」していることから、PPP 用語として幅広く使用されています。それでもダイアルインサーバーは、現実には、ダイアルアウトマシンのターゲットピアにすぎません。

ダイアルアップ PPP リンクの構成要素

次の図を参照してください。

図 15–2 基本的なアナログダイアルアップ PPP リンク

この図は、場所 1 と場所 2 との基本的なダイアルアップリンクを示しています。このリンクについては次で詳しく説明します。

リンクのダイアルアウト側 (場所 1) の構成は、次の要素から成ります。

リンクのダイアルイン側 (場所 2) の構成は、次の要素から成ります。

ダイアルアウトマシンで ISDN 端末アダプタを使用する

外付けの ISDN TA はモデムよりも高速ですが、両者の構成方法は基本的に同じです。両者の主な相違は chat スクリプト間の構成にあります。ISDN TA の場合、chat スクリプトの記述では、TA の製造元に固有のコマンドが必要になります。ISDN TA 用の chat スクリプトについては、「外部 ISDN TA 用 chat スクリプト」を参照してください。

ダイアルアップ通信中の動作

ダイアルアウトとダイアルインの両方のピアにある PPP 構成ファイルには、リンクを設定するための命令群が含まれています。ダイアルアップリンクが開始されると、次のプロセスが発生します。

  1. ダイアルアウトマシン上のユーザーまたはプロセスは、pppd コマンドを実行してリンクを開始します。

  2. ダイアルアウトマシンは PPP 構成ファイルを読み取ります。次に、シリアル回線を介して、ダイアルインサーバーの電話番号などの命令群をモデムに送信します。

  3. モデムは電話番号をダイアルして、ダイアルインサーバー側のモデムと電話接続を確立します。

    ダイアルアウトマシンが、モデムとダイアルインサーバーに送信する一連のテキスト文字列は、chat スクリプトと呼ばれるファイルに格納されています。ダイアルアウトマシンは、必要に応じて、ダイアルインサーバーにコマンドを送信し、サーバー側の PPP を呼び出します。

  4. ダイアルインサーバーに接続されているモデムは、ダイアルアウトマシン側のモデムとリンクのネゴシエーションを開始します。

  5. モデム同士のネゴシエーションが完了すると、ダイアルアウトマシン側のモデムは「CONNECT」を通知します。

  6. 両方のピア側の PPP は確立フェーズに入ります。このフェーズでは、リンク制御プロトコル (LCP) が基本的なリンクパラメータと認証の使用をネゴシエートします。

  7. ピアは、必要に応じて、互いを認証します。

  8. PPP のネットワーク制御プロトコル (NCP) は、IPv4 や IPv6 などのネットワークプロトコルの使用をネゴシエートします。

ダイアルアウトマシンでは、ダイアルインサーバーを通って到達可能なホストに telnet または類似のコマンドを実行できます。