Solaris のシステム管理 (セキュリティサービス)

ProcedureRBAC の実装を計画する方法

RBAC は、組織の情報リソースを管理するときに、重要な役割を果たします。RBAC を計画する際には、RBAC の機能と組織のセキュリティー要件を十分に理解しておく必要があります。

  1. RBAC の基本概念を理解します。

    「役割によるアクセス制御 (概要)」を参照してください。RBAC を使用したシステム管理は、従来の UNIX の管理方法を使用した場合と大きく異なります。実装を開始する前に、RBAC の概念を理解する必要があります。詳細については、第 10 章役割によるアクセス制御 (参照)を参照してください。

  2. セキュリティーポリシーを調査します。

    組織のセキュリティーポリシーには、システムに対する潜在的な脅威を詳細に記述し、各脅威の危険性の分析結果に応じて適切な対応策を定義する必要があります。RBAC を使用したセキュリティー関連の作業とは切り離して行うことをお勧めします。推奨される役割とその構成をそのままインストールすることもできますが、セキュリティーポリシーによっては RBAC の構成のカスタマイズが必要になることがあります。

  3. 組織に必要な RBAC を決定します。

    組織のセキュリティー要件に応じて、さまざまなレベルの RBAC を使用できます。

    • 「RBAC を使用しない」 – すべての作業を root ユーザーとして実行できます。この構成では、通常のユーザーとしてログインします。その後、Solaris 管理コンソールツールを選択するときに、ユーザーとして root を入力します。

    • 「役割を 1 つだけ使用する」 – この方式では、役割を 1 つ追加します。追加された 1 つの役割には、Primary Administrator 権利プロファイルが割り当てられます。この方式は、役割がスーパーユーザー機能を持つという点で、スーパーユーザーモデルと似ています。ただし、この方式では、役割を引き受けたユーザーを追跡することができます。

    • 「推奨される役割」 – この方式では、Primary Administrator、System Administrator、および Operator の権利プロファイルに基づいた 3 つの役割が作成されます。さまざまな責任レベルの管理者がいる組織の場合は、この方式が適しています。

    • 「カスタム役割」 – 独自の役割を作成して、組織のセキュリティー要件を満たすことができます。新しい役割は、既存またはカスタマイズした権利プロファイルに基づいて作成できます。責務の分離を適用するように権利プロファイルをカスタマイズする方法については、『Oracle Solaris Trusted Extensions 構成ガイド』「Trusted Extensions での役割とユーザーの作成」を参照してください。

    • 「root ユーザーを役割にする」 – この方式では、どのユーザーも root としてログインできないようにします。代わりに、通常のユーザーとしてログインしてから、root 役割を引き受ける必要があります。詳細については、root ユーザーを役割にする方法」を参照してください。

  4. 組織に適した推奨される役割を決定します。

    推奨される役割とそのデフォルトの権利プロファイルの機能を確認します。デフォルトの権利プロファイルにより、管理者は単一のプロファイルを使用して推奨される役割を構成することができます。

    推奨される役割を構成するときは、次の 3 つのデフォルトの権利プロファイルを使用できます。

    • 「Primary Administrator」権利プロファイル – すべての管理タスクを実行できる役割用。ほかのユーザーに権限を与えたり、管理役割に関連付けられた権限を編集したりすることができます。この役割のユーザーは、この役割をほかのユーザーに割り当てたり、ほかのユーザーに権利を与えたりすることができます。

    • 「System Administrator」権利プロファイル – セキュリティーに関係しないほとんどの管理タスクを実行できる役割用。たとえば、System Administrator は、新しいユーザーアカウントは追加できますが、パスワードを設定したりほかのユーザーに権利を与えたりすることはできません。

    • 「Operator」権利プロファイル – メディアバックアップやプリンタ管理など、単純な管理タスクを実行できる役割用。

    権利プロファイルの詳細については、次のいずれかを参照してください。

    • /etc/security ディレクトリで、prof_attr データベースおよび exec_attr データベースの内容を参照してください。

    • Solaris 管理コンソールで、権限ツールを使用して権利プロファイルの内容を表示してください。

    • このマニュアルで、一般的な権利プロファイルを要約した 「権利プロファイルの内容」を参照してください。

  5. 追加する任意の役割または権利プロファイルが組織に適切であるかどうかを判断します。

    使用するサイトで、アクセスを制限する必要があるアプリケーションを調べます。セキュリティーに影響するアプリケーション、サービス拒否が発生する可能性のあるアプリケーション、特別な管理者教育を必要とするアプリケーションには、RBAC を適用することをお勧めします。役割や権利プロファイルをカスタマイズして、組織のセキュリティー要件に対応することができます。

    1. 新しい操作に必要なコマンドを決定します。

    2. この操作に適切な権利プロファイルを決定します。

      既存の権利プロファイルがこの操作に割り当てられていないか、または別の権利プロファイルを作成する必要がないかどうかを確認します。

    3. この権利プロファイルに適した役割を決定します。

      この操作の権利プロファイルを既存の役割に割り当てるかどうか、または新しい役割を作成するかどうかを決定します。既存の役割を使用する場合は、この役割を割り当てるユーザーにほかの権利プロファイルが適していないかどうかを確認します。

  6. 役割に割り当てるユーザーを決定します。

    必要な権限だけを割り当てるために、ユーザーの信頼レベルに応じて役割を割り当てます。実行する必要のない操作にユーザーがアクセスできないようにすると、問題が発生する可能性が減少します。