Oracle Solaris ZFS 管理ガイド

ZFS ストレージプールの健全性状態を調べる

ZFS では、プールとデバイスの健全性を検査する方法が統合されています。プールの健全性は、そのすべてのデバイスの状態から判断されます。この状態情報は、zpool status コマンドを使って表示されます。また、発生する可能性のあるプールとデバイスの障害も fmd によって報告され、システムコンソールに表示されるとともに /var/adm/messages ファイルに記録されます。

この節では、プールとデバイスの健全性を確認する方法について説明します。この章では、健全でないプールを修復または回復する方法については説明しません。障害追跡およびデータの回復については、第 11 章Oracle Solaris ZFS のトラブルシューティングとプールの回復を参照してください。

各デバイスは、次のいずれかの状態になることができます。

ONLINE

デバイスまたは仮想デバイスは正常に動作しています。一時的なエラーがいくつか発生している可能性はありますが、それらを除けば正常に動作しています。

DEGRADED

仮想デバイスで障害が発生しましたが、デバイスはまだ動作しています。この状態は、ミラーデバイスまたは RAID-Z デバイスを構成するデバイスのうち、1 つ以上のデバイスが失われたときによく発生します。プールの耐障害性が損なわれる可能性があります。別のデバイスで続けて障害が発生した場合には、回復できない状態になることがあります。

FAULTED

デバイスまたは仮想デバイスへのアクセスが完全にできない状態です。この状態は通常、このデバイスで大きな障害が発生していて、デバイスとの間でデータの送受信ができないことを示しています。最上位レベルの仮想デバイスがこの状態の場合には、そのプールへのアクセスはまったくできません。

OFFLINE

管理者がデバイスを明示的にオフラインにしています。

UNAVAIL

デバイスまたは仮想デバイスを開くことができません。場合によっては、デバイスが UNAVAIL であるプールが DEGRADED モードで表示されることがあります。最上位レベルの仮想デバイスが UNAVAIL の場合は、そのプールのデバイスには一切アクセスできません。

REMOVED

システムの稼働中にデバイスが物理的に取り外されました。デバイスの取り外しの検出はハードウェアに依存しており、一部のプラットフォームではサポートされていない場合があります。

プールの健全性は、最上位レベルのすべての仮想デバイスから判断されます。すべての仮想デバイスが ONLINE の場合は、プールも ONLINE になります。仮想デバイスのいずれかが DEGRADED または UNAVAIL の場合は、プールも DEGRADED になります。最上位レベルの仮想デバイスが FAULTED または OFFLINE の場合は、プールも FAULTED になります。FAULTED 状態のプールには一切アクセスできません。必要なデバイスが接続または修復されるまで、データは回復できません。DEGRADED 状態のプールは引き続き動作しますが、プールがオンラインの場合と同じレベルのデータ冗長性やデータスループットを実現できない可能性があります。

ストレージプールの基本的な健全性状態

次のように zpool status コマンドを使用することにより、プールの健全性状態をすばやく確認できます。


# zpool status -x
all pools are healthy

プール名をコマンド構文に指定すれば、特定のプールを検査できます。ONLINE 状態ではないプールがある場合には、次の節で説明するように、問題が発生していないかどうかを調査するようにしてください。

詳細な健全性状態

-v オプションを使用すれば、より詳細な健全性の概要状態を要求することができます。次に例を示します。


# zpool status -v tank
  pool: tank
 state: DEGRADED
status: One or more devices could not be opened.  Sufficient replicas exist for
        the pool to continue functioning in a degraded state.
action: Attach the missing device and online it using 'zpool online'.
   see: http://www.sun.com/msg/ZFS-8000-2Q
 scrub: scrub completed after 0h0m with 0 errors on Wed Jan 20 15:13:59 2010
config:

        NAME        STATE     READ WRITE CKSUM
        tank        DEGRADED     0     0     0
          mirror-0  DEGRADED     0     0     0
            c1t0d0  ONLINE       0     0     0
            c1t1d0  UNAVAIL      0     0     0  cannot open

errors: No known data errors

この出力には、プールが現在の状態になった理由が詳細に表示されます。たとえば、問題に関するわかりやすい説明や、詳細な情報を入手するためのナレッジ記事へのリンクが表示されます。ナレッジ記事では、現在の問題から回復するための最良の方法に関する最新情報を提供しています。構成に関する詳細な情報を利用すれば、どのデバイスが損傷しているかや、プールをどのように修復するかを確認できます。

前の例では、エラー状態のデバイスを置き換えるべきです。デバイスを置き換えたあとに、zpool online コマンドを使用してデバイスをオンラインにします。次に例を示します。


# zpool online tank c1t0d0
Bringing device c1t0d0 online
# zpool status -x
all pools are healthy

autoreplace プロパティーがオンの場合、置き換えたデバイスをオンラインにする必要はない場合があります。

プールにオフラインのデバイスがある場合は、コマンドの出力から問題のプールを確認できます。次に例を示します。


# zpool status -x
  pool: tank
 state: DEGRADED
status: One or more devices has been taken offline by the administrator.
        Sufficient replicas exist for the pool to continue functioning in a
        degraded state.
action: Online the device using 'zpool online' or replace the device with
        'zpool replace'.
 scrub: resilver completed after 0h0m with 0 errors on Wed Jan 20 15:15:09 2010
config:

        NAME        STATE     READ WRITE CKSUM
        tank        DEGRADED     0     0     0
          mirror-0  DEGRADED     0     0     0
            c1t0d0  ONLINE       0     0     0
            c1t1d0  OFFLINE      0     0     0  48K resilvered

errors: No known data errors

READ 列と WRITE 列には、そのデバイスで発生した入出力エラーの数が表示されます。CKSUM 列には、そのデバイスで発生した訂正不可能なチェックサムエラーの数が表示されます。どちらのエラー数も、デバイス障害が発生する可能性があることを示し、その場合には訂正のための対応がいくつか必要になります。最上位レベルの仮想デバイスでエラー数があると報告された場合、データの一部にアクセスできないことがあります。

errors: フィールドは既知のデータエラーを示します。

前の出力例では、オフラインのデバイスでデータエラーは発生していません。

エラー状態のプールとデータを診断および修復する方法については、第 11 章Oracle Solaris ZFS のトラブルシューティングとプールの回復を参照してください。