Sun Java System Directory Server Enterprise Edition 6.3 配備計画ガイド

WAN を介したマルチマスターレプリケーションの使用

Directory Server では、WAN を介したマルチマスターレプリケーションをサポートしています。この機能により、マルチマスターレプリケーション設定を地理的に離れた場所にある複数のデータセンターに国際的に配備できます。

一般に、「初期レプリケーション要件の評価」で計算されるホストの数が 16 より小さいか、またはそれより大幅に大きくはない場合、トポロジを、完全に接続されたトポロジ内にマスターサーバーのみが含まれる、つまり、すべてのマスターがトポロジ内のほかのすべてのマスターにレプリケートする状態にしてください。WAN 構成を介したマルチマスターレプリケーションでは、WAN で分離されたすべての Directory Server インスタンスが、Directory Server 5.2 より前のバージョンを実行していないようにしてください。4 つを超えるマスターを含むマルチマスタートポロジの場合は、Directory Server 6.x が必要です。

レプリケーションプロトコルでは、完全な非同期サポートのほか、ウィンドウ、グループ化、および圧縮のメカニズムが提供されます。これらの機能によって、WAN を介したマルチマスターレプリケーションが実行可能になります。レプリケーションのデータ転送速度は、帯域幅の点から見て、使用可能な物理媒体で可能になる速度を常に下回ります。レプリカ間の更新の量が、物理的に、使用可能な帯域幅に収まりきらない場合は、チューニングを行なっても、更新の重い負荷の下でのレプリカの発散を避けることはできません。レプリケーションの遅延や更新のパフォーマンスは、変更の頻度、エントリサイズ、サーバーハードウェア、平均待ち時間、平均帯域幅など (ただし、これらには限定されない) を含む多くの要因に依存します。

デフォルトでは、レプリケーションメカニズムの内部パラメータは WAN に合わせて最適化されています。ただし、上で述べた要因のためにレプリケーションの速度低下が発生している場合は、ウィンドウサイズやグループサイズのパラメータを実験的に調整することをお勧めします。また、ネットワークのピーク時間帯を避けるようにレプリケーションをスケジュールして、全体的なネットワーク使用率を向上させることができる可能性もあります。最後に、Directory Server は、帯域幅の使用を最適化するためにレプリケーションデータの圧縮に対応しています。

WAN リンクを介してデータをレプリケートする場合は、データの完全性と機密性を保証する何らかの形式のセキュリティーを確保することをお勧めします。Directory Server で使用可能なセキュリティー手段の詳細については、『Sun Java System Directory Server Enterprise Edition 6.3 Reference』の第 2 章「Directory Server Security」を参照してください。

グループとウィンドウのメカニズム

Directory Server は、レプリケーションの流れを最適化するためのグループとウィンドウのメカニズムを提供しています。グループのメカニズムを使用すると、変更を個別にではなく、グループで送信するように指定できます。グループサイズは、1 つの更新メッセージにまとめることのできるデータ変更の最大数を表します。ネットワーク接続がレプリケーションのボトルネックになっているように見える場合は、グループサイズを増やし、レプリケーションのパフォーマンスをもう一度チェックしてください。グループサイズの設定については、『Sun Java System Directory Server Enterprise Edition 6.3 管理ガイド』「グループサイズの設定」を参照してください。

ウィンドウのメカニズムは、サプライヤが処理継続のためのコンシューマからの受信通知を待つことなく、コンシューマに特定の数の更新要求を送信するように指定します。ウィンドウサイズは、コンシューマからの即座の受信通知がなくても送信できる更新メッセージの最大数を表します。メッセージごとに受信通知を待つのではなく、多数のメッセージをすばやく連続して送信する方がより効率的です。適切なウィンドウサイズを使用することにより、レプリカがレプリケーションの更新または受信通知の到着を待つために費やす時間を削除できます。コンシューマレプリカがサプライヤよりも遅れている場合、詳細な調整を行う前に、ウィンドウサイズをデフォルトよりも大きい数字 (100 など) に設定して、レプリケーションのパフォーマンスをもう一度確認してみます。レプリケーションの更新頻度が高く、そのため更新の間隔が短い場合は、LAN で接続されているレプリカでもウィンドウサイズを大きくすると利点が得られます。ウィンドウサイズの設定については、『Sun Java System Directory Server Enterprise Edition 6.3 管理ガイド』「ウィンドウサイズの設定」を参照してください。

グループとウィンドウのメカニズムはどちらも、変更のサイズに基づいています。そのため、変更のサイズが大幅に変動する場合、これらのメカニズムを使用してレプリケーションのパフォーマンスを最適化することは実用的でない場合があります。変更のサイズが比較的均一である場合は、グループとウィンドウのメカニズムを使用して、差分更新と完全更新を最適化することができます。

レプリケーションの圧縮

グループ化とウィンドウのメカニズムに加えて、Solaris および Linux プラットフォームではレプリケーションの圧縮も設定できます。レプリケーションの圧縮は、レプリケーションの流れを効率化します。それによって、WAN を介したレプリケーションでのボトルネックの発生率が大幅に削減されます。レプリケートされるデータを圧縮すると、CPU 性能は十分だが帯域幅が狭いネットワークや、一括変更をレプリケートする場合など、特定の場合でのレプリケーションのパフォーマンスを向上させることができます。また、大きなエントリを含むリモートレプリカを初期化する場合も、レプリケーションの圧縮によって利点が得られます。広いネットワーク帯域幅が存在する LAN (ローカルエリアネットワーク) ではこのパラメータを設定しないでください。圧縮と圧縮解除の計算によってレプリケーションの速度が低下するためです。

レプリケーションメカニズムは、Zlib 圧縮ライブラリを使用します。予測されるレプリケーション使用率に対して WAN 環境で最高の結果が得られる圧縮レベルを実験的にテストし、選択してください。

レプリケーションの圧縮を設定する方法の詳細については、『Sun Java System Directory Server Enterprise Edition 6.3 管理ガイド』「レプリケーションの圧縮の設定」を参照してください。