Sun Java System Directory Server Enterprise Edition 6.3 配備計画ガイド

グローバル企業のための分散戦略のサンプル

ここに示されているアーキテクチャーでは、大きな金融機関の本社がロンドンに存在します。この組織は、ロンドン、ニューヨーク、および香港にデータセンターを保有しています。現在、従業員が使用可能なデータの大部分は、ロンドンにある旧バージョンの RDBMS リポジトリに集中して格納されています。この金融機関のクライアントコミュニティーからのこのデータへのすべてのアクセスが WAN を介して行われます。

この組織は、この集中管理モデルでスケーラビリティーとパフォーマンスの問題を経験しており、分散データモデルに移行することに決定しました。この組織はまた、同時に LDAP ディレクトリインフラストラクチャーも配備することに決定しました。問題のデータは「ミッションクリティカル」であると見なされるため、可用性の高い、フォールトトレラントなインフラストラクチャーに配備する必要があります。

クライアントアプリケーションのプロファイル分析によって、データが顧客ベースのものであることがわかりました。そのため、地域のクライアントコミュニティーによってアクセスされるデータの 95 パーセントは、そのコミュニティーに固有のデータです。アジアのクライアントが北米の顧客のデータにアクセスすることもありますが、この状況はまれにしか発生しません。また、クライアントコミュニティーはときどき、顧客情報の更新も行う必要があります。

次の図は、分散ソリューションの論理的なアーキテクチャーを示しています。

図 11–2 分散したディレクトリインフラストラクチャー

Directory Proxy Server を使用した分散アーキテクチャー

95 パーセントがローカルデータへのアクセスであるというプロファイル結果から、この組織は、ディレクトリインフラストラクチャーを地理的に分散することに決定しました。香港、ニューヨーク、およびロンドンのそれぞれに、複数のディレクトリコンシューマが配備されます。簡単のために、この図にはロンドンのコンシューマは示されていません。これらの各コンシューマは、各地域固有の顧客データを保持するように設定されます。ヨーロッパと中近東の顧客のデータは、ロンドンのコンシューマに保持されます。北アメリカと南アメリカの顧客データは、ニューヨークのコンシューマに保持されます。アジアと環太平洋地域の顧客のデータは、香港のコンシューマに保持されます。

この配備では、コミュニティーのデータ要求のほとんどがローカルのコミュニティーに対するものです。そのため、集中管理モデルを大幅に上回るパフォーマンスが実現されます。クライアント要求がローカルに処理されるため、ネットワークのオーバーヘッドが軽減されます。ローカルのディレクトリサーバーがディレクトリインフラストラクチャーを効率的に区分化するため、ディレクトリサーバーのパフォーマンスとスケーラビリティーが向上します。コンシューマディレクトリサーバーの各セットは、クライアントが更新要求を送信した場合はリフェラルを返すように設定されます。また、クライアントが、どこか別の場所に格納されているデータに対する検索要求を送信した場合にもリフェラルが返されます。

クライアントの LDAP 要求は、ハードウェアロードバランサを介して Directory Proxy Server に送信されます。このハードウェアロードバランサによって、クライアントが常に、少なくとも 1 つの Directory Proxy Server にアクセスできることが保証されます。ローカルに配備された Directory Proxy Server は最初に、すべての要求を、ローカルの顧客データを保持するローカルのディレクトリサーバーの配列に経路指定します。Directory Proxy Server のインスタンスは、ディレクトリサーバーの配列全体にわたって負荷分散するように設定されます。この負荷分散によって、自動フェイルオーバーおよびフェイルバックが実現されます。

ローカルの顧客情報に対するクライアントの検索要求は、ローカルディレクトリによって満足されます。Directory Proxy Server を介して、クライアントに適切な応答が返されます。地理的に「外部にある」顧客情報に対するクライアントの検索要求は、最初に、Directory Proxy Server にリフェラルを戻すことによって、ローカルのディレクトリサーバーによって満足されます。

このリフェラルには、地理的に分散した対応する Directory Proxy Server インスタンスをポイントする LDAP URL が含まれています。ローカルの Directory Proxy Server は、このリフェラルを、ローカルクライアントの代わりに処理します。ローカルの Directory Proxy Server は次に、この検索要求を Directory Proxy Server の対応する分散インスタンスに送信します。分散した Directory Proxy Server は、この検索要求を分散した Directory Server に転送し、適切な応答を受信します。次に、この応答が、Directory Proxy Server の分散インスタンスとローカルインスタンスを介してローカルクライアントに返されます。

ローカルの Directory Proxy Server が受け取った更新要求に対して、最初に、ローカルの Directory Server がリフェラルを返します。Directory Proxy Server は、このリフェラルを、ローカルクライアントの代わりに処理します。ただし、この場合、プロキシはこの更新要求をロンドンに配置されているサプライヤディレクトリサーバーに転送します。サプライヤ Directory Server は、この更新をサプライヤデータベース適用し、その応答をローカルの Directory Proxy Server を介してローカルクライアントに戻します。その後、サプライヤ Directory Server は、この更新を適切なコンシューマ Directory Server に伝えます。