Sun Java System Communications Express 6 2005Q4 管理ガイド

第 8 章 PAB データのアドレス帳サーバーへの移行

従来、個人用アドレス帳 (PAB) は Sun Java System Messaging Server でユーザーの連絡先を格納するために使用されており、PAB は、Messaging Server 上に配備された Web ベースのクライアントからしかアクセスできませんでした。Communications Express 用の Messaging Server は、ユーザーの連絡先詳細を格納するために、PAB ではなくアドレス帳サーバーを使用します。そのため、既存の Messaging Server インストールを使用して Communications Express にアクセスするユーザーは、PAB データをアドレス帳サーバーに移行する必要があります。

この章には、次の節があります。

概要

移行ツールは、ユーザーの Messenger Express アドレス帳データを、Communications Express の一部であるアドレス帳サーバーに移行します。

図 8–1 データ移行プロセスの概要

データ移行

Messenger Express の LDAP PAB ツリーに格納されているデータは、アドレス帳サーバーの LDAP PAB ツリーに移行されます。次の例は、この移行プロセスを示しています。

ドメイン siroe.com の User1 に、移行を必要とする Entry1 のような PAB 内のエントリがある場合、図 7-2 に緑で示すように、そのエントリは PAB ツリーの ou=User1 の下にあります。

図 8–2 PAB ツリーでの Entry1 の場所

PAB ツリー構造

移行の後は、図 7-3 に赤で示すように、新規に作成されたアドレス帳サーバーエントリが、アドレス帳サーバーツリーの o=siroe.com の下の piEntryID=Entry1 に追加されます。

図 8–3 アドレス帳サーバーツリー内の Entry1 の場所

アドレス帳サーバーツリー


注 –

移行ユーティリティーは、ユーザーが最初にログインしたときに、Messenger Express の PAB にあるすべてのデータを Communications Express のアドレス帳に移行します。ただし、データがアドレス帳に移行されると、Messenger Express を使用して新たに作成した連絡先またはグループは、Communications Express のアドレス帳に表示されません。逆も同じです。


移行シナリオ

データの移行は、次の 2 つの方法で行われます。

動的移行

既存の Messenger Express ユーザーが Communications Express にログインすると、動的移行が実行されます。移行が完了すると、ユーザーは電子メールを受信します。

動的移行プロセスでは、次の処理が行われます。

バッチ移行

バッチ移行プロセスでは、エンドユーザーが介入することなく、移行はサーバーレベルで行われます。管理者は runMigrate.sh バッチスクリプトを実行して、指定したドメインにあるメールユーザーの PAB データを移行します。複数ドメインに存在するメールユーザーに対して、管理者は各ドメインで runMigrate.sh スクリプトを呼び出し、ユーザーの PAB データを指定された inetDomainBaseDN からアドレス帳サーバーに移行する必要があります。

設定後の手順

移行を有効にするには、Communications Express を設定する必要があります。


注 –

移行に必要な設定パラメータは、管理者が手動で指定する必要があります。


表 7-1 は、移行ユーティリティーが使用する設定ファイルを一覧表示しています。

表 8–1 設定ファイルと各ファイルの目的

ファイル名 

説明 

migrate.properties 

データを PAB からアドレス帳サーバーに移行するために必要なパラメータが含まれています。これらのパラメータについては、「設定後の手順」を参照してください。

uwcauth.properties 

移行が必要かどうかを判定するために、移行ユーティリティーによって参照されます。 

移行ツールは、pab_mig_required の値を確認します。この値が true の場合は、動的移行が実行されます。 

uwcconfig.properties 

管理者はログレベルを指定して、障害追跡のためにロギングを有効にすることができます。デフォルトでは、このパラメータは無効になっています。 

runMigrate.sh 

(バッチ移行でのみ有効) 

このスクリプトは必要な変数を設定し、次の 3 つの引数で java プログラム MigratePab を呼び出します。

# migrate.properties ファイルの絶対パス。デフォルトパスは、次のように設定されています。../WEB-INF/config/migrate.properties 

# uwcauth.properties およびその他の設定ファイルがある設定ディレクトリの絶対パス。デフォルトパスは、次のように設定されています。../WEBINF/config 

# ユーザーの inetDomainBaseDN。 

このファイルは、必要なパスと引数を示すように適切に編集する必要があります。 

xlate-pabperson.xml (「設定後の手順」)

xlate-pabgroup.xml (「設定後の手順」)

移行ユーティリティーは、Communications Express のアドレス帳 API を内部的に使用して、Messenger Express の PAB からデータを読み込みます。 

xlate ファイルは、PAB の LDAP 属性を、アドレス帳サーバーのアドレス帳属性にマップするために必要です。

ユーザーのメールホストに応じて、表 7-2 に一覧表示されている PAB 設定エントリが取得され、PAB サーバーへの接続が確立されます。

表 8–2 PAB 移行用に設定可能な migrate.properties 内のパラメータ

パラメータ 

デフォルト値 

説明 

hostname.pabldappoolmin

PAB LDAP 用に作成される LDAP ユーザー接続の最小数を指定します。 

hostname.pabldappoolmax

20 

PAB LDAP用 に作成される LDAP ユーザー接続の最大数を指定します。 

hostname.pabldappooltimeout

50 

LDAP 接続がタイムアウトするまでの秒数を指定します。 

hostname.alwaysusedefaulthost

PAB URI で指定したユーザーの PAB ホストを使用するか、または保持するリストから最初の完全修飾 PAB ホスト名を使用するかを指定します。 

1 に設定すると、PAB エントリの取得に最初の完全修飾 PAB ホストが使用されます。 

delete_pabentry 

移行の正常終了後に PAB エントリおよび PAB URI を削除できるようにします。 

maxthreads 

10 

移行のスレッド数を指定します。 

mailhost.pabhosts 

メールホスト名は、PAB エントリが存在する PAB ホストのリストに割り当てられます。 

PAB ホストのリストを指定します。 

mailhost.pabports 

 

PAB ホストのポート番号を指定します。 

mailhost.pabbinddns 

 

PAB のバインド DN を指定します。 

mailhost.pabpasswds 

 

PAB にバインドしているユーザーのパスワードを指定します。 

<pabhost.pabport\>.abhostport=< abldaphost\>:<abldapport\>

 

migrate.properties ファイル内のルックアップテーブルで使用可能な pabhost および pabport エントリを指定します。

このパラメータでは、<pabhost.pabport\> がソースディレクトリインスタンスを示し、<abldaphost\> と <abldaport\> が PAB データを移行する必要があるターゲットディレクトリインスタンスを示します。

表 8–3 連絡先のフィールドマッピング

PAB 

アドレス帳 

cn 

DisplayName 

sn 

sn 

givenName 

givenName 

telephonenumber 

piPhone1Type:work 

piPhone1: 

homephone 

piPhone2Type:home 

piPhone2; 

pager 

piPhone4Type:pager 

piPhone4: 

mobile 

piPhone3Type:mobile 

piPhone3: 

facsimiletelephonenumber 

piPhone5Type:fax 

piPhone5: 

mail 

piEmail2Type:home 

piEmail1: 

mailalternateaddress 

piEmail2Type:work 

piEmail2: 

postoffice+street 

homePostalAddress 

homecity 

st 

homeState 

postalcode 

homePostalCode 

co 

homeCountry 

labeleduri 

piWebsite1 

description 

description 

memberofpab 

memberOfPIBook 

memberofpabgroup 

memberOfOIGroup 

表 8–4 グループのフィールドマッピング

PAB 

アドレス帳 

cn 

displayName 

description 

description 

メールを受信するには、表 7-5 で説明されているパラメータを定義する必要があります。

表 8–5 PAB 移行電子メールパラメータ

パラメータ 

デフォルト値 

説明 

emailReqd 

True 

PAB データが正常に移行された後、メールを送信できるようにします。 

設定可能な値は、「True」および「False」です。 

smtphost 

ローカルメールホスト 

例: budgie.siroe.com 

SMTP リレーホスト名を指定します。 

smtpport 

25 

SMTP リレーポートを指定します。 

mailsubject 

PAB 移行状態 

メールの件名を指定します。 

from 

admin@hostname 

送信者の名前を指定します。 


ヒント –

最初のログイン中に PAB データの移行が開始されること、そのため初期セッション中にアドレス帳データを参照できなくなることを通知する電子メールを、管理者がすべてのユーザーに送信することをお勧めします。その後 2、3 日してもユーザーがデータを見ることができなくなった場合は、管理者に連絡する必要があります。


水平方向のスケーラビリティーのサポートに必要な追加の設定

ユーザーの LDAP エントリにある属性 psRoot は、ユーザーの個人用アドレス帳エントリの格納や取得を行う際の元の LDAP の場所を定義する、アドレス帳サーバーに準拠した URL です。psRoot 属性を使用すると、管理者は、すべてのユーザーの PAB データが複数のディレクトリの場所に分散するようにユーザーをプロビジョニングできるようになります。

既存の WebMail ユーザーの場合、PAB 移行が有効になっていると、psRoot 属性は既存の pabURI 属性を使用して作成され、マッピング表が uwc-deploy-dir/WEB-INF/config/migrate.properties 内に定義されます。

migrate.properties ファイル内のルックアップテーブルは、次の形式をした pabhost および pabport エントリで構成されます。

pabhost.pabport.abhostport = abldaphost:abldapport

ここで、pabhost.pabport はソースディレクトリインスタンスを示し、abldaphostabldaport は、PAB データを移行する必要があるターゲットディレクトリインスタンスを示します。

したがって、PAB データを pab.example.com:389 で動作しているディレクトリから abs.example.com: 389 で動作しているアドレス帳ディレクトリに移行する場合、migrate.properties ファイル内のエントリは次のように表示されます。

pab.example.com.389.abhostport = abs.example.com:389

migrate.properties ファイルには、必要なルックアップをいくつでも追加できます。ユーザーの pabURI 属性が pabhostpabport を使用している場合、デフォルトの psRoot パターンを使用して作成された psRoot は次の形式になります。

ldap://abldaphost: abldapport/piPStoreOwner=%U,o=%D,o=PiServerDb

pabURI 値に対してルックアップが定義されていない場合、つまり、その pabURI に一致するマッピング表にエントリが指定されていない場合は、pabhost 値と pabport 値が abldaphostabport に対するデフォルト値として使用されます。マッピング表が存在しない場合は、アドレス帳スキーマに従って、Messaging Server の PAB エントリが同じディレクトリインスタンス内の別のルートに移行されます。このシナリオでは、[ターゲット] ディレクトリインスタンスが [ソース] ディレクトリインスタンスと同じになります。


注 –

ルックアップテーブルは、パッチインストーラでは定義されません。パッチをインストールした後、ルックアップテーブルを定義し、Web Server を再起動する必要があります。

abldaphost:abldapport Directory Server インスタンスが、そのドメインの personalstore.properties で示される db_config.properties ファイル内で定義されていることを確認してください。


移行配備のシナリオ

移行は、次の環境から実行できます。

  1. デフォルトの単一 PAB ホストを指している単一 Messenger Express インスタンス

  2. 複数の PAB ホストを指している単一 Messenger Express インスタンス

  3. デフォルトの PAB ホストセットを含む複数の PAB ホストを指している単一 Messenger Express インスタンス

  4. 単一の PAB ホストを指している複数の Messenger Express インスタンス

  5. 複数の PAB ホストを指している複数の Messenger Express インスタンス