Sun Java System Web Proxy Server 4.0.8 管理ガイド

Internet Cache Protocol (ICP) の使用

Internet Cache Protocol (ICP) はオブジェクトロケーションプロトコルで、キャッシュ間の対話を可能にします。キャッシュでは ICP を使用して、キャッシュされた URL の存在と、それらの URL を取得するための最適な場所について、クエリーの送信と応答を行います。通常の ICP 交換では、1 つのキャッシュから特定の URL に関する 1 つの ICP クエリーが隣接するすべてのキャッシュに送信されます。次に、隣接するキャッシュに、その URL が含まれているかどうかを示す ICP 応答を返します。キャッシュに URL が含まれていない場合、miss を返します。URL が含まれている場合、hit を返します。

隣接 ICP を経由したルーティング

ICP は異なる管理ドメインに存在するプロキシ間の通信に使用できます。ICP により、ある管理ドメインのプロキシキャッシュは、別の管理ドメイン内のプロキシキャッシュと通信できます。ICP は複数のプロキシサーバー間で通信する必要があるが、プロキシ配列内にあるため、1 つのマスタープロキシからすべてのプロキシサーバーを設定できないような場合に適しています。図 12–3 に、異なる管理ドメインにあるプロキシ間の ICP の交換を示します。

ICP を介して通信するプロキシはネイバーと呼ばれます。隣接 ICP 内に 64 を超えるネイバーを配置できません。隣接 ICP の 2 つの種類のネイバーは parentsibling です。要求される URL がほかのネイバーに存在しない場合、parent のみがリモートサーバーにアクセスできます。隣接 ICP には parent が存在しなくても、また複数の parent が存在していてもかまいません。隣接 ICP の parent 以外のすべてのネイバーは sibling と見なされます。Sibling は ICP のデフォルト経路としてマークされている場合を除き、リモートサーバーからドキュメントを取得できず、ICP はデフォルトを使用します。

ネイバーがクエリーを受け取る順序を決定する場合は、ポーリングラウンドを使用できます。ポーリングラウンドは ICP クエリーのサイクルです。各ネイバーに対して、ポーリングラウンドを割り当てる必要があります。すべてのネイバーをポーリングラウンド 1 に設定する場合、すべてのネイバーは同時に 1 サイクルで照会されます。一部のネイバーをポーリングラウンド 2 に設定した場合、ポーリングラウンド 1 のすべてのネイバーが最初に照会され、どのネイバーも HIT を返さない場合、ラウンド 2 のすべてのプロキシが照会されます。ポーリングラウンドの最大回数は 2 です。

ICP の parent はネットワークのボトルネックになりやすいため、ポーリングラウンドを使用して負荷を軽減できます。一般的な設定では、すべての sibling をポーリングラウンド 1 に設定し、すべての parent をポーリングラウンド 2 に設定します。このようにすることで、ローカルプロキシが URL を要求した場合、要求はまず隣接内のすべての sibling に照会されます。どの sibling にも要求された URL が存在しない場合、要求は parent に照会されます。parent にも URL が存在しない場合、ローカルプロキシはリモートサーバーから URL を取得します。

隣接 ICP の各ネイバーは、少なくとも 1 台の ICP サーバーを稼働させている必要があります。ネイバーが ICP サーバーを稼働させていない場合、ネイバーからの ICP 要求に答えることができません。プロキシサーバーで ICP を有効にすると、まだ稼働していない場合は、ICP サーバーが起動されます。

図 12–3 ICP 交換

異なる管理ドメイン内のプロキシ間の ICP 交換を示す図

ICP の設定

ここでは、ICP の設定に関する詳細を説明します。ICP の設定に必要な一般的な手順は次のとおりです。

  1. (オプション) 隣接 ICP に parent を追加します。

    詳細については、「隣接 ICP に parent または sibling プロキシを追加するには」を参照してください。

  2. 隣接 ICP に sibling を追加します。

    詳細については、「隣接 ICP に parent または sibling プロキシを追加するには」を参照してください。

  3. 隣接 ICP の各ネイバーを設定します。

    詳細については、「隣接 ICP の設定を編集するには」を参照してください。

  4. ICP を有効にします。

    詳細については、「ICP を有効にするには」を参照してください。

  5. プロキシの隣接 ICP に sibling または parent がある場合、隣接 ICP を経由したルーティングを有効にします。

    詳細については、「隣接 ICP を経由したルーティングを有効にするには」を参照してください。

Procedure隣接 ICP に parent または sibling プロキシを追加するには

  1. サーバーマネージャーにアクセスし、「Caching」タブをクリックします。

  2. 「Configure ICP」リンクをクリックします。

    「Configure ICP」ページが表示されます。

  3. このページの「Parent List」セクションで、「Add」ボタンをクリックします。

    「ICP Parent」ページが表示されます。

    • parent プロキシを追加するには、ページの「Add in the Parent List」セクションをクリックします。

      「ICP Parent」ページが表示されます。

    • sibling プロキシを追加するには、ページの「Add in the Sibling List」セクションをクリックしてください。

      「ICP Sibling」ページが表示されます。

  4. 「Machine Address」フィールドに、隣接 ICP に追加する parent プロキシの IP アドレスまたはホスト名を入力します。

  5. 「ICP Port」フィールドに、parent プロキシが ICP メッセージを待機するポート番号を入力します。

  6. (オプション)「Multicast Address」フィールドに、parent が待機するマルチキャストアドレスを入力します。マルチキャストアドレスは、複数のサーバーが待機できる IP アドレスです。

    マルチキャストアドレスを使用することによって、そのマルチキャストアドレスを待機しているすべてのネイバーで表示できるネットワークに対して、プロキシから 1 つのクエリーを送信することができます。この手法によって、各ネイバーに個別にクエリーを送信する必要がなくなります。マルチキャストの使用はオプションです。


    注 –

    別のポーリングラウンドのネイバーは、同じマルチキャストアドレスを待機できません。


  7. 「TTL」フィールドに、マルチキャストメッセージが転送されるサブネットの数を入力します。

    TTL を 1 に設定すると、マルチキャストメッセージはローカルサブネットにのみ転送されます。TTL を 2 に設定すると、メッセージは、1 レベル先のすべてのサブネットに送信され、3 の場合は 2 レベル先のように拡大されます。


    注 –

    マルチキャストを使用した場合、2 つの関連性のないネイバーで相互に ICP メッセージを送信することができます。したがって、隣接 ICP のプロキシからの ICP メッセージを関連性のないネイバーに受け取られるのを防ぐには、「TTL」フィールドの TTL の値を低く設定します。


  8. 「Proxy Port」フィールドに、parent のプロキシサーバー用のポートを入力します。

  9. 「Polling Round」ドロップダウンリストから、parent に割り当てるポーリングラウンドを選択します。デフォルトのポーリングラウンドは 1 です。

  10. [了解]をクリックします。

  11. 「Restart Required」をクリックします。

    「Apply Changes」ページが表示されます。

  12. 「Restart Proxy Server」ボタンをクリックして、変更を適用します。

Procedure隣接 ICP の設定を編集するには

  1. サーバーマネージャーにアクセスし、「Caching」タブをクリックします。

  2. 「Configure ICP」リンクを選択します。「Configure ICP」ページが表示されます。

  3. 編集するプロキシの横のラジオボタンを選択します。

  4. 「編集」ボタンをクリックします。

  5. 該当する情報を変更します。

  6. [了解]をクリックします。

  7. 「Restart Required」をクリックします。

    「Apply Changes」ページが表示されます。

  8. 「Restart Proxy Server」ボタンをクリックして、変更を適用します。

Procedure隣接 ICP からプロキシを削除するには

  1. サーバーマネージャーにアクセスし、「Caching」タブをクリックします。

  2. 「Configure ICP」リンクを選択します。「Configure ICP」ページが表示されます。

  3. 削除するプロキシの横のラジオボタンを選択します。

  4. [削除]をクリックします。

  5. 「Restart Required」をクリックします。

    「Apply Changes」ページが表示されます。

  6. 「Restart Proxy Server」ボタンをクリックして、変更を適用します。

Procedure隣接 ICP のローカルプロキシサーバーを設定するには

隣接 ICP では各ネイバー、すなわちローカルプロキシを設定する必要があります。

  1. サーバーマネージャーにアクセスし、「Caching」タブをクリックします。

  2. 「Configure ICP」リンクを選択します。

    「Configure ICP」ページが表示されます。

  3. 「Binding Address」フィールドに、隣接サーバーがバインドする IP アドレスを入力します。

  4. 「ポート」フィールドに、隣接サーバーが ICP を待機するポート番号を入力します。

  5. 「Multicast Address」フィールドに、ネイバーが待機するマルチキャストアドレスを入力します。

    マルチキャストアドレスは、複数のサーバーが待機できる IP アドレスです。マルチキャストアドレスを使用することによって、そのマルチキャストアドレスを待機しているすべてのネイバーで表示できるネットワークに対して、プロキシから 1 つのクエリーを送信することができます。この手法によって、各ネイバーに個別にクエリーを送信する必要がなくなります。

    ネイバーにマルチキャストアドレスとバインドアドレスの両方が指定されている場合、ネイバーは、応答の送信にはバインドアドレスを使用し、待機にはマルチキャストを使用します。バインドアドレスもマルチキャストアドレスも指定されない場合、オペレーティングシステムによりデータの送信に使用するアドレスが決定されます。

  6. 「Default Route」フィールドに、隣接するプロキシが HIT を応答しない場合にネイバーが応答をルーティングするプロキシの名前または IP アドレスを入力します。

    このフィールドに「origin」と入力した場合、または空白のままにした場合、デフォルト経路で配信元サーバーにルーティングされます。

    「No Hit Behavior」ドロップダウンリストから「最初に応答する parent」を選択した場合、「Default Route」フィールドに入力した経路は無効になります。プロキシがこの経路を使用するのは、デフォルトの「ヒット動作なし」を選択した場合のみです。

  7. 2 つ目の「ポート」フィールドに、「Default Route」フィールドに入力したデフォルト経路のマシンのポート番号を入力します。

  8. 「On No Hits, Route Through」ドロップダウンリストから、隣接 ICP のどの sibling もキャッシュ内に要求された URL がない場合のネイバーの動作を選択します。

    利用できるオプションは次のとおりです。

    • 最初に応答する parent: ネイバーは最初に「miss」で応答する parent から、要求された URL を取得します。

    • デフォルトの経路: ネイバーは、「Default Route」フィールドに指定されたマシンから、要求された URL を取得します。

  9. 「Server Count」フィールドに、ICP 要求を処理するプロセス数を入力します。

  10. 「Timeout」フィールドに、各ラウンドでネイバーが ICP 応答を待機する最大時間を入力します。

  11. [了解]をクリックします。

  12. 「Restart Required」をクリックします。

    「Apply Changes」ページが表示されます。

  13. 「Restart Proxy Server」ボタンをクリックして、変更を適用します。

ProcedureICP を有効にするには

  1. サーバーマネージャーにアクセスし、「Preferences」タブをクリックします。

  2. 「Configure System Preferences」リンクをクリックします。

    「Configure System Preferences」ページが表示されます。

  3. ICP の「Yes」ラジオボタンを選択して、「了解」をクリックします。

  4. 「Restart Required」をクリックします。

    「Apply Changes」ページが表示されます。

  5. 「Restart Proxy Server」ボタンをクリックして、変更を適用します。

Procedure隣接 ICP を経由したルーティングを有効にするには

隣接 ICP を経由したルーティングを有効にする必要があるのは、プロキシが隣接 ICP にほかの sibling または parent を持っている場合のみです。プロキシが別のプロキシの parent であり、独自の sibling または parent を持っていない場合、そのプロキシに対してのみ ICP を有効にする必要があります。隣接 ICP を経由したルーティングを有効にする必要はありません。

  1. サーバーマネージャーにアクセスし、「Routing」タブをクリックします。

  2. 「Set Routing Preferences」リンクをクリックします。

    「Set Routing Preferences」ページが表示されます。

  3. ドロップダウンリストからリソースを選択するか、「Regular Expression」ボタンをクリックして正規表現を入力し、「了解」をクリックします。

  4. 「Route Through」オプションの横のラジオボタンを選択します。

  5. ICP の横のチェックボックスを選択します。

  6. (オプション) クライアントが別のネイバーを経由してドキュメントを取得するのではなく、そのドキュメントを持つ隣接 ICP から直接ドキュメントを取得するように設定するには、「Text Redirect」の横のチェックボックスを選択します。

  7. [了解]をクリックします。


    注意 – 注意 –

    現在リダイレクトはどのクライアントでもサポートされていないため、今回はこの機能を使用しないでください。


  8. 「Restart Required」をクリックします。

    「Apply Changes」ページが表示されます。

  9. 「Restart Proxy Server」ボタンをクリックして、変更を適用します。