この章では、sysidcfg ファイルとネームサービスデータベースの構成情報を事前設定して、Solaris をインストールするたびに情報を入力する手間を避ける方法について説明します。また、電源管理システムの構成情報を事前設定する方法についても説明します。
Solaris 8 対話式インストールプログラムまたはカスタム JumpStart を使用して Solaris 8 ソフトウェアをインストールするためには、システムに関する構成情報 (システムの周辺機器、ホスト名、インターネットプロトコル (IP) アドレス、ネームサービスなど) が必要です。どちらのインストールプログラムも構成情報を要求する前に、sysidcfg ファイルまたはネームサービスデータベースを (この順序で) 調べて情報を探します。
たとえば多数のシステムがあって、システムのどれかに Solaris 8 をインストールするたびに時間帯を尋ねられないようにするには、sysidcfg ファイルまたはネームサービスデータベースに時間帯を指定できます。この設定を行うと、Solaris 8 をインストールするときに、時間帯プロンプトは表示されません。
システム構成情報を事前設定するには 2 つの方法があります。情報は次のところに設定できます。
sysidcfg ファイル (リモートシステム上またはフロッピーディスク)
自分のサイトで使用できるネームサービス
表 4-1 を使って、システム構成情報を事前設定するための方法を決定してください。
表 4-1 システム構成情報を事前設定するための方法
事前設定の対象 |
プラットフォーム |
sysidcfg ファイルでの事前設定の可否 | |
---|---|---|---|
ネームサービス |
SPARC/IA |
可能 |
可能 |
ドメイン名 |
SPARC/IA |
可能 |
不可 |
ネームサーバー |
SPARC/IA |
可能 |
不可 |
ネットワークインタフェース |
SPARC/IA |
可能 |
不可 |
ホスト名 |
SPARC/IA |
可能 [この情報はシステムに固有なため、各システム用に異なる sysidcfg ファイルを作成するよりも、ネームサーバーを編集してください。] |
可能 |
IP アドレス |
SPARC/IA |
可能
|
可能 |
ネットマスク |
SPARC/IA |
可能 |
不可 |
DHCP |
SPARC/IA |
可能 |
不可 |
IPv6 |
SPARC/IA |
不可 |
不可 |
root パスワード |
SPARC/IA |
可能 |
不可 |
セキュリティポリシー |
SPARC/IA |
可能 |
不可 |
インストールプログラムとデスクトップで表示する言語 (ロケール) |
SPARC/IA |
可能 |
可能 |
端末タイプ |
SPARC/IA |
可能 |
不可 |
時間帯 |
SPARC/IA |
可能 |
可能 |
日付と時刻 |
SPARC/IA |
可能 |
可能 |
モニタータイプ |
IA |
可能 |
不可 |
キーボード言語、キーボード配置 |
IA |
可能 |
不可 |
グラフィックスカード、カラー深度、表示解像度、画面サイズ |
IA |
可能 |
不可 |
ポインティングデバイス、ボタン数、IRQ レベル |
IA |
可能 |
不可 |
電源管理システム [このシステム構成情報は、sysidcfg ファイルまたはネームサービスでは事前設定できません。詳細は、「SPARC: 電源管理情報の事前設定」を参照してください。] |
SPARC |
不可 |
不可 |
sysidcfg ファイルに一連のキーワードを指定すると、システムを事前設定できます。表 4-2 は、これらのキーワードを示しています。
異なる構成情報を必要とするシステムごとに、固有の sysidcfg ファイルを作成する必要があります。すべてのシステムに同じ時間帯を割り当てる場合は、同じ sysidcfg ファイルを使用して、一連のシステムに時間帯を事前設定することができます。ただし、これらの各システムに異なる root (スーパーユーザー) パスワードを事前設定する場合は、各システムに固有の sysidcfg ファイルを作成する必要があります。
sysidcfg ファイルは、共有 NFSTM ネットワークディレクトリ、または次のフロッピーディスクのルート (/) ディレクトリに置くことができます。
UFS フロッピーディスク
PCFS フロッピーディスク
これらはシステムのフロッピーディスクドライブに挿入されます。
共有 NFS ネットワークディレクトリに sysidcfg ファイルを置く場合は、システムにネットワーク上のインストールを設定する際に add_install_client(1M) コマンドの -p オプションを使用して、Solaris のインストール時に sysidcfg ファイルが検索される場所を指定する必要があります。
SPARC: sysidcfg ファイルをプロファイルフロッピーディスクに置く場合は、システムのブート時に、そのフロッピーディスクがシステムのフロッピーディスクドライブに挿入されていることを確認してください。
IA: sysidcfg ファイルは、Solaris 8 Device Configuration Assistant (構成用補助) フロッピーディスクに入れてください。
1 つのディレクトリまたはフロッピーディスクには、1 つの sysidcfg ファイルだけを入れることができます。複数の sysidcfg ファイルを作成する場合は、各ファイルを異なるディレクトリまたは異なるフロッピーディスクに置く必要があります。
sysidcfg ファイルで使用するキーワードには、非依存型と依存型の 2 種類があります。依存型キーワードは、非依存型キーワード内でのみ固有であることが保証されています。つまり、依存型キーワードは、対応する非依存型キーワードによって識別される場合にのみ存在します。
次の例では、name_service が非依存型キーワードであり、domain_name と name_server が依存型キーワードです。
name_service=NIS {domain_name=marquee.central.sun.com name_server=connor(129.152.112.3)} |
以下に構文規則を示します。
表 4-2 に、sysidcfg ファイルで使用できるキーワードを示します。
表 4-2 sysidcfg キーワード
構成情報 |
プラットフォーム |
キーワード |
使用例または設定値の書かれている場所 |
---|---|---|---|
ネームサービス、ドメイン名、ネームサーバー |
SPARC/IA |
name_service=NIS, NIS+, DNS, NONE | |
NIS と NIS+ 用オプション {domain_name=domain_name name_server=hostname(ip_address)} |
name_service=NIS {domain_name=west.arp.com name_server=timber(129.221.2.1)} name_service=NIS+ {domain_name=west.arp.com name_server=timber(129.221.2.1)} |
||
DNS 用オプション {domain_name=domain_name name_server=ip_address,ip_address, ip_address (最大 3 個) search=domain_name,domain_name,domain_name,domain_name,domain_name, domain_name (最大 6 個、合計の長さが 250 文字以下)} |
name_service=DNS {domain_name=west.arp.com name_server=10.0.1.10,10.0.1.20 search=arp.com,east.arp.com} 注 - name_service は 1 つの値だけを選択します。必要に応じて、domain_name と name_server キーワードのどちらか 1 つまたは両方を設定するか、あるいはどちらも設定しません。どちらのキーワードも使用しない場合、中括弧 { } は省略します。 |
||
ネットワークインタフェース、ホスト名、IP アドレス、ネットマスク、DHCP、IPv6 |
SPARC/IA |
network_interface=NONE, PRIMARY, value | |
DHCP を使用する場合、次のように指定する。 {dhcp protocol_ipv6=yes_or_no} |
network_interface=primary {dhcp protocol_ipv6=yes} |
||
DHCP を使用しない場合、次のように指定する。 {hostname=host_name ip_address=ip_address netmask=netmask protocol_ipv6=yes_or_no} |
network_interface=le0 {hostname=feron ip_address=129.222.2.1 netmask=255.255.0.0 protocol_ipv6=no} 注 - network_interface は、1 つの値だけを選択します。必要に応じて、hostname、ip_address、netmask キーワードのどれかを組み合わせて設定するか、あるいはどれも設定しません。どのキーワードも使用しない場合、中括弧 { } は省略します。 注 - DHCP を使用しない場合、protocol_ipv6 は省略可能です。指定する必要はありません。 |
||
root パスワード |
SPARC/IA |
root_password=root_password |
/etc/shadow にある暗号化された文字列 |
セキュリティポリシー |
SPARC/IA |
security_policy=kerberos, NONE Kerberos 用オプション {default_realm=FQDN admin_server=FQDN kdc=FQDN1, FQDN2, FQDN3} FQDN は完全修飾ドメイン名です。 注 - 最大 3 つの鍵発行センターをリストできます。少なくとも 1 つは必須です。 |
security_policy=kerberos {default_realm=Yoursite.COM admin_server=krbadmin.Yoursite.COM kdc=kdc1.Yoursite.COM, kdc2.Yoursite.COM} |
インストールプログラムとデスクトップで表示する言語 |
SPARC/IA |
system_locale=locale |
有効なロケール値が、/usr/lib/locale ディレクトリまたは付録 B 「言語とロケールの値」 にある。 |
端末タイプ |
SPARC/IA |
terminal=terminal_type |
有効な端末値が /usr/share/lib/terminfo ディレクトリのサブディレクトリにある。 |
時間帯 |
SPARC/IA |
timezone=timezone |
有効な時間帯値が /usr/share/lib/zoneinfo ディレクトリのサブディレクトリとファイルにある。時間帯値は /usr/share/lib/zoneinfo ディレクトリからの相対パス名です。たとえば、日本の時間帯値は Japan です。 |
日付と時刻 |
SPARC/IA |
timeserver=localhost, hostname, ip_addr |
localhost を指定した場合は、そのシステムの時刻が正しいものと見なされます。あるシステムの hostname または ip_addr を指定した場合 (ネームサービスを実行していない場合) は、そのシステムの時刻を使って時刻が設定されます。 |
モニタータイプ |
x86 |
monitor=monitor_type |
kdmconfig -d filename を実行すると、その出力が sysidcfg ファイルに追加されます。 |
キーボード言語、キーボード配置 |
x86 |
keyboard=keyboard_language {layout=value} |
kdmconfig -d filename を実行すると、その出力が sysidcfg ファイルに追加されます。 |
グラフィックスカード、カラー深度、表示解像度、画面サイズ |
IA |
display=graphics_card {size=screen_size depth=color_depth resolution=screen_resolution} |
kdmconfig -d filename を実行すると、その出力が sysidcfg ファイルに追加されます。 |
ポインティングデバイス、ボタン数、IRQ レベル |
IA |
pointer=pointing_device {nbuttons=number_buttons irq=value} |
kdmconfig -d filename を実行すると、その出力が sysidcfg ファイルに追加されます。 |
一連の SPARC 搭載システムのための sysidcfg ファイルの例を次に示します。(これらのシステムのホスト名、IP アドレス、およびネットマスクは、ネームサービスを編集することにより、すでに事前設定されています。) このファイルにはすべてのシステム構成情報が事前設定されているので、カスタム JumpStart プロファイルを使ってカスタム JumpStart インストールが実行できます。
system_locale=en_US timezone=US/Central terminal=sun-cmd timeserver=localhost name_service=NIS {domain_name=marquee.central.sun.com name_server=connor(129.152.112.3)} root_password=m4QPOWNY |
一連の IA 搭載システムで、キーボード、グラフィックスカード、ポインティングデバイスがすべて同じ場合の sysidcfg ファイルの例を次に示します。これらのデバイス情報 (keyboard、display、および pointer) は、kdmconfig(1M) -d コマンドを実行して取得したものです。この例では、Solaris インストールプログラムで使用される言語 (system_locale) を選択するプロンプトがインストール前に表示されます。
keyboard=ATKBD {layout=US-English} display=ati {size=15-inch} pointer=MS-S timezone=US/Central timeserver=connor terminal=ibm-pc name_service=NIS {domain_name=marquee.central.sun.com name_server=connor(129.152.112.3)} root_password=URFUni9 |
エディタを使って新しいファイルを開き、ファイル名を sysidcfg とします。
複数の sysidcfg ファイルを作成する場合は、それぞれのファイルを別のディレクトリまたはフロッピーディスクに格納しなければなりません。
事前設定したいシステム構成情報の sysidcfg キーワードを入力します。
sysidcfg ファイルを保存します。
次のディレクトリから sysidcfg ファイルがクライアントに対して使用できるようにします。
共用 NFS ネットワークディレクトリ (add_install_client(1M) コマンドの -p オプションで指定するパス名)
SPARC 搭載システムでは、ネームサービス (NIS または NIS+) を編集してシステム構成情報を事前設定します。
次の表は、実行すべき処置の概要を示しています。
設定項目 |
編集または生成する必要があるネームサービスデータベース |
---|---|
ホスト名と IP アドレス |
hosts |
日付と時刻 |
hosts (インストール対象のシステムに日付と時刻を提供するシステムのホスト名で timehost というホストの別名を持つマシンを使用) |
時間帯 |
timezone |
ネットマスク |
netmasks |
システムのロケールを事前設定する手順は、ネームサービスごとに異なります。「NIS を使ってロケールを事前設定する方法」を参照してください。
エントリの後に、以下を追加します。
locale.time: $(DIR)/locale -@if [ -f $(DIR)/locale ]; then ¥ sed -e "/^#/d" -e s/#.*$$// $(DIR)/locale ¥ | awk '{for (i = 2; i<=NF; i++) print $$i, $$0}' ¥ | $(MAKEDBM) - $(YPDBDIR)/$(DOM)/locale.byname; ¥ touch locale.time; ¥ echo "updated locale"; ¥ if [ ! $(NOPUSH) ]; then ¥ $(YPPUSH) locale.byname; ¥ echo "pushed locale"; ¥ else ¥ : ; ¥ fi ¥ else ¥ echo "couldn't find $(DIR)/locale"; ¥ fi |
文字列 all: を検索し、変数リストの最後に locale という語を挿入します。
all: passwd group hosts ethers networks rpc services protocols ¥ netgroup bootparams aliases publickey netid netmasks c2secure ¥ timezone auto.master auto.home locale |
文字列 locale: locale.time をファイルの後方にある同じようなエントリの最後に追加します。
passwd: passwd.time group: group.time hosts: hosts.time ethers: ethers.time networks: networks.time rpc: rpc.time services: services.time protocols: protocols.time netgroup: netgroup.time bootparams: bootparams.time aliases: aliases.time publickey: publickey.time netid: netid.time passwd.adjunct: passwd.adjunct.time group.adjunct: group.adjunct.time netmasks: netmasks.time timezone: timezone.time auto.master: auto.master.time auto.home: auto.home.time locale: locale.time |
/etc/locale というファイルを作成し、ドメインまたは特定のシステムに対して1つのエントリを作成します。
locale domain_name |
または
locale system_name |
付録 B 「言語とロケールの値」 に、有効なロケールのリストを示します。
たとえば次の行は、worknet.com ドメインに対してデフォルト言語として日本語を指定しています。
ja worknet.com |
たとえば次の行は、sherlock というシステムに対してデフォルトロケールとして日本語を指定しています。
ja sherlock |
ロケールは、Solaris 8 SOFTWARE 1 of 2 CD (SPARC) または Solaris 8 SOFTWARE 1 of 2 CD (Intel) に入っています。
# cd /var/yp; make |
これでドメインまたは locale マップで個別に指定したシステムは、デフォルトのロケールを使用するように設定されました。ここで指定したデフォルトのロケールは、インストール時に使用されるとともに、システムのリブート後のデスクトップでも使用されます。
この手順は、NIS+ ドメインが設定されていると仮定しています。NIS+ ドメインの設定方法は、『Solaris ネーミングの管理』で説明しています。
ネームサーバーに、スーパーユーザーまたは NIS+ admin グループのユーザーとしてログインします。
# nistbladm -D access=og=rmcd,nw=r -c locale_tbl name=SI,nogw= locale=, nogw= comment=,nogw= locale.org_dir.`nisdefaults -d` |
locale テーブルが作成されます。
次の nistbladm コマンドを入力して locale テーブルにエントリを追加します。
# nistbladm -a name=domain_name locale=locale comment=comment locale.org_dir.`nisdefaults -d` |
domain_name |
ドメイン名または特定のシステム名。これはデフォルトロケールを事前設定する対象となる |
locale |
システムにインストールし、システムのリブート後にデスクトップ表示で使用するロケール。使用できるロケール値のリストについては、付録 B 「言語とロケールの値」 を参照 |
comment |
コメントフィールド。複数の単語を使ったコメントは、前後を二重引用符で囲むこと |
ロケールは、Solaris 8 SOFTWARE 1 of 2 CD (SPARC) または Solaris 8 SOFTWARE 1 of 2 CD (Intel) に入っています。
これでドメインまたは locale テーブルで個別に指定したシステムは、デフォルトはロケールを使用するように設定されました。ここで指定したデフォルトのロケールは、インストール時に使用されるとともに、システムのリブート後のデスクトップでも使用されます。
Solaris の電源管理ソフトウェアを使用すると、システムが 30 分間アイドル状態になると自動的にシステム状態を保存し電源を切ることができます。sun4u SPARC システム (および EPA の省電力 (Energy Star) ガイドラインのバージョン 2 に準拠したすべてのシステム) に Solaris ソフトウェアをインストールするときは、デフォルトで電源管理ソフトウェアもインストールされ、インストール後のリブート時に、この電源管理ソフトウェアを有効または無効にするかを尋ねられます。
対話式インストールを実行している場合は、電源管理情報を事前設定してプロンプトを回避する方法はありません。カスタム JumpStart インストールでは、finish スクリプトを使ってシステムに /autoshutdown または /noautoshutdown ファイルを作成することで、電源管理情報を事前設定できます。システムのリブート時に、/autoshutdown は電源管理ソフトウェアを有効にし、/noautoshutdown ファイルは電源管理ソフトウェアを無効にします。
たとえば、finish スクリプトに次の行を入れておくと電源管理ソフトウェアが有効になり、システムリブート後のプロンプトを回避できます。
touch /a/autoshutdown |
finish スクリプトの詳細は、「finish スクリプトの作成」を参照してください。