この章では、Admintool を使用して端末とモデムを設定する手順を示します。この章で説明する手順は次のとおりです。
端末とモデムの概要については、第 12 章「端末とモデム管理の概要」を参照してください。
シリアルポート情報を設定するときは、Admintool を起動して、「ブラウズ (Browse)」メニューから「シリアルポート (Serial Ports)」を選択します。「Admintool : シリアルポート (Serial Ports)」ウィンドウからシリアルポートを選択して、次に「編集 (Edit)」メニューから「変更 (Modify)」を選択すると、「Admintool : シリアルポートの設定 (Modify Serial Port)」ウィンドウが表示されます。また、このウィンドウには、「基本 (Basic)」、「中級 (More)」、「上級 (Expert)」という 3 つの認定レベルで、ポートに関する情報が表示されます。
「Admintool : シリアルポートの設定 (Modify Serial Ports)」ウィンドウは「基本 (Basic)」モードで表示されます。「中級 (More)」や「上級 (Expert)」レベルを表示するには、「認定レベル (Detail)」メニューから「中級 (More)」または「上級 (Expert)」オプションを選択してください。
表 13-1 で「Admintool : シリアルポートの設定 (Modify Serial Ports)」ウィンドウの各項目を説明します。
表 13-1 「Admintool : シリアルポートの設定 (Modify Serial Ports)」ウィンドウの項目
認定レベル |
項目 |
説明 |
---|---|---|
基本 (Basic) |
ポート (Port) |
シリアルポートのメインウィンドウから選択した 1 つ以上のポートのリストを表示する |
|
サービスの利用 (Service Enable) |
ポートに対するサービスをオン (有効) にする |
|
ボーレート (Baud Rate) |
端末と通信する回線速度を指定する。回線速度は /etc/ttydefs ファイル内のエントリで指定される |
|
端末タイプ (Terminal Type) |
ansi や vt100 などのように端末タイプの省略形を指定する。省略名については /etc/termcap を参照。この値は $TERM 環境変数に設定される |
中級 (More) |
オプション: 初期化操作のみ (Option: Initialize Only) |
ポートソフトウェアが初期化されるが、構成されないように指定する |
|
オプション: 発着信両用 (Option : Bidirectional) |
ポート回線が発着信両用に使用されるように指定する |
|
オプション: ソフトウェアキャリア (Option: Software Carrier) |
ソフトウェアのキャリア検出機能が使用されるように指定する。このオプションをチェック (選択) しないと、「ハードウェア」のキャリア検出機能が使用される |
|
ログインプロンプト (Login Prompt) |
接続が確立後に、ユーザー向けにプロンプトを表示する |
|
備考欄 (Comment) |
サービス用のコメントフィールドを表示する |
|
サービスタグ (Service Tag) |
このポートに対応するサービスタグを表示する。このタグは通常 /dev/term ディレクトリ内のエントリである |
|
ポートモニタータグ (Port Monitor Tag) |
このポートに使用されるポートモニター名を指定する。 注: 通常、モニターはデフォルトで正しく設定される |
上級 (Expert) |
utmpx エントリの作成 (Create utmp Entry) |
ログイン時にアカウンティングファイルに utmpx エントリが作成されるように指定する。 注: ログインサービスを使用する場合は、この項目を選択しなければならない。「サービス」の項目を参照 |
|
キャリア検出時に接続 (Connect on Carrier) |
接続指示を受け取るとすぐにポート対応するサービスが起動されるように指定する |
|
サービス (Service) |
接続時に実行されるプログラムを表示する |
|
ストリームモジュール (Streams Modules) |
サービスが起動される前にプッシュされる STREAMS モジュールを表示する |
|
タイムアウト (秒) |
ポートのオープンプロセスが正常に終了しているが入力データが受信されない場合に、ポートを閉じるまでの秒数を指定する |
表 13-2 にシリアルポートを使用して端末を設定する際のメニュー項目 (およびそれらのデフォルト値) を示します。
表 13-2 端末 - ハード接続のデフォルト値
認定レベル |
項目 |
デフォルト値 |
---|---|---|
基本 (Basic) |
ポート (Port) |
- |
|
サービスの利用 (Service Enable) |
有効 |
|
ボーレート (Baud Rate) |
9600 |
|
端末タイプ (Terminal Type) |
- |
中級 (More) |
オプション: 初期化操作のみ (Option: Initialize Only) |
なし |
|
オプション: 発着信両用 (Option: Bidirectional) |
なし |
|
オプション: ソフトウェアキャリア (Option : Software Carrier) |
あり |
|
ログインプロンプト (Login Prompt) |
login: |
|
備考欄 (Comment) |
端末 - ハード接続 |
|
サービスタグ (Service Tag) |
- |
|
ポートモニタータグ (Port Monitor Tag) |
zsmon |
上級 (Expert) |
utmpx エントリの作成 (Create utmp Entry) |
あり |
|
キャリア検出時に接続 (Connect on Carrier) |
なし |
|
サービス (Service) |
/usr/bin/login |
|
ストリームモジュール (Streams Modules) |
ldterm, ttcompat |
|
タイムアウト (秒) (Timeout) (secs) |
なし |
表 13-3 に、Solstice シリアルポートでモデムを設定する際に使用できる 3 つのモデム用テンプレートを示します。
表 13-3 モデム用テンプレート
モデム構成 |
説明 |
---|---|
モデム - 着信専用 |
モデムに着信はできるが、発信はできない。 |
モデム - 発信専用 |
モデムから発信はできるが、着信はできない。 |
モデム - 発着信両用 |
モデムへ着信も、モデムから発信もできる。 |
表 13-4 に各テンプレートのデフォルト値を示します。
表 13-4 モデム用テンプレートのデフォルト値
認定レベル |
項目 |
モデム - 着信専用 |
モデム - 発信専用 |
モデム - 発着信両用 |
---|---|---|---|---|
基本 (Basic) |
ポート (Port) |
- |
- |
- |
|
サービスの利用 (Service Enable) |
有効 |
有効 |
有効 |
|
ボーレート (Baud Rate) |
9600 |
9600 |
9600 |
|
端末タイプ (Terminal Type) |
- |
- |
- |
中級 (More) |
オプション: 初期化操作のみ |
あり |
なし |
なし |
|
オプション: 発着信両用 |
なし |
なし |
あり |
|
オプション: ソフトウェアキャリア (Option: Software Carrier) |
なし |
なし |
なし |
|
ログインプロンプト (Login Prompt) |
login: |
login: |
login: |
|
備考欄 (Comment) |
モデム - 着信専用 |
モデム - 発信専用 |
モデム - 発着信両用 |
|
サービスタグ (Service Tag) |
- |
- |
- |
|
ポートモニタータグ |
zsmon |
zsmon |
zsmon |
上級 (Expert) |
utmpx エントリの作成 (Create utmp Entry) |
あり |
あり |
あり |
|
キャリア検出時に接続 (Connect on Carrier) |
なし |
なし |
なし |
|
サービス (Service) |
/usr/bin/login |
/usr/bin/login |
/usr/sbin/login |
|
ストリームモジュール (Streams Modules) |
ldterm, ttcompat |
ldterm, ttcompat |
ldterm, ttcompat |
|
タイムアウト (秒) (Timeout) (secs) |
なし |
なし |
なし |
表 13-5 では、「初期化操作のみ」テンプレートの各デフォルト値を示します。
表 13-5 「初期化操作のみ (Initialize Only)」のデフォルト値
認定レベル |
項目 |
説明 |
---|---|---|
基本 (Basic) |
ポート (Port) |
- |
|
サービスの利用 (Service Enable) |
有効 |
|
ボーレート (Baud Rate) |
9600 |
|
端末タイプ (Terminal Type) |
- |
中級 (More) |
オプション: 初期化操作のみ (Option: Initialize Only) |
あり |
|
オプション: 発着信両用 (Option: Bidirectional) |
なし |
|
オプション: ソフトウェアキャリア (Option: Software Carrier) |
なし |
|
ログインプロンプト (Login Prompt) |
login: |
|
備考欄 (Comment) |
初期化操作のみ - 接続なし |
|
サービスタグ (Service Tag) |
- |
|
ポートモニタータグ (Port Monitor Tag) |
zsmon |
上級 (Expert) |
utmpx エントリの作成 (Create utmp Entry) |
あり |
|
キャリア検出時に接続 (Connect on Carrier) |
なし |
|
サービス (Service) | /usr/bin/login |
|
ストリームモジュール (Streams Modules) |
ldterm,ttcompat |
|
タイムアウト (秒) (Timeout) (secs) |
なし |
Admintool を使用するには次の条件が必要です。
ビットマップディスプレイモニターがある。Admintool ソフトウェアは、Sun のワークステーションの標準ディスプレイモニターなど、ビットマップ画面のコンソールを使用するシステムでだけ使用できます。
CDE 環境などの X Window System を実行している。
sysadmin グループ (グループ 14) のメンバーになっている。
コンソールとして ASCII 端末を使用するシステムで管理作業を行いたい場合は、Solaris のコマンドを使用してください。
Admintool を起動します。
$ admintool & |
「Admintool : ユーザー (Users)」のメインウィンドウが表示されます。
Admintool を起動します。
詳細は、「Admintool を起動する方法」を参照してください。
「ブラウズ (Browse)」メニューから「シリアルポート (Serial Ports)」を選択します。
「Admintool : シリアルポート (Serial Ports)」ウィンドウが表示されます。
端末に使用するポートを 1 つまたは複数選択します。
「編集 (Edit)」メニューから「変更 (Modify)」を選択します。
「Admintool : シリアルポートの設定 (Modify Serial Ports)」ウィンドウが「基本 (Basic)」モードで表示されます。より詳細なレベルにするには、「中級 (More)」または「上級 (Expert)」モードを選択してください。
「テンプレート (Template)」メニューから「端末 - ハード接続 (Terminal-Hardwired)」を選択します。
「端末 - ハード接続 (Terminal-Hardwired)」メニューの項目については、表 13-2 の説明を参照してください。
必要な場合は、テンプレートエントリの値を変更します。
「了解 (OK)」をクリックしてポートを設定します。
次のように pmadm コマンドを使用して、端末サービスが設定されていることを確認します。
$ pmadm -l -s ttya |
Admintool を起動します。
詳細は、「Admintool を起動する方法」を参照してください。
「ブラウズ (Browse)」メニューから「シリアルポート (Serial Ports)」を選択します。
「Admintool : シリアルポート (Serial Ports)」ウィンドウが表示されます。
モデムに使用するポートを 1 つまたは複数選択します。
「編集 (Edit)」メニューから「変更 (Modify)」を選択します。
「Admintool : シリアルポートの設定 (Modify Serial Ports)」ウィンドウが「基本 (Basic)」モードで表示されます。より詳細なレベルにするには、「中級 (More)」または「上級 (Expert)」モードを選択してください。
「テンプレート (Template)」メニューから、目的のモデムサービスに合う、または最もよく一致するモデム設定テンプレートを選択します。
各テンプレートについては、表 13-3 の説明を参照してください。
各テンプレートのデフォルト値については、表 13-4 を参照してください。UUCP サービスを使用して Solaris システムのモデムを着信専用にする場合は、「モデムを UUCP 用に設定する方法」を参照してください。
必要な場合は、テンプレートエントリの値を変更します。
「了解 (OK)」をクリックしてポートを設定します。
次のように pmadm コマンドを使用して、UUCP 用のモデムサービスが構成されていることを確認します。
$ pmadm -l -s ttyb |
UUCP は、7 ビット、偶数パリティを使用してサービスに情報を送ります。Solaris のモデム設定では、国際化対応の目的から、8 ビット、パリティなしが使用されます。次の手順でモデムサービスを UUCP 用に設定してください。
Admintool を起動します。
詳細は、「Admintool を起動する方法」を参照してください。
「ブラウズ (Browse)」メニューから「シリアルポート (Serial Ports)」を選択します。
「Admintool : シリアルポート (Serial Ports)」ウィンドウが表示されます。
モデムに使用するポートを 1 つまたは複数選択します。
「編集 (Edit)」メニューから「変更 (Modify)」を選択します。
「Admintool : シリアルポートの設定 (Modify Serial Ports)」ウィンドウが「基本 (Basic)」モードで表示されます。より詳細なレベルにするには、「中級 (More)」または「上級 (Expert)」モードを選択してください。
「ボーレート (Baud Rate)」メニューから「その他 ... (Other)」を選択します。
/etc/ttydefs ファイルにあるボーレートリストを示すウィンドウが表示されます。
7 ビット、偶数パリティのサービスを提供するボーレートを入力します。「了解 (OK)」をクリックします。
必要な場合は、他のテンプレートエントリの値を変更します。
「了解 (OK)」をクリックしてポートを設定します。
次のように pmadm コマンドを使用して、UUCP 用のモデムサービスが構成されていることを確認します。
$ pmadm -l -s ttya |
次の例では、9600E ボーレートが選択されています。これで、9600 ボーレート、7 ビット、偶数パリティのサービスが提供されます。
Admintool を起動します。
詳細は、「Admintool を起動する方法」を参照してください。
「ブラウズ (Browse)」メニューから「シリアルポート (Serial Ports)」を選択します。
「Admintool : シリアルポートの設定 (Modify Serial Ports)」ウィンドウが表示されます。
初期化したいポートを 1 つまたは複数選択します。
「編集 (Edit)」メニューから「変更 (Modify)」を選択します。
「Admintool : シリアルポートの設定 (Modify Serial Ports)」ウィンドウが「基本 (Basic)」モードで表示されます。より詳細なレベルにするには、「中級 (More)」または「上級 (Expert)」モードを選択してください。
「テンプレート (Template)」メニューから「初期化操作のみ - 接続なし (Initialize Only - No Connection)」を選択します。
「初期化操作のみ - 接続なし (Initialize Only - No Connection)」テンプレートについては、表 13-5 の説明を参照してください。
「了解 (OK)」をクリックしてポートを初期化します。
次のように pmadm コマンドを使用して、ポートが初期化されていることを確認します。
$ pmadm -l -s ttyb |
Admintool を起動します。
詳細は、「Admintool を起動する方法」を参照してください。
「ブラウズ (Browse)」メニューから「シリアルポート (Serial Ports)」を選択します。
「Admintool : シリアルポート (Serial Ports)」ウィンドウが表示されます。
使用不可にしたいポートを 1 つまたは複数選択します。
「編集 (Edit)」メニューから「変更 (Modify)」を選択します。
「サービスの利用 (Service Enable)」ボタンをクリックして、「Admintool : シリアルポートの設定 (Modify Serial Ports)」ウィンドウ上のポートサービスを使用不可にします。
このボタンは、ポートサービスを使用可能と使用不可とに切り替えます。
「了解 (OK)」をクリックしてポートを使用不可にします。
次のように pmadm コマンドを使用して、ポートサービスが使用不可にされていることを確認します。
$ pmadm -l -s ttya |
Admintool を起動します。
詳細は、「Admintool を起動する方法」を参照してください。
削除したいサービスを提供するポートを 1 つまたは複数選択します。
「編集 (Edit)」メニューから「削除 (Delete)」を選択します。
指定したポートのサービスを本当に削除したいかどうかの確認を求められます。削除操作は取り消すことも、そのまま実行することもできます。
次のように pmadm コマンドを使用して、ポートサービスが削除されていることを確認します。
$ pmadm -l -s ttya |
端末またはモデムを追加し、適切なサービスを設定したにもかかわらず、シリアルポート回線を通してログインできない場合は、次のような順序で問題を解決してください。
ユーザーを確認します。
端末やモデムが正しく動作しないという報告は、多くの場合、ログインや着信ができなかったユーザーから寄せられます。したがって、まず、デスクトップに問題がないかどうかを確認することから始めてください。
ログインできない主な原因は、次のとおりです。
ログイン ID またはパスワードが正しくない
端末が X-ON フロー制御キー (Control-q) の入力を待っている
シリアルケーブルの接続が緩んでいるか外れている
端末の設定が正しくない
端末の電源が切られたか、端末に電源が入っていない
端末の設定を確認します。
次に、端末またはモデムの設定を調べます。端末またはモデムとの通信の正しい tty 名を調べ、それぞれの設定が tty 名の設定と一致することを確認します。
端末サーバーの設定を確認します。
端末に問題のないことがわかったら、端末またはモデムのサーバーに問題がないかどうかを調べます。pmadm コマンドを使用して、ポートモニターが端末またはモデムをサービスするように設定されていて、関連する tty 名が正しいことを確認します。
$ pmadm -l -t ttymon |
/etc/ttydefs を調べ、ラベル定義を端末設定と照合してチェックします。sacadm を使用してポートモニターの状態を調べます。pmadm を使用して、端末が使用するポートのサービスを調べます。
シリアル接続を確認します。
サービスアクセスコントローラが TTY ポートモニターを起動し、pmadm が端末のポートに対するサービスが有効になっていると報告し、さらに端末の設定がポートモニターの設定と一致する場合は、シリアル接続を調べて問題の原因を探します。シリアル接続は、シリアルポート、ケーブル、端末から構成されています。これらの構成部分のうち 2 つを、信頼性が確認されている他のものに取り替えて、1 箇所ずつテストしてください。
次の構成部分をすべてテストします。
シリアルポート
モデム
ケーブル
コネクタ
シリアルポートをコンソールとして使用している場合は、Admintool からシリアルポートの設定を変更しないでください。コンソール設定を正しく変更するには、/etc/inittab ファイルの次の行を変更してください。
co:234:respawn:/usr/lib/saf/ttymon -g -h -p "`uname -n` console login: " -T terminal_type -d /dev/console -l console -m ldterm,ttcompat |
IA 搭載のシステムにモデムを接続する場合は、『Solaris 8 ハードウェア互換リスト (Intel 版)』を見て、モデムがサポートされているか確認します。