Solaris のシステム管理 (第 2 巻)

ASET のタスク

この節では、ASET のタスクについて説明します。レポートを解釈して活用するには、各 ASET のタスク、つまり、その目的、実行される処理、および影響を受けるシステム構成要素を理解しておく必要があります。

ASET のレポートファイルには、各 ASET タスクで検出された問題をできるだけ詳細に記述するメッセージが入っています。これらのメッセージを調べると、問題を診断して解決できます。ただし、ASET を活用するには、システム管理とシステム構成要素を全般的に理解していることが前提となります。管理者になったばかりの方は、他の SunOS 5.8 システム管理マニュアルと関連するマニュアルページを参照して、ASET の管理の概要を把握してください。

taskstat ユーティリティは、完了したタスクとまだ実行中のタスクを識別します。完了したタスクごとにレポートファイルが生成されます。taskstat ユーティリティの詳細は、taskstat(1M) のマニュアルページを参照してください。

システムファイルのアクセス権の確認

このタスクでは、システムファイルのアクセス権が指定したセキュリティレベルに設定されます。このタスクは、システムをインストールするときに実行されます。以前に設定したレベルを後から変更したい場合は、このタスクをもう一度実行してください。低セキュリティレベルでは、アクセス権は開放型の情報共有環境に適した値に設定されています。中セキュリティレベルでは、アクセス権はほとんどの環境に十分なセキュリティが適用される程度に厳格です。高セキュリティレベルでは、アクセスが厳しく制限されます。

このタスクによってシステムファイルのアクセス権やパラメタの設定に加えられた変更は、tune.rpt ファイル内でレポートされます。アクセス権を設定するときに ASET が参照するファイルの例については、「調整ファイル」を参照してください。

システムファイルのチェック

このタスクでは、システムファイルが検査され、マスターファイル内にリストされたファイルの記述と比較されます。マスターファイルは、ASET がこのタスクを実行すると初めて作成されます。マスターファイルには、指定したセキュリティレベル checklist によって適用されるシステムファイル設定が入っています。

ファイルがチェックされるディレクトリのリストは、セキュリティレベルごとに定義されます。デフォルトのリストを使用するか、レベルごとに異なるディレクトリを指定して変更できます。

ファイルごとに次の基準がチェックされます。

矛盾が見つかると、cklist.rpt ファイル内でレポートされます。このファイルには、システムファイルのサイズ、アクセス権、チェックサムの値、およびマスターファイルと比較した結果が入っています。

ユーザーとグループのチェック

このタスクでは、passwd ファイルと group ファイル内で定義されているユーザーアカウントとグループの整合性と完全性がチェックされます。ローカルパスワードファイルと、NIS または NIS+ パスワードファイルがチェックされます。NIS+ パスワードファイルの問題はレポートされますが、解決されません。このタスクでは、次の違反がチェックされます。

矛盾は usrgrp.rpt ファイル内でレポートされます。

システム構成ファイルのチェック

このタスクの実行中に、ASET は各種システムテーブルをチェックしますが、そのほとんどは /etc ディレクトリに入っています。次のファイルがチェックされます。

ASET は、これらのファイルに関して各種のチェックと変更を実行し、すべての問題を sysconf.rpt ファイル内でレポートします。

環境のチェック

このタスクでは、root 用とその他ユーザー用の PATH 環境変数と UMASK 環境変数が /.profile/.login/.cshrc ファイル内でどのように設定されているかがチェックされます。

環境のセキュリティ状況をチェックした結果は、env.rpt ファイル内でレポートされます。

eeprom のチェック

このタスクでは、eeprom セキュリティパラメタの値がチェックされ、適切なセキュリティレベルに設定されているかどうかが確認されます。eeprom セキュリティパラメタは、nonecommand、または full に設定できます。

ASET はこの設定を変更しませんが、推奨値を eeprom.rpt ファイル内でレポートします。

ファイアウォールの設定

このタスクでは、システムをネットワークリレーとして安全に使用できることが保証されます。「ファイアウォールシステム」で説明したように、ファイアウォール専用システムが設定され、内部ネットワークが外部の公共ネットワークから保護されます。ファイアウォールシステムは、相互に信頼されない (untrusted) システムとしてアクセスし合う 2 つのネットワークを分離します。ハードウェアの設定作業によって、インターネットプロトコル (IP) パケットを転送できなくなり、ルーティング情報は外部ネットワークから隠されます。

ファイアウォールのタスクはすべてのセキュリティレベルで実行されますが、ファイアウォールとしての本来の機能は最上位レベルでのみ動作します。ASET を高セキュリティレベルで実行したいが、システムにはファイアウォール保護が不要であることがわかった場合は、asetenv ファイルを編集してファイアウォールタスクを除去できます。

行われた変更はすべて firewall.rpt ファイル内にレポートされます。