Solaris のシステム管理 (第 3 巻)

IP アドレス管理のための決定事項

この節では、DHCP で管理される IP アドレスを設定する際に必要となる決定事項について説明します。トピックは DHCP Manager のアドレスウィザードのダイアログと並行して進行しますが、この節に示す情報は dhcpconfig ユーティリティを使用して決定を行う場合にも有用です。

DHCP サービスの設定の一環として、サーバーにおける IP アドレスの扱い方を決定します。ネットワークに複数の DHCP サーバーが必要な場合、アドレス管理の分担方法を決定し、各サーバーにそれぞれの役割を割り当てるようにします。サーバーの設定を開始する前に、次の事項について決定します。

IP アドレスの数と範囲

DHCP Manager を使用すると、サーバーの初期設定時に、総アドレス数とブロックの開始アドレスを指定することにより、そのブロック分の IP アドレス、またはその範囲内の IP アドレスを DHCP の管理下に追加することができます。DHCP Manager はこの情報から連続するアドレスのリストを作成します。アドレスが連続していない複数のブロックがある場合は、初期設定の後で DHCP Manager のアドレスウィザードを再起動して、他のアドレスを追加することができます。

IP アドレスの設定を行う前に、追加したい初期アドレスブロックにアドレスがいくつあるか、またその範囲内の開始アドレスの IP アドレスを把握しておきます。

クライアントホスト名の生成

DHCP 本来の動的な特性により、IP アドレスはそれを使用するシステムのホスト名に恒久的に関連付けられる訳ではありません。Solaris DHCP サーバーは、オプションが指定されている場合には、各 IP アドレスに関連付けられたクライアント名を生成することができます。生成されたクライアント名は、/etc/hosts または NIS/NIS+ ホストテーブル内の IP アドレスに対応付けられます。クライアント名は、プレフィックス、つまりルート名、それに加え、サーバーによって割り当てられたダッシュと数字を使用します。たとえば、ルート名が charlie の場合、クライアント名は charlie-1charlie-2charlie-3 ... のようになります。

デフォルトでは、生成されたクライアント名は、それを管理する DHCP サーバーの名前で始まります。これは、複数の DHCP サーバーが存在する環境で便利です。ある特定の DHCP サーバーが管理するクライアントを DHCP ネットワークテーブルで簡単に見つけることができます。ルート名は、ユーザーが選択した名前に変更することもできます。

IP アドレスを設定する前に、サーバーがクライアント名を生成するようにするかどうかを決定し、そのように決定した場合、クライアント名に使用するルート名を決定します。


注 -

クライアント名は DNS ドメインに自動的に追加されないため、クライアント名はユーザーのネームサービス (NIS/NIS+) ドメインの外側では認識されませんが、手動で DNS にロードすることができます。DNSについての詳細は、『Solaris ネーミングの管理』「DNSの管理」と、in.named(1M) のマニュアルページを参照してください。


デフォルトのクライアント設定マクロ

Solaris DHCP で、マクロは複数のネットワーク構成オプションとその設定値の集まりです。マクロは DHCP クライアントに送信するネットワーク構成情報を決定するために使用されます。

DHCP サーバーの初期設定時に、システムファイルから収集された情報とシステム管理者が指定した情報から、次のようないくつかのマクロが生成されます。

ネットワークアドレスマクロは、そのネットワーク上に配置されているすべてのクライアントに対して自動的に処理されます。ロケールマクロはサーバーマクロに含まれるため、サーバーマクロを処理する際に処理されます。

最初のネットワークに対する IP アドレスの設定時に、設定中のアドレスを使用して、すべての DHCP クライアントに対して使用するクライアント設定マクロを選択する必要があります。デフォルトでは、サーバーマクロが選択されます。これは、このサーバーを使用するすべてのクライアントが必要とする情報をサーバーマクロが含んでいるためです。クライアントはネットワークアドレスマクロに含まれるオプションを、サーバーマクロに含まれるオプションの前に受け取ります。マクロ処理の順序についての詳細は、「マクロ処理の順序」を参照してください。

動的および永続的リースタイプ

リースタイプは、リースポリシー (リース期間とネゴシエーション) を設定中のアドレスに対して使用するかどうかを決定します。サーバーの初期設定時に、DHCP Manager は、追加するアドレスについて動的リースまたは永続的リースのいずれかを選択できるようにしています。dhcpconfig ユーティリティでは、動的リースのみが許可されます。

アドレスが動的リースを持つ場合、DHCP サーバーは、そのアドレスをクライアントに割り当て、リース期間を延長し、さらに、そのアドレスが使用されなくなったときは、検出、回収することにより、そのアドレスを管理することができます。アドレスが永続的リースを持つ場合、DHCP サーバーはそのアドレスをクライアントに割り当てるだけで、その後クライアントは明示的にそのアドレスを解放するまでそのアドレスを所有します。アドレスが解放されると、サーバーはそのアドレスを他のクライアントに割り当てることができます。そのアドレスは、永続的リースタイプに設定されている限り、リースポリシーの対象となることはありません。

IP アドレスの範囲を設定した場合、選択したリースタイプはその範囲内のすべてのアドレスに適用されます。DHCP の利点を最大限に活かすためには、ほとんどのアドレスに対して動的リースを使用する必要があります。必要があれば、後で個々のアドレスを永続的リースに変更することもできますが、永続的リースの総数は最小限に抑えるようにします。

予約済みアドレスとリースタイプ

アドレスは、特定のクライアントに手動で割り当てることにより予約することができます。予約されたアドレスは、関連付けられた永続的リースまたは動的リースを持つことができます。予約されたアドレスが永続的リースで割り当てられた場合、そのアドレスは、そのアドレスに結合されているクライアントにのみ割り当てることができ、DHCP サーバーはそのアドレスを他のクライアントには割り当てることはできません。また、DHCP サーバーはそのアドレスを回収することもできません。

予約されたアドレスが動的リースで割り当てられた場合、そのアドレスは、そのアドレスが結合されているクライアントにだけ割り当てることができますが、そのクライアントはリース期間を計測し、そのアドレスが予約されていないものとして、リースの延長についてネゴシエートする必要があります。これにより、ネットワークテーブルを参照することで、そのクライアントがいつそのアドレスを使用しているかを追跡することができます。

初期設定時には、すべての IP アドレスに対して予約済みアドレスを生成することはできません。これは、予約済みアドレスが特定のアドレスに対してのみ使用するためのものだからです。