電子メールサービスの設定と維持管理は複雑な作業であり、ネットワークの日常の運用にとっても不可欠です。ネットワーク管理者は、既存のメールサービスを拡張したり、新規のネットワークやサブネットワークにメールサービスを設定することが必要なこともあります。ネットワークでのメールサービスの計画に役立つように、この章ではメールサービスの概念について説明し、典型的なメール構成の設定に必要な作業を手短かに述べます。
Solaris 8 リリースには sendmail のバージョン 8.9.3 が付属しています。次にこの新しいバージョンに含まれている重要な変更およびユーザーの目につきやすい変更について説明します。
MaxHeadersLength と呼ばれる新しい構成ファイルオプションは、指定されたメッセージのヘッダーラインすべての合計の長さを制限します。デフォルト値は 32,768 バイトです。受信したヘッダー付きメッセージでこの長さを超えるものは無視されます。
/etc/default/sendmail と呼ばれる新しいファイルを使用すると、sendmail を起動する際に使用するオプションを init スクリプトに追加するのではなく、保存することができます。このファイルを使用すると、init スクリプトを変更する必要がなくなるため、システムのグレードアップが容易になります。
mail.local プログラムが拡張されてローカルメール転送プロトコルを使用できるようになりました。このプロトコルにより各受信側のエラーコードを返せるようになります。そのため、メッセージを受け取っていない受信側に対してだけ再送すればよくなり、すべての受信側に対してメッセージを再び待ち行列に入れる必要がなくなりました。Solaris 7 リリースではこのプロトコルが sendmail に追加されていました。
/usr/bin/praliases という新しいコマンドを使用すると、エイリアスデータベース内のデータをテキストデータに変換することができます。コマンド行上で指定された引数がキーと一致した場合、キー : 値が出力されます。
smrsh という新しいプログラムを使用すると、 sendmail の "|program" シンタックスを使用して実行することができるコマンドの個数を制限できます。この機能を有効にすると、/var/adm/sm.bin にあるプログラムのみを実行することができるようになります。主構成ファイルに FEATURE(`smrsh') を加えると、この機能が有効になります (詳しくは /usr/lib/mail/README を参照してください)。
不在返信プログラムに新しいオプションが追加されました。-f を使用すると ‾/.vacation.ext の代わりのデータベースを選択できます。-m を使用すると ‾/.vacation.msg の代わりのメッセージファイルを選択できます。-s を使用すると、受信するメッセージ内の UNIX From 行の代わりに応答アドレスを指定することができます。
mailx プログラムへの変更は、送信側のベースとして、封筒送信側の代りに From: ヘッダーを使用することができるようになりました。この変更により mailx の機能は mailtool および dtmail と同じようになります。
Solaris 版の sendmail については、次のホームページを参照してください。http://www.sendmail.org/sun-specific/migration+sun.html
次に、上記以外の sendmail 関連のホームページを示します。
http://www.sendmail.org - sendmail のホームページ
http://www.sendmail.org/faq - sendmail の FAQ
http://www.sendmail.org/m4/readme.html - 新しい sendmail 構成ファイルの案内
http://www.sendmail.org/sun-specific/migration+sun.html - Solaris 2.6 と Solaris 7 で提供される sendmail の違い
メールサービスを確立するためには、多くのソフトウェアコンポーネントおよびハードウェアコンポーネントが必要になります。次の節ではこれらのコンポーネントとその説明に使用されるいくつかの用語について簡単に説明します。
最初の節では、メール配信システムのソフトウェア部分を説明するのに使用される用語を定義します。その次の節では、メール構成におけるハードウェアシステムの機能について取り上げます。
次の表にメールシステムのソフトウェアコンポーネントを示します。ソフトウェアコンポーネントすべてに関する完全な説明については、「メールサービスソフトウェアの関連用語」を参照してください。
コンポーネント |
説明 |
---|---|
.forward ファイル |
ユーザーのホームディレクトリ内で設定して、メールを自動的にリダイレクトしたり、プログラムに送ったりすることができるファイル |
メールボックス |
メールサーバー上にあり、電子メールメッセージの最終受信先であるファイル |
メールアドレス |
メールメッセージが配信される受信者またはシステムの名称が含まれる |
メールエイリアス |
メールアドレス内で使用されている代替名 |
メールキュー |
メールサーバーによる処理を必要とするメールメッセージの集まり |
ポストマスター |
メールサービスについての問題を報告し質問を出すために使用される、特別のメールエイリアス |
sendmail 構成ファイル |
メールのルーティングに必要なすべての情報の入ったファイル |
メール構成では次の 3 つの要素が必要ですが、これらは同じシステムで組み合わせることも、別のシステムで提供することもできます。
メールホスト - 解釈処理が困難なメールアドレスを扱うように構成されたシステム
少なくとも 1 台のメールサーバー - 1 つまたは複数のメールボックスを保持するように構成されたシステム
メールクライアント - メールサーバーからメールにアクセスするシステム
ユーザーがドメイン外のネットワークと通信をするためには、4 番目の要素であるメールゲートウェイを追加する必要があります。
図 33-1 には、一般的な電子メール構成を示しますが、ここでは基本的な 3 つのメール要素とメールゲートウェイが使用されています。次の節では、各要素について説明します。
各要素については、「メール構成のハードウェア要素」を参照してください。