Solaris のシステム管理 (第 3 巻)

メール別名ファイル

下記の任意のファイルを使用して、別名を管理できます。使用するファイルのタイプは、別名を使用する人と別名を変更する必要がある人によって決まります。別名ファイルのタイプにはそれぞれ固有の形式要件があります。これについては、以下で定義します。

.mailrc の別名

.mailrc ファイルのリストに入っている別名には、ファイルを所有するユーザーだけしかアクセスできません。これにより、ユーザーは自分で制御し、所有者だけが使用できる別名を作成できます。.mailrc ファイルの別名は、次のようになります。


alias aliasname value value value ...

aliasname は、ユーザーがメールの送信時に使用する名前であり、value は有効な電子メールアドレスです。

ユーザーが scott に個人的な別名を作成し、それが名前空間の scott の電子メールアドレスと一致しない場合、そのユーザーが作成したメールに他のユーザーが返信しようとするときに、メールが間違ったユーザーに転送されることになります。これを回避するには、別の別名命名方式を使用する以外にありません。

/etc/mail/aliases

/etc/mail/aliases ファイルで作成したいずれの別名も、その別名の名前とファイルを含んでいるシステムのホスト名を知っているユーザーなら誰でも使用できます。ローカルの /etc/mail/aliases ファイルの配布リストは、以下のようになります。


aliasname: value,value,value...

aliasname は、ユーザーがこの別名にメールを送信するときに使用する名前で、value は有効な電子メールアドレスになります。

ご使用のネットワークがネームサービスを実行していない場合は、各システムの /etc/mail/aliases ファイルにすべてのメールクライアントのエントリを入れておく必要があります。各システムのファイルを編集するか、1 つのシステムのファイルを編集してからそのファイルを他のシステムに個々にコピーします。

/etc/mail/aliases ファイルの別名は、テキスト形式で保存されます。/etc/mail/aliases ファイルを編集するときに、newaliases プログラムを実行してデータベースを再コンパイルし、sendmail プログラムでその別名がバイナリ形式で使用できるようにします。あるいは Administration Tool の Database Manager を使用して、ローカルの /etc ファイルに保存されているメール別名を管理できます。

エイリアスを作ることができるのは、ローカル名、つまり現在のホスト名に対してのみ、またはホスト名は指定できません。たとえば、システム saturn 上にメールボックスを持っているユーザー ignatz に対するエイリアスエントリは、下記エントリを /etc/mail/aliases ファイル内に持っています。


ignatz: ignatz@saturn

各メールサーバー上で管理用アカウントを作ると便利です。このアカウントを作成する場合は、メールサーバー上にメールボックスのルートを割り当て、ルートについての /etc/mail/aliases ファイルにエントリを追加します。たとえば、システム saturn がメールボックスサーバーの場合は、エントリ root: sysadmin@saturn/etc/mail/aliases ファイルに追加します。

通常、このファイルを編集できるのはスーパーユーザーだけです。admintool を使用する場合は、sysadmin グループであるグループ 14 のすべてのユーザーが、ローカルファイルを変更できます。別のオプションとしては、以下のようなエントリが作成できます。


aliasname: :include:/path/aliasfile

aliasname は、ユーザーがメールを送信するときに使用する名前であり、/path/aliasfile は別名リストを含むファイルへの完全なパスになります。別名ファイルには、各行に 1 つの電子メールエントリを入れ、その他の表記は付けないでください。


user1@host1
user2@host2

/etc/mail/aliases に追加のメールファイルを定義して、ログやバックアップコピーの管理もできます。以下のエントリでは、filenamealiasname に送信されるすべてのメールを格納します。


aliasname: /home/backup/filename

また、メールを他のプロセスにルーティングすることもできます。次のように入力すると、メールメッセージのコピーが filename 内に格納され、コピーが出力されます。


aliasname: "|tee -a /home/backup/filename |lp"

NIS 別名マップ

NIS 別名マップに含まれているエントリは、ローカルドメインのすべてのユーザーが利用できます。sendmail プログラムは、ローカルの /etc/mail/aliases ファイルの代わりに NIS 別名マップを使用して、メールアドレスを決定できます。詳細は、nsswitch.conf(4) のマニュアルページを参照してください。

NIS 別名 マップの別名は、以下のようになります。


aliasname: value,value,value...

aliasname は、ユーザーがメールを送信するときに使用する名前であり、value は有効な電子メールアドレスです。

NIS 別名マップには、すべてのメールクライアント用のエントリを含めてください。一般にこれらのエントリを変更できるのは、NIS マスターのスーパーユーザーだけです。このタイプの別名は、頻繁に変更される別名としては適していないかもしれませんが、次の構文例のように、別名が他の別名ファイルを指している場合は便利です。


aliasname: aliasname@host

aliasname はユーザーがメールを送信するときに使用する名前であり、host/etc/mail/alias ファイルを含むサーバー用のホスト名です。

NIS+ mail_aliases テーブル

NIS+ mail_aliases テーブルには名前が含まれていて、それによってローカルドメインにおけるシステムや個人が登録されています。sendmail プログラムは、ローカルの /etc/mail/aliases ファイルの代わりに NIS+ mail_aliases テーブルを使用して、メールアドレスを決定できます。詳細は、aliasadm(1M)nsswitch.conf(4) のマニュアルページを参照してください。

NIS+ mail_aliases テーブルの別名は次のようになります。


alias:			expansion					[options		# "comments"]

表 35-10 に 4 つの列を記載します。

表 35-10 NIS+ mail_aliases テーブルの列

列 

説明 

alias

別名の名前 

expansion

sendmail /etc/mail/aliases ファイルに現れる別名の値または別名のリスト

options

将来の使用のために確保 

comments

個々の別名に関するコメント 

NIS+ mail_aliases テーブルには、すべてのメールクライアントのエントリを含めてください。NIS+ aliases テーブルでは、aliasadm コマンドで、エントリの表示、作成、変更、および削除ができます。あるいは admintool の Database Manager を使用して、NIS+ メール別名を管理できます。

新規の NIS+ 別名テーブルを作成する場合は、エントリを作成する前にテーブルを初期設定する必要があります。テーブルが存在するときは、初期設定は不要です。

aliasadm コマンドを使用するには、別名テーブルを所有する NIS+ グループのメンバーか、テーブルを作成したユーザーでなければなりません。