Solaris ネーミングの設定と構成

第 2 章 NIS+ 入門

この章では、「Network Information Service Plus (NIS+)」の概要を説明します。また NIS+ を設定する前に行うべき作業を列挙し、NIS+ 名前空間の最低要件について確認したうえで、NIS+ の設定方法を 2 通り紹介します。

NIS+ の概要

NIS+ はネットワークネームサービスの一種です。NIS と似ていますが、機能はさらに豊富になっています。NIS の拡張機能というより新しいソフトウェアプログラムであるといえます。

NIS+ は (ワークステーションのアドレス、セキュリティ情報、メール情報、Ethernet インタフェースおよびネットワークサービスに関する情報などの) 情報を 1 ヵ所に格納して、ネットワーク上のすべてのワークステーションからアクセスできるようにします。このように構成されたネットワーク情報を、NIS+「名前空間」と呼びます。

NIS+ 名前空間は UNIX のファイルシステムに似た階層構造になっているため、組織の論理上の階層に合わせて構成できます。名前空間における情報の配置は、物理的な配置とは関係ありません。NIS+ 名前空間は複数のドメインに分割が可能で、それぞれ独立して管理できます。クライアントは、適切なアクセス権を持っていれば自分のドメインだけでなく他のドメインの情報にもアクセスできます。

NIS+ では、NIS+ 名前空間への情報の保存やその情報へのアクセスにクライアントサーバーモデルを使用します。それぞれのドメインは、複数のサーバーによってサポートされます。主となるサーバーを「マスター」サーバー、補助用のサーバーを「複製」サーバーと呼びます。ネットワーク情報は、NIS+ 内部のデータベースにある 16 個の標準 NIS+ テーブルに格納されます。マスターサーバーと複製サーバーの両方で NIS+ サーバーソフトウェアが動作しており、NIS+ テーブルのコピーを維持しています。マスターサーバーの NIS+ データに変更が加えられると、その内容は自動的に複製サーバーに順次反映されます。

NIS+ では高機能のセキュリティシステムによって、名前空間の構造と保存されている情報が保護されます。このシステムは、情報にアクセスしようとしているクライアントが正当なものであるかどうかを認証と承認によって確認します。「認証」では、情報を要求しているのがネットワーク上の正当なユーザーであるかどうかを確認します。「承認」では、ユーザーが情報を所有したり修正したりできるかどうかを確認します。

Solaris のクライアントは、ネームサービススイッチ (/etc/nsswitch.conf ファイル) を使用して、ワークステーションがネットワーク情報を検索する場所を指定します。ネットワーク情報が保存されているのは、ローカルの /etc ディレクトリのファイル、NIS、DNS、NIS+ です。ネームサービススイッチには、情報の種類ごとに異なる情報源を指定することもできます。

NIS+ の詳細は、『Solaris ネーミングの管理』を参照してください。

設定および構成の前に

NIS+ 名前空間を構成する前に、次の作業を行う必要があります。

名前空間がすでに存在する場合の設定

NIS ドメインがすでに存在する場合は、NIS+ 名前空間にも既存のものと同じフラットな構造のドメインを使用できます (階層構造にあとから変更可能)。NIS から NIS+ への移行は、『NIS+ への移行』を読んで、計画や準備に関する重要事項を確認してから行なってください。NIS+ のスクリプトを使用すると、NIS マップのデータを利用して簡単に NIS+ を起動できます。第 4 章「スクリプトを使用した NIS+ の設定」では、NIS+ スクリプトを使用してシステムファイルや NIS マップから NIS+ 名前空間を作成する方法を説明します。

ただし、名前空間がすでに存在している場合、スクリプトをスムーズに実行するため NIS+ への移行用の設定が必要です。詳細は、『NIS+ への移行』を参照してください。

準備に関する主な注意事項は次のとおりです。


注意 - 注意 -

Solaris 2.4 以前では、/var/nis ディレクトリに hostname.dicthostname.log という 2 つのファイルと、サブディレクトリ /var/nis/hostname がありました。Solaris 2.5 の NIS+ では、2 つのファイル名は trans.logdata.dict となり、サブディレクトリ名は /var/nis/data となります。Solaris 2.5 ではこれらのファイルの内容も変更されており、Solaris 2.4 以前との互換性はなくなっています。したがって、これらのファイルやディレクトリを Solaris 2.4 での名前にしてしまうと、Solaris 2.4、2.5 双方の rpc.nisd で機能しなくなります。ディレクトリ名もファイル名も変更しないでください。


2 通りの構成方法

ここでは、NIS+ 名前空間の 2 通りの構成方法を紹介します。


注 -

NIS+ コマンドを使って構成する場合、NIS+ ネームサービスを使う各マシンの /etc ディレクトリに正しい nsswitch.conf ファイルが必ず格納されるようにしてください (第 1 章「ネームサービススイッチの設定」を参照)。この作業は、NIS+ 構成スクリプトを使った場合は自動的に行われます。


NIS+ ディレクトリ、NIS+ ドメイン、NIS+ サーバー、NIS+ 名前空間を削除する方法については、『Solaris ネーミングの管理』を参照してください。