Solaris 移行ガイド

第 12 章 ネットワークサービスの管理

この章では、ネットワーク機能の TCP/IP と UUCP の変更について説明します。

TCP/IP の変更

TCP/IP のユーザインタフェースは既存の Solaris ソフトウェアと実質的には同じですが、NIS+ マップの管理が Admintool を通して処理されます。これは、SunOS リリース 4 と従来の AT&T SVR4 とは異なります。

Admintool によって管理される NIS+ マップには、以下のものが含まれます。

SunOS 5.7 の TCP/IP 機能を設定するに当たっては、『TCP/IP とデータ通信』を参照してください。

また、Solaris 7 ソフトウェアには一般的な traceroute ユーティリティが同梱されています。このユーティリティを使用して、インターネットホストまでの IP パケットの経路を追跡します。traceroute ユーティリティが特に役立つのは、経路の設定や経路指定パスの誤りを判別するときです。

TCP と SACK

TCP 選択肯定応答 (TCP SACK) は、RFC 2018 に記述されたサポートを提供します。これによって、特に衛星リンクまたは大陸間リンクを介して TCP ラージウィンドウ (RFC 1323) を使うアプリケーションで、情報の流れの混雑およびパケット欠落に関連する問題が解決されます。

NFS の変更

Solaris 7 環境では、新しいコマンドとファイルを使用してリソースを共用し、NFS リソースを管理できます。特に、exportfs/etc/exportsshareshareall および /etc/dfs/dfstab に置き換えられています。この新しいコマンドセットは、将来の分散ファイルシステムタイプが使用できるように設計されています。

NFS に関連付けられているデーモンのいくつかは、名前が変更されています。rpc.statdrpc.lockd、および rpc.mountd は現在は、単に statdlockd および mountd と呼ばれています。

SunOS 4 環境とは異なり、Solaris 7 にはクライアント側のブロック I/O デーモン (biod) はありません。これはカーネルスレッドに置き換えられています。また、NFS デーモンである nfsd も、複数のコピーを生成して要求を平行処理しないように変更されています。

このリリースに組み込まれているその他の機能は、次のとおりです。

これらの機能については、『NFS の管理』で説明しています。

PPP

Solaris 7 の PPP は、インターネットプロトコル群に含まれる標準データリンクレベル、ポイントツーポイント・プロトコル (PPP) の非同期方式の実装です。PPP によって、ネットワーク管理者はモデムと電話回線を使用して通信リンクを確立することができます。PPP でのネットワーク展開についての詳細は『TCP/IP とデータ通信』を参照してください。

LDAP

Lightweight Directory Access Protocol (LDAP) は、オープンスタンダードでプラットフォームに依存しない、X.500 非公式モデルに基づくアクセスプロトコルです。このプロトコルは、TCP/IP で実行するように設計されており、単純な文字列エンコード方式を採用しています。LDAP アプリケーションは、クライアント/サーバアプリケーションです。このリリースに含まれるクライアントライブラリを使用すれば、開発者は LDAP アプリケーションを作成し、ユーザーは LDAP 対応アプリケーションを実行することができます。

IIIMP

Solaris 7 ソフトウェアに実装された Internet Intranet Input Method Protocol(IIIMP) によって、Solaris、Java、非 X Windows アプリケーションで提供される入力方式の間にシームレスな相互運用性が実現します。

UUCP

Solaris 7 UNIX-to-UNIX Copy (UUCP) は、SunOS 4 システムで利用できる HoneyDanBer UUCP と似ています。これは、同じ構成ファイル、スクリプト、コマンドを使用します。したがって、SunOS 4 ファイルで行なった変更をこのリリースで復元し、またスクリプトを実行することができます。ただし、Solaris 7 のスプールディレクトリはジョブの処理順序により編成が異なります。ジョブの処理順序は作業負荷を分類し優先順位を決めるメカニズムです。

表 12-1 に、SunOS 4 にはなかった、 Solaris 7 UUCP と対応する新しいファイルおよびコマンドについて説明します。 表 12-2 では、 Solaris 7 UUCP に追加されたログファイルについて説明します。

表 12-1 新しい SunOS 5.7 UUCP ファイルおよびコマンド

コマンドまたはファイル 

機能 

D. データファイル

P. データファイル

これらのデータファイルは、UUCP コマンド行がソースファイルをスプールディレクトリへコピーすることを指定すると作成される。 

データファイルのフォーマットはすべて systmxxxxyyy

systm はリモートシステムの最初の 5 文字。

xxxx は UUCP が割り当てる 4 桁のジョブシーケンス番号。

yyy は、作業ファイル (C.) 用に作成される D.ファイルを区別するためのサブシーケンス番号。

/etc/uucp/Grades

テキストグレード名をシステム名にマップする。 

/etc/uucp/Limits

実行できる並列 UUCP セッションの数を指定する。前のバージョンの MaxuuschedsMaxuuxqts ファイルは削除される。

/etc/uucp/Config

UUCP の調整可能なパラメータを無効にする情報を含む。現在、利用可能なパラメータは Protocol のみ。したがって、システム管理者は通常このファイルを修正する必要はない。

uuglist

uucp(1C)uucp(1C)-g オプションによりシステム上で利用できるサービスグレードを一覧表示する。

Solaris 7 UUCP には、システム管理に影響を与える機能がいくつか追加されています。

このあとの節では、これらの変更によって生じたシステム管理の相違について説明します。

チェックポイントからの再起動

通信リンクの異常により SunOS 4 システム間の UUCP 伝送が中断したとき、通信が再起動されると、伝送はファイルの先頭から再開されます。Solaris 7 UUCP を実行する 2 つのシステムの間の通信では、先頭から始まるのではなく、中断された位置で始まります。これにより、特に不安定な、またはノイズの多い伝送回線でのスループットが改善できます。

システムは、2 つの新しいファイルを使用して送受信されたデータを格納し、ファイルの大きさを比較して伝送をどこで再開するかを判定します。システムは .P ファイルを使用して受信したデータを格納し、.D ファイルを使用して送信されたデータを格納します。これらのファイルは前の UUCP バージョンの TM. ファイルを置き換えるものです。ただし、 1 つのシステムだけが SunOS 5.7 UUCP を実行している場合は、比較は行われず、伝送は先頭から再開します。

ユーザジョブの処理順序

ジョブの処理順序機能によって、管理者はジョブを作業負荷に分割し、大きさ、タイプ、優先順位のどれかが類似する、またはそれらすべてが類似するほかの作業負荷と競合させることができます。これらの要素のどれか 1 つ、または組み合わせて、作業負荷を分類することができます。また、アクセスパーミッションを設定して、ユーザとグループに各グレードの UUCP サービスを獲得させることもできます。

SunOS 4 では、ジョブを依頼するときユーザが処理順序を選択しなければなりません。処理順序は 1 文字で表され、Solaris 7 環境のように名前ではありません。Solaris 7 では、管理者はサイト全体のジョブの処理順序を定義できます。

Limits ファイル

/etc/uucp/Limits ファイルは、システムで許可される並列 uucicouuxqtuusched プロセスの最大数を指定します。前のリリースの Maxuusched パラメータと Maxuusched パラメータがこの 1 つのファイルに置き換わります。

Config ファイル

/etc/uucp/Config ファイルには、調整可能な UUCP パラメータを無効にする情報が入っています。現在利用できる唯一のパラメータは Protocol で、通常はシステム管理者が変更すべきではありません。

ログファイル

Solaris 7 UUCP には、前バージョンで提供される 4 つのログファイルに加えて、4 つの新しいログファイルがあります。これらのファイルは、アカウンティング、コマンド、性能、セキュリティ情報を記録します。コマンドログファイルとセキュリティログファイルは、それらが存在しなければ作成されます。アカウンティングと性能ログファイルについては、それらがすでに存在する場合のみ書き込まれます。

表 12-2 新しい SunOS 5.7 UUCP ログファイル

ファイル名 

機能 

/var/uucp/.Admin/アカウント

請求書発送のアカウント情報を記録する。 

/var/uucp/.Admin/perflog

uucico 操作上の統計情報を記録する。

/var/uucp/.Admin/security

セキュリティ侵犯行為を記録する。 

/var/uucp/.Admin/コマンド

ユーザまたは管理者によって発行されたコマンドに関する情報を記録する。 

SunOS 5.7 UUCP の設定と使用準備ができたら、詳細については 『TCP/IP とデータ通信』を参照してください。