ONC+ 開発ガイド

ポートモニタの使用

RPC サーバーは、inetdlisten のようなポートモニタから起動できます。ポートモニタは、要求が来ているかどうか監視し、要求が来ればそれに応じてサーバーを生成します。生成されたサーバープロセスには、要求を受信したファイル記述子 0 が渡されます。inetd の場合、サーバーは処理を終えるとすぐに終了するか、次の要求がくる場合に備えて指定された時間だけ待ってから終了します。

listen の場合は常に新たなプロセスが生成されるため、サーバーは応答を返したらすぐに終了しなければなりません。次に示す関数呼び出しでは、ポートモニタから起動されるサービスで使用する SVCXPRT ハンドルが作成されます。

transp = svc_tli_create(0, nconf, (struct t_bind *)NULL, 0, 0)

ここで、nconf は要求を受信したトランスポートの netconfig 構造体です。

サービスはポートモニタによりすでに rpcbind で登録されているので、登録する必要はありません。ただし、サービス手続きは次のように svc_reg() を呼び出して登録しなければなりません。

svc_reg(transp, PROGNUM, VERSNUM, dispatch,(struct netconfig *)NULL)

ここでは netconfig 構造体として NULL を渡し、svc_reg()rpcbind を呼び出してサービスを登録しないようにしています。


注 -

rpcgen が生成したサーバー側スタブプログラムを調べて、これらのルーチンの呼び出し順序を確認してください。


接続型トランスポートの場合は、次のルーチンにより下位レベルインタフェースが提供されます。

transp = svc_fd_create(0, recvsize, sendsize);

最初の引数ではファイル記述子 0 を指定します。recvsizesendsize には、適当なバッファサイズを指定できます。どちらの引数も 0 とすると、システムのデフォルト値が使用されます。自分で監視を行わないアプリケーションサーバーの場合は、svc_fd_create() を使用します。

inetd の使用

/etc/inet/inetd.conf のエントリ形式は、ソケットサービス、TLI サービス、RPC サービスによってそれぞれ異なります。RPC サービスの場合の inetd.conf のエントリ形式は次のようになります。

rpc_prog/vers endpoint_type rpc/proto flags user pathname args 

各エントリの内容を次に示します。

表 4-9 RPC inetd サービス

rpc_prog/vers

RPC プログラム名に / とバージョン番号 (またはバージョン番号の範囲) を付けたもの 

endpoint_type

dgram (非接続型ソケット)、stream (接続型ソケット)、tli (TLI 端点) のどれか

proto

サポートされているトランスポートすべてを意味する *、nettype、netid のどれか。または、nettype と netid をコンマで区切ったリスト 

flags

wait または nowait のどちらか

user

有効な passwd データベースに存在しているユーザー

pathname

サーバーデーモンへのフルパス名 

args

デーモンの呼び出し時に渡される引数 

エントリの例を次に示します。

rquotad/1 tli rpc/udp wait root /usr/lib/nfs/rquotad rquotad
 

inetd についての詳細は、inetd.conf(4) のマニュアルページを参照してください。

リスナの使用

次に示すように pmadm を使用して RPC サービスを追加します。


pmadm -a -p pm_tag -s  svctag -i id -v vers  ¥
 
	-m `nlsadmin -c command -D -R prog:vers`

引数の -a はサービスの追加を意味します。-p pm_tag ではサービスへのアクセスを提供するポートモニタに結合したタグを指定します。-s svctag はサーバーの ID コードです。-i id はサービス svctag に割り当てられた /etc/passwd 内のユーザー名です。-v vers はポートモニタのデータベースファイルのバージョン番号です。-m ではサービスを呼び出す nlsadmin コマンドを指定します。nlsadmin コマンドには引数を渡すことができます。たとえば、rusersd という名前の遠隔プログラムサーバーのバージョン 1 を追加する場合は、pmadm コマンドは次のようになります。


# pmadm -a -p tcp -s rusers -i root -v 4 ¥
 
-m `nlsadmin -c /usr/sbin/rpc.ruserd -D -R 100002:1`

このコマンドでは、root パーミッションが指定され、listener データベースファイルのバージョン 4 でインストールされ、TCP トランスポート上で使用可能になります。pmadm の引数やオプションは複雑であるため、RPC サービスはコマンドスクリプトでもメニューシステムでも追加できます。メニューシステムを使用するには、sysadm ports と入力して、port_services オプションを選択します。

サービスを追加した場合は、その後リスナを再初期化してサービスを利用可能にしなければなりません。そのためには、次のようにリスナを一度止めてから再起動します (このとき rpcbind が実行されていなければならないことに注意してください)。

# sacadm -k -p pmtag
# sacadm -s -p pmtag

リスナプロセスの設定などについての詳細は、listen(1M)pmadm(1M)sacadm(1M)sysadm(1M) のマニュアルページと『Solaris のシステム管理 (第 3 巻)』を参照してください。