サービスロケーションプロトコルの管理

第 6 章 DA の配置

この章では、SLP を実行しているネットワークにおける DA の戦略的な配置について説明します。

配置された DA または構成されたスコープ (エージェントはすべて自動的に default スコープを持ちます) がなくても、基本のエージェントである UA と SA のみで SLP は十分機能します。しかし、DA はサービス通知のキャッシュとして機能し、マルチキャストの削減に役立ちます。これにより、SLP をより大規模なネットワークに対応させることができます。

SLP DA を配置する理由

DA を配置する主な目的は、サービス検出によって生じるマルチキャストトラフィックの量を削減することです。多くの UA および SA を持つ大規模なネットワークでは、サービス検出によって生じるマルチキャストの量が非常に大きくなるので、ネットワークのパフォーマンスが下がります。1 つあるいは複数の DA を配置すると、UA はサービスについて DA に対してユニキャストし、SA はユニキャストを使用して DA に登録しなければなりません。DA を使用したネットワークでは、SLP 登録されたマルチキャストは、能動的および受動的 DA 検出のマルチキャストのみです。

SA は、サービス要求のマルチキャストを行うのではなく、共通のスコープのセット内で検出した任意の DA に自動的に登録します。ただし、DA がサポートしていないスコープ内のマルチキャスト要求には、SA が直接応答します。

UA から出されたサービス要求は、UA のスコープ内に DA が配置されている場合は、ネットワーク上へのマルチキャストではなく DA に対するユニキャストです。そのため、UA のスコープ内に DA を配置すると、マルチキャストが削減されます。通常の UA 要求を行うマルチキャストをなくすことにより、遅延およびタイムアウトがなくなります。

DA は SA および UA の動作の中心として機能します。スコープの集合に対して 1 つあるいは複数の DA を配置することにより、SLP の動作を監視するための集中的なポイントが提供されます。DA ログを調整することにより、ネットワークに散在している複数の SA から取り寄せたログをチェックするよりも、登録および要求の監視が容易になります。負荷を均等にする必要に合わせて、1 つあるいは複数の特定のスコープに対して DA をいくつでも配置できます。

マルチキャストルーティングが使用できないネットワークでは、SLP がブロードキャストを使用するように構成できます。しかし、ブロードキャストは各ホストにメッセージを処理するよう要求するため、非常に効率が良くありません。また、ブロードキャストは通常、ルータを超えて伝達されません。この結果、マルチキャストのないネットワークでは、サブネット間の SLP 通知をブリッジするために、DA はマルチホームホスト上に配置されます。マルチキャストが使用できないネットワーク上の SLP の配置については、第 4 章「ネットワークプロパティの構成」を参照してください。

最後に、Solaris SLPv2 の DA は SLPv1 との相互運用性をサポートしています。SLPv1 の相互運用は Solaris DA においてデフォルトで有効になっています。ネットワークにプリンタなどの SLPv1 デバイスが接続されている場合、あるいはサービス検出に SLPv1 を使用する Novell Netware 5 との相互運用が必要な場合は、DA を配置してください。DA が配置されていないと、Solaris SLP の UA は SLPv1 によって通知されたサービスを見つけることができません。

DA を配置する場合

次の条件のいずれかが当てはまる場合には、エンタープライズに DA を配置します。

DA の配置

Solaris SLP では、DA の配置は、ホストの slp.conf ファイルにある net.slp.isDA プロパティのデフォルトの設定を変更し、slpd を停止し、再起動することによって行います。これで slpd は DA として起動します。1 台のホストにつき 1 つの DA のみが割り当てられます。

DA の配置方法

  1. スーパーユーザーになります。

  2. /etc/inet/slp.conf ファイルを編集し、net.slp.isDA プロパティを True に設定します。


    net.slp.isDA=True
  3. ファイルを保存し、終了します。

  4. slpd を再起動し、DA として配置します。


    # /etc/init.d/slpd start
    

DA を配置する場所

この節は、DA を配置する場所について状況ごとにヒントを示します。

  1. マルチキャストルーティングが使用できず、DA がサブネット間のサービス検出をブリッジする必要がある場合

    この場合は、インタフェースおよびサービスを共有するすべてのサブネットを持つホスト上に DA を配置してください。IP パケットがインタフェースの間を経路指定されない場合を除き、net.slp.interfaces 構成プロパティを設定する必要はありませんnet.slp.interfaces プロパティの設定については、第 8 章「マルチホームホスト上での SLP の構成」を参照してください。

  2. DA が拡張に備えて配置されており、考慮すべき主要な事柄がエージェントのアクセスの最適化である場合

    UA は通常、DA に対してサービスを大量に要求します。いったん SA が DA に登録されると、頻繁ではないものの通知を定期的に更新できます。その結果、UA の DA に対するアクセスの方が SA のアクセスよりはるかに頻繁になります。通常、サービス通知の数も要求の数より小さくなります。このため、UA のアクセスに対して DA の配置が最適化されている場合、多くの DA を配置することは効率化をうながします。

  3. UA のアクセスを最適化するために、ネットワークにおいてトポロジ的に UA の近くに DA がくるように DA を置く場合

    トポロジ的に DA の近くに UA を配置すると、SLP 要求への応答についての経路指定の遅延を削減できます。UA クライアントおよび SA クライアントの両方が共有しているスコープを使用して、DA を構成してください。

複数の DA を配置して負荷を均等にする

負荷を均等にする手段として、同じスコープの集合体について複数の DA を配置できます。次のいずれかの状況の場合に、複数の DA の配置をお勧めします。

SLP トラフィックの snoop トレースを行うことによって、どれくらいの UA 要求で DA_BUSY_NOW エラーが返されるかを判断することができます。返される UA 要求の数が多い場合は、すべてのユーザーについて 1 つの DA が配置されている場合が考えられますが、物理的およびトポロジ的に DA から離れている UA は、応答が遅かったり過度にタイムアウトしたりすることがあります。建物内の UA クライアントの応答を改善するために、建物ごとに DA を配置したい場合があります。

建物を接続しているリンクは、建物内のローカルエリアネットワークよりも遅いことがあります。ネットワークが複数の建物または物理的なサイトに渡っている場合は、/etc/inet/slp.conf ファイル内の net.slp.DAAddresses プロパティを特定のホスト名またはアドレスのリストに設定して、指定した DA のみに UA がアクセスするようにします。

特定の DA がサービス登録に対して大量のホストメモリーを消費している場合は、DA がサポートするスコープ数を減らすことによって、SA 登録の数を削減します。多くの登録があるスコープを 2 つに分け、もう 1 つの DA を別のホストに配置することによって新しく作成したスコープの 1 つをサポートすることができます。