OpenWindows ユーザーズガイド (上級編)

第 8 章 プリンタの使い方

LP (ラインプリンタ用サブシステム) プリントサービスは SunOS の一部分です。このサービスは、印刷処理に使えるさまざまなツールを提供します。LP プリントサービスには多種多様の機能がありますが、このマニュアルではその一部分だけを取り扱います。この章では、LP プリントサービスを使って、次に示す基本的な印刷作業を実行するために必要な手順を説明します。

LP プリントサービスについての詳細は、『Solaris のシステム管理 (第 2 巻)』を参照してください。

印刷要求の実行依頼

コマンドプロンプトからファイルを印刷するには、そのファイルを印刷するプリンタに対して lp コマンドを使って要求を送信します。要求が送信されると、LP プリントサービスはその要求を印刷待ち行列に登録し、要求 ID 番号を表示した後、シェルプロンプトを再表示します。

デフォルトプリンタへの印刷要求の実行

デフォルトプリンタ用に LP プリントサービスを設定している場合は、次のようにプリンタ名を入力しないで印刷要求を実行します。

$ lp filename

filename は印刷するファイル名です。

指定されたファイルはデフォルトプリンタの印刷待ち行列に登録され、要求 ID 番号が表示されます。

たとえば、/etc/passwd ファイルを印刷する (デフォルトプリンタはこの場合 pinecone) には、次のように入力します。

$ lp /etc/passwd
request id is pinecone-8 (1 file)
$ 

デフォルトプリンタの指定方法については、『Solaris のシステム管理 (第 2 巻)』を参照してください。

プリンタ名を指定した印刷要求

システム上でのデフォルトプリンタの指定の有無にかかわらず、接続されている任意のプリンタに対して印刷要求を実行できます。希望のプリンタに対して印刷要求を実行するには、次のコマンドを入力します。

$ lp -d printername filename

printername は希望のプリンタ名、filename は印刷するファイル名です。

指定されたファイルは宛先プリンタの印刷待ち行列に登録され、要求 ID 番号が表示されます。

たとえば、/etc/passwd ファイルを acorn というプリンタで印刷するには、次のように入力します。

$ lp -d acorn /etc/passwd
request id is acorn-9 (1 file)
$ 

システム上で接続されていないプリンタ (ここでは thorn) に対して印刷要求を行うと、次の例に示すようなメッセージが表示されます。

$ lp -d thorn /etc/passwd
UX:lp: ERROR: Destination "thorn" is unknown to the
              LP print service.
$ 

プリンタの接続方法については、『Solaris のシステム管理 (第 2 巻)』を参照してください。また、システムで利用できるプリンタについては、この章で後述の 「プリンタの状態を確認する」を参照してください。

印刷完了通知の要求

大きいファイルの印刷要求を行う場合は、印刷処理が完了したときに LP プリントサービスから完了通知があると便利です。LP プリントサービスに対しては、次の 2 つの形式の完了通知を要求できます。

電子メールによる通知を要求するには、印刷要求時に -m オプションを指定します。

$ lp -m filename

コンソールウィンドウに対するメッセージの書き込みを要求する場合は、印刷要求時に -w オプションを指定します。

$ lp -w filename

filename は 印刷するファイル名です。

複数部数の印刷

1 つのファイルを複数部印刷することもできます。複数部数の印刷を要求すると、lp コマンドの -n オプションで指定された回数だけファイルが印刷されます。このような印刷要求は 1 つのプリントジョブと見なされ、ヘッダページは 1 ページだけ印刷されます。

複数部数の印刷を要求するには、次のコマンドを入力します。

$ lp -nnumber filename

number は任意の印刷部数、filename は印刷するファイル名です。

たとえば /etc/passwd ファイルを 4 部印刷するには、次のように入力します。

$ lp -n4 /etc/passwd
request id is pinecone-9 (1 file)
$ 

lp コマンドのオプション

lp コマンドのオプションを使って、用紙、文字セット、フィルタ、表題、バナーページの指定といった印刷要求をカスタマイズできます。lp コマンドで頻繁に使われるオプションを表 8-1 にまとめてあります。これらのオプションは、コマンド行で 1 つだけ指定しても任意の順序で組み合わせて指定してもかまいません。 複数のオプションを組み合わせる場合は、各オプションの前にハイフン (-) を付け、各オプション間はスペースで区切って指定します。

たとえば、プリンタを指定し、電子メールによる通知を要求し、ファイルの印刷部数を 6 部と指定する場合は、次のように入力します。

$ lp -d printername -m -n6 filename

printername は指定するプリンタ名、 filename は印刷するファイル名です。

表 8-1 頻繁に使われる lp オプション

オプション 

説明 

-d

印刷宛先。宛先のプリンタ名を指定する 

-m

電子メール。ファイルの印刷が正常終了したときに、印刷要求元に電子メールを送信する 

-n

部数。印刷の出力部数を指定する 

-t

表題。印刷要求の表題 (バナーページ上にだけ印刷される) を指定する 

-o nobanner

オプション。個別の印刷要求に関するバナーページの印刷を抑止する 

-h

ヘッダ。印刷要求の各ページにヘッダを挿入する 

-c

コピー。印刷する前にファイルをコピーする 

-w

メッセージ書き込み。ファイルの印刷が正常終了したときに、コンソールウィンドウにメッセージを書き込む. 

lp コマンドオプションの詳細なリストについては、『SunOS リファレンスマニュアル (1): ユーザーコマンド』を参照してください。

プリンタの状態を確認する

LP プリントサービスの状態を調べるには、lpstat コマンドを使います。lpstat を使って、印刷待ち行列内のジョブ状態の検査、利用可能なプリンタの確認、ジョブを取り消すためのリクエスト ID の確認などを行うことができます。

印刷要求の状態を確認する

スプールされた印刷要求の状態を調べるには、次のコマンドを入力します。

$ lpstat

印刷要求を実行したファイルのリストが表示されます。

次の例では、fred というユーザがシステム pine 上のプリンタ pinecone で印刷するファイルが 1 つ待ち行列に登録されています。

$ lpstat
pinecone-10              fred            1261   Mar 12 17:34 on pine
$

lpstat コマンドは、印刷ジョブごとに 1 行ずつ要求 ID、その要求をスプールしたユーザ、バイト単位の出力サイズ、印刷要求を実行したシステムと日付と時刻に関する情報を表示します。

利用可能なプリンタを確認する

システムに接続されているプリンタを確認するには、次のように入力します。

$ lpstat -s

最初にスケジューラの状態が表示され、その後にデフォルトの宛先プリンタ、利用可能なシステムとプリンタのリストが表示されます。

次の例はスケジューラが実行中であり、デフォルトプリンタは pinecone、ネットワークプリンタは pinecone および acorn という 2 つのプリンタが利用できることを示しています。

$ lpstat -s
scheduler is running
system default destination: pinecone
system for pinecone: pine
system for acorn: oak
$

状態情報をすべて表示する

lpstat コマンドに -t オプションをつけると、LP プリントサービスの全状態を要約したリストが表示できます。

このリストを表示するには、次のように入力します。

$ lpstat -t

利用可能な状態情報がすべて出力されます。

次の例では、印刷待ち行列内にジョブが存在しません。ファイルが印刷のためにスプールされると、それらの印刷要求の状態も表示されます。

$ lpstat -t
scheduler is running
system default destination: pinecone
system for acorn: oak
pinecone accepting requests since Wed Jan 2 18:20:10 PST 1991
acorn accepting requests since Mon Mar 4 15:53:47 PST 1991
printer pinecone is idle. enabled since Wed Jan 2 18:20:22 PST
1991. available.
                                                                         
    
printer acorn is idle. enabled since Mon Mar 4 15:53:44 PST 1991.
available.
$

プリンタの状態を表示する

lpstat コマンドに -p オプションをつけると、個々のプリンタに関する状態情報が表示できます。このオプションは、プリンタの活動状況 (アクティブまたはアイドル)、使用可能または不可能になった時間、印刷要求の受付の可否などを表示します。

システム上の全プリンタに関する状態情報を表示するには、次のように入力します。

$ lpstat -p

次の例は、2 つのプリンタがアイドル状態、使用可能、印刷要求受付可能であることを示しています。これらのプリンタの印刷待ち行列にジョブが存在すれば、そのジョブ情報も表示されます。

$ lpstat -p
printer pinecone is idle. enabled since Wed Jan 2 18:20:22 PST
1991. available.
printer acorn is idle. enabled since Mon Mar 4 15:53:44 PST 1991.
available.
$

個々のプリンタに関する状態情報を表示するには、次のようにプリンタ名を指定します。

$ lpstat -p printername

printername は指定するプリンタ名です。

プリンタの特性を表示する

接続しているプリンタのすべての特性を参照する場合は、lpstat コマンドに -p オプションと -l (「long」を表す) オプションをつけます。このコマンドは、プリンタの型 (Printer type) とファイルの種類 (Content type) を調べる際に特に便利です。

システム上のすべてのプリンタの特性を表示するには、次のように入力します。

$ lpstat -p -l

各プリンタについて LP プリントサービスで使われる全構成情報が表示されます。

次の例では、プリンタ pinecone に関するフィールドのうち、プリンタの型とファイルの種類以外はすべて空白になっています。

$ lpstat -p pinecone -l
printer pinecone is idle. enabled since Wed Jan 2 18:20:22 PST
1991. available.
        Content types: PS
        Printer types: PS
        Description:
        Users allowed:
                (all)
        Forms allowed:
                (none)
        Banner not required
        Character sets:
                (none)
        Default pitch:
        Default page size:
$

lpstat コマンドのオプション

lpstat コマンドを使うと、プリンタの状態に関するさまざまな情報を表示できます。lpstat コマンドで頻繁に使われるオプションを表 8-2 にまとめてあります。これらのオプションは、コマンド行で 1 つだけ指定しても、任意の順序で組み合わせて指定してもかまいません。複数のオプションを組み合わせる場合は、各オプションの前にハイフン (-) を付け、各オプション間はスペースで区切って指定します。

たとえば、個々のプリンタの状態に関する詳細なリストを表示する場合は、次のように入力します。

$ lpstat -p printername -l

printername は、状態を調べるプリンタ名です。

表 8-2 頻繁に使われる lpstat オプション

オプション 

説明 

-a

受付状況。印刷宛先プリンタの要求受付状況を表示する 

-c

クラス。プリンタクラスとそのメンバを表示する 

-d

宛先。デフォルトの印刷宛先プリンタを表示する 

-f

書式。印刷書式を表示する 

-o

出力。出力状態を表示する 

-p [list][-D][-l]

プリンタ指定・説明・詳細リスト。プリンタの状態を表示する 

-r

要求。要求スケジューラの状態を表示する 

-R

印刷待ち行列内のジョブの位置を表示する 

-s

状態情報。要約した状態情報を表示する 

-S

文字セット。文字セットを表示する 

-u [username]

ユーザ。要求の状態をユーザごとに表示する 

-v

プリンタのデバイス名を表示する 

lpstat コマンドオプションの詳細なリストについては、『SunOS リファレンスマニュアル (1): ユーザーコマンド』を参照してください。

印刷要求の取り消し

印刷要求が待ち行列内にあるときや印刷実行中に要求を取り消すには、cancel コマンドを使います。要求を取り消す場合は、そのリクエスト ID が必要になります。リクエスト ID は必ず、プリンタ名、ハイフン、印刷要求番号から構成されています。印刷要求を実行すると、要求 ID が表示されます。このリクエスト ID を忘れた場合は、lpstat コマンドを入力して Return キーを押すと確認できます。印刷要求を取り消せるのは、その要求を実行したユーザ、あるいは root または lp としてログインしたユーザだけです。

ID 番号による印刷要求の取り消し

指定の ID 番号を使って印刷要求を取り消すときには、次のように入力します。

$ cancel requestid

requestid は、指定する印刷要求の ID 番号 (printername-number からなる) です。

要求が取り消される旨のメッセージが表示され、印刷待ち行列内の次のジョブの印刷が開始されます。

次の例では、2 つの印刷要求が取り消されています。

$ cancel pinecone-3 pinecone4
request "pinecone-3" cancelled
request "pinecone-4" cancelled
$

プリンタ名による印刷要求の取り消し

リクエスト ID の代わりにプリンタ名を入力しても、現在印刷中のジョブ (自分で実行依頼したものに限る) を取り消すことができます。

$ cancel printername

printername は、ユーザが要求を送信したプリンタ名です。

要求が取り消される旨のメッセージが表示され、印刷待ち行列内の次のジョブの印刷が開始されます。

次の例では、pinecone というプリンタで現在印刷中の印刷要求が取り消されています。

$ cancel pinecone
request "pinecone-3" cancelled
$

システム管理者は root または lp としてログインし、プリンタ名を cancel コマンドの引数に指定することによって、現在印刷中の任意の要求を取り消すことができます。