Solaris WBEM Services の管理

Solaris WBEM Services

Solaris WBEM Services は、Solaris 8 オペレーティング環境で Web-Based Enterprise Management (WBEM) サービスを提供するソフトウェアです。このようなサービスを使用すれば、ソフトウェア開発者は、Solaris オペレーティング環境の管理を容易にする Solaris の管理アプリケーションを簡単に作成できます。

Solaris WBEM Services ソフトウェアでは、セキュリティが侵害されることなく管理データにアクセスし操作することができます。製品には Solaris Provider が組み込まれているため、管理アプリケーションから Solaris オペレーティング環境の管理リソース (デバイスやソフトウェア) の情報にアクセスできます。

管理アプリケーションは、RMI や XML/HTTP プロトコルを使って CIM Object Manager に接続します。CIM Object Manager は、接続されたクライアントに次のサービスを提供します。

WBEM 対応システムに接続されると WBEM クライアントは、次のような WBEM 操作を要求できます。CIM クラスとインスタンスの作成、表示、削除や、指定する値をもつプロパティの検索、指定するクラス階層にあるインスタンスやクラスの列挙 (リストの取得) などです。

ソフトウェアのコンポーネント

Solaris WBEM Services ソフトウェアは、アプリケーション、管理、プロバイダという 3 つの層で機能するソフトウェアコンポーネントで構成されます。これらのコンポーネントはオペレーティングシステム層やハードウェア層とデータをやりとりします。図 1-1 は、各層におけるソフトウェアコンポーネントとその関係を示しています。

図 1-1 Solaris WBEM Services のアーキテクチャ

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ネームスペース

ネームスペースと呼ぶディレクトリのような構造には、1 つまたは複数のスキーマを格納できます。CIM ネームスペースには、他のネームスペース、クラス、インスタンス、修飾子型を格納できます。ネームスペース内のオブジェクト名は固有のものにします。

Solaris WBEM Services では、WBEM クライアントアプリケーションが特定のネームスペースに接続されると、それ以後のすべての操作はそのネームスペース内で行われます。ネームスペースに接続されているクライアントは、そのネームスペースとそのネームスペースに含まれるすべてのネームスペースのクラスやインスタンスに (存在すれば) アクセスできます。たとえば、child というネームスペースを root¥cimv2 ネームスペースに作成すれば、root¥cimv2 に接続することにより、root¥cimv2root¥cimv2¥child ネームスペースのクラスやインスタンスにアクセスできます。

アプリケーションを、あるネームスペース内の下にあるネームスペースに接続することができます。これはディレクトリ内のサブディレクトリを使用するのと同じことです。アプリケーションを新しいネームスペースに接続すると、それ以後のすべての操作はそのネームスペース内で行われます。たとえば、アプリケーションを root¥cimv2¥child ネームスペースに接続すると、そのネームスペースのすべてのクラスやインスタンスにはアクセスできますが、親ネームスペース root¥cimv2 のクラスやインスタンスにはアクセスできません。

インストール時に 3 つのネームスペースがデフォルトで作成されます。

プロバイダ

WBEM クライアントアプリケーションが CIM データにアクセスすると、WBEM システムは現在のホストにあるユーザーのログイン情報を検証します。ユーザーには、デフォルトで CIM スキーマと Solaris スキーマに対する読み取り権が与えられます。CIM スキーマには、システムにあるすべての管理オブジェクトが標準形式で記述されています。WBEM 対応のすべてのシステムやアプリケーションは、この標準形式を解釈できます。

プロバイダとは、管理オブジェクトと通信してデータにアクセスするクラスです。プロバイダは、統合と解釈のためにこの情報を CIM Object Manager に転送します。CIM Object Manager は、CIM Object Manager Repository にないデータを管理アプリケーションから要求されると、要求をプロバイダに転送します。

CIM Object Manager は、オブジェクトプロバイダのアプリケーションプログラミングインタフェース (API) を使ってプロバイダと通信します。

アプリケーションが動的データを CIM Object Manager に要求すると、CIM Object Manager はプロバイダインタフェースを使って要求をプロバイダに渡します。

プロバイダは、CIM Object Manager の要求に対し次のことを行います。

他の WBEM システムとの相互運用性

WBEM クライアントと WBEM システムは同じシステムで動作することも、別々のシステムで動作することもできます。WBEM システムには複数の WBEM クライアントを接続できます。一般的な WBEM システムでは、4 つから 5 つの WBEM クライアントがサポートされます。

Solaris WBEM Services は、Version 1.0 Specification for CIM Operations over HTTP をサポートします。この仕様では、XML を使って CIM のオブジェクトやメッセージを記述します。XML は、Web 上のデータを記述するための標準マークアップ言語です。この仕様では、XML マークアップを拡張して CIM のオブジェクトや操作を定義します。XML は Web 上に送信可能なデータを記述する標準的な方法であるため、WBEM クライアントは、XML データを解析できる任意の WBEM システム上の CIM データにアクセスできます。