この章では、ホットスペア集合について解説します。次の表を参考にして、必要な箇所を探してください。
ホットスペア集合とは、 DiskSuite がミラーや RAID5 メタデバイスのデータ可用度を高めるために使用するスライス (ホットスペア) の順序付きのリスト (集合) です。サブミラーや RAID5 メタデバイスでスライス障害が発生すると、ホットスペア集合に登録されているホットスペアが不良スライスと自動的に交換されます。
ホットスペアは、アイドル状態ではデータを格納することはできません。ホットスペアは、割り当てられているメタデバイスのスライスが故障したときに、すぐに代わりになるように用意されています。ホットスペアは予備ですから、そのための追加のディスクが必要になります。
ホットスペアは、動作はしているが使用されていないスライスです (メタデバイスではありません) 。ホットスペアは、サブミラーや RAID5 メタデバイスのスライスが故障したときに、すぐに取り替えられるように用意されています。
スライスの交換とデータの再同期は自動的に行われるため、ホットスペアによってハードウェア障害に備えることができます。ホットスペアは、故障したサブミラーや RAID5 メタデバイスのスライスが修理または物理的に交換されるまでの間だけ、一時的に使用することもできます。
ホットスペアは、通常はアイドル状態であるため、システムの動作には貢献しません。また、ホットスペアとして割り当てられているスライスは、他のメタデバイスに割り当てたり、アイドル状態にある時に、データを格納したりすることはできません。
ホットスペアは、ホットスペア集合中に作成します。同じホットスペアを複数のホットスペア集合に登録することもできます。たとえば、サブミラーとホットスペアを 2 つずつ用意しておくことができます。ホットスペアを 2 つのホットスペア集合に登録して、それぞれのホットスペア集合でホットスペアの優先順位を変えておくこともできます。こうしておくことで、最初に使用すべきホットスペアを指定でき、多くのホットスペアを用意しておくことでデータの可用度を高めることができます。
ホットスペアを他のメタデバイス (サブミラーなど) で使用することはできません。ホットスペアは、スライス障害時にはすぐに代わりになれるように、常に用意しておかなければなりません。ホットスペアは、物理スライスでなければならず、メタデバイスをホットスペアとして使用することはできません。ホットスペアに状態データベースの複製を格納することもできません。
サブミラーまたは RAID5 メタデバイスの場合は、故障したスライスと同じか、それ以上のサイズを持つホットスペアのみを使用できます。サブミラーの容量が 1 G バイトであれば、そのサブミラー用のホットスペアの容量も 1 G バイト以上でなければなりません。
ホットスペアは、割り当てられるメタデバイスが複製データを持っていることを前提としています。ホットスペアが不良スライスの代わりになったときには、不良スライスのデータをホットスペアで再生しなければなりません。このため、ミラーおよび RAID5 メタデバイスしかホットスペアを使用できないのです。
ホットスペア集合は、ホットスペアの順序付きリスト (集合) です。
ホットスペアを複数のホットスペア集合に登録することで、最小限のスライスで最大限の安全性を実現することができます。ホットスペア集合は、いくつのサブミラーや RAID5 メタデバイスにでも割り当てることができます。
1 つのホットスペア集合を複数のサブミラーや RAID5 メタデバイスに割り当てることができますが、1 つのサブミラーや RAID5 メタデバイスは 1 つのホットスペア集合にしか割り当てることができません。
エラーが発生すると、DiskSuite は交換対象のスライスと同じか、それより大きなサイズを持つホットスペアをホットスペア集合で検索します。ホットスペアが見つかると、DiskSuite はそのホットスペアの状態を「使用中」に変更して、データを自動的に再同期させます。ミラーの場合には、正常なサブミラーのデータが再同期に使用されます。 RAID5 メタデバイスの場合には、 RAID5 メタデバイスの他のスライスのデータが再同期に使用されます。ホットスペア集合で適切なサイズのホットスペアが見つからない場合には、サブミラーや RAID5 メタデバイスはエラー状態に入ります。サブミラー障害の場合には、そのスライスに入っていたデータを複製することはできません。 RAID5 メタデバイスの場合には、データの冗長性が失われます。
ホットスペア集合には、hspnnn という形式の名前が付けられます。nnn には 000 〜 999 の数字が入ります。
空のホットスペア集合を作成しておいて、後で空きスライスを利用できるようになってから、ホットスペアを追加することができます。
ホットスペア集合の最大数は 1,000 個です。
ホットスペアとして使用できるデバイス
ホットスペアとして使用できるデバイスは、物理デバイスのみです。メタデバイスをホットスペアとして使用することはできません。
サブミラーや RAID5 メタデバイスのスライスがエラー状態に入ると、関連付けられているホットスペア集合からホットスペアが選択されて、不良スライスの代わりに使用されます。DiskSuite は、不良スライスと同じか、それより大きなホットスペア (リストで最初に検索されたもの) を使用します。
DiskSuite は、ホットスペア集合に登録された順序でホットスペアを検索し、サイズの条件を満たす最初に見つかったホットスペアを使用します。したがって、ホットスペア集合に登録する際には、不必要に大きなホットスペアが選択されないように、小さなホットスペアを先に登録しておきます。
ホットスペアのサイズは、ホットスペア集合を関連付けるサブミラーまたは RAID5 メタデバイスの最小スライスのサイズ以上でなければなりません。サブミラーや RAID5 メタデバイスでスライス障害が発生しても、適切なサイズのホットスペアが見つからなければ、スライスの交換は行われません。
ホットスペア集合を通常のストライプメタデバイスに関連付けることはできません。ホットスペア集合を関連づけられるのは、サブミラーまたは RAID5 メタデバイスのみです。
利用可能なホットスペア集合がない場合
ホットスペア機能を使用するためには、「使用可能」とマークされたホットスペアが残っていなければなりません。ホットスペア集合のすべてのホットスペアが「使用中」とマークされている場合には、新しいホットスペアを追加するか、現在ホットスペアで置き換えられている不良スライスを修理してサービスに復帰させてください。
1 面ミラーにホットスペア集合を割り当ててはいけません。1 面ミラーのスライスが故障しても、ホットスペアで置き換えることはできません。このようなメタデバイスでは、不良スライスと置き換えたホットスペアでデータを再構築するためのコピーが存在しないからです。
ホットスペアを異なるコントローラ上に定義する理由
コントローラのエラーや障害が発生したときでもホットスペアを利用できるようにするため、ホットスペアは異なるコントローラ上に定義しなければなりません。
図 3-1 に、ミラー d1 のサブミラーメタデバイス d11 および d12 に割り当てられているホットスペア hsp000 を示します。どちらかのサブミラーのスライスが故障すると、そのスライスのかわりにホットスペアが使用されます。ホットスペア集合は、ミラーではなく、各サブミラーに関連付けられています。このホットスペア集合は、必要であれば、他のサブミラーや RAID5 メタデバイスにも関連付けることができます。
DiskSuite では、ホットスペア集合のホットスペアをいつでも追加、削除、交換、および利用可能にすることができます。ホットスペアやホットスペア集合の管理は、DiskSuite ツールまたはコマンド行インタフェースを使用して行います。
1 つのホットスペアは、1 つまたは複数のホットスペア集合に追加することができます。ホットスペアをホットスペア集合に追加すると、現在のリストの最後に登録されます。
ホットスペアは、登録されている任意のホットスペア集合またはすべてのホットスペア集合から削除することができます。ホットスペアを削除すると、残りのホットスペアの順序が変更されます。たとえば、3 つのホットスペアが登録されているホットスペア集合から、2 番目のホットスペアを削除すると、3 番目のホットスペアが 2 番目に移ります。使用中のホットスペアを削除することはできません。
ホットスペアは、登録されている任意のホットスペア集合またはすべてのホットスペア集合で交換することができます。ホットスペアを交換しても、ホットスペアの順序は変更されません。使用中のホットスペアを交換することはできません。
ホットスペアを修理した場合には、利用可能にすることで、再びホットスペアとして復帰させることができます。
ホットスペアを追加、削除、交換、および利用可能にする方法についての説明は、『Solstice DiskSuite 4.2.1 ユーザーズガイド』を参照してください。