Sun Enterprise サーバー Alternate Pathing 2.3 ユーザーマニュアル

ディスクの可用性と性能の兼ね合い

ディスクアレイとコントローラを構成する前に、ディスクの使用優先順位を決めておく必要があります。ディスク資源の可用性は、性能との兼ね合い、あるいはハードウェアの追加により高めることができます。

たとえば、デュアルポートの SSA ディスクアレイの場合を考えてみます。この種のデバイスは 1 つまたは 2 つの Fibre Channel ディスクコントローラ (SOC コントローラ) に接続できます。SSA の内部には複数のターゲットが存在し、各ターゲットには複数のディスクが含まれ、各ディスクは複数のスライスに分割されます。システムの構成方法によっては、それらのディスク入出力資源に対して以下のような異なるレベルの競合が発生することがあります。

たとえば、1 つのディスクを 4 つのスライスに分割し、その 4 つのスライスから 1 つのファイルシステムを作成する場合を想定します。このファイルシステムは複数のスライスにまたがることになりますが、これらのスライスは実際は同一のディスク上に存在しています。この場合、ファイルシステムは単純に 1 つのスライス上に配置した方が良いかもしれません。この構成の場合は、ファイルシステムの読み取りおよび書き込みのたびに同じディスクへのアクセスが必要になるので、ディスクレベルの競合が発生します。

ファイルシステムは、同じターゲット内の複数のディスクにまたがって配置することも可能です。しかしこの構成では、ファイルシステムの読み取りおよび書き込みのたびに同じターゲットへのアクセスが生じるので、ターゲットレベルの競合が発生します。ターゲットレベルの競合はディスクレベルの競合ほど深刻な問題ではありませんが、不安定な構成であることに変わりありません。

ファイルシステムを同じ SSA 内の多数のターゲットにまたがって配置した場合、コントローラレベルの競合が発生します。これは、ファイルシステムの読み取りおよび書き込みのたびに同じコントローラを使用するためです。

一般的にファイルシステムは、複数のコントローラを使用して、複数のディスクアレイにまたがって作成するのが最良です。ただしこの場合、ディスクアクセスの速度とシステムの可用性との兼ね合いを考慮する必要があります。ファイルシステムに使用するディスクアレイを増やすに従い、ディスクアクセスの速度はある程度まで向上します。しかし、いずれかのディスクアレイでコンポーネントの障害が発生すると、ファイルシステムは使用できなくなります。ファイルシステムのディスクアレイの数を少なく (たとえば 1 つに) 抑えれば、速度などの性能は低下しますが、ファイルシステムの障害を引き起こす可能性があるコンポーネントの数は少なくなるため、システム全体の可用性は向上します。

たとえば、3 つのデュアルポート SSA ディスクアレイに 6 つのディスクコントローラが接続されている状況を考えてみます。

図 3-1 システムボードとディスクコントローラ

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可用性を最大限に引き出したい場合は、AP を使用してそれぞれの SSA に代替パスを設定します。この構成の利点は、システムボードの保守やアップグレードの際に、DR を使用してディスクアレイ上のファイルシステムに対するアクセスを失うことなくボードを自由に接続・切り離しできることにあります。当然この場合は、代替のディスクコントローラ (SOC コントローラ) は異なるシステムボード上に配置することになります。これを応用して、それぞれ 3 つのディスクコントローラを搭載したシステムボードを 2 枚使用する構成も考えられます。これは簡単ですっきりとした構成です。この構成では、一方のボードを切り離す必要がある場合、コントローラを他方のボード上に切り替えることで対処できます。また、1 つのボードを切り離して接続するだけで、ドメイン間でのディスク資源の切り替えが可能です。

ただしこの場合、それぞれの SSA に2 つずつの SOC コントローラを購入する必要があります。また、非常に大規模な構成の場合、すべての SOC コントローラをホストできる環境を整備するには、デュアルパスの設置のために大量の SSA が必要となり、使用できる SBus スロット数の上限を越える可能性もあります。