Solaris 8 のシステム管理 (追補)

第 4 章 ディスクレスクライアントの管理

Solaris 8 ソフトウェアリリースに、新しいディスクレスクライアントの機能が含まれています。


注 -

最新のマニュアルページを参照するには、man コマンドを使用してください。Solaris 8 Update リリースのマニュアルページには、「Solaris 8 Reference Manual Collection」には記載されていない新しい情報も提供されています。


ディスクレスクライアントの管理の概要

Solaris 8 1/01 リリースで、Diskless Client Management により Solstice AdminSuiteTM 2.3 ディスクレスクライアントツールが更新されました。AdminSuite 2.3 ディスクレスクライアントツールは GUI をベースとしたもので、一方 Diskless Client Management はコマンド行インタフェースからのみ構成されています。

次のものがサポートされます。

ディスクレスクライアントとは、オペレーティングシステム、ソフトウェア、および記憶装置を OS サーバーまたはあるホストに依存するワークステーションです。ディスクレスクライアントは、そのルート (/)、/usr、およびその他のファイルシステムを OS サーバーからマウントします。ディスクレスクライアントは独自の CPU と物理メモリーを持っており、データをローカルで処理することができます。しかしディスクレスクライアントは、ネットワークから切り離されたり、その OS サーバーが正しく機能しない場合は機能できません。ディスクレスクライアントは、ネットワークを経由して継続的に機能する必要があるため、多大なネットワークトラフィックを発生させます。

Diskless Client Management の使用

Diskless Client Management ツールは、コマンド行インタフェースを使用して動作させます。独自のシェルスクリプトを書いて 表 4-1 に示すコマンドを使用することにより、ディスクレスクライアント環境を簡単にセットアップし管理することができます。

表 4-1 Diskless Client Management のコマンド

コマンド 

サブコマンド 

タスク 

/usr/sadm/bin/smosservice

add

OS サービスを追加する 

 

delete

OS サービスを削除する 

 

list

OS サービスをリスト表示する 

 

patch

OS サービスのパッチを管理する 

/usr/sadm/bin/smdiskless

add

ディスクレスクライアントを OS サーバーに追加する 

 

delete

ディスクレスクライアントを OS サーバーから削除する 

 

list

OS サーバー上のディスクレスクライアントをリスト表示する 

 

modify

ディスクレスクライアントの属性を変更する 

次に示す 2 種類の方法で、これらのコマンドに関するヘルプを参照することができます。

ユーザーの権利

ユーザーは、割り当てられている権利に応じて、Diskless Client Management コマンドのサブセットまたはすべてのいずれかを利用することができます。表 4-2 は、Diskless Client Management コマンドの使用に必要な権利を示します。

表 4-2 必要な権利

権利 

コマンド 

タスク 

基本的な Solaris ユーザー、ネットワーク管理 

smosservice list

smosservice patch

smdiskless list

OS サービスをリスト表示する 

OS パッチをリスト表示する 

ディスクレスクライアントをリスト表示する 

ネットワーク管理 

smdiskless add

ディスクレスクライアントを追加する 

システム管理者 

すべてのコマンド 

 

必要なディスクスペース

ディスクレスクライアント環境をセットアップする前に、作成される各パーティションに必要なスペースがあることを確認します。表 4-3 は、各 Diskless Client Management パーティションに必要なディスクスペースを示します。

表 4-3 必要なディスクスペース

パーティション 

必要なスペース (単位: M バイト) 

/export/Solaris_version

10 

/export/exec

800 

/export/share

/export/dump/diskless_client_name

32 

/export/root/templates/Solaris_version

30 

/export/root/clone/Solaris_version/machine_class

30 〜 60。マシンのクラスによる 

/export/root/diskless_client_name (上記のクローン)

30 〜 60。マシンのクラスによる 

/export/swap/diskless_client_name

32 

/tftpboot/inetboot.machine_class.Solaris_version

machine_class.Solaris_version 1 つにつき、200K バイト

ディスクレスクライアント環境をセットアップするには

  1. 次に示すどちらの手順から開始するかを選択します。

    • システムが、AdminSuite 2.3 Diskless Client ツールで作成されたディスクレスクライアントを現在サポートしている場合は、手順 2 へ進みます。

    • システムが、AdminSuite 2.3 Diskless Client ツールで作成されたディスクレスクライアントを現在サポートしていない場合は、手順 4 へ進みます。

  2. /usr/sadm/bin/admhostdel コマンドを使用して、既存の AdminSuite 2.3 ディスクレスクライアントを削除します。

  3. /usr/sadm/bin/admhostmod コマンドを使用して、既存の AdminSuite 2.3 OS サービスを削除します。

  4. OS サーバーとして指定されたマシンを Solaris 8 1/01 オペレーティング環境へアップグレードします。

  5. Solaris Management Console (SMC) ログビューアのディスクレスクライアントのエラーメッセージを参照するには、コマンド行で次を実行して SMC を起動します。


    % /usr/sadm/bin/smc &
    

    SMC の メインスクリーンから「ログビューア」を選択します。

  6. 必要な OS サービスを追加します。「OS サービスを追加する準備」 および 「OS サービスを追加するには」を参照してください。

  7. ディスクレスクライアントを追加します。「ディスクレスクライアントを追加するには」を参照してください。

  8. boot net コマンドを使用して、PROM レベルから各ディスクレスクライアントをブートします。boot net コマンドについての詳細は、『Solaris のシステム管理 (第 1 巻)』を参照してください。

OS サービスを追加する準備

smosservice add コマンドを使用して OS サービスを追加する場合は、サポートしたい各ディスクレスクライアントのプラットフォームの platformmediapath、および cluster を入力する必要があります。そのため、各ディスクレスクライアントについて以下のことを決定するために最初にいくつかのハイレベルの作業を行う必要があります。

OS サービスを追加するには

各ディスクレスクライアントについてプラットフォーム、メディアパス、およびクラスタを決定したら、OS サービスを追加する準備ができたことになります。追加する各 OS サービスについて、次のディレクトリが作成され移植されます。

/export/Solaris_version/Solaris_version_instruction_set.all (/export/exec/Solaris_version/Solaris_version_instruction_set.all へのシンボリックリンク)

/export/Solaris_version

/export/Solaris_version/var

/export/Solaris_version/opt

/export/share

/export/dump

/export/root/templates/Solaris_version

/export/root/clone

/export/root/clone/Solaris_version

/export/root/clone/Solaris_version/machine_class

  1. 必要なメディアパス、プラットフォーム、およびクラスタのオプションとともに /usr/sadm/bin/smosservice add コマンドを使用して、1 つ目の OS サービスを追加します。

    たとえば、次のコマンドは sun4u マシンクラスについて Solaris 8 ソフトウェアの OS サービスを追加しています。ここでは、OS サーバーはネームサービスを使用していません。


    % /usr/sadm/bin/smosservice add -- -x mediapath=/net/image/5.8/sparc ¥
    -x platform=sparc.sun4u.Solaris_8 -x cluster=SUNWCXall
    
    サーバーのスピードおよび選択した OS サービスの構成により、インストールプロセスには 45 分ほどかかることがあります。

  2. /usr/sadm/bin/smosservice add コマンドを繰り返し使用して、他の OS サービスを追加します。

  3. OS サービスの追加が完了したら、/usr/sadm/bin/smosservice list コマンドを使用して OS サービスがインストールされたことを確認します。

ディスクレスクライアントを追加するには

追加する各ディスクレスクライアントについて、次のデフォルトのディレクトリが OS サーバー上に作成されます。

/export/root/diskless_client_name

/export/swap/diskless_client_name

/export/dump/diskless_client_name

/tftpboot/diskless_client_ipaddress_in_hex


注 -

-x オプションを使用すると、/root/swap、および /dump ディレクトリのデフォルトのロケーションを変更することができます。ただし、/export の下にはこれらのディレクトリを作成しないでください。


ディスクレスクライアントを追加するには、以下の手順を実行します。

  1. 追加したい 1 つめのディスクレスクライアントについて、必要な IP アドレス、Ethernet アドレス (MAC アドレス)、名前、およびオペレーティングシステムのオプションとともに smdiskless add コマンドを使用します。

    たとえば、次の例では sun4u マシン上で Solaris 8 を実行する「client1」ディスクレスクライアントを追加しています。


    % /usr/sadm/bin/smdiskless add -- -i 129.9.200.1 ¥
    -e 8:0:11:12:13:14 -n client1 -x os=sparc.sun4u.Solaris_8
    


    注 -

    オペレーティングシステムは、instruction_set.machine_class.Solaris_os_version のフォーマットで、OS サービスのセットアップのために smosservice コマンドを使用した時に指定した platform と同じにします。


  2. /usr/sadm/bin/smdiskless add コマンドを繰り返し使用して、その他のディスクレスクライアントを追加します。

  3. ディスクレスクライアントの追加が完了したら、/usr/sadm/bin/smdiskless list コマンドを使用してディスクレスクライアントがインストールされたことを確認します。

OS サービスへのパッチ適用の概要

/usr/sadm/bin/smosservice patch コマンドを使用して、OS サービスのパッチの管理を行います。次のことができます。


注 -

ディスクレスクライアントは、OS サーバー上で /export/exec/Solaris_version/Solaris_version_instruction_set.all ディレクトリを共有します。このディレクトリは共有されるため、ディスクレスクライアントから showrev -p コマンドを実行した場合このディレクトリに適用するパッチは表示されません。しかしカーネルパッチはディスクレスクライアントのルートディレクトリに適用され、そのためディスクレスクライアントから showrev -p コマンドを実行した場合に表示されます。


Solaris 以外のパッチを追加するには

OS サーバーに Solaris 以外のパッチを追加したい場合は、次の手順を実行します。

  1. 次のコマンドを使用して、パッチ用に .copyof* ステージングエリアを作成します。


    % /usr/sadm/bin/smosservice patch -- -m -U
    
  2. 次のコマンドを使用して、そのステージングエリアにパッチ (複数可) を追加します。


    % /usr/sadm/bin/smosservice patch -- -a staging area
    
  3. 次のコマンドを使用して、パッチ (複数可) をクライアントへプッシュアウトします。


    % /usr/sadm/bin/smosservice patch -- -a -m -U