Sun Fire 880 Dynamic Reconfiguration ユーザーマニュアル

第 1 章 動的再構成 (DR) の概要

この章では、動的再構成とホットプラグ操作の基本的な考え方の概要について説明します。また、動的再構成の要件と制限事項についても説明します。

この章の説明項目は次のとおりです。

ホットプラグ操作とホットスワップ操作について

Sun Fire 880 システムは、PCI (Peripheral Component Interconnect) カードのホットプラグ機能をサポートしています。このホットプラグ機能により、システムの他の機能にまったく影響を与えることなく、システムに電源の入った状態で、PCI カードを追加、取り外し、または交換できます。

ホットプラグにより、PCI カード交換によるシステムの停止時間が大幅に低減します。ただし、ホットプラグ手順では、PCI カードの取り外し前にシステムを準備するソフトウェアコマンド、および新しいカード装着後にオペレーティング環境を再構成するソフトウェアコマンドが必要となります。

対照的に、Sun Fire 880 のファントレーおよび電源装置は、ホットスワップ可能です。この 2 つのコンポーネントは、ソフトウェアの事前準備を行うことなく、いつでも、着脱可能です。ホットスワップ可能なシステムコンポーネントについては、『Sun Fire 880 サーバー オーナーマニュアル』を参照してください。


注 -

Sun Fire 880 Remote System Control (RSC) カードは、ホットプラグ可能なコンポーネントではありません。RSC カードでは、その着脱前に、システムの電源を切断し、すべての電源コードを外しておく必要があります。


ホットプラグ操作と動的再構成について

PCI カードのホットプラグ操作は、動的再構成 (DR) を必要とします。動的再構成は、システムの動作中にシステムのハードウェアを再構成することを可能にするオペレーティング環境の機能です。DR を使用すると、システムの正常動作をほとんど中断することなく、ハードウェア資源の追加または交換を行うことができます。

PCI ホットプラグ手順では、デバイスの取り外し前にシステムを準備するソフトウェアコマンドおよび、新しいデバイスの装着後のオペレーティング環境を再構成するソフトウェアコマンドが必要となる場合があります。さらに、ホットプラグ操作が成功するには、別のシステム要件に適合する必要もあります。詳細は、動的再構成の要件についてを参照してください。

PCI ホットプラグ手順の詳細は、第 2 章「動的再構成の使用方法」を参照してください。


注 -

いずれの標準 PCI カードでも、Solaris オペレーティング環境向けの適切なソフトウェアドライバが存在し、そのドライバがホットプラグ操作をサポートしていれば、カードをホットプラグ操作することが可能です。また、カードは PCI ホットプラグ仕様 Revision 1.1 に準拠したものでなければなりません。


ホットプラグ操作用のユーザーインタフェースについて

Sun Fire 880 システム上での PCI ホットプラグ操作の実行方法には、次の 2 通りがあります。

プッシュボタン方式は、各 PCI カードスロットの近くに位置するプッシュボタンと状態表示 LED に依存します。ホットプラグ操作は、スロットに対応するプッシュボタンを押して、開始することができます。各スロットの近くに位置する 3 つの状態表示 LED が、成功結果または障害状態を示します。

コマンド行方式では、遠隔ログインセッション、ローカル接続コンソール、または RSC コンソールを通して、ホットプラグ操作を実行できます。この方法は、Solaris cfgadm(1M) コマンドを必要とし、各スロットの近くに位置する LED を使用して、問題のカードの着脱箇所を示します。

このホットプラグの 2 つの方式では、各 PCI スロットの近くに位置している状態表示 LED を使用します。状態表示 LED は、スロットからのカードの着脱が安全なとき、および操作の成功または失敗を示します。Sun Fire 880 ホットプラグ状態表示 LED についての詳細は、スロット LED についてを参照してください。


注 -

使用する方式に関係なく、ホットプラグの取り外し操作を準備するため、多くの場合に追加の管理手順の実行が必要になります。取り外し操作の実行前に、カードに常駐しているデバイスが、現在使用中でないことを確認する必要があります。現在使用中のデバイスを特定し、手動で停止するには、mount(1M)umount(1M)swap(1M)ifconfig(1M)ps(1) などの Solaris オペレーティング環境標準コマンドを使用します。


PCI ホットプラグ手順についての詳細は、第 2 章「動的再構成の使用方法」を参照してください。

動的再構成とマルチパスソフトウェアについて

DR は、マルチパスソフトウェアが必須ではありませんが、連携して動作します。マルチパスソフトウェアは、DR 操作の準備のために、入出力コントローラ間で入出力操作を切り替える場合に使用できます。DR とマルチパスソフトウェアを組み合わせて使用すると、システム動作を中断することなく、PCI コントローラカードの取り外し、交換、または非アクティブにできます。なお、この場合には、冗長ハードウェアが必要になります。すなわち、取り外しまたは交換対象のカードと同じデバイス (1 つ以上) に接続される代替入出力コントローラを、システムが装備する必要があります。代替コントロールは、別の PCI カードに常駐するか、Sun Fire 880 システムマザーボードまたは入出力ボードに組み込まれていなければなりません。マルチパスソフトウェアについては、『Sun Fire 880 サーバー オーナーマニュアル』を参照してください。

動的再構成の要件について

DR 操作が成功するには、あるシステム要件を満たす必要があります。DR 操作を成功させる要件を次に要約し、以降の節で詳述します。

切り離し可能性

動作中のオペレーティング環境から、PCI カードを正常に切り離すには、次の条件を満たす必要があります。

切り離し安全デバイスドライバ

動作中のオペレーティング環境から PCI カードの取り外しを成功させるには、カード上の各デバイスが、切り離し安全なドライバを装備していなければなりません。切り離し安全 (detach-safe) ドライバは、そのインスタンスの 1 つを閉じている状態で、システムの別の箇所で使用されている同様なデバイスに対応するため、別のインスタンスを開いたままにできます。切り離しが安全とみなされるには、ドライバは、DDI_DETACH と呼ばれる基本的なデバイスドライバインタフェース・デバイスカーネルインタフェース (DDI/DKI) 機能を実行できなければなりません。DDI_DETACH 機能をサポートしないドライバはすべて、切り離し危険 (detach-unsafe) と呼ばれます。

サンは、切り離し安全デバイスドライバを使用する、さまざまなホットプラグ可能な PCI カードを提供しています。切り離しが安全なドライバを使用しているサンの PCI カードの最新リストについては、『Sun Fire 880 サーバー ご使用にあたって』を参照するか、購入先にお問い合わせください。


注 -

多数のサン以外のドライバ (サン以外のベンダーから購入するドライバ) は、DDI_DETACH 機能をサポートしません。サンでは、サン以外の PCI カードの適正確認や装着を行うときに、添付されているドライバの機能テストを実施してから、実用環境で使用されることを推奨しています。


切り離し危険ドライバをもつ PCI カードの取り外しは可能ですが、その手順はかなり複雑になります。取り外すには、次のようにします。

  1. カード上の切り離し危険ドライバの使用をすべて停止します。

  2. 同じ切り離し危険ドライバを共有している、システムの他のデバイスの使用をすべて停止します。

  3. 問題のドライバのインスタンスをすべて閉じ、影響するすべてのドライバを組み込み解除します。

詳細は、切り離し危険ドライバを使用した PCI カードを取り外す方法を参照してください。

重要なシステム資源

重要なシステム資源に対する代替パスが使用できないかぎり、資源を制御している PCI カードを動的に取り外すことはできません。代替パスは別の PCI カードか、あるいはシステムマザーボード、またはシステム入出力ボードに組み込まれているオンボードコントローラを通して使用できなければなりません。カードを取り外す前に、重要な資源の制御を代替パスに切り替えておく必要があります (なお、マルチパスソフトウェアには、この切り替えを自動的に行うものがあります)。重要システム資源の例には、システム起動ディスク、スワップ空間、および一次ネットワークインタフェースがあります。

一部のカードは、取り外しできません。代替パスが使用できない起動ドライブを制御している PCI カードは、切り離せません。

可能であれば、システムのスワップ空間は、別のボード上のコントローラに接続されている 2 つ以上のディスク上に置きます。たとえば、スワップ空間の一部を PCI ホストアダプタカードによって制御する一方、残りの空間をシステムのオンボードコントローラに制御させることも可能です。このような構成では、スワップ空間が、複数のコントローラからアクセス可能になり、追加のスワップ空間が、swap(1M) コマンドにより動的構成が可能になるため、特定のスワップパーティションが、重要システム資源ではなくなります。


注 -

ディスクスワップ空間を制御している PCI カードを取り外す前に、システムの残りのメモリーとディスクスワップ空間が、現在実行中のプログラムに対応するだけ十分大きいことを確認する必要があります。


動的再構成の制限事項について

故障カード


注意 - 注意 -

故障カードの挿入は、システムクラッシュの原因となる場合があります。正常に動作することが確認されているカードだけを使用してください。


PCI カードをホットプラグする場合、重大な障害のある PCI カードを新しく挿入すると、電源投入時に、カードの接続先のバスセグメントに障害をもたらす危険性があるため、注意してください。

FC-AL ディスクアレイ

Sun StorEdgeTM A5000 ディスクアレイの場合、ファームウェアのバージョンは、ST19171FC 0413 以上である必要があります。