Solaris 8 のインストール (上級編)

第 22 章 カスタム JumpStart の概要

この章では、カスタム JumpStart のインストール処理について紹介し、全体の概要を示します。

カスタム JumpStart とは

カスタム JumpStart は、あらかじめ作成したプロファイルを使って、複数のシステムのインストールやアップグレードを自動的にかつ同時に行うことができるコマンド行インタフェースです。プロファイルには、どのようにソフトウェアをインストールするかを定義します。さらに、インストール前とインストール後に実行する作業を、シェルスクリプトを使用して指定することができます。システムのインストールまたはアップグレードにどのプロファイルとスクリプトを使用するかをユーザーが選択すると、それらの選択にもとづいて処理が行われます。また、sysidcfg ファイルを使用して構成情報を指定することにより、カスタム JumpStart インストールを完全に自動化することも可能です。

以下に、1 例を挙げてカスタム JumpStart の処理を説明します。この事例では、システムは次のパラメータを指定して設定する必要があるとします。

まず、システム管理者はシステムグループごとに rules ファイルとプロファイルを作成する必要があります。rules ファイルは、Solaris ソフトウェアをインストールするシステムグループごと (または 1 つのシステム) のルールが入ったテキストファイルです。各ルールは 1 つ以上のシステム属性にもとづいてシステムグループを識別し、各グループをプロファイルにリンクします。

プロファイルは、グループ内の各システムに Solaris ソフトウェアがどのようにインストールされるかを定義するテキストファイルです。rules ファイルとプロファイルは、JumpStart ディレクトリに置かれている必要があります。

この例の場合、システム管理者は 2 つの異なるルールで rules ファイルを作成します。1 つはエンジニアリンググループ用のルールで、もう 1 つはマーケティンググループ用のルールです。ルールごとに、システムのプラットフォームグループを使用して、グループを区別できます。エンジニアリンググループは SPARC システムを持っていて、マーケティンググループは IA システムを持っています。

各ルールには、適切なプロファイルへのリンクも含まれています。たとえば、エンジニアリンググループ用のルールでは、エンジニアリンググループ用に作成した eng_profile というプロファイルへのリンクを追加します。マーケティンググループ用のルールでは、マーケティンググループ用に作成した market_profile というプロファイルへのリンクを追加します。

rules ファイルとプロファイルは、フロッピーディスクまたはサーバー上に保存できます。

rules ファイルとプロファイルを作成した後、check スクリプトを使用して、これらのファイルの妥当性を検査する必要があります。check スクリプトが正常に動作する場合、rules.ok ファイルが作成されます。rules.okrules ファイルの生成バージョンであり、JumpStart プログラムによって Solaris ソフトウェアのインストールに使用されます。

JumpStart プログラムが Solaris ソフトウェアをインストールする方法

rules ファイルとプロファイルの検証が終わると、カスタム JumpStart インストールを開始できます。JumpStart プログラムは、rules.ok ファイルを読み取ります。続いて、Solaris ソフトウェアがインストールされるシステムに一致するシステム属性を持つ最初のルールを検索します。一致するルールが見つかると、JumpStart プログラムはそのルール内に指定されているプロファイルを使用してシステムに Solaris ソフトウェアをインストールします。

図 22–1 は、ネットワークに接続されていないスタンドアロン型のシステムでカスタム JumpStart インストールがどのように行われるかを示しています。この例では、システム管理者は Pete のシステムでカスタム JumpStart インストールを開始しています。JumpStart プログラムは、システムのフロッピーディスクドライブに挿入されているフロッピーディスク上の rules ファイルにアクセスし、rule 2 をシステムに対応付けます。rule 2 には、JumpStart プログラムが Pete のプロファイルを使用して Solaris ソフトウェアをインストールするように指定されています。JumpStart プログラムは、Pete のプロファイルを読み取り、このプロファイル内に指定されている指示にもとづいて Solaris ソフトウェアをインストールします。

図 22–1 カスタム JumpStart インストールの動作: ネットワークに接続されていないシステムの例

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図 22–2 は、ネットワーク上の複数のシステムが存在する場合にカスタム JumpStart インストールがどのように行われるかを示しています。すでに個別のプロファイルが設定され、1 台のサーバーにまとめて保存されています。システム管理者は、エンジニアリング部のシステムの中の 1 台でカスタム JumpStart インストールを開始します。JumpStart プログラムは、サーバー上の JumpStart/ ディレクトリに存在する rules ファイルにアクセスします。JumpStart プログラムは、エンジニアリング部のシステムを rule 1 に対応付けます。rule 1 には、JumpStart プログラムが エンジニアリング部のプロファイルを使用してSolaris ソフトウェアをインストールするように指定されています。JumpStart はエンジニアリング部のプロファイルを読み取り、このプロファイル内に指定されている指示にもとづいて Solaris ソフトウェアをインストールします。

図 22–2 カスタム JumpStart インストールの動作: ネットワークに接続されているシステムの例

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図 22–3 は、JumpStart プログラムがカスタム JumpStart ファイルを検索する順番を示しています。

図 22–3 カスタム JumpStart インストール実行時の流れ

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