Sun Java System Application Server Enterprise Edition 8.1 2005Q2 管理ガイド

第 11 章 トランザクション

トランザクションを使用すると、1 つ以上のステップがそれ以上分割不可能な作業単位にまとめられるため、データの完全性と整合性が保証されます。この章には次の節が含まれています。

トランザクションについて

トランザクションとは

トランザクションは、すべて正常に完了することが必要なアプリケーションで、周到に用意された一連のアクションです。正常に完了しない場合、各アクションで行われたすべての変更が取り消されます。たとえば、当座預金から普通預金に資金を移動するのは次の手順を実行するトランザクションになります。

  1. 当座預金口座にその移動をカバーするだけの金額があるかどうかを確認します。

  2. 当座預金に十分なお金が入っている場合は、当座預金の金額を借り方に記帳します。

  3. その金額を普通預金口座の貸し方に記帳します。

  4. その移動を当座預金口座ログに記録します。

  5. その移動を普通預金口座ログに記録します。

これらの手順のいずれが失敗すると、先行する手順によって行われた変更がすべて取り消されます。当座預金口座と普通預金口座はこのトランザクションが始まる前と同じ状態になる必要があります。このイベントは「ロールバック」と呼ばれます。すべての手順が正常に完了すると、トランザクションは「コミット」状態になります。 トランザクションはコミットかロールバックのどちらかで終了します。

J2EE テクノロジのトランザクション

J2EE テクノロジのトランザクション処理には、次の 5 つの関係要素が含まれます。

これらの各エンティティーは、次に説明する API や機能を実装することにより、信頼性のあるトランザクション処理を実現しています。

トランザクションに関する管理コンソールタスク

Application Server は、管理コンソールの設定に基づいてトランザクションを処理します。

トランザクションの設定

この節では、トランザクションの設定方法について説明します。

トランザクションに関する追加情報については、次の各節を参照してください。

ProcedureApplication Server のトランザクションからの回復方法を設定する

トランザクションは、サーバークラッシュまたはリソースマネージャークラッシュのいずれかにより未完了になる可能性があります。これらの未完了トランザクションを完了させ、障害を回復させる必要があります。Application Server は、これらの障害を回復し、サーバーの起動時にそのトランザクションを完了するように設計されています。

リカバリを行っている間にリソースにアクセスできなくなった場合は、トランザクションを回復しようとしてサーバーの再起動が遅れた可能性があります。

トランザクションが複数のサーバーにわたっている場合は、トランザクションを開始したサーバーがトランザクションの結果を取得しようとしてほかのサーバーに問い合わせる場合があります。ほかのサーバーにアクセスできない場合、そのトランザクションは「特殊な結果判別」フィールドを使用してその結果を判別します。

手順
  1. ツリーコンポーネントで、「設定」ノードを選択します。

  2. 設定するインスタンスを選択します。

    • 特定のインスタンスを設定するには、そのインスタンスの設定ノードを選択します。たとえば、デフォルトインスタンス server の場合は、server-config ノードを選択します。

    • すべてのインスタンスのデフォルト値を設定するには、default-config ノードを選択します。

  3. 「トランザクションサービス」ノードを選択します。

  4. 未完了なトランザクションのリカバリを有効にするには、「再起動時」フィールドで「回復」にチェックマークを付けます。

  5. 「再試行タイムアウト」フィールドに、Application Server がアクセスできないサーバーに対して接続を試みる時間を秒単位で設定します。デフォルト値は 10 分 (600 秒) です。

  6. 「特殊な結果判別」フィールドに、トランザクションでアクセスできないサーバーのポリシーを設定します。

    このフィールドを「コミット」に設定する適切な理由がないかぎり、「特殊な結果判別」を「ロールバック」のままにしておきます。未確定なトランザクションのコミットは、アプリケーションのデータの整合性を損なう可能性があります。

  7. 「保存」をクリックします。

  8. Application Server を再起動します。

Procedureトランザクションのタイムアウト値を設定する

デフォルトでは、サーバーはトランザクションをタイムアウトしないようになっています。つまり、サーバーはトランザクションの完了を待機し続けます。トランザクションのタイムアウト値を設定して、トランザクションが設定された時間内に完了しない場合、Application Server はトランザクションをロールバックします。

手順
  1. ツリーコンポーネントで、「設定」ノードを選択します。

  2. 設定するインスタンスを選択します。

    • 特定のインスタンスを設定するには、そのインスタンスの設定ノードを選択します。たとえば、デフォルトインスタンス server の場合は、server-config ノードを選択します。

    • すべてのインスタンスのデフォルト値を設定するには、default-config ノードを選択します。

  3. 「トランザクションサービス」ノードを選択します。

  4. 「トランザクションタイムアウト」フィールドに、トランザクションがタイムアウトする秒数を入力します。

    トランザクションタイムアウトのデフォルト値は 0 秒です。これにより、トランザクションのタイムアウトは無効になります。

  5. 「保存」をクリックします。

  6. Application Server を再起動します。

Procedureトランザクションログの場所を設定する

トランザクションログは、関連リソースのデータの整合性を維持して障害を回復するために、各トランザクションについての情報を記録します。トランザクションログは、「トランザクションログの位置」フィールドで指定したディレクトリの tx サブディレクトリに保存されます。これらのログは人間が読み取れるものではありません。

手順
  1. ツリーコンポーネントで、「設定」ノードを選択します。

  2. 設定するインスタンスを選択します。

    • 特定のインスタンスを設定するには、そのインスタンスの設定ノードを選択します。たとえば、デフォルトインスタンス server の場合は、server-config ノードを選択します。

    • すべてのインスタンスのデフォルト値を設定するには、default-config ノードを選択します。

  3. 「トランザクションサービス」ノードを選択します。

  4. 「トランザクションログの位置」フィールドに、トランザクションログの位置を入力します。

    tx サブディレクトリが作成され、トランザクションログがそのディレクトリの下に保存されます。

    デフォルト値は ${com.sun.aas.instanceRoot}/logs です。${com.sun.aas.instanceRoot} 変数はインスタンスの名前であり、Application Server インスタンスの起動時に設定されます。${com.sun.aas.instanceRoot} の値を表示するには、「実際の値」をクリックします。

  5. 「保存」をクリックします。

  6. Application Server を再起動します。

Procedureキーポイント間隔を設定する

キーポイント処理によって、トランザクションログファイルが圧縮されます。キーポイント間隔とは、ログに対して実行されるキーポイント処理の間のトランザクション数のことです。キーポイント処理によって、トランザクションログファイルのサイズを小さくすることができます。キーポイント間隔を大きくすると (例: 2048)、トランザクションログファイルが大きくなりますが、キーポイント処理が少なくなるのでパフォーマンスが向上する可能性があります。キーポイント間隔を小さくすると (例: 256)、ログファイルのサイズが小さくなりますが、キーポイント処理が多くなるので、パフォーマンスがわずかに低下します。

手順
  1. ツリーコンポーネントで、「設定」ノードを選択します。

  2. 設定するインスタンスを選択します。

    • 特定のインスタンスを設定するには、そのインスタンスの設定ノードを選択します。たとえば、デフォルトインスタンス server の場合は、server-config ノードを選択します。

    • すべてのインスタンスのデフォルト値を設定するには、default-config ノードを選択します。

  3. 「トランザクションサービス」ノードを選択します。

  4. 「キーポイント間隔」フィールドに、キーポイント処理間のトランザクション数を入力します。

    デフォルト値は 2048 です。

  5. 「保存」をクリックします。

  6. Application Server を再起動します。