Sun Cluster データサービス開発ガイド (Solaris OS 版)

xfnts_start メソッド

データサービスリソースを含むリソースグループがクラスタノードまたはゾーン上でオンラインになったとき、あるいは、リソースが有効になったとき、RGM はそのクラスタノードまたはゾーン上で Start メソッドを実行します。サンプルの SUNW.xfnts リソースタイプでは、xfnts_start メソッドが当該ノードまたはゾーン上で xfs デーモンを起動します。

xfnts_start メソッドは scds_pmf_start() を呼び出して、PMF の制御下でデーモンを起動します。PMF は、自動障害通知、再起動機能、および障害モニターとの統合を提供します。


注 –

xfnts_start は、scds_initialize() を最初に呼び出し、これによって、必要な「ハウスキーピング」関数が実行されます。詳細については、scds_initialize() 関数」と、scds_initialize(3HA) のマニュアルページを参照してください。


X Font Server の起動前のサービスの検証

次に示すように、xfnts_start メソッドは X Font Server を起動する前に svc_validate() を呼び出して、xfs デーモンをサポートするための適切な構成が存在していることを確認します。

rc = svc_validate(scds_handle);
   if (rc != 0) {
      scds_syslog(LOG_ERR,
          "Failed to validate configuration.");
      return (rc);
   }

詳細については、xfnts_validate メソッド」を参照してください。

svc_start() によるサービスの起動

xfnts_start メソッドは、xfnts.c ファイルで定義されている svc_start() メソッドを呼び出して、xfs デーモンを起動します。ここでは、svc_start() について説明します。

以下に、xfs デーモンを起動するためのコマンドを示します。


# xfs -config config-directory/fontserver.cfg -port port-number

Confdir_list 拡張プロパティーには config-directory を指定します。一方、Port_list システムプロパティーには port-number を指定します。クラスタ管理者はデータサービスを構成するときに、これらのプロパティーの特定の値を指定します。

xfnts_start メソッドはこれらのプロパティーを文字列配列として宣言します。xfnts_start メソッドは、scds_get_ext_confdir_list() および scds_get_port_list() 関数を使用して、クラスタ管理者が設定した値を取得します。これらの関数の詳細については、scds_property_functions(3HA) のマニュアルページを参照してください。

scha_str_array_t *confdirs;
scds_port_list_t    *portlist;
scha_err_t   err;

   /* confdir_list プロパティーから構成ディレクトリを取得する。*/
   confdirs = scds_get_ext_confdir_list(scds_handle);

   (void) sprintf(xfnts_conf, "%s/fontserver.cfg", confdirs->str_array[0]);

   /* Port_list プロパティーから XFS が使用するポートを取得する。*/
   err = scds_get_port_list(scds_handle, &portlist);
   if (err != SCHA_ERR_NOERR) {
      scds_syslog(LOG_ERR,
          "Could not access property Port_list.");
      return (1);
   }

confdirs 変数は配列の最初の要素 (0) を指していることに注意してください。

xfnts_start メソッドは sprintf() を使用して xfs のコマンド行を形成します。

/* xfs デーモンを起動するコマンドを構築する。 */
   (void) sprintf(cmd,
       "/usr/openwin/bin/xfs -config %s -port %d 2>/dev/null",
       xfnts_conf, portlist->ports[0].port);

出力が /dev/null にリダイレクトされ、デーモンが生成するメッセージが抑制されることに注意してください。

次に示すように、xfnts_start メソッドは xfs コマンド行を scds_pmf_start() に渡して、PMF の制御下でデータサービスを起動します。

scds_syslog(LOG_INFO, "Issuing a start request.");
   err = scds_pmf_start(scds_handle, SCDS_PMF_TYPE_SVC,
      SCDS_PMF_SINGLE_INSTANCE, cmd, -1);

   if (err == SCHA_ERR_NOERR) {
      scds_syslog(LOG_INFO,
          "Start command completed successfully.");
   } else {
      scds_syslog(LOG_ERR,
          "Failed to start HA-XFS ");
   }

scds_pmf_start() を呼び出すときは、次のことに注意してください。

svc_pmf_start()portlist 構造体に割り当てられているメモリーを解放してから戻ります。

scds_free_port_list(portlist);
return (err);

svc_start() からの復帰

svc_start() から正常に復帰した場合でも、基になるアプリケーションの起動に失敗することがあります。そのため、svc_start() はアプリケーションを検証して、アプリケーションが動作していることを確認してから、正常終了のメッセージを戻す必要があります。検証では、アプリケーションがただちに利用できない理由として、アプリケーションの起動にはある程度時間がかかるということを考慮する必要があります。svc_start() メソッドは xfnts.c ファイルで定義されている svc_wait() を呼び出して、アプリケーションが動作していることを確認します。

/* サービスが完全に起動するまで待つ。 */
   scds_syslog_debug(DBG_LEVEL_HIGH,
       "Calling svc_wait to verify that service has started.");

   rc = svc_wait(scds_handle);

   scds_syslog_debug(DBG_LEVEL_HIGH,
       "Returned from svc_wait");

   if (rc == 0) {
      scds_syslog(LOG_INFO, "Successfully started the service.");
   } else {
      scds_syslog(LOG_ERR, "Failed to start the service.");
   }

svc_wait() 関数は scds_get_netaddr_list() を呼び出して、アプリケーションを検証するのに必要なネットワークアドレスリソースを取得します。

/* 検証に使用するネットワークリソースを取得する。 */
   if (scds_get_netaddr_list(scds_handle, &netaddr)) {
      scds_syslog(LOG_ERR,
          "No network address resources found in resource group.");
      return (1);
   }

   /* ネットワークリソースが存在しない場合は、エラーを戻す。 */
   if (netaddr == NULL || netaddr->num_netaddrs == 0) {
      scds_syslog(LOG_ERR,
          "No network address resource in resource group.");
      return (1);
   }

svc_wait() 関数は Start_timeout および Stop_timeout 値を取得します。

svc_start_timeout = scds_get_rs_start_timeout(scds_handle)
   probe_timeout = scds_get_ext_probe_timeout(scds_handle)

サーバーの起動に時間がかかることを考慮して、svc_wait()scds_svc_wait() を呼び出して、Start_timeout 値の 3 % であるタイムアウト値を渡します。svc_wait() 関数は svc_probe() 関数を呼び出して、アプリケーションが起動していることを確認します。svc_probe() メソッドは指定されたポート上でサーバーとの単純ソケット接続を確立します。ポートへの接続が失敗した場合、svc_probe() は値 100 を戻して、致命的な障害であることを示します。ポートとの接続は確立したが、切断に失敗した場合、svc_probe() は値 50 を戻します。

svc_probe() が完全にまたは部分的に失敗した場合、svc_wait()scds_svc_wait() をタイムアウト値 5 で呼び出します。scds_svc_wait() メソッドは、検証の周期を 5 秒ごとに制限します。また、このメソッドはサービスを起動しようとした回数も数えます。この回数が、リソースの Retry_interval プロパティーで指定された期限内にリソースの Retry_count プロパティーの値を超えた場合、scds_svc_wait() 関数は失敗します。この場合、svc_start() 関数も失敗します。

#define    SVC_CONNECT_TIMEOUT_PCT    95
#define    SVC_WAIT_PCT       3
   if (scds_svc_wait(scds_handle, (svc_start_timeout * SVC_WAIT_PCT)/100)
      != SCHA_ERR_NOERR) {

      scds_syslog(LOG_ERR, "Service failed to start.");
      return (1);
   }

   do {
      /*
       * ネットワークリソースの IP アドレスと portname 上で
       * データサービスを検証する。
       */
      rc = svc_probe(scds_handle,
          netaddr->netaddrs[0].hostname,
          netaddr->netaddrs[0].port_proto.port, probe_timeout);
      if (rc == SCHA_ERR_NOERR) {
         /* 成功。リソースを解放して終了。 */
         scds_free_netaddr_list(netaddr);
         return (0);
      }

       /* サービスが何度も失敗する場合は、scds_svc_wait() を呼び出す。
      if (scds_svc_wait(scds_handle, SVC_WAIT_TIME)
         != SCHA_ERR_NOERR) {
         scds_syslog(LOG_ERR, "Service failed to start.");
         return (1);
      }

   /* RGM のタイムアウトを待ってプログラムを終了する。 */
   } while (1);

注 –

xfnts_start メソッドは終了する前に scds_close() を呼び出して、scds_initialize() が割り当てたリソースを再利用します。詳細については、scds_initialize() 関数」と、scds_close(3HA) のマニュアルページを参照してください。