Sun Cluster データサービス開発ガイド (Solaris OS 版)

RGM モデル

ここでは、基本的な用語をいくつか紹介し、RGM とそれに関連するインタフェースについて詳細に説明します。

RGM は、「リソースタイプ」、「リソース」、「リソースグループ」という 3 種類の相互に関連するオブジェクトを処理します。これらのオブジェクトを紹介するために、次のような例を使用します。

開発者は、既存の Oracle DBMS アプリケーションを高可用性にするリソースタイプ ha-oracle を実装します。エンドユーザーは、マーケティング、エンジニアリング、および財務ごとに異なるデータベースを定義し、それぞれのリソースタイプを ha-oracle にします。クラスタ管理者は、上記リソースを異なるリソースグループに配置することによって、異なるノードまたはゾーン上で実行したり、個別にフェイルオーバーできるようにします。開発者は、もう 1 つのリソースタイプ ha-calendar を作成し、Oracle データベースを必要とする高可用性のカレンダサーバーを実装します。クラスタ管理者は、財務カレンダ用のリソースを財務データベースリソースと同じリソースグループに配置します。そうすることで、両方のリソースが必ず同じノード上またはゾーン内で動作し、一緒にフェイルオーバーするようになります。

リソースタイプ

リソースタイプは次のものから構成されます。

RGM は、リソースタイププロパティーを使って特定のタイプのリソースを管理します。


注 –

リソースタイプは、ソフトウェアアプリケーションだけでなく、ネットワークアドレスなど、そのほかのシステムリソースも表します。


開発者は、リソースタイプのプロパティーを指定し、プロパティーの値をリソースタイプ登録 (RTR) ファイルに設定します。RTR ファイルは、「リソースとリソースタイププロパティーの設定」、および rt_reg(4) のマニュアルページで説明されている形式に従います。RTR ファイルの例については、「リソースタイプ登録ファイルの定義」も参照してください。

「リソースタイププロパティー」に、リソースタイププロパティーのリストを示します。

クラスタ管理者は、リソースタイプの実装と実際のアプリケーションをクラスタにインストールし、登録します。登録の手続きによって、RTR ファイルの情報がクラスタ構成に入力されます。データサービスの登録手順については、『Sun Cluster データサービスの計画と管理 (Solaris OS 版)』を参照してください。

リソース

リソースは、そのリソースタイプからプロパティーと値を継承します。さらに、開発者は、RTR ファイルでリソースプロパティーを宣言できます。「リソースのプロパティー」にはリソースプロパティーのリストがあります。

クラスタ管理者は、RTR ファイルにプロパティーがどのように指定されているかに応じて、特定のプロパティーの値を変更できます。たとえば、プロパティー定義は値の許容範囲を指定できます。プロパティー定義には、いつプロパティーを調整できるかを指定することもできます。つまり、「調整不可」、「常時調整可」、「作成されたとき (リソースがクラスタに追加されたとき)」または「リソースが無効にされたとき」を指定できます。このような仕様の範囲内で、クラスタ管理者は管理コマンドを使用することでプロパティーを変更できます。

クラスタ管理者は、同じタイプのリソースを多数作成して、各リソースに独自の名前とプロパティー値のセットを持たせることができます。これによって、使用しているアプリケーションの複数のインスタンスをクラスタ上で実行できます。このとき、各インスタンスにはクラスタ内で一意の名前が必要です。

リソースグループ

各リソースはリソースグループに構成する必要があります。RGM は、同じグループのすべてのリソースを同じノード上または同じゾーン内で一緒にオンラインかオフラインにします。RGM は、リソースグループをオンラインまたはオフラインにするときに、グループ内の個々のリソースに対してコールバックメソッドを実行します。

リソースグループが現在オンラインになっているノードまたはゾーンのことを、「主ノード」または「主ゾーン」と呼びます。リソースグループは、その主ノードによってマスター (制御) されます。各リソースグループは、関連付けられた Nodelist プロパティーを持っており、これによってリソースグループの「潜在的な主ノード」または「マスター」を識別します。クラスタ管理者は Nodelist プロパティーを設定します。

リソースグループはプロパティーセットも持っています。このようなプロパティーには、クラスタ管理者が設定できる構成プロパティーや、RGM が設定してリソースグループのアクティブな状態を反映する動的プロパティーがあります。

RGM は、2 種類のリソースグループ、フェイルオーバーとスケーラブルを定義します。フェイルオーバーリソースグループは、いつも 1 つのノードまたはゾーン上だけでオンラインにできます。スケーラブルリソースグループは、同時に複数のノードまたはゾーン上でオンラインにできます。RGM は、各種類のリソースグループを作成するためのプロパティーセットを提供します。このようなプロパティーの詳細については、「データサービスをクラスタに転送する方法」「コールバックメソッドの実装」を参照してください。

「リソースグループのプロパティー」には、リソースグループプロパティーのリストがあります。