Sun Cluster データサービス開発ガイド (Solaris OS 版)

すべてのメソッドに共通な機能の提供

この節では、サンプルのデータサービスのすべてのコールバックメソッドに使用する次の機能について説明します。

コマンドインタプリタの指定およびパスのエクスポート

シェルスクリプトの最初の行は、コマンドインタプリタを指定します。サンプルのデータサービスの各メソッドスクリプトは、次に示すように、コマンドインタプリタを指定します。

#!/bin/ksh

サンプルアプリケーション内のすべてのメソッドスクリプトは、Sun Cluster のバイナリとライブラリへのパスをエクスポートします。ユーザーの PATH 設定には依存しません。

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# MAIN
#######################################################################

export PATH=/bin:/usr/bin:/usr/cluster/bin:/usr/sbin:/usr/proc/bin:$PATH

PMF_TAGSYSLOG_TAG 変数の宣言

Validate を除くすべてのメソッドスクリプトは、pmfadm コマンドを使用して、データサービスまたはモニターのいずれかを起動または停止するか、あるいはリソース名を渡します。各スクリプトは変数 PMF_TAG を定義し、pmfadm コマンドに渡すことによって、データサービスまたはモニターを識別できます。

同様に、各メソッドスクリプトは、logger コマンドを使用してメッセージをシステムログに記録します。各スクリプトは変数 SYSLOG_TAG を定義し、-t オプションで logger に渡すことによって、メッセージが記録されるリソースのリソースタイプ、リソース名、リソースグループを識別できます。

すべてのメソッドは、次に示す例と同じ方法で SYSLOG_TAG を定義します。dns_probedns_svc_start dns_svc_stopdns_monitor_check の各メソッドは、次のように PMF_TAG を定義します。なお、pmfadmloggerdns_svc_stop メソッドのものを使用しています。

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# MAIN
#########################################################################

PMF_TAG=$RESOURCE_NAME.named

SYSLOG_TAG=$RESOURCETYPE_NAME,$RESOURCEGROUP_NAME,$RESOURCE_NAME

   # Send a SIGTERM signal to the data service and wait for 80% of the
   # total timeout value.
   pmfadm -s $PMF_TAG.named -w $SMOOTH_TIMEOUT TERM
   if [ $? -ne 0 ]; then
      logger -p ${SYSLOG_FACILITY}.info \
          -t [$SYSLOG_TAG] \
          “${ARGV0} Failed to stop HA-DNS with SIGTERM; Retry with \
           SIGKILL”

dns_monitor_startdns_monitor_stopdns_update の各メソッドは、次のように PMF_TAG を定義します。なお、pmfadmdns_monitor_stop メソッドのものを使用しています。

#####################################################################
# MAIN
#####################################################################

PMF_TAG=$RESOURCE_NAME.monitor
SYSLOG_TAG=$RESOURCETYPE_NAME,$RESOURCEGROUP_NAME,$RESOURCE_NAME
...
# See if the monitor is running, and if so, kill it. 
if pmfadm -q $PMF_TAG.monitor; then
   pmfadm -s $PMF_TAG.monitor KILL

関数の引数の構文解析

RGM は、次に示すように、Validate を除くすべてのコールバックメソッドを実行します。

method-name -R resource-name -T resource-type-name -G resource-group-name

method_name は、コールバックメソッドを実装するプログラムのパス名です。データサービスは、各メソッドのパス名を RTR ファイルに指定します。このようなパス名は、RTR ファイルの RT_basedir プロパティーに指定されたディレクトリからのパスになります。たとえば、サンプルのデータサービスの RTR ファイルでは、ベースディレクトリとメソッド名は次のように指定されます。

RT_basedir=/opt/SUNWsample/bin;
Start = dns_svc_start;
Stop =  dns_svc_stop;
...

コールバックメソッドの引数はすべて、次のようにフラグ付きの値として渡されます。-R 引数 はリソースインスタンスの名前を示します。-T 引数ははリソースのタイプを示します。-G 引数 はリソースが構成されているグループを示します。コールバックメソッドの詳細は、rt_callbacks(1HA)のマニュアルページを参照してください。


注 –

Validate メソッドを呼び出すときは、追加の引数 (リソースのプロパティー値と呼び出しが行われるリソースグループ) を使用します。詳細は、「プロパティー更新の処理」を参照してください。


各コールバックメソッドには、渡された引数を構文解析する関数が必要です。すべてのコールバックメソッドには同じ引数が渡されるので、データサービスは、アプリケーション内のすべてのコールバックメソッドで使用される単一の構文解析関数を提供します。

次のサンプルに、サンプルアプリケーションのコールバックメソッドに使用される parse_args() 関数を示します。

#########################################################################
# Parse program arguments.
#
function parse_args # [args ...]
{
      typeset opt

      while getopts 'R:G:T:' opt
      do
             case "$opt" in
             R)
                  # Name of the DNS resource.
                  RESOURCE_NAME=$OPTARG
                  ;;
             G)
                  # Name of the resource group in which the resource is
                  # configured.
                  RESOURCEGROUP_NAME=$OPTARG
                  ;;
             T)
                  # Name of the resource type.
                  RESOURCETYPE_NAME=$OPTARG
                  ;;
             *)
                  logger -p ${SYSLOG_FACILITY}.err \
                  -t [$RESOURCETYPE_NAME,$RESOURCEGROUP_NAME,$RESOURCE_NAME] \
                  "ERROR: Option $OPTARG unknown"
                  exit 1
                      ;;
             esac
    done
}

注 –

サンプルのアプリケーションの PROBE メソッドはユーザー定義メソッドですが、Sun Cluster コールバックメソッドと同じ引数で呼び出されます。したがって、このメソッドには、ほかのコールバックメソッドにより使用されるものと同じ構文解析関数が含まれています。


構文解析関数は、次に示すように、MAIN の中で呼び出されます。

parse_args “$@”

エラーメッセージの生成

エンドユーザーに対してエラーメッセージを出力するには、コールバックメソッドは syslog() 関数を使用する必要があります。サンプルのデータサービスのすべてのコールバックメソッドは、次に示すように、scha_cluster_get コマンドを使用し、クラスタログ用に使用されている syslog() 関数番号を取得します。

SYSLOG_FACILITY=`scha_cluster_get -O SYSLOG_FACILITY`

この値はシェル変数 SYSLOG_FACILITY に格納されます。logger コマンドの機能として使用すると、エラーメッセージをクラスタログに記録できます。たとえば、サンプルのデータサービスの Start メソッドは、次に示すように、syslog() 関数を取得し、データサービスが起動したことを示すメッセージを記録します。

SYSLOG_FACILITY=`scha_cluster_get -O SYSLOG_FACILITY`
...
if [ $? -eq 0 ]; then
   logger -p ${SYSLOG_FACILITY}.err \
         -t [$SYSLOG_TAG] \
         "${ARGV0} HA-DNS successfully started"
fi

詳細は、scha_cluster_get(1HA)のマニュアルページを参照してください。

プロパティー情報の取得

ほとんどのコールバックメソッドは、データサービスのリソースとリソースタイプのプロパティーについての情報を取得する必要があります。このために、API は scha_resource_get() 関数を提供しています。

システム定義プロパティーと拡張プロパティーの両方が使用できます。システム定義プロパティーは事前に定義されています。拡張プロパティーは、データサービス開発者が RTR ファイルに定義します。

scha_resource_get() を使用してシステム定義プロパティーの値を取得するときは、-O オプションでプロパティーの名前を指定します。このコマンドは、プロパティーのだけを戻します。たとえば、サンプルのデータサービスの Monitor_start メソッドは検証プログラムを特定し、起動できるようにしておく必要があります。検証プログラムはデータサービスのベースディレクトリ (RT_basedir プロパティーが指すディレクトリ) 内に存在します。したがって、Monitor_start メソッドは、次に示すように、RT_basedir の値を取得し、その値を RT_BASEDIR 変数に格納します。

RT_BASEDIR=`scha_resource_get -O RT_basedir -R $RESOURCE_NAME -G \
$RESOURCEGROUP_NAME`

拡張プロパティーの場合、データサービス開発者は、このプロパティーが拡張プロパティーであることを示す -O オプションを使用する必要があります。また、最後の引数としてプロパティーの名前を指定する必要があります。拡張プロパティーの場合、このコマンドは、プロパティーのタイプと値の両方を戻します。たとえば、サンプルのデータサービスの検証プログラムは、次に示すように、Probe_timeout 拡張プロパティーのタイプと値を取得し、次に awk コマンドを使用して値だけを PROBE_TIMEOUT シェル変数に格納します。

probe_timeout_info=`scha_resource_get -O Extension \
-R $RESOURCE_NAME -G $RESOURCEGROUP_NAME Probe_timeout`
PROBE_TIMEOUT=`echo $probe_timeout_info | awk '{print $2}'`