Sun Cluster ソフトウェアのインストール (Solaris OS 版)

Sun Cluster の構成可能なコンポーネント

この節では、構成する Sun Cluster コンポーネントのガイドラインについて説明します。

適当な構成計画ワークシートに、次の情報を追加してください。

グローバルクラスタ名

グローバルクラスタ名は、Sun Cluster の構成時に指定します。グローバルクラスタ名は、企業内でグローバルに一意である必要があります。

ゾーンクラスタの命名方法については、「ゾーンクラスタ」を参照してください。

グローバルクラスタ投票ノード名

グローバルクラスタ内の投票ノードの名前は、Solaris OS でインストールしたときに物理ホストまたは仮想ホストに割り当てた名前と同じです。命名の要件の詳細については、hosts(4)のマニュアルページを参照してください。

単一ホストクラスタのインストールでは、デフォルトのクラスタ名は投票ノードの名前になります。

Sun Cluster の構成中に、グローバルクラスタでインストールするすべての投票ノード名を指定します。

ゾーンクラスタ内のノード名については、「ゾーンクラスタ」を参照してください。

ゾーン名

Solaris ブランドをサポートしているバージョンの Solaris 10 OS では、ブランド native の非大域ゾーンはリソースグループノードリストの有効な潜在ノードです。nodename:zonename という命名規則を使用して、Sun Cluster コマンドに非大域ゾーンを指定します。

大域ゾーンを指定する場合、投票ノード名を指定するだけで済みます。

非大域ゾーンのクラスタについては、「ゾーンクラスタ」を参照してください。

プライベートネットワーク


注 –

単一ホストのグローバルクラスタの場合、プライベートネットワークを構成する必要はありません。scinstall ユーティリティーは、クラスタでプライベートネットワークが使用されていなくても、自動的にデフォルトのプライベートネットワークアドレスとネットマスクを割り当てます。


Sun Cluster ソフトウェアは、Sun Cluster ソフトウェアで管理されるノード間および非大域ゾーン間の内部通信にプライベートネットワークを使用します。Sun Cluster 構成では、プライベートネットワーク上のクラスタインターコネクトへの接続が少なくとも 2 つ必要です。クラスタの最初のノードに Sun Cluster ソフトウェアを構成するときに、次のいずれかの方法でプライベートネットワークアドレスとネットマスクを指定します。

デフォルト以外のネットマスクを使用することを選択すると、scinstall ユーティリティーから、IP アドレス範囲でサポートするノードの数とプライベートネットワークの数を指定するように求められます。Solaris 10 OS でも、このユーティリティーから、サポートするゾーンクラスタの数を指定するように求められます。指定するグローバルノードの数には、プライベートネットワークを使用する、クラスタ化されていない非大域ゾーンの予測される数も含めるようにしてください。

このユーティリティーは、指定したノード、ゾーンクラスタおよびプライベートネットワークの数に対応する最小 IP アドレス範囲のネットマスクを計算します。計算されたネットマスクは、指定したノード (非大域ゾーンを含む)、ゾーンクラスタおよびプライベートネットワークの数よりも多くの数をサポートする場合があります。scinstall ユーティリティーはさらに、2 倍の数のノード、ゾーンクラスタおよびプライベートネットワークをサポートするための最低限のネットマスクとなる 2 番目のネットマスクも計算します。この 2 番目のネットマスクにより、クラスタは IP アドレス範囲を再構成する必要なしに、将来のノードとプライベートネットワークの数の増加に対応できます。

ユーティリティーから、どちらのネットマスクを選択するかを聞かれます。計算されたネットマスクのいずれかを選択するか、それ以外のネットマスクを指定することができます。指定するネットマスクは、最低でもユーティリティーに指定したノードとプライベートネットワークの数をサポートする必要があります。


注 –

投票ノード、非大域ゾーン、ゾーンクラスタ、プライベートネットワークなどの追加に対応するには、クラスタのプライベート IP アドレス範囲の変更が必要になる場合があります。

クラスタの確立後にプライベートネットワークアドレスとネットマスクを変更する方法については、『Sun Cluster のシステム管理 (Solaris OS 版)』「既存のクラスタのプライベートネットワークアドレスまたはアドレス範囲を変更する」を参照してください。これらの変更を行うには、クラスタを停止させる必要があります。

ただし、Solaris 10 OS では、cluster set-netprops コマンドを使用してネットマスクだけを変更すると、クラスタがクラスタモードのままになります。クラスタですでに構成されているゾーンクラスタの場合は、そのゾーンに割り当てられているプライベート IP サブネットとプライベート IP アドレスも更新されます。


デフォルト以外のプライベートネットワークアドレスを指定する場合は、アドレスは次の条件を満たす必要があります。

プライベートネットワークについての詳細は、『Solaris のシステム管理 (IP サービス)』「TCP/IP ネットワークの計画 (手順)」(Solaris 9 または Solaris 10) を参照してください。

プライベートホスト名

プライベートホスト名とは、プライベートネットワークインタフェースを介したノード間の通信に使用される名前のことです。プライベートホスト名は、グローバルクラスタまたはゾーンクラスタの Sun Cluster の構成中に自動的に作成されます。これらのプライベートホスト名は、clusternodenodeid -priv という命名規則に従います (nodeid は、内部ノード ID の数値です)。ノード ID 番号は、Sun Cluster の構成中に各投票ノードがクラスタメンバーとなる際に、自動的に各ノードに割り当てられます。グローバルクラスタの投票ノードとゾーンクラスタのノードは、どちらも同じプライベートホスト名を持ちますが、ホスト名はそれぞれ異なるプライベートネットワーク IP アドレスに解決されます。

グローバルクラスタの構成後に、clsetup(1CL)ユーティリティーを使用してプライベートホスト名を変更できます。この時点では、ゾーンクラスタノードのプライベートホスト名は変更できません。

Solaris 10 OS の場合、非大域ゾーンのプライベートホスト名の作成は任意です。非大域ゾーンのプライベートホスト名の作成には、命名規則はありません。

クラスタインターコネクト

クラスタインターコネクトは、クラスタノード間のプライベートネットワーク通信にハードウェアパスを提供します。各インターコネクトは、次のいずれかの方法で接続されるケーブルで構成されます。

クラスタインターコネクトの目的と機能の詳細は、『Sun Cluster Concepts Guide for Solaris OS』「Cluster Interconnect」を参照してください。


注 –

単一ホストのクラスタの場合、クラスタインターコネクトを構成する必要はありません。ただし、単一ホストのクラスタ構成にあとから投票ノードを追加する可能性がある場合は、将来の使用のためにクラスタインターコネクトを構成することもできます。


Sun Cluster の構成中に、 1 つまたは 2 つのクラスタインターコネクトに対して構成情報を指定します。

クラスタインターコネクトの確立後に、clsetup(1CL)ユーティリティーを使用して、追加のインターコネクトを合計 6 つまで構成できます。

クラスタインターコネクトハードウェアのガイドラインについては、『Sun Cluster 3.1 - 3.2 Hardware Administration Manual for Solaris OS』「Interconnect Requirements and Restrictions」 を参照してください。クラスタインターコネクトの一般的な情報については、『Sun Cluster Overview for Solaris OS』「Cluster-Interconnect Components」および『Sun Cluster Concepts Guide for Solaris OS』 を参照してください。

トランスポートアダプタ

ネットワークインタフェースのポートなどのトランスポートアダプタ用に、トランスポートアダプタ名とトランスポートの種類を指定します。構成が 2 ホストクラスタの場合は、インターコネクトをポイントツーポイント接続 (アダプタからアダプタ) するか、トランスポートスイッチを使用するかも指定します。

次のガイドラインと制限を考慮してください。

特定のトランスポートアダプタに関する詳細については、scconf_trans_adap_*(1M) のマニュアルページを参照してください。

トランスポートスイッチ

ネットワークスイッチなどのトランスポートスイッチを使用する場合は、インターコネクトごとにトランスポートスイッチの名前を指定します。デフォルト名の switchN (ここで、N は、構成中に自動的に割り当てられた数) を使用するか、別の名前を作成できます。

また、スイッチのポート名を指定するか、デフォルト名をそのまま使用します。デフォルトのポート名は、ケーブルのアダプタ側が接続されている Solaris ホストの内部ノード ID 番号と同じです。ただし、SCI-PCI などの特定の種類のアダプタではデフォルトのポート名は使用できません。


注 –

3 つ以上の投票ノードを持つクラスタでは、必ずトランスポートスイッチを使用してください。投票クラスタノード間の直接接続は、2 ホストクラスタの場合だけサポートされています。


2 ホストクラスタが直接接続されている場合でも、インターコネクトのトランスポートスイッチを指定できます。


ヒント –

トランスポートスイッチを指定すると、あとでクラスタに別の投票ノードを追加しやすくなります。


グローバルフェンシング

フェンシングは、スプリットブレーン状態のクラスタが共有ディスクのデータ完全性の保護のために使用する機構です。デフォルトでは、標準モードの scinstall ユーティリティーでグローバルフェンシングが有効になっており、構成内の各共有ディスクでデフォルトのグローバルフェンシング設定 pathcount が使用されます。pathcount 設定では、各共有ディスクのフェンシングプロトコルは、ディスクに接続されている DID パスの数に基づいて選択されます。

カスタムモードの場合は、scinstall ユーティリティーからグローバルフェンシングを無効にするかどうかを尋ねられます。通常は、No と入力してグローバルフェンシングを有効にしておきます。ただし、次のような場合は、グローバルフェンシングを無効にすることができます。


注意 – 注意 –

次の場合以外でグローバルフェンシングを無効にすると、アプリケーションのフェイルオーバー時にデータ破壊が生じる可能性があります。フェンシングの無効化を検討する場合には、データ破損の可能性を十分に調査してください。


クラスタ構成時にグローバルフェンシングを無効にすると、クラスタ内のすべての共有ディスクのフェンシングが無効になります。クラスタを構成したあとで、グローバルフェンシングプロトコルを変更したり、個々の共有ディスクのフェンシングプロトコルを置き換えたりできます。ただし、定足数デバイスのフェンシングプロトコルを変更するには、最初に定数数デバイスの構成を解除します。次に、ディスクの新しいフェンシングプロトコルを設定し、それを定足数デバイスとして再構成します。

フェンシングの動作の詳細は、『Sun Cluster Concepts Guide for Solaris OS』「Failfast Mechanism」を参照してください。個々の共有ディスクのフェンシングプロトコルの設定については、cldevice(1CL)のマニュアルページを参照してください。グローバルフェンシングの設定については、cluster(1CL)のマニュアルページを参照してください。

定足数デバイス

Sun Cluster 構成では、定足数 (quorum) デバイスを使用して、データとリソースの整合性を保持します。クラスタが投票ノードとの接続を一時的に失っても、定足数デバイスによって、投票クラスタノードがクラスタに再結合しようとしたときの amnesia や split-brain といった問題を防止できます。定足数デバイスの目的と機能については、『Sun Cluster Concepts Guide for Solaris OS』「Quorum and Quorum Devices」を参照してください。

Sun Cluster の 2 ホストクラスタのインストール時に、scinstall ユーティリティーを使用して、構成内で使用可能な共有ディスクを定足数デバイスとして自動構成することもできます。 共有ディスクには、共有ディスクとして使用するために構成された Sun NAS デバイスが含まれます。scinstall ユーティリティーは、使用可能なすべての共有ディスクが定足数デバイスとして利用できるものと見なします。

定足数サーバーまたは Network Appliance NAS デバイスを定足数デバイスとして使用する場合は、scinstall 処理が完了したあとに定足数デバイスを構成します。

インストール後は、clsetup(1CL) ユーティリティーを使用して、定足数デバイスを追加で構成することもできます。


注 –

単一ホストのクラスタの場合、定足数デバイスを構成する必要はありません。


クラスタ構成にSun 以外の共有ストレージデバイスが含まれており、そのストレージデバイスの定足数デバイスとしての使用がサポートされていない場合、clsetup ユーティリティーを使用して、定足数を手作業で構成する必要があります。

定足数デバイスを計画する際は、次の点を考慮してください。

定足数デバイスの詳細は、『Sun Cluster Concepts Guide for Solaris OS』「Quorum and Quorum Devices」および『Sun Cluster Overview for Solaris OS』「Quorum Devices」を参照してください。