Sun Java System Directory Server Enterprise Edition 6.1 管理ガイド

属性値の暗号化

属性の暗号化はディレクトリに格納されている機密データを保護します。この機能を使用すると、エントリの特定の属性を暗号化された形式で格納するように指定できます。これにより、データベースファイル、バックアップファイル、およびエクスポートされた LDIF ファイルに格納されているデータが読み取られることを防ぎます。

この機能では、属性値は Directory Server データベースに格納される前に暗号化され、クライアントに返される前に元の値に復号化されます。クライアントと Directory Server との間でやり取りを行うときに、アクセス制御を使用してクライアントがこれらの属性に許可なくアクセスすることを防ぎ、SSL を使用して属性値を暗号化する必要があります。データセキュリティー全般のアーキテクチャー上の概要と、属性の暗号化の詳細は、『Sun Java System Directory Server Enterprise Edition 6.1 Reference』を参照してください。

属性の暗号化は、サーバー上で SSL が設定され有効になっている場合だけアクティブになります。ただし、デフォルトでは、どの属性も暗号化されません。属性の暗号化はサフィックスレベルで設定されます。つまり、サフィックス内でその属性が現れるすべてのエントリについて、属性が暗号化されます。ディレクトリ全体で属性を暗号化するには、すべてのサフィックスでその属性の暗号化を有効にする必要があります。


注意 – 注意 –

属性を暗号化すると、サフィックスに関連付けられたすべてのデータとインデックスファイルが影響を受けます。既存のサフィックスについて暗号化設定を変更するときは、まずサフィックスの内容をエクスポートし、設定を変更してからその内容をふたたびインポートする必要があります。これらの手順は、DSCCを使用して実行できます。DSCCの使用については、「Directory Service Control Center のインタフェース」を参照してください。

さらにセキュリティーについて考慮するならば、属性の暗号化をオンにする際に、暗号化されていない値がまだ含まれている可能性があるデータベースキャッシュファイルとデータベースログファイルを、手動で削除してください。これらのファイルを削除する手順については、「属性の暗号化を設定する」を参照してください。

新しいサフィックスにデータを読み込むときや作成するときは、暗号化されているすべての属性を有効にしてください。


一部のエントリがネーミング属性として使用している属性を暗号化すると、DN に表示される値は暗号化されないままですが、エントリ内に格納されている値は暗号化されています。

暗号化のために userPassword 属性を選択することはできますが、パスワードがクリアテキストとして格納される必要がある場合を除き、実質的なセキュリティー上の利点はありません。これは、DIGEST-MD5 SASL 認証などの場合です。パスワードポリシーにパスワードの暗号化メカニズムが定義されている場合、それをさらに暗号化してもセキュリティーの強化にはならず、バインド操作のたびにパフォーマンスが低下するという結果になるだけです。

暗号化された上で格納されている属性には、適用された暗号化アルゴリズムを示す暗号化方式タグが最初に付けられます。DES 暗号化アルゴリズムを使用して暗号化された属性は、次のように表示されます。


{CKM_DES_CBC}3hakc&jla+=snda%

データを暗号化するためにオンラインで (dsconf コマンドを使って) インポートする場合、サーバーへの認証に使用される鍵データベースのパスワードはすでに指定されているため、2 回目には要求されなくなります。データをオフラインで (dsadm コマンドを使って) インポートする場合、インポートするデータを暗号化するたびに Directory Server はパスワードを要求します。より機密性の高い操作であるデータの復号化では、エクスポートをオンライン、オフラインのどちらで行うかに関係なく、Directory Server は常に鍵データベースのパスワードを要求します。これにより、セキュリティーはさらに高まります。


注 –

証明書や非公開鍵を変更しない限り、サーバーにより引き続き同じ鍵が生成されます。そのため、両方のサーバーインスタンスが同じ証明書を使用していた場合は、データをあるサーバーインスタンスから別のサーバーインスタンスにトランスポートできます。つまりエクスポートしてからトランスポートできます。


属性の暗号化とパフォーマンス

属性を暗号化することでデータのセキュリティーは向上しますが、システムのパフォーマンスに影響が生じます。どの属性を暗号化する必要があるかを十分に検討し、特に機密にするべきと考えられる属性のみを暗号化します。

機密データはインデックスファイルから直接アクセスできるため、暗号化された属性に対応するインデックスキーを暗号化して、それらの属性を完全に保護する必要があります。インデックス付け自体がすでに Directory Server のパフォーマンスに影響しているため (インデックスキーの暗号化による負荷は含まれない)、データをインポートする、またはデータベースに初めて追加する前に属性暗号化を設定してください。こうすることで、暗号化された属性には最初からインデックスが付けられます。

属性暗号化の使用に関する注意点

属性暗号化機能を実装するときは、次の点を考慮してください。

Procedure属性の暗号化を設定する

DSCC を使用してこの作業を実行できます。詳細は、「Directory Service Control Center のインタフェース」と DSCC のオンラインヘルプを参照してください。

  1. 属性の暗号化を設定するサフィックスに何らかのエントリが含まれるときは、最初にそのサフィックスの内容を LDIF ファイルにエクスポートします。

    暗号化されている属性がサフィックスに含まれていて、エクスポートされた LDIF ファイルを使用してサフィックスを再初期化する場合は、エクスポートされた LDIF ファイルで属性を暗号化されたままにすることができます。

  2. 属性の暗号化を有効にするには、次のコマンドを使用します。


    $ dsconf create-encrypted-attr -h host -p port suffix-DN attr-name cipher-name
    

    cipher-name は、次のいずれかになります。

    • des: DES ブロック暗号化方式

    • des3: トリプル DES ブロック暗号化方式

    • rc2 - RC2 ブロック暗号化方式

    • rc4 - RC4 ストリーム暗号化方式

    次に例を示します。


    $ dsconf create-encrypted-attr -h host1 -p 1389 dc=example,dc=com uid rc4
  3. 暗号化された属性を元の状態に戻すには、次のコマンドを使用します。


    $ dsconf delete-encrypted-attr -h host -p port suffix-DN attr-name
    
  4. 1 つ以上の属性を暗号化するように設定を変更していて、インポート操作の前にそれらの属性に値が含まれている場合は、データベースキャッシュをクリアし、ログを削除します。

    暗号化されていない値は、データベースキャッシュとデータベースログには表示されません。


    注 –

    これらのファイルを削除すると、一部の追跡情報が失われます。また、これらのファイルを削除すると、サーバーが復旧モードになり、再起動に時間がかかる場合があります。


    データベースキャッシュをクリアし、ログを削除するには、次のように操作します。

    1. 「Directory Server インスタンスの起動、停止、および再起動」で説明するように、Directory Server を停止します。

    2. root または管理者権限を持つユーザーとして、ファイルシステムの次の場所にあるデータベースキャッシュファイルを削除します。


      # rm instance-path/db/__db.*
    3. ファイルシステムからデータベースログファイルを削除します。


      # rm instance-path/db/log.0000000001
    4. Directory Server を再起動します。

      サーバーは、新しいデータベースキャッシュファイルを自動的に作成します。ふたたびキャッシュがいっぱいになるまで、このサフィックスでの操作のパフォーマンスは、若干の影響を受ける可能性があります。

  5. 「サフィックスの初期化」で説明する方法で、LDIF ファイルを使用してサフィックスを初期化します。

    このファイルが読み込まれ、対応するインデックスが作成されるときに、指定した属性の値はすべて暗号化されます。