Sun Java System Directory Server Enterprise Edition 6.1 管理ガイド

クライアントでの SASL DIGEST-MD5 の使用

クライアントで DIGEST-MD5 メカニズムを使用している場合、ユーザー証明書をインストールする必要はありません。ただし、暗号化された SSL 接続を利用するには、「証明書を管理する」で説明した方法で、サーバー証明書を信頼する必要があります。

レルムの指定

レルムは、認証アイデンティティーが選択される名前空間を定義します。DIGEST-MD5 認証では、特定のレルムに対して認証を行う必要があります。

Directory Server は、DIGEST-MD5 のデフォルトレルムとして、マシンの完全修飾ホスト名を使います。サーバーは、nsslapd-localhost 設定属性に含まれる小文字のホスト名を使用します。

レルムを指定しない場合、サーバーが提供するデフォルトのレルムが適用されます。

環境変数の指定

UNIX 環境では、LDAP ツールが DIGEST-MD5 ライブラリを見つけることができるように、SASL-PATH 環境変数を設定する必要があります。DIGEST-MD5 ライブラリは、SASL プラグインに動的に読み込まれる共有ライブラリです。SASL_PATH 環境変数を次のように設定します。


export SASL_PATH=SASL-library

このパスは、Directory Server が LDAP ツールが起動されたホストと同じホストにインストールされていることを前提としています。

ldapsearch コマンドの例

SSL を使用せずに DIGEST-MD5 クライアント認証を実行することができます。次の例は、デフォルトの DIGEST-MD5 アイデンティティーマッピングを使用してバインド DN を決定します。


$ ldapsearch -h host1 -p 1389 \
 -o mech=DIGEST-MD5 [ \
 -o realm="example.com"] \
 -o authid="dn:uid=bjensen,dc=example,dc=com" \
 -w - \
 -o authzid="dn:uid=bjensen,dc=example,dc=com" \
 -o secProp="minssf=56,maxssf=256,noplain" \
 -b "dc=example,dc=com" "(givenname=Richard)"

上の例は、-o (小文字の o) オプションを使用して SASL オプションを指定しています。レルムの指定は省略できますが、指定する場合は、サーバーホストマシンの完全修飾ドメイン名を指定する必要があります。プロキシ操作を対象とする authzid は使用されませんが、authidauthzid はどちらも必要であり、同じ値を指定する必要があります。-w パスワードオプションは authid に適用されます。

authid の値は、アイデンティティーマッピングで使用される主体です。authid には、ディレクトリ内の有効なユーザー DN が後に続くdn: プレフィックス か、クライアントが決定した任意の文字列が後に続く u: プレフィックスが含まれているはずです。このように authid を使用すると、「DIGEST-MD5 アイデンティティーマッピング」で説明しているマッピングを使用することができます。

最も一般的な設定は、クライアント認証のために LDAPS セキュアポートと DIGEST-MD5 を使用して暗号化を行う SSL 接続に対する設定です。次の例は、同じ処理を SSL 経由で実行します。


$ ldapsearch -h host1 -P 1636 \
 -Z -P .mozilla/bjensen/BJE6001.slt/cert8.db \
 -N "cert-example" -w - \
 -o mech=DIGEST-MD5 [-o realm="example.com"] \
 -o authid="dn:uid=bjensen,dc=example,dc=com" \
 -o authzid="dn:uid=bjensen,dc=example,dc=com" \
 -o secProp="minssf=0,maxssf=0,noplain" \
 -b "dc=example,dc=com" "(givenname=Richard)"

この例では、SSL を経由して処理を行う場合に ldapsearch コマンドに -N オプションと -w オプションが必要です。ただし、これらのオプションはクライアント認証には使用されません。その代わりに、サーバーは authid の値に含まれる主体の DIGEST-MD5 アイデンティティーマッピングを行います。