3.4. アップグレードする

3.4.1. Sun Ray Software をアップグレードする前にファームウェアをインストールする
3.4.2. Sun Ray Software をアップグレードする方法
3.4.3. フェイルオーバーグループを使用してアップグレードを計画する
3.4.4. Sun Ray Software 構成データを保持する方法

このセクションでは、以前にインストール済みの Sun Ray サーバーをアップグレードする方法の手順について説明します。

3.4.1. Sun Ray Software をアップグレードする前にファームウェアをインストールする

Section 3.2.4, “Sun Ray Software をインストールする前にファームウェアをインストールする”で説明したように、アップグレードを実行する前に既存の Sun Ray サーバーに最新のファームウェアをインストールすることをお勧めします。ファームウェアは、Sun Ray Software メディアパックに含まれていません。

現在のアップグレード手順では、ファームウェアをダウンロードしてインストールする手順について説明しています。Sun Ray Software アップグレードプロセスとは別にクライアントファームウェアを更新するには、Section 14.3, “Sun Ray クライアントでファームウェアを更新する方法”を参照してください。

3.4.2. Sun Ray Software をアップグレードする方法

この手順では、既存の Sun Ray サーバー上の Sun Ray Software をアップグレードする方法について説明します。この手順は、具体的な Sun Ray 構成に依存します。詳細については、Chapter 2, Sun Ray ネットワーク環境の計画を参照してください。

アップグレードを実行する前に、次の情報を考慮してください。

  • Sun Ray サーバー上のオペレーティングシステムがSection 3.1.1, “オペレーティングシステム要件”で示す Sun Ray Server 5.3 の要件に適合していることを確認します。そうでない場合は、Sun Ray Software アップグレードの一環として Sun Ray サーバー上のオペレーティングシステムをアップグレードする必要があります。

  • Sun Ray Software 5.1 以降からのアップグレードは、Sun Ray Software 5.3. でサポートされます。最新の Sun Ray Software 5.3.x リリース更新を利用できる場合はそれに直接アップグレードできます (つまり、Sun Ray Software 5.3.x へアップグレードする前にまず Sun Ray Software 5.3.x へアップグレードする必要がないということです)。

  • Sun Ray サーバー構成は、命令セットアーキテクチャーの異なるハードウェアプラットフォームには移行できません。たとえば、既存の SPARC ベース Sun Ray サーバー構成は、新しい x86 ベース Sun Ray サーバーに移行できません。

  • ほとんどの環境では不要ですが、構成データは Sun Ray サーバーに保持し、バックアップファイルを別の場所にコピーすることをお勧めします。詳細については、Section 3.4.4, “Sun Ray Software 構成データを保持する方法”を参照してください。

手順
  1. ユーザーにアップグレードを知らせます。

    Sun Ray Software をアップグレードする前に、ユーザーに計画を知らせ、セッションを終了してもらいます。アップグレード手順には、有効なセッションと一時停止しているセッションがすべて失われるという影響があります。

  2. フェイルオーバーグループ内の Sun Ray サーバーをアップグレードする場合は、ダウンタイムを少なくする方法を検討してください。

    詳細については、Section 3.4.3, “フェイルオーバーグループを使用してアップグレードを計画する”を参照してください。

  3. Sun Ray サーバーのスーパーユーザーになります。

    ユーザー環境設定が進められている場合に発生する可能性があるインストールスクリプトエラーを避けるため、次のコマンドを使用します。

    % su - root
  4. 現在の Sun Ray ネットワーク構成を一覧表示し、情報を保持します。アップグレード後は Sun Ray ネットワークを再構成する必要があります。

    # /opt/SUNWut/sbin/utadm -l           
  5. 必要に応じて、Sun Ray サーバーのオペレーティングシステムをアップグレードします。

    Oracle Linux の場合
    1. 構成データは Sun Ray サーバーに保持し、バックアップファイルを別の場所にコピーします。詳細については、Section 3.4.4, “Sun Ray Software 構成データを保持する方法”を参照してください。

    2. Sun Ray サーバー上の Sun Ray Software をアンインストールします。詳細については、Section 3.2.10, “Sun Ray Software を削除する方法”を参照してください。

    3. Sun Ray サーバー上の Oracle Linux をアップグレードします。

    4. 必要に応じて、以前に作成した Sun Ray サーバー構成バックアップファイル /var/tmp/SUNWut.upgrade/preserve_version.tar.gz をアップグレード済み Sun Ray サーバー上の同じ場所にコピーします。Oracle Linux のアップグレードでこのファイルは保持されるはずです。

    5. 手順 6 に進みます。

    Oracle Solaris の場合
    1. (オプション) 構成データは Sun Ray サーバーに保持し、バックアップファイルを別の場所にコピーします。詳細については、Section 3.4.4, “Sun Ray Software 構成データを保持する方法”を参照してください。

      Oracle Solaris のアップグレードは Sun Ray Software 構成データに影響しないため、この手順は必要ありません。しかし、オペレーティングシステムをアップグレードする前にデータをバックアップすることを常にお勧めします。

    2. Sun Ray サーバー上の Oracle Solaris をアップグレードします。

    3. 手順 6 に進みます。

  6. Sun Ray Software 5.3 メディアパックをダウンロードして解凍し、Sun Ray サーバーからアクセスできるようにします。

    http://www.oracle.com/technetwork/server-storage/sunrayproducts/downloads/index.html を参照してください。

  7. (省略可能) 最新の Sun Ray Operating Software (ファームウェア) をダウンロードして解凍し、Sun Ray サーバーからアクセスできるようにします。

    http://www.oracle.com/technetwork/server-storage/sunrayproducts/downloads/index.html を参照してください。

    アップグレード後にクライアントファームウェアをインストールして構成する場合は、Section 14.3, “Sun Ray クライアントでファームウェアを更新する方法”を参照してください。

  8. フェイルオーバーグループ内のすべてのサーバーがアップグレードされるまで、すべての Sun Ray クライアントファームウェア更新を無効にします。

    詳細については、Section 14.11, “すべての Sun Ray クライアントのファームウェア更新を無効にする方法”を参照してください。

  9. 最新の Sun Ray Operating Software (ファームウェア) をダウンロードした場合は、ディレクトリを解凍されたファームウェアのディレクトリに変更し、Sun Ray Software インストールのアップグレードで利用できるように現在のファームウェアを更新します。

    # ./utfwinstall

    utfwinstall スクリプトは、Sun Ray サーバー上にインストールされている既存のファームウェアを上書きします。

  10. ディレクトリを解凍した Sun Ray Software メディアパックに変更し、Sun Ray サーバー上のSun Ray Software をアップグレードします。

    # ./utsetup

    utsetup スクリプトは、現在の Sun Ray Software 構成データを /var/tmp/SUNWut.upgrade/preserve_version.tar.gz ファイルに保持し、アップグレード後に復元します。

    スクリプトが終了すると、ログファイルを入手できます。

    Oracle Linux:

    /var/log/utsetup.year_month_date_hour:minute:second.log

    Oracle Solaris:

    /var/adm/log/utsetup.year_month_date_hour:minute:second.log

    ファイル名の値は、コマンドが開始した時点のタイムスタンプを反映しています。インストールの問題の兆候があるかどうかをこれらのファイルでチェックします。

    utinstall エラーメッセージのリストについては、Section 3.2.11, “インストール (utinstall) のエラーメッセージ”を参照してください。

  11. 手順 4 で確認した以前の構成に基づいて、Sun Ray ネットワークを再構成します。

    外部の DHCP サーバーをサポートする共有ネットワーク (LAN) の場合 (utadm -L on を使用している)

    操作は必要ありません。アップグレード時にこの構成は保持されます。

    Sun Ray サーバーで DHCP をサポートする共有ネットワーク (LAN) の場合

    # /opt/SUNWut/sbin/utadm -A subnet
    

    プライベートネットワークの場合

    # /opt/SUNWut/sbin/utadm -a intf
    
  12. Windows Connector グループ名を事前に構成していない場合、またはグループ名を rootsys に設定した場合は、Windows Connector を再構成します。これらのシナリオに関するエラーは、インストールログに一覧表示されます。

    # /opt/SUNWut/sbin/utconfig -c
  13. フェイルオーバーグループ内の各サーバーついて手順 1 - 12 を繰り返します。

  14. Sun Ray クライアントで更新された Sun Ray Operating Software (ファームウェア) を同期します。

    この作業はスタンドアロンの Sun Ray サーバー、またはフェイルオーバーグループでアップグレードした最後の Sun Ray サーバー上で実行する必要があります。utfwsync は、Sun Ray サーバーで現在インストールされて構成されているファームウェアを利用してフェイルオーバーグループ内のすべての Sun Ray サーバーを更新してから、Sun Ray クライアント上のすべてのファームウェアを更新します。Sun Ray クライアントが自動的にリブートし、必要に応じて新しいファームウェアに更新されます。

    # /opt/SUNWut/sbin/utfwsync
  15. Windows 用コネクタを使用する予定の場合は、指定された Windows サーバーで Windows Connector コンポーネントをアップグレードします。

    Windows Connector コンポーネント用のアップグレードプログラムはありません。以前のコンポーネントがインストールされている Windows システムをアップグレードするには、現在の Windows Connector コンポーネントを削除し、新しいバージョンをインストールします。

3.4.3. フェイルオーバーグループを使用してアップグレードを計画する

フェイルオーバーグループ内で 2 つ以上の Sun Ray サーバーを構成することで、1 つのサーバーで問題が発生した場合に、新しいサービスの利用中断を減らすことができます。既存の Sun Ray サーバーをフェイルオーバーグループへと結合するか、または既存のフェイルオーバーグループをアップグレードする計画の場合は、次の点に注意してください。

  • プライマリサーバーをアップグレードするよりも必ず先にセカンダリサーバーをアップグレードするようにしてください。このリリースからの新機能は、フェイルオーバーグループ内のすべてのサーバーがアップグレードされるまで機能しないことがあります。

  • あるサーバーをアップグレードする前に、Sun Ray クライアントユーザーがそれぞれのセッションを終了していることを確認します。

Note

大規模構成内のサーバーを一度にアップグレードするのは都合がよくない場合は、構成全体が完了するまで一度に 1 つまたは 2 つのサーバーをアップグレードします。

  • 4 つ以上のサーバーのグループで最良の結果を得るには、Sun Ray データストアのみを扱うようにプライマリサーバーを構成します。セカンダリサーバーは、データストアを扱うほかにユーザーを直接扱うように構成します。

  • プライマリサーバーをアップグレードする間は、セカンダリサーバーでデータストアに対するどのような更新もできません。

  • このリリースでの新機能を利用するには、フェイルオーバーグループ内で Sun Ray Software の異なるバージョンを混在させないでください。複数のソフトウェアバージョンを使用するフェイルオーバーグループは、もっとも古いバージョンの機能に戻されてしまいます。

  • 管理 GUI を使用して Sun Ray サービスを再起動またはリセットすることは、Sun Ray リリースが異なるサーバーでは動作しません。たとえば、管理 GUI を使用してフェイルオーバーグループ内で最新の Sun Ray Software リリースを実行しているすべてのサーバーを再起動させる場合であっても、以前のバージョンの Sun Ray Software を実行している Sun Ray サーバーは手動で再起動またはリセットするようにしてください。

  • フェイルオーバーグループ内のすべてのサーバーがアップグレードされるまで、すべての Sun Ray クライアントファームウェア更新を無効にします。詳細については、Section 14.11, “すべての Sun Ray クライアントのファームウェア更新を無効にする方法”を参照してください。

Note

1 週あたり 1 つまたは 2 つのサーバーをアップグレードする場合でも、グループ内のすべてのサーバーがアップグレードするまで待ってからファームウェアの更新を有効にする必要があります。

  • 構成が専用のプライベートインターコネクトである場合は、サーバーを Sun Ray インターコネクトから切断します。

フェイルオーバートポロジの図など、フェイルオーバーグループについての一般的な説明については、.Chapter 6, フェイルオーバーグループを参照してください。

3.4.4. Sun Ray Software 構成データを保持する方法

アップグレードを選択すると、utsetup スクリプトは既存の構成情報を自動的に保持します。次の状況のみ、utsetup スクリプトを実行する前に、既存の構成を保持する必要があります。

  • サーバーのディスクの再フォーマットが必要な既存の Sun Ray サーバー上で、オペレーティングシステムをアップグレードしている。

  • 既存の Sun Ray サーバーハードウェアを新しいサーバーと交換している。

  • Sun Ray Software のアップグレードの一環として、Sun Ray サーバー上で Oracle Linux オペレーティングシステムをアップグレードしている。

これらすべての場合で、utsetup スクリプトを起動する前に、/var/tmp/SUNWut.upgrade/preserve_version.tar.gz バックアップファイルを新しくインストールまたは更新されるサーバーに追加する必要があります。utsetup スクリプトは、Sun Ray Software をインストールした後で、/var/tmp/SUNWut.upgrade/preserve_version.tar.gz 内の構成データを自動的に復元します。

Sun Ray Software イメージディレクトリ内の utpreserve スクリプトは、次の情報を保持します。

  • X ユーザー設定

  • Sun Ray データストア

  • 認証マネージャー構成ファイル

  • utslaunch プロパティー

  • フェイルオーバーグループの情報

  • キオスクモードの構成

  • Windows Connector で使用されるグループ名

utpreserve スクリプトは、次の情報を保持しません

  • Sun Ray サーバーのネットワークおよび DHCP の構成設定 (utadm 構成情報)Sun Ray サーバーソフトウェアをアップグレードしたら、これらの設定を再構成する必要があります。

  • /etc/pam.conf は保存されません。このファイルは手動でバックアップおよび復元する必要があります。

始める前に

構成のサイズに応じて、この手順 (オペレーティングシステムソフトウェアのアップグレードを含む) が完了するには 5 分から数時間、さらにはそれ以上かかる可能性があります。

Note

utpreserve スクリプトを実行すると、Sun Ray デーモンおよびサービス (Sun Ray データストアを含む) はすべて停止し、ユーザーはアクティブと切断の両方のセッションを失います。彼らに計画を説明してください。

手順
  1. ディレクトリを解凍した Sun Ray Software メディアパックに変更します。

  2. Sun Ray 構成を保持します:

    # ./utpreserve

    utpreserve スクリプトは、すべての Sun Ray サービスが停止することを警告し、結果としてすべてのユーザーセッションを終了し、続行するべきかどうかを確認します。

    y と答えた場合、utpreserve スクリプトは:

    • Sun Ray サービスおよび Sun Ray データストアデーモンを停止します。

    • 保存されているファイルを一覧表示します。

    • ファイルの全体リストで、/var/tmp/SUNWut.upgrade/preserve_version.tar.gz ファイルとして tar と圧縮を実行します (version は現在インストールされている Sun Ray Software バージョン)。

    • エラーの兆候が含まれるログファイルは、/var/adm/log/utpreserve.year_month_date_hour:minute:second.log (Oracle Solaris の場合) または /var/log/utpreserve.year_month_date_hour:minute:second.log (Oracle Linux の場合) で利用可能であることを知らせます。

      ここで、yearmonth などは、utpreserve が開始したときを反映した数値によって表現されます。

    • /var/tmp/SUNWut.upgrade/preserve_version.tar.gz ファイルは安全な場所に移動することをお勧めします。

Note

Sun Ray Software の以前のバージョンで /etc/pam.conf を変更した場合、Sun Ray Software がアップグレードされるときに変更が失われることがあります。変更が失われないようにするため、更新を実行する前にコピーを保存するしてから、保存済みのコピーを使用して以前の変更を復元してください。