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Oracle® Coherence管理者ガイド
リリース3.7.1
B71688-01
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4 ネットワーク・パフォーマンス・テストの実行

Coherenceには、2つ以上のコンピュータ間でネットワーク・パフォーマンスのテストとチューニングに使用するデータグラム・テスト・ユーティリティが含まれます。データグラム・テストは、3種類のモード(パケット・パブリッシャまたはパケット・リスナー、あるいはその両方)のいずれかで動作します。このユーティリティを実行すると、パブリッシャがUDPパケットをリスナーに送信します。リスナーは、スループットや成功率などの統計を測定します。

このテストの結果に基づいて環境をチューニングすることで、最大のパフォーマンスを実現します。詳細は、第6章「パフォーマンス・チューニング」を参照してください。

この章には次の項が含まれます:

4.1 データグラム・テスト・ユーティリティの実行

データグラム・テスト・ユーティリティを実行するには、コマンドラインからcom.tangosol.net.DatagramTestクラスを使用するか、COHERENCE_HOME/binディレクトリにあるdatagram-testスクリプトを実行します。スクリプトは、WindowsベースのプラットフォームとUNIXベースのプラットフォームの両方に用意されています。

次の例は、DatagramTestクラスの使用方法を示しています。

java -server com.tangosol.net.DatagramTest <command value> <command value> ...

次の例は、スクリプトの使用方法を示しています。

datagram-test <command value> <command value> ...

表4-1では、データグラム・テスト・ユーティリティで利用できるコマンドライン・オプションについて説明しています。

表4-1 データグラム・テスト・ユーティリティのコマンドライン・オプション

コマンド 必須/
オプション
適用範囲 説明 デフォルト

-local

オプション

両方

バインド先のローカル・アドレス、addr:portの形式で指定

localhost:9999

-packetSize

オプション

両方

作業対象パケットのサイズ、バイト単位で指定

1468

-payload

オプション

両方

各パケットに含めるデータ量パケット・サイズを一致させるには、0を使用

0

-processBytes

オプション

両方

処理対象の各パケットのバイト数(4の倍数)

4

-rxBufferSize

オプション

リスナー

受信バッファのサイズ、パケット単位で指定

1428

-rxTimeoutMs

オプション

リスナー

接続が閉じられるまでの非アクティブ時間

1000

-txBufferSize

オプション

パブリッシャ

送信バッファのサイズ、パケット単位で指定

16

-txRate

オプション

パブリッシャ

データ送信の速度、メガバイト単位で指定

無制限

-txIterations

オプション

パブリッシャ

終了前に公開するパケット数を指定

無制限

-txDurationMs

オプション

パブリッシャ

終了前に公開する期間を指定

無制限

-reportInterval

オプション

両方

レポートを出力する間隔、パケット単位で指定

100000

-tickInterval

オプション

両方

ティック・マークを出力する間隔

1000

-log

オプション

リスナー

測定したパフォーマンスの表形式レポートを保存するファイルの名前

なし

-logInterval

オプション

リスナー

ログに測定結果を出力する間隔

100000

-polite

オプション

パブリッシャ

パブリッシャが公開を実行する前に、リスナーの接続を待つかどうかを示すスイッチ

オフ

-provider

オプション

両方

使用するソケット・プロバイダ(systemtcpsslfile:xxx.xml)

system

arguments

オプション

パブリッシャ

空白で区切られた公開先アドレスのリスト、addr:portの形式で指定

なし


4.2 ネットワーク・パフォーマンスのテスト方法

この項の例では、サーバーA (IPアドレス195.0.0.1)と、サーバーB (IPアドレス195.0.0.2)という2つのサーバー間のネットワーク・パフォーマンスのテスト方法を示します。一方のサーバーはパケット・パブリッシャとして動作し、もう一方はパケット・リスナーとして動作します。パブリッシャは可能なかぎり高速にパケットを送信し、リスナーはパフォーマンス統計を測定して報告します。

まず、サーバーA上のリスナーを起動します。例:

datagram-test.sh

[ENTER]を押すと、ユーティリティは、パケット受信の準備が完了していることを示します。例4-1にサンプル出力を示します。

例4-1 リスナーの起動からの出力

starting listener: at /195.0.0.1:9999
packet size: 1468 bytes
buffer size: 1428 packets
  report on: 100000 packets, 139 MBs
    process: 4 bytes/packet
        log: null
     log on: 139 MBs

デフォルトでは、このテストにより、1428個のパケット(約2MB)を十分に保持できるネットワーク受信バッファの割当てが試行されます。このバッファの割当てができない場合、ユーティリティはエラーを報告して終了します。-rxBufferSizeパラメータを使用して要求するバッファのサイズを小さくするか、オペレーティング・システムのネットワーク・バッファの設定を大きくしてください。オペレーティング・システムのバッファを大きくすると、最適なパフォーマンスが得られます。Coherence向けのオペレーティング・システムのチューニングの詳細は、第7章「本番チェックリスト」を参照してください。

サーバーBでパブリッシャを起動して、サーバーAに向けてパブリッシュします。例:

datagram-test.sh servera

[ENTER]を押すと、サーバーBのテスト・インスタンスによってリスナーとパブリッシャの両方が起動されます。ただし、この構成ではリスナーは使用しません。例4-2は、サーバーBのコマンド・ウィンドウに表示されるサンプル出力を示しています。

例4-2 データグラム・テスト: サーバーでのリスナーとパブリッシャの起動

starting listener: at /195.0.0.2:9999
packet size: 1468 bytes
buffer size: 1428 packets
  report on: 100000 packets, 139 MBs
    process: 4 bytes/packet
        log: null
     log on: 139 MBs

starting publisher: at /195.0.0.2:9999 sending to servera/195.0.0.1:9999
packet size: 1468 bytes
buffer size: 16 packets
  report on: 100000 packets, 139 MBs
    process: 4 bytes/packet
      peers: 1
       rate: no limit

no packet burst limit
oooooooooOoooooooooOoooooooooOoooooooooOoooooooooOoooooooooOoooooooooOoooooooooO

データがネットワーク上に出力(Output)されると、一連のoOのマークが表示されます。oはそれぞれ1000パケットを表し、10,000パケットごとにOのインジケータが表示されます。

サーバーAでは、これに対応してネットワーク入力(Input)を表すiIのマークのセットが表示されます。これは、2つのテスト・インスタンスが通信していることを示します。

4.2.1 双方向テストの実行

このテストは、双方向モードで実行することもできます。このモードでは、両方のサーバーがパブリッシャとリスナーとして動作します。テスト・インスタンスを再起動して、サーバーAのインスタンスにサーバーBのアドレスを指定します。たとえば、サーバーAで次のコマンドを実行します。

datagram-test.sh -polite serverb

-politeパラメータを使用して、このテスト・インスタンスに対し、データの受信を開始するまでパブリッシュを開始しないように指示します。前述の同じコマンドをサーバーBで実行します。

datagram-test.sh servera

4.2.2 分散テストの実行

このテストは、3台以上のコンピュータで実行できます。たとえば、1つのリスナーをターゲットにするように、2つのパブリッシャを設定できます。このスタイルのテストは単純な1対1のテストと比較してはるかに現実的で、他の方法では確認できないネットワークのボトルネックを特定できる場合があります。

次の例では、4台のコンピュータ間でダイアグラム・テストを実行します。

サーバーA上:

datagramtest.sh -txRate 100 -polite serverb serverc serverd

サーバーB上:

datagramtest.sh -txRate 100 -polite servera serverc serverd

Server C上:

datagramtest.sh -txRate 100 -polite servera serverb serverd

Server D上:

datagramtest.sh -txRate 100 servera serverb serverc

このテスト・シーケンスでは、すべてのノードは他のすべてのノードに、1秒当たりで合計100MBを送信します(1ノード当たり33MB/秒に相当)。完全にスイッチが設定された1GbEネットワークでは、パケットを失うことなくこれを達成できる必要があります。

テストの実行を簡略化するために、すべてのノードは同一のターゲット・リストを使用して起動できます。自分自身への送信も行われますが、このループバック・データは容易に除外できます。最後のノードが起動されるまで他のすべてのノードが遅延するため、最後のノードを除くすべてのノードは、-politeスイッチを使用して起動することが重要です。

4.3 レポート統計の理解

テストのそれぞれの側(パブリッシャとリスナー)から定期的にパフォーマンス統計がレポートされます。パブリッシャでは、ネットワーク上にデータを公開する速度のみがレポートされます。例:

Tx summary 1 peers:
   life: 97 MB/sec, 69642 packets/sec
    now: 98 MB/sec, 69735 packets/sec

このレポートには、現在の送信速度(前回のレポート以降)と存続期間の送信速度の両方が記載されます。

表4-2は、リスナーでレポートできる統計について説明しています。

表4-2 リスナーの統計

要素 説明

Elapsed

レポート対象の時間間隔

Packet size

受信したパケットのサイズ

Throughput

パケットの受信速度

Received

受信したパケット数

Missing

失われていることが検出されたパケットの数

Success rate

合計送信パケット数に対する受信パケット数の割合

Out of order

着信順序が乱れているパケットの数

Average offset

パケットの着信順序の乱れの程度を示すインジケータ


パブリッシャの場合と同様、現在と存続期間の両方の統計がレポートされます。次の例は、一般的なリスナーのレポートを示しています。

Lifetime:
Rx from publisher: /195.0.0.2:9999
             elapsed: 8770ms
         packet size: 1468
          throughput: 96 MB/sec
                      68415 packets/sec
            received: 600000 of 611400
             missing: 11400
        success rate: 0.9813543
        out of order: 2
          avg offset: 1


Now:
Rx from publisher: /195.0.0.2:9999
             elapsed: 1431ms
         packet size: 1468
          throughput: 98 MB/sec
                      69881 packets/sec
            received: 100000 of 100000
             missing: 0
        success rate: 1.0
        out of order: 0
          avg offset: 0

特に重要な項目は、throughputとsuccess rateです。目標は、success rateを可能なかぎり1.0近くに維持しながら、最高のthroughputを見つけることです。100Mbネットワークの設定では、約10MB/秒の速度を達成する必要があります。1Gbネットワークの設定では、約100MB/秒の速度を達成する必要があります。これらの速度を実現するには、なんらかの速度調整が必要になります。

速度調整

-txRate Mパラメータを組み込むことによって、テストのパブリッシャ側で、MB/秒単位のデータ速度を指定して速度を調整できます。Mは、テストでネットワークに設定される最大MB/秒を表します。