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Oracle Solaris Studio 12.3: C ユーザーガイド     Oracle Solaris Studio 12.3 Information Library (日本語)
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ドキュメントの情報

はじめに

1.  C コンパイラの紹介

2.  C コンパイラ実装に固有の情報

3.  C コードの並列化

4.  lint ソースコード検査プログラム

5.  型に基づく別名解析

6.  ISO C への移行

7.  64 ビット環境に対応するアプリケーションへの変換

8.  cscope: 対話的な C プログラムの検査

A.  機能別コンパイラオプション

B.  C コンパイラオプションリファレンス

C.  ISO/IEC C 99 の処理系定義の動作

D.  C99 の機能

E.  ISO/IEC C90 の処理系定義の動作

F.  ISO C データ表現

G.  パフォーマンスチューニング

H.  Oracle Solaris Studio C: K&R C と ISO C の違い

H.1 非互換性

H.2 キーワード

索引

H.1 非互換性

表 H-1 K&R C と ISO C の非互換性

トピック
Solaris Studio C (K&R)
Solaris Studio ISO C
main()envp 引数
main() の 3 番目の引数として envp を使用できる。
3 番目の引数として使用できるが、この使用法は厳密には ISO C 規格に準拠しない。
キーワード
識別子、constvolatilesigned を普通の識別子として扱う。
constvolatilesigned はキーワードである。
ブロック内の externstatic 関数宣言
これらの関数宣言をファイルスコープに拡張する。
ISO 規格は、ブロックスコープ関数宣言がファイルスコープに拡張されることを保証しない。
識別子
識別子でドル記号 ($) を使用できる。
$ は許可されない。
long float
long float 宣言を受け入れ、これらを double として処理する。
このような宣言は使用できない。
複数文字文字定数
int mc = ’abcd’;

は、次を生成する。

abcd

int mc = ’abcd’;

は、次を生成する。

dcba

整数定数
8 進数のエスケープシーケンスで、8 または 9 を使用できる。
8 進数のエスケープシーケンスで、8 または 9 を使用できない。
代入演算子
次の演算子の組み合わせを 2 つのトークンとして処理し、結果としてそれらの間の空白を許可する。

*=, /=, %=, +=, -=, <<=, >>=, &=, ^=, |=

1 つのトークンとして処理するため、演算子の間に空白を使用できない。
式の符号なし保存の意味解釈
符号なし保持をサポートする。つまり、unsigned char/shortsunsigned int に変換される。
値の保持をサポートする。つまり、unsigned char/shortint に変換される。
単精度計算と倍精度計算
浮動小数点式のオペランドを double に拡張する。

float を返すように宣言された関数は常に、それらの戻り値は double に拡張する。

float の演算を単精度計算で行うことができる。

このような関数に float の戻り型を使用できる。

struct/union のメンバーの名前空間
structunion を許可し、ほかの struct または union のメンバーを操作するためにメンバー選択演算子 (’. ,->’) を使用する演算の型を許可する。
すべての一意な struct または union は、独自の一意な名前空間を持たなければならない。
左辺値 (lvalue) としてのキャスト
lvalue としての整数型およびポインタ型のキャストをサポートしている。例:

(char *)ip = &char;

この機能はサポートしない。
暗黙の int 宣言
明示的な型指示子なしの宣言をサポートする。num; などの宣言は、暗黙の int として処理される。例:

num; /*num は暗黙の int*/

int num2; /* num2 は*/

/* 宣言された int */

num; 宣言 (明示的な型指示子 int なし) はサポートされず、構文エラーとなる。
空の宣言
空の宣言を許可する。例:

int;

タグを除いて、空の宣言を使用できない。
型定義の型指示子
typedef 宣言で unsignedshortlong などの型指示子を使用できる。例:

typedef short small;

unsigned small x;

typedef 宣言は型指示子で変更できない。
ビットフィールドで使用できる型
すべての整数型のビットフィールドを使用できる (名前なしビットフィールドも含む)。

ABI は、名前なしビットフィールドとほかの整数型のサポートを必要とする。

intunsigned int、および signed int だけのビットフィールドをサポートする。ほかの型は未定義。
不完全な宣言におけるタグの処理
不完全な型宣言を無視する。次の例では、f1 は外側の struct を参照する。

struct x { . . . } s1;

{struct x; struct y {struct x f1; } s2; struct x

{ . . . };}

ISO 準拠の実装では、不完全な struct または union 型指示子 は、同じタグで囲んだ宣言を隠す。
struct、union、または enum 宣言での不一致
入れ子にされた struct または union 宣言において、タグの struct、enum、union 型の不一致を許可する。次の例では、2 番目の宣言は struct として処理される。

struct x {. . . }s1;

{union x s2;. . .}

外側のタグを隠し、内側の宣言を新しい宣言として処理する。
式内のラベル
ラベルを (void *) lvalue として処理する。
式内ではラベルを使用できない。
switch 条件型
int に変換することで、floatdouble を許可する。
整数型 (int、char、列挙型) だけを switch 条件型として評価する。
条件付きインクルード指令の構文
プリプロセッサは #else または #endif 指令のあとにあるトークンを無視する。
このような構文は使用できない。
トークンの結合と ## プリプロセッサ演算子
## 演算子を認識しない。トークンの結合を行うには、結合される 2 つのトークンの間にコメントを置く。

#define PASTE(A,B) A/*任意のコメント*/B

## をトークンの結合を実行するプリプロセッサ演算子として定義する。例:

#define PASTE(A,B) A##B

さらに、プリプロセッサはメソッドを認識しない。その代わりに、2 つのトークン間のコメントを空白として処理する。

プリプロセッサの再走査
プリプロセッサは再帰的に置換する。

#define F(X) X(arg)

F(F)

は、次を生成する。

arg(arg)

再走査中に置換リストに見つかったマクロは置換されない。

#define F(X)X(arg)F(F)

は、次を生成する。

F(arg)

仮パラメータリスト内の typedef
関数宣言中、typedef 名を仮パラメータ名として使用できる。つまり、typedef 宣言を隠す。
typedef 名として宣言された識別子を仮パラメータとして使用できない。
実装固有の集合体の初期化
中括弧内で部分的に省略された初期設定子を構文解析および処理するときは、ボトムアップアルゴリズムを使用する。

struct{ int a[3]; int b; }\ w[]={{1},2};

は、次を生成する。

sizeof(w)=16

w[0].a=1,0,0

w[0].b=2

構文解析には、トップダウンアルゴリズムを使用する。例:

struct{int a[3];int b;}\

w[]={{1},2};

は、次を生成する。

sizeof(w)=32w[0].a=1,0,0w[0].=0w[1].a=2,0,0w[1].b=0

include ファイルをまたがるコメント
#include ファイルで始まり、最初のファイルをインクルードしたファイルで終了するコメントを許可する。
コンパイルの翻訳段階で、つまり、#include 指令が処理される前に、コメントは空白文字に置換される。
文字定数内の仮引数の置換
置換リストマクロと一致したとき、文字定数内の文字を置換する。

#define charize(c)’c’

charize(Z)

は、次を生成する。

’Z’

文字は置換されない。

#define charize(c) ’c’charize(Z)

は、次を生成する。

’c’

文字列定数内の仮引数の置換
プリプロセッサは文字列定数内の囲まれた仮引数を置換する。

#define stringize(str) ’str’

stringize(foo)

は、次を生成する。

”foo”

プリプロセッサ演算子 # を使用しなければならない。

#define stringize(str) ’str’

stringize(foo)

は、次を生成する。

”str”

コンパイラの「フロントエンド」に組み込まれたプリプロセッサ
コンパイラは、cpp(1) を呼び出し、指定したオプションに従って、コンパイルシステムのほかのすべてのコンポーネントを処理する。
ISO C の変換フェーズ 1 ~ 4 (プリプロセッサ指令の処理を含む) は acomp に直接組み込まれる。 したがって、-Xs モードの場合を除き、cpp はコンパイル中に直接呼び出されることはない。
バックスラッシュによる行の連結
行の連結では、バックスラッシュ文字を認識しない。
改行文字の直前にバックスラッシュ文字を指定しなければならない。
文字列リテラル内の 3 文字表記
この ISO C の機能はサポートしない。
asm キーワード
asm はキーワードである。
asm は通常の識別子として処理される。
識別子のリンケージ
初期化されていない static 宣言を仮定義として処理しない。この結果、2 番目の宣言が「再宣言」エラーを生成する。次に例を示します。

static int i = 1;

static int i;

初期化されていない static 宣言を仮定義として処理する。
名前空間
structunion、enum のタグ、struct、union、enum のメンバー、および、そのほかすべての 3 つだけを識別する。
ラベル名、タグ (キーワード struct、unionenum のあとに続く名前)、struct、union、enum のメンバー、および、通常の識別子の 4 つの名前空間を認識する。
long double
サポートしない。
long double 型の宣言を使用できる。
浮動小数点定数
浮動小数点の接尾辞 flFL はサポートされない。
接尾辞なしの整数定数は異なる型を持つことができる。
整数定数の接尾辞 u と U はサポートされない。
ワイド文字定数
ワイド文字定数についての ISO C 構文を使用できない。次に例を示します。

wchar_t wc = L’x’;

この構文をサポートする。
’\a’および’\x’
文字 ’a’ と ’x’ として処理する。
特別なエスケープシーケンス’\a’’\x’として処理する。
文字列リテラルの連結
ISO C の隣接する文字列リテラルの連結はサポートしない。
ワイド文字の文字列リテラル構文
ISO C のワイド文字の文字列リテラル構文はサポートしない。次に例を示します。

wchar_t *ws = L"hello";

この構文をサポートする。
ポインタ: void *char *
ISO C の void * 機能をサポートする。
単項プラス演算子
この ISO C の機能はサポートしない。
関数のプロトタイプ — 省略記号
サポートしない。
ISO C は可変引数パラメータリストを示すための省略記号「...」の使用を定義する。
型定義
typedef は、同じ型名を持つ別の宣言により、内側のブロックで再宣言できない。
typedef は、同じ型名を持つ別の宣言により、内側のブロックで再宣言できる。
extern 変数の初期化
明示的に extern と宣言した変数の初期化はサポートしない。
明示的に extern と宣言した変数の初期化を定義として処理する。
集合体の初期化
ISO C の共用体または自動構造体の初期化はサポートしない。
プロトタイプ
この ISO C の機能はサポートしない。
前処理指令の構文
第 1 桁に # がある指令だけを認識する。
ANSI/ISO では、# 指令の前に空白文字を使用できる。
プリプロセッサ演算子 #
ISO C のプリプロセッサ演算子 # はサポートしない。
#error 指令
この ISO C の機能はサポートしない。
プリプロセッサ指令
#ident 指令とともに、2 つのプラグマ unknown_control_flowmakes_regs_inconsistent をサポートする。プラグマを認識できないとき、プリプロセッサは警告を発行する。
認識できないプラグマに対する動作は指定されていない。
事前定義されたマクロ名
次の ISO C 定義のマクロ名は定義されていない。

__STDC__

__DATE__

__TIME__

__LINE__