2.3 用語

2.3.1 ハイパーバイザ
2.3.2 ドメイン、ゲストおよび仮想マシン
2.3.3 管理ドメイン(dom0)
2.3.4 ドメイン(domU)
2.3.5 記憶域および記憶域リポジトリ
2.3.6 サーバー・プール
2.3.7 ネットワーク
2.3.8 ジョブとイベント

この項では、このガイドを通して使用される用語およびOracle VMで使用される用語の定義について説明します。

2.3.1 ハイパーバイザ

各Oracle VM Serverに存在するハイパーバイザは、フットプリントが非常に小さい仮想マシン・マネージャおよびスケジューラです。システムで唯一完全な権限を持つエンティティとなるように設計されています。CPUとメモリーの使用量、権限の確認、ハードウェア割込みなど、システムの最も基本的なリソースのみを制御します。

2.3.2 ドメイン、ゲストおよび仮想マシン

ドメイン、ゲストおよび仮想マシンは、ほぼ同じ意味に使用されていますが、若干の違いがあります。ドメインは、構成可能な一連のリソースで、メモリー、仮想CPU、仮想マシンを実行するネットワーク・デバイスおよびディスク・デバイスを含みます。ドメインには、仮想リソースが提供され、単独で起動、停止および再起動することができます。ゲストは、ドメイン内で実行される仮想化されたオペレーティング・システムです。ゲスト・オペレーティング・システムは、準仮想化またはハードウェア仮想化がなされています。同じOracle VM Serverで複数のゲストを実行できます。仮想マシンは、ゲスト・オペレーティング・システムとそれに関連するアプリケーション・ソフトウェアです。仮想化モードの詳細は、7.2項「仮想化モード(ドメイン・タイプ)」を参照してください。

2.3.3 管理ドメイン(dom0)

Oracle VM Server環境のハードウェア検出の役割のほとんどは、ドメイン0(dom0)と呼ばれる管理ドメインに渡されます。dom0カーネルは、様々なデバイス、ファイル・システムおよびソフトウェアRAIDとボリューム管理をサポートするフットプリントの小さいLinuxカーネルです。Oracle VM Serverにおけるdom0の役割は、多くのシステム・ハードウェアへのアクセスを可能にし、ゲスト・オペレーティング・システムを作成、破棄、管理し、これらのゲストに対して共通の仮想ハードウェアを使用可能にすることです。

2.3.4 ドメイン(domU)

各ゲスト・オペレーティング・システムには、「ユーザー・ドメイン」と呼ばれるこのシステムの管理ドメインがあり、「domU」と省略されます。このドメインは、ハードウェアまたはデバイス・ドライバに直接アクセスする権限を持たないドメインです。各domUは、dom0のOracle VM Serverによって起動します。

2.3.5 記憶域および記憶域リポジトリ

記憶域リポジトリは、仮想マシンを構築する様々なリソースが保存される中央の場所です。これらのリソースには、テンプレート、ISOファイル、VMファイルなどが含まれます。物理サーバーが故障した場合に備えて、環境内の利用可能なディスク領域の使用量が最適化され、仮想マシンの再割当てを簡単に行えるように、Oracle VM Serverには記憶域リポジトリへの共有アクセス権があります。

ただし、Oracle VM内の記憶域はリポジトリ以上であり、クラスタ化サーバー・プール用のサーバー・プール・ファイル・システム、物理ディスクまたはLUN(ストレージ・アレイ内)、ローカル物理ディスク(Oracle VM Server上)も含まれます。これらの記憶域要素はすべて様々な方法で使用され、Oracle VM Managerで集中管理されます。

2.3.6 サーバー・プール

Oracle VM Serverが1つだけである場合でも、サーバー・プールはOracle VMの必須エンティティです。実際には、複数のOracle VM Serverによって1つのサーバー・プールが形成され、Oracle VM環境に1つ以上のサーバー・プールが含まれる場合があります。通常、サーバー・プールはクラスタ化されますが、理論的にはクラスタ化されていないサーバー・プールも可能です。

サーバー・プールはストレージ・リポジトリへの共有アクセスが可能で、サーバー・プール・ファイル・システムの重要なクラスタ情報を交換し、格納します。サーバー・プールでは、Oracle VM Managerとの通信を集中的に行うマスター・サーバーが選択されます。サーバー・プールの他のメンバーは、必要に応じてマスターのロールを引き継ぐことができます。サーバーで障害が発生した場合でも、サーバー・プールには、その仮想IPアドレスでアクセスできます(仮想IPアドレスはプール内のすべてのサーバーで共有されます)。

サーバー・プール内では、ロード・バランシングまたはスケジュールされたメンテナンスのために、仮想マシンのライブ・マイグレーションが可能です。プール・メンバーがなんらかの理由で消失した場合、必要なリソースはすべて共有記憶域で使用可能であるため、その仮想マシンをリカバリして別のOracle VM Serverで起動することができます。

2.3.7 ネットワーク

Oracle VM環境のネットワーク・インフラストラクチャは、Oracle VM Server間、Oracle VM ServerとOracle VM Manager間、およびOracle VM Serverとそれらの記憶域サブシステム間の接続に加えて、環境内にデプロイされている仮想マシン間の通信および仮想マシンと外部のプライベートまたはパブリック・ネットワーク間の通信で構成されます。これらのネットワーク接続では、Oracle VMによってサポートされる機能(ネットワーク化されたファイル・システム、クラスタリング、冗長性とロード・バランシング、ブリッジングおよび仮想LAN (VLAN)のサポートなど)を使用できます。

物理ネットワークとは、Oracle VM ManagerとすべてのOracle VM Serverの物理接続の集合、および宛先に情報を届けるスイッチおよびルーターです。Oracle VMの論理ネットワークはこれらの物理接続上に構築されます。Oracle VMネットワークを作成する場合は、1組の論理イーサネット・ネットワークに使用可能なネットワーク・ポートをマップします。このマッピングはOracle VM Managerで実行します。

Oracle VMのネットワークでは1つ以上のネットワーク機能を実行できます。Oracle VMのネットワーク機能には、サーバー管理、ライブ・マイグレーション、クラスタ・ハートビート、仮想マシンおよび記憶域があります。機能は組み合せたり、複数の異なるネットワーク上で使用することができ、設計上の要件は使用可能な物理ネットワーク・インフラストラクチャ(各サーバーのNICの数など)によって異なります。

2.3.8 ジョブとイベント

ジョブは、通常はユーザー処理によってトリガーされる一連の操作です。サーバーの検出、リポジトリの提示、VMの作成などがあります。これらのジョブはOracle VM Managerユーザー・インタフェース下部の「Jobs Summary」ペインに表示され、そのステータスは進捗状況に従ってリフレッシュされます。ジョブには、特定のユーザー・アクションによるものではなく、更新版のYUMリポジトリの確認など、再帰的なシステム操作によるものがあります。環境内のすべてのジョブの履歴は、ジョブ・リストの表示およびフィルタ処理と、各ジョブの詳細(ステータス、実行タイム・スタンプ、ジョブなどの一部として実行される操作など)の表示が可能な「Jobs」タブで確認できます。

イベントもユーザー処理に関連することがありますが、ユーザー視点での主な機能は、今後の参考のために「オブジェクト」のステータス情報を登録したり、問題のトレースをより簡単にすることです。イベントはOracle VM Managerの「Servers and VMs」、「Repositories」および「Storage」の各タブに表示されますが、イベントのリストはナビゲーション・ペインのツリー・ビューで選択されているオブジェクトによって異なります。たとえば、VMのイベント・リストでは、作成された時期、起動および停止されたポイント、移行された時期などが表示されます。同じツリー・ビューでサーバーまたはサーバー・プールを選択すると、特定のオブジェクトに関連する別のタイプのイベントが表示されます。イベントにはステータスはなく重大度レベルがあり、大部分のイベントは情報レベルに該当しますが、注意が必要な警告やエラーなどの状況である場合もあります。エラーをクリアするには、エラー・イベントを確認する必要があります。イベントの確認の詳細は、B.1.10項「イベント/エラーの確認」を参照してください。