多くの組織が、仮想化テクノロジおよび異機種のオペレーティング・システム、ハードウェアおよびストレージ・デバイス・アセットを統合する複雑なデータ・センターへと移行しています。システム管理者は、データ・センターの複雑さを管理し、直面する大きな課題を解決して、コストと時間を節約するための効果的な方法を探しています。システム管理の課題として、運用およびメンテナンス・コストを抑制する操作の合理化、新しいアセットの効率的なデプロイ、リソースの変更に対する迅速な応答、および停止時間の短縮があります。Oracle Enterprise Manager Cloud ControlおよびOracle Enterprise Manager Ops Centerは、これらの課題に対応します。
このドキュメントでは、Oracle Enterprise Manager Ops Centerソフトウェアの概要とその設計について説明します。このドキュメントの内容は次のとおりです。
Oracle Enterprise Manager Cloud ControlとOracle Enterprise Manager Ops Centerは、アプリケーションからストレージ・ディスクまでのすべてのレベルを対象にエンタープライズ・レベルのデータ・センター管理ソリューションを提供する相互補完的なテクノロジです。どちらの製品も管理対象アセット(ターゲット)を監視しますが、それらはデータ・センターのアセット・スタックの異なる部分に存在します。Oracle Enterprise Manager Cloud Controlは、アプリケーション、ミドルウェアおよびデータベースを管理しますが、Oracle Enterprise Manager Ops Centerはオペレーティング・システム、仮想マシン、サーバー、ストレージ・リソースおよびネットワーク・リソースを管理します。これらは、組み合されることでデータ・センター・インフラストラクチャ管理のための完全なソリューションになります。図1-1に、Oracle Enterprise Manager Ops Centerの管理対象アセット・スタックの3次元図を示します。
連携動作するようにアプリケーションをインストールして構成するか、各アプリケーションを個別に使用します。このドキュメントでは、Oracle Enterprise Manager Ops Centerソフトウェアの機能および動作に重点を置いて説明します。
Oracle Enterprise Manager Ops Centerは、データ・センターの物理および仮想オペレーティング・システム、サーバーおよびストレージ・デバイスを管理するためのオラクル社の包括的なシステム管理ソリューションです。検出および管理機能を使用して、Oracle Enterprise Manager Ops Centerの管理対象アセットのセットにデータ・センターのアセットを追加します。アセットの場所にかかわらず、単一のコンソールから複数のデータ・センターの物理および仮想管理対象アセットをプロビジョニング、更新(パッチ適用)、監視および管理できます。
図1-2では、Oracle Enterprise Manager Ops Centerの管理対象アセットに焦点を当てています。
図1-2 Oracle Enterprise Manager Ops Centerソリューション
Oracle Enterprise Manager Ops Centerは、Oracle Premier Support for Systems、Oracle Premier Support for Operating Systems、Oracle PremierおよびBasic Support for Oracle Linux、Oracle VM Server for SPARC、およびOracle VM Server for x86に含まれます。これらのOracleサポート契約のいずれかを保持していれば、Oracle Enterprise Manager Ops Centerのサポートを利用できます。
Oracle Enterprise Manager Ops Centerソフトウェアには、データ・センターのインフラストラクチャを管理するために特化した次のような機能があります。
ダッシュボード: アセットのグループまたは個々のアセットのサマリーを表示します(ステータスやメンバーシップのグラフィカル表現を含む)。
インシデント管理: ユーザーが設定するルールおよびしきい値に従ってアセットを監視します。インシデントが発生した場合、インシデント・ナレッジ・ベースがアクティブ化され、メッセージ・センターに既知の問題と割当て済の管理者が表示されます。アノテーションを追加してアクションやステータスを記録したり、スクリプトを実行して既知のインシデントやソリューションを解決します。
Oracle Enterprise Manager Cloud Controlとの統合: いずれかのソフトウェア製品を使用して管理対象アセットの構成、状態、パフォーマンス情報およびインシデントを表示します。一方の製品の変更は、他方の製品にレポートされます。
アセットのプロファイル: カスタム実行可能スクリプトを含むソフトウェア・プロファイルおよび運用プロファイルを作成し、それらを計画に含めます。
運用計画: 運用プロファイルとして単一のスクリプトをデプロイします。運用計画は、個別の計画として実行することも、デプロイメント計画内の1つのステップとして実行することもできます。ローカル・ソフトウェアとは無関係にスクリプトを実行し、それらを使用して環境内で特定のタスク(構成オプションなど)を実行したり、インシデント管理を支援したりします。
デプロイメント計画: 1つ以上のプロファイルとスクリプトを組み合せて、オペレーティング・システムまたはファームウェアを効率的に一貫性のある形式でプロビジョニングするマルチタスク計画を作成します。
計画管理: 計画の作成およびデプロイに必要なデフォルトのテンプレート、プロファイルおよび計画を提供します。計画管理には、既知の問題のデータベースを作成できるインシデント・ナレッジ・ベースも含まれます。運用プロファイルおよびアノテーションを使用して、推奨アクションまたは自動化アクションを関連付け、既知の問題に対応します。
ハードウェア管理: システム・コンポーネントのファームウェアを更新し、ハードウェア構成の変更を時系列で追跡します。ILOM x64、ILOM CMT、およびMシリーズのサーバーとシャーシのエネルギー利用を追跡してエネルギー効率を向上させ、ILOM 3.0システムの電力バジェットを管理します。
仮想化管理: Oracle Solarisゾーン、Oracle VM Server for SPARC、Oracle VM Server for x86およびそれらのゲストなどの仮想アセットを管理します。仮想アセットのネットワーク・リソースとストレージ・リソースは、サーバー・プールのメンバーシップによって提供されます。
レポート: アセットおよびアクティビティのレポートを作成して、そのレポートをPDF形式のファイルまたはカンマ区切り値としてエクスポートします。
Oracle Enterprise Manager Ops Centerは、大規模な分散データ・センターで高度なスケーラビリティ、高可用性および最適なパフォーマンスを実現するように設計されています。アーキテクチャは、組織の成長に応じてスケーリングできます。エンタープライズ・コントローラ、プロキシ・コントローラ、エージェント・コントローラおよびユーザー・インタフェースは、オラクル社によってホストされ、インターネットを通じてアクセスできるナレッジ・ベースとともに、主要なアーキテクチャ・コンポーネントです。このようなアーキテクチャによって、プロキシ・コントローラの配置とエージェント・コントローラの使用を変更することで、組織の規模およびネットワーク・トポロジに応じてデプロイメントをカスタマイズできます。
基本的なデプロイメントでは、ナレッジ・ベースおよびパッケージ・リポジトリからの情報が、プロファイルや計画などの基本管理ツールとともに情報を格納するエンタープライズ・コントローラにダウンロードされます。1つ以上のプロキシ・コントローラでエンタープライズ・コントローラの作業を配布します。すべてのコンポーネント間のセキュアなネットワーク接続によって、制御コマンドとデータが転送されます。オペレーティング・システムでは、エージェント・コントローラが更新機能、管理と監視、および仮想化環境の制御を提供します。エージェント・コントローラは、LinuxとOracle Solarisの更新ジョブ、システム・カタログ、更新レポート、およびオペレーティング・システムのプロビジョニングに必要です。Oracle Solaris 9および10のブート環境管理にも、エージェント管理のオペレーティング・システムが必要です。エージェント・コントローラは、Microsoft Windowsシステムの更新には必要ありません。
図1-3に、Oracle Enterprise Manager Ops Centerのアーキテクチャの基本的なデプロイメントを示します。
図1-3 Oracle Enterprise Manager Ops Centerのアーキテクチャの基本的なデプロイメント
ナレッジ・ベースおよびOracle Solaris 11パッケージ・リポジトリは、Oracle SolarisおよびLinuxオペレーティング・システム・コンポーネントに関するメタデータを格納します。メタデータには、パッチ依存性、標準パッチ互換性、取消し済パッチ、およびダウンロードとデプロイメントのルールが含まれます。ナレッジ・ベースは、オペレーティング・システムのURLを追跡し、適切なベンダー・ダウンロード・サイトからコンポーネントを取得します。
デフォルトでは、Oracle Enterprise Manager Ops Centerは、オペレーティング・システムの更新済メタデータを提供するオラクル社のサイトに接続するように構成されます。ただし、これらのサイトに直接接続せずに製品ソフトウェアを構成することもできます。
エンタープライズ・コントローラは、Oracle Enterprise Manager Ops Centerの中央サーバーです。すべての操作(ジョブ)は、エンタープライズ・コントローラから起動されます。エンタープライズ・コントローラでは、ファームウェアとオペレーティング・システムのイメージ、計画、プロファイルおよびポリシーを管理します。エンタープライズ・コントローラは、アセット・データおよびサイト・カスタマイズのデータベースに依存します。このデータベースとして、ローカルの組込みデータベースか、またはネットワークを通じてエンタープライズ・コントローラにアクセスできるリモートのOracle Enterprise Editionデータベースを使用できます。アクティブ・スタンバイ高可用性構成にエンタープライズ・コントローラを組み入れ、Oracle Enterprise Manager Ops Centerソフトウェアの可用性を向上させます。
エンタープライズ・コントローラは、契約情報へのアクセスやサービス・リクエストの作成に加え、更新、Oracle Solarisイメージ、および製品ソフトウェア自体の更新のダウンロードを行うためにインターネットに接続します。更新がリクエストされると、エンタープライズ・コントローラは、ナレッジ・ベース、パッケージ・リポジトリまたはベンダーからソフトウェアを取得します。これは、接続モードと呼ばれるデフォルトの操作モードです。
サイト・ポリシーでインターネット接続を許可しない場合、ソフトウェアを非接続モードで操作できます。このモードでは、ナレッジ・ベースおよびパッケージ・リポジトリのデータと更新をエンタープライズ・コントローラにロードして管理する必要があります。Oracle SolarisおよびOracle Linuxオペレーティング・システムでは、インターネットに接続しているシステム上で実行し、オラクル社のナレッジ・ベースの内容を取得してエンタープライズ・コントローラにベースラインと更新をアップロードするスクリプトがOracle Enterprise Manager Ops Centerに用意されています。サポートされる他のすべてのオペレーティング・システムでは、CDやDVDなどのメディア形式で更新を取得し、ローカル・コンテンツとして情報をアップロードします。
プロキシ・コントローラは、操作の負荷を分散し、ファンアウト機能を提供してネットワーク負荷を最小化します。また、プロキシ・コントローラを使用して、ファイアウォールの背後でネットワーク・プレゼンスを提供することや、プライベート・ネットワークへのアクセスを提供することもできます。プロキシ・コントローラは、管理対象アセットをエンタープライズ・コントローラにリンクし、オペレーティング・システムのプロビジョニングなど、管理対象アセットに近接して存在する必要のある操作を実行します。プロキシ・コントローラでは、エージェントなしのアセットで管理操作を実行し、結果をエンタープライズ・コントローラにレポートします。アセットの管理、プロビジョニングおよび更新に必要なアクションは、ジョブのキューとして処理されます。
少なくとも1つのプロキシ・コントローラを用意する必要があります。共同配置プロキシ・コントローラを使用できます(つまり、プロキシ・コントローラとエンタープライズ・コントローラ・ソフトウェアが同じシステムにインストールされます)。パフォーマンスとスケーラビリティを向上するために推奨される方法は、プロキシ・コントローラを個別のマシンにインストールすることです。
図1-4は、共同配置プロキシ・コントローラの図を示しています。
このアーキテクチャでは正常に動作するOracle Enterprise Manager Ops Centerソリューションがデプロイされますが、ほとんどのサイトは、次の条件があるために複数のプロキシ・コントローラの使用によって利益を得ることができます。
データ・センターに、管理する必要のある多数のアセットがあります。
一部のアセットがリモートの場所にありますが、パフォーマンスを維持する予定です。
同時実行する多数のジョブを作成することが予想されます。
一部のアセットがファイアウォールの背後にあり、独自のプロキシ・コントローラが必要です。
一部のアセットが独自のサブネット上にあり、オペレーティング・システムのプロビジョニング用に同じサブネット上にプロキシ・コントローラが必要です。
図1-5では、1つのプロキシ・コントローラが管理ネットワーク用として指定され、もう1つのプロキシ・コントローラがデータ・ネットワーク用として指定されています。この図は、1つのプロキシ・コントローラを管理対象サービス・プロセッサに関連付け、もう1つのプロキシ・コントローラをオペレーティング・システムに関連付ける方法を示しています。
Oracle SolarisとLinuxの物理および仮想オペレーティング・システムでは、多くの機能(更新レポートの作成、システム・カタログの作成と使用、Oracle Solaris 9および10のブート環境の管理など)を実行するためにエージェント・ソフトウェアが必要です。一部の監視および分析データにも、エージェント管理のオペレーティング・システムが必要です。ただし、多くの監視および管理機能は、オペレーティング・システムにエージェント・コントローラをインストールせずに使用できます。
エージェント・コントローラは、アセットを識別してプロキシ・コントローラに応答する軽量Javaソフトウェアです。オペレーティング・システムがエージェントで管理されている場合、エージェントはそのプロキシ・コントローラからコマンドを受信し、必要なアクションを実行して、結果をプロキシ・コントローラに通知します。オペレーティング・システムがエージェントなしで管理されている場合、プロキシ・コントローラは、SSH (セキュア・シェル・プロトコル)を使用してタスクを実行し、オペレーティング・システムを監視します。オペレーティング・システム・アセットの管理方法は、変更できます。
ハードウェア管理には、エージェント・コントローラは必要ありません。かわりに、プロキシ・コントローラがハードウェア・システムでコマンドを実行し、結果をエンタープライズ・コントローラにレポートします。