5 クラスタ VTSS 構成の使用

クラスタ VTSS を使用すると、ある VTSS から別の VTSS に VTV をコピーできます。クラスタ VTSS は、DR (障害回復) ソリューションなどが含まれるがこれに限定されないアプリケーションにおける強力なツールです。これらのセクションでは、VTSS クラスタの内容と動作方法の基本について説明します。

基本に関する説明のあと、クラスタ VTSS について知っておく必要がある、その他の内容や機能について説明します。

クラスタ VTSS とは

VTSS クラスタは、データ可用性を最大限にするための高可用性 (HA) ソリューションです。これは、FICON または TCP/IP 通信リンク (CLINK) を使用して接続されている、2 つ以上の VTSS システムから構成されます。さらに、クラスタ内のすべての VTSS システムは、クラスタ内で作成されたすべてのデータ (VTSS 常駐または移行済み) にアクセスできます。クラスタで作成されたデータ (VTV) は、VTCS ポリシーの制御下で同一クラスタ内のある VTSS システムから別の VTSS にレプリケートされます。

注記:

すべての VTSS システムが、クラスタ内で作成されたすべてのデータにアクセスできるようにするためには、クラスタ構成を次のいずれかに設定します。
  • クラスタ内の各 VTSS が、RTD または VLE のいずれかに接続されている。

  • どの VTSS も VLE または RTD に接続されていない「テープレス」の状態にする。

したがって、クラスタ構成では、クラスタ内の VTSS が停止状態にある場合、ホットリカバリにより最高のデータ可用性が確保されます (レプリケートされたデータは、MVC からのリコールがなくても使用可能なままの状態)。

VTCS 7.0 以前では、クラスタを構成できるのは 2 つの VTSS のみでした。VTCS 7.0 では、単一のクラスタを多数の VTSS から構成できます。ただし、2 つの VTSS に常駐できるのは常に 1 つの VTV のみです。

クラスタは、広い範囲にわたって展開できます。ただし、クラスタは、単一の TapePlex 内に存在する必要があります (単一の CDS により制御)。

VTV は、次のいずれかの方法で、ある VTSS から別の VTSS にレプリケート (コピー) できます。

  • VTV のマウント解除後、即時に完了するようにスケジュールされた VTV との非同期作成

  • VTV との同期作成。レプリケーションが完了するまで、VTV のマウント解除は完了しません。

注記:

VTSS は、VTV が 40 分以内に同期レプリケート可能かどうかを見積もります。不可能な場合、VTV は非同期レプリケートされます。

クラスタ内の VTSS システム間の接続は、データ (VTV) が 1 方向にだけ送信される「単方向」、またはデータ (VTV) が両方向に送信可能な「双方向」のいずれかに設定できます。CONFIG ユーティリティーでは、クラスタが単方向または双方向のいずれであるかを指定し、VTV マネージメントクラスでは、レプリケーションポリシー (ある場合) およびレプリケーションを同期または非同期のいずれで実行するかを決定します。

このため、ボールティング MVC と VTV レプリケーションはどちらも、障害回復/ビジネス継続ソリューションに役立つ可能性があります。ただし、VTV レプリケーションは、レプリケーション機能が存在するため、高可用性ソリューションとして優れています。

  • データは、同期してバックアップできます。

  • 「回復」VTSS にレプリケートされた最新のデータは、MVC をマウントする必要がないため、即時にリストアできます。

クラスタ VTSS の要件

表5-1 に、クラスタ VTSS の要件を示します。

表5-1 クラスタ VTSS の要件

コンポーネント
要件

拡張クラスタ

VSM4 または VSM5 の場合は、FICON 接続を備えた D02.07.00.00 以上の VTSS マイクロコードのみ。VSM 6 の場合は、すべてのレベルのマイクロコード。

1 つのクラスタ内にある 2 つの VTSS (ESCON インタフェース)

プライマリおよびセカンダリ VTSS は、セカンダリの容量に制限のない VSM4 の任意の組み合わせにできます。VSM5 には ESCON インタフェースが備えられておらず、ESCON を使用するほかの VTSS のクラスタに存在することはできません。

1 つのクラスタ内にある 2 つの VTSS (FICON インタフェース)

プライマリおよびセカンダリ VTSS は、セカンダリの容量に制限のない VSM4 と VSM5 の任意の組み合わせにできます。たとえば、次はすべて有効です。

  • プライマリ VSM5、セカンダリ VSM4

  • プライマリ VSM5、セカンダリ VSM5

  • プライマリ VSM4、セカンダリ VSM4

  • プライマリ VSM4、セカンダリ VSM5 (推奨されません)

プライマリおよびセカンダリ VTSS マイクロコード

プライマリ VTSS マイクロコードを、送信側レプリケート VTVS をサポートするレベルにする必要があります。セカンダリ VTSS マイクロコードを、受信側レプリケート VTV をサポートするレベルにして、セカンダリを本番用 VTSS として使用できるようにする必要があります。マイクロコードをインストールしたら、オプションのフロッピーディスクを使用して、プライマリおよびセカンダリ VTSS の両方でクラスタ化機能を有効にする必要があります。詳細は、StorageTek ハードウェアサービス担当者にお問い合わせください。

クラスタ化用に予約された VTD

クラスタ VTSS 構成では、各 VTSS (0-F) 内の最初の 16 個の VTD が、クラスタ化用に予約されていることを確認する必要があります。これらのデバイスは、MSP に対して OFFLINE 状態にし、そのパスを各 HSC サーバーホストに対してオンライン状態にする必要があります。これは、Cross TapePlex Replication に含まれているすべての VTSS に対しても適用されます。VTCS は、最初の 16 個の VTD を SMC/HSC では登録しませんが、これにより VTD 上に VTV がマウントされるのを防ぎます。

RTD

デュアル ACS 環境では、ある VTSS によって移行されたデータが別の VTSS でレプリケートできるように、各 ACS に接続されている RTD 内で、同じデバイスタイプを示すようにする必要があります。移行で使用される MVC の数、およびメディアのタイプと場所は、MGMTclas 文の MIGPOL パラメータによって決定されます。

各 ACS について検討を行い、ある ACS 内のドライブタイプが、クラスタ VTSS 環境内の VTSS のいずれかに接続されている場合は、同じ ACS 内で同じタイプのドライブを、該当するクラスタ環境内のその他すべての VTSS に接続する必要があります。

ネイティブ IP (TCP/IP によりクラスタ化)

ネイティブ IP では、次の PTF を適用した CDSLEVEL F 以上が必要です。

  • 6.2 の場合:

    LF620G7 – SO@620

    LF620J2 - SW@620

  • 7.1 以上の場合: サポートはベースに含まれています。

ネイティブ IP では、次の接続がサポートされています。

  • VSM5 間

  • VSM5 と VSM 6 間

  • VSM 6 間

  • VSM 6 または VSM5 と VLE 間


同期レプリケーションは、VSM4 以上のみに適用され、表5-2 で説明されている要件が存在します。

表5-2 同期レプリケーションの要件

同期レプリケーションの要件
VTSS マイクロコードレベル CDS レベル

CLINK 用のネイティブ IP または FICON ポート

VSM4 および VSM5 の場合は D02.03.00.00 以上、VSM 6 の場合はすべてのレベルのマイクロコード。

「F」以上


クラスタ VTSS 構成の動作方法

VSM を使用して、クラスタリンク (CLINK) により 2 つの VTSS を接続することにより、クラスタ VTSS 構成を形成できます。次の文を使用して、クラスタ構成を実装します。

  • クラスタは、CLINK 文に従って、単方向または双方向のいずれかにできます。

  • セカンダリ VTSS (2 番目のピア) は、プライマリ (1 番目のピア) と同じ物理的な場所か、またはリモートの場所に配置できます。

  • CONFIG CLUSTER 文では、クラスタを形成する VTSS を指定します。

  • CONFIG CLINK 文では、VTSS を接続する CLINK を定義します。CLINK 文を記述する方法により、レプリケーションを単方向にするか双方向にするかを決定します。たとえば、単方向クラスタ VTSSおよび「双方向クラスタ VTSS」を参照してください。

  • MGMTclas REPLICAT パラメータでは、クラスタ内のある VTSS から別の VTSS に VSM がレプリケート (コピー) する VTV を含むマネージメントクラスを識別します。

CONFIG GLOBAL REPLicat パラメータでは、VTV をレプリケートするタイミングを次のように指定します。

REPLicat

VSM が VTV をレプリケートするタイミングを指定します。

ALWAYS

VTV がマウント解除されるたびに、レプリケート要求が VTCS レプリケーションキューに追加されますが、この場合、VTV がマウント時に変更されたかどうかは関係ありません (デフォルト)。

CHANGED

VTV が次の状態の場合、レプリケート要求が VTCS レプリケーションキューに追加されます。

  • マウント時に変更された、または

  • マウント時に読み取り専用に設定されたが、VTV の MVC コピーの数が予期された数よりも少ない。

CONFIG GLOBAL REPLicat 設定に関係なく、レプリケーションでは、次のこと必要になります。

  • レプリケーションをサポートする VTSS 内で VTV をマウント解除する必要があり、さらにクラスタ内のほかの VTSS 内に VTV の同一コピーが作成できない。

  • CONFIG GLOBAL REPLicat 値のほかに、レプリケーションを発生させるために、VTV のマネージメントクラスで REPLICAT(YES) を指定する必要がある

    詳細は、ELS のコマンド、制御文、ユーティリティーに関するリファレンスを参照してください。

  • VTCS は、レプリケートされた VTV を即時に移行します (KEEP を指定)。STORclas 文の MIGRATE パラメータで、レプリケートされた VTV の移行用のソース VTSS を指定できます。またMIGRATE パラメータ値により、ストレージクラスを指し示すマネージメントクラスでレプリケーションを指定して、該当する VTSS から移行する必要があります。そうしない場合、該当する VTSS からの移行は発生しません。

    VTCS は、MGMTclas IMMDELAY 設定に関係なく、レプリケートされた VTV を即時に移行する (KEEP を指定) ため、StorageTek では、レプリケートされた VTV の MGMTclas IMMDELAY ポリシーを明示的には設定しないことを.強くお勧めします。そうした場合、VTCS は明示的な即時移行要求を適用して、VTSS が最初に移行を実行可能な VTV を即時に移行します (つまり、移行を満たす VTV の常駐コピーと使用可能な RTD が存在する最初の VTSS)。したがって、明示的な MGMTclas IMMDELAY ポリシーを設定することは冗長性があり、最適な VTV レプリケーションおよび移行に干渉する場合があります。

    また、レプリケーションのあとの即時移行 (KEEP) は、自動移行と同じではないことに注意してください。つまり、暗黙的な即時移行の間は、DBU を管理するいずれの VTSS からも VTV は削除されません。代わりに、VTV は受信側 VTSS から MVC への移行を使用して「事前ステージング」されるだけで、両方の VTSS バッファーの内容は変更されません。VTSS クラスタ内のスペース管理のために、VTCS はいずれかの VTSS のスペース管理/移行サイクルに従って、VTV を自動移行します。受信側 VTSS の容量が送信側 VTSS の容量以上の場合、送信側 VTSS の自動移行により、両方の VTSS からレプリケート VTV が削除されます。受信側 VTSS の容量が送信側 VTSS の容量より小さい場合、送信側 VTSS で自動移行が開始されることがあります。この場合、自動移行により、送信側 VTSS だけからレプリケート VTV が削除され、受信側 VTSS のコピーは常駐したままです。

  • データのレプリケーション要件は、リコールではなく、マウント解除のあとに削除されることに注意してください。VTV をリコールしてもレプリケートは発生せず、強制リコール、MVCdrain およびリクレイムでもレプリケートは発生しません。ただし、VTD で VTV がリコールされてマウントされた場合は、マウント解除時にセカンダリまたはピア VTSS にレプリケートされます。

  • クラスタは、4 つの運用モードそれぞれにおいて、複数の作業負荷をサポートできます。たとえば、アクティブなレプリケーションをサポートできるのは全機能クラスタのみですが、低下プライマリモードでは、セカンダリの VTD を MSP に対してオンラインに変更して、作業負荷を引き継ぐことができます。Query を使用して、クラスタ、クラスタリンク、VTV レプリケーション、および VTSS ステータスを表示できます。VARY VTSS を使用して VTSS の状態を変更し、VARY CLink を使用して CLINK の状態を変更できます。

VTSS 調整の動作方法

  • クラスタ VTSS ペアが全機能の状態を再開した場合は常に、VTCS が 2 つの VTSS の内容を調整します。これが発生するのは、VTCS の初期化時、または VTSS およびそのパートナ VTSS がオンラインになった場合のいずれかです。

  • 調整は、VTV の削除、または移行と削除 (以前にこの処理が正常に完了していない場合は、VTV のレプリケート) のいずれかから構成されます。つまり、VTSS の内容の調整にリコールは含まれません。

    たとえば、送信側ではなく受信側 VTSS に VTV が常駐している単方向クラスタでは、VTCS が送信側から VTV を削除します (必要な MVC コピーがすべて作成されたのを確認したあと)。これにより、送信側へのリコールが回避されます。

    同様に、受信側ではなく送信側 VTSS に VTV が常駐している単方向クラスタでは、VTCS が MVC から VTV をリコールする代わりに受信側にレプリケートします。

  • 調整プロセスでは、レプリケートされた VTV が送信側 VTSS に常駐している場合、それは有効なコピーであるとします。受信側のコピーが異なる場合、VTCS はそれを削除します。

  • 双方向クラスタでの一貫性のある調整アクションを維持するために、VTV が常駐しているかまたは最後に常駐していた VTSS (CDS VTV レコードにより示されます) が送信側 VTSS であるとみなされます。単方向クラスタでの調整プロセスは、前述したとおりです。

単方向および双方向クラスタ

2 つの VTSS のクラスタは、次のいずれかです。

  • 単方向、ここで 1 つの VTSS はプライマリでもう一方はセカンダリ。詳細は、「単方向クラスタ VTSS」を参照してください。

  • 双方向、ここで両方の VTSS はピアで、レプリケーションはいずれかの方向でのピアツーピア。詳細は、「双方向クラスタ VTSS」を参照してください。

単方向クラスタ

図5-1 に示すように、単方向クラスタでは、レプリケーションはプライマリからセカンダリに対してのみ行われます。

図5-1 単方向クラスタ VTSS

図5-1 の説明が続きます
説明: 図5-1 単方向クラスタ VTSS

単方向 VTSS クラスタの動作方法

  • セカンダリは、標準のルーティングメソッドのいずれかにより (たとえば、TAPEREQ)、プライマリからのレプリケート VTV およびレプリケートされない本番作業負荷の両方を受信できます。セカンダリが本番負荷を受け入れることができるように、セカンダリの VTD を MSP に対してオンラインに変更する必要があります。「クラスタ VTSS 構成の動作方法」で説明されているように、CLINK 終了が使用している VTD アドレスを MSP に対してオンラインに変更することはできません。

  • レプリケーションが有効な VTV は、いずれかが使用できるかぎりオンラインのプライマリ VTSS に割り振られ、いずれも使用できない場合、VTV はオンラインのセカンダリ VTSS に割り振られます。使用可能なオンラインのセカンダリ VTSS がない場合、VTV はクラスタでない VTSS に割り振られます。レプリケーションが有効ではない VTV は、全機能クラスタのセカンダリを含む、任意のオンライン VTSS に割り振ることができます。

  • 全機能クラスタに常駐しているレプリケーションが有効な VTV は、マウント解除時に、セカンダリ VTSS へのレプリケーションのキューに入れられます。レプリケーションが有効な VTV が、全機能クラスタの一部ではない VTSS 内の VTD からマウント解除される場合、VTV は即時移行のキューに入れられます。

    セカンダリ VTSS がプライマリ VTSS からレプリケートされた VTV を受信すると、この VTV の即時移行マネージメントクラスの設定に関係なく、VTV は即時に移行されます (KEEP オプションを指定)。

  • プライマリおよびセカンダリ VTSS は両方ともに、すべてのスペースリクレイムを管理できます。

  • ESCON または FICON インタフェースを使用している場合、プライマリ VTSS では CLINK CIPs/FIPs が Nearlink モードで構成され、セカンダリ VTSS では CIPs/FIPs がホストモードで構成されます。

    したがって、次の例に示すように、プライマリ VTSS に対してのみ CLINK を構成できますが、ここで VTSS1 はプライマリ VTSS です。

    .
    .
    CLUSTER NAME=CLUSTER1 VTSSs(VTSS1,VTSS2)
     CLINK VTSS=VTSS1 CHANIF=0G
     CLINK VTSS=VTSS1 CHANIF=0O
     CLINK VTSS=VTSS1 CHANIF=1G
     CLINK VTSS=VTSS1 CHANIF=1O
    .
    .
    

双方向クラスタ

図5-2 に示すように、データが CLINK で双方向に送信されるようにするために、双方向クラスタ化では単方向 CLINK のペアが必要です。

図5-2 双方向クラスタ VTSS

図5-2 の説明が続きます
説明: 図5-2 双方向クラスタ VTSS

双方向 VTSS クラスタの動作方法

双方向クラスタでは、通常の運用において、次のように両方の VTSS が VTCS に対してオンラインになります。

  • 双方向クラスタでは、それぞれのピア VTSS が標準のルーティングメソッド (たとえば、TAPEREQ) を使用して、本番負荷を受け入れることができます。それぞれの VTSS が本番負荷を受け入れることができるように、両方の VTSS の VTD を MSP に対してオンラインに変更する必要があります。ただし、「クラスタ VTSS 構成の動作方法」で説明されているように、CLINK 接続が使用している VTD アドレスを MSP に対してオンラインに変更することができないことに注意してください

  • 双方向クラスタでは、レプリケーションが有効な VTV は、ピア VTSS のいずれかに割り振られます。2 つのピア VTSS のいずれかがオフラインまたは休止状態の場合、残りのオンラインの VTSS で本番作業負荷を実行できます。ただし、レプリケーションが必要な VTV は、ほかの全機能クラスタが使用不可で適切ではない場合にのみ、残りの VTSS に割り振られます。この場合、レプリケート VTV は、ほかの VTSS がオンラインになったときに keep を指定して即時に移行され、レプリケーションのキューに入れられます。

  • 双方向クラスタでは、全機能クラスタに常駐しているレプリケーションが有効な VTV は、マウント解除時に、ほかのピア VTSS へのレプリケーションのキューに入れられます。レプリケーションが有効な VTV が、全機能クラスタの一部ではない VTSS 内の VTD からマウント解除される場合、VTV は即時移行のキューに入れられます。データのレプリケーション要件は、リコールではなく、マウント解除のあとに削除されることに注意してください。VTV をリコールしてもレプリケートは発生せず、強制リコール、MVCdrain およびリクレイムでもレプリケートは発生しません。ただし、VTV がリコールされて VTD にマウントされた場合、マウント解除時に REPLICAT(CHANGED) (推奨されるオプション) を指定しなければセカンダリ VTSS にレプリケートされますが、データが変更された場合にのみ VTV が再度レプリケートされます。

  • 両方のピア VTSS が、すべてのスペースリクレイムを管理できます。

  • ESCON または FICON インタフェースを使用している場合、次のようになります。

    • 各ピア VTSS において、「送信側」CLINK CIPs/FIPsNearlink モード で構成され、受信側 CLINK CIPs/FIPsホストモードで構成されます。

      したがって、次の例に示すように、各ピア VTSS で「送信側」CLINK を構成できますが、ここで VSMPR1 と VSMPR2 はピア VTSS です。

      .
      .
      CLUSTER NAME=CLUSTER1 VTSSs(VSMPR1,VSMPR2)
       CLINK VTSS=VSMPR1 CHANIF=0O:0
       CLINK VTSS=VSMPR1 CHANIF=0O:1
       CLINK VTSS=VSMPR2 CHANIF=1O:0
       CLINK VTSS=VSMPR2 CHANIF=1O:1
      .
      .
      
  • 各 CLINK は、各 VTSS で同じストレージクラスタに接続する必要があります (ストレージクラスタ 0 間またはストレージクラス 1 間)。この方法で構成しないと、レプリケート、チャネル、および通信エラーが発生する場合があります。

    図5-3 の例に示すように、VSMPR1 の送信側 (Nearlink モード) CLINK ポートはストレージクラスタ 1 にあり、VSMPR2 のストレージクラスタ 1 の受信側 (ホストモード) CLINK ポートにも接続されています。同様に、VSMPR2 のストレージクラスタ 0 の送信側 CLINK ポートは、VSMPR1 のストレージクラスタ 0 の受信側 CLINK ポートに接続されています。

    図5-3 双方向クラスタ VTSS の ESCON/FICON CLINK

    図5-3 の説明が続きます
    説明: 図5-3 双方向クラスタ VTSS の ESCON/FICON CLINK

拡張クラスタ化

拡張クラスタ化 (EC) を使用すると、単一の Tapeplex (1 CDS) 構成内で CLINK を介して 3 つ以上の VTSS を接続できます。クラスタ化は、VTSS の停止時に作業負荷が中断されないように設計された高可用性ソリューションです。クラスタ化では、クラスタの一部であるすべての VTSS サブシステムが、そのクラスタのいずれかの単一 VTSS サブシステムによって生成された、すべての MVC にアクセスできる必要があります。クラスタ内の VTSS がリモート Tapeplex (CTR) に接続されている場合、クラスタ内のすべての VTSS システムを同じ Tapeplex に接続して、HA 機能を保持する必要があります。

拡張クラスタ化では、CLINK により複数の VTSS に接続された 1 つの VSM を構成でき、Clink 接続の数は使用可能な物理接続の数によってのみ制限されます。D02.07.00.00 以上のマイクロコードが必要です。使用可能なクラスタ化およびレプリケーション規則がすべて EC に適用されます。図5-4 に示されているように、拡張クラスタ構成は 2 つの基本的な単方向構成に基づいて構築されます。

図5-4 基本的な拡張クラスタ構成

図5-4 の説明が続きます
説明: 図5-4 基本的な拡張クラスタ構成

同期または非同期レプリケーション

サイトのポリシーに応じて、レプリケートを同期または非同期のいずれで行うかを選択できます。

同期レプリケーションの実装

注意:

同期レプリケーションでは、仮想ボリュームのレプリケートに必要な時間だけ、同期レプリケーションポリシーが指定されているデータを作成するジョブの完了が遅延します。
  1. システムに、表5-2 で説明されている、同期レプリケーション要件が存在することを確認します。

  2. すべての HSC/VTCS システムを停止させ、CONFIG GLOBAL を使用して同期レプリケーションを有効にします。

    CONFIG GLOBAL SYNCHREP=YES
    
  3. CONFIG GLOBAL REPLICAT パラメータが、次のとおりに設定されていることを確認します。

    ALWAYS

    VTV がマウント解除されるたびに、レプリケート要求が VTCS レプリケーションキューに追加されますが、この場合、VTV がマウント時に変更されたかどうかは関係ありません (デフォルト)。

    CHANGED

    VTV が次の状態の場合、レプリケート要求が VTCS レプリケーションキューに追加されます。

    • マウント時に変更された、または

    • マウント時に読み取り専用に設定されたが、VTV の MVC コピーの数が予期された数よりも少ない。

  4. 該当する MGMTClas 文で、同期レプリケーションを指定します。

    MGMT (name) ..... REP(YES_SYNC)
    

ジョブモニタリングによる非同期レプリケーションの実装

非同期レプリケーションを使用するが、レプリケーションが正常に完了したことを認識することも必要になる場合があります。この手順では、DRMONitr ユーティリティーを使用して、レプリケーションが正常に完了するまで、関連する MSP ジョブが一時停止していることをモニターします。

  1. システムに、表5-2 で説明されている、同期レプリケーション要件が存在することを確認します。

  2. すべての HSC/VTCS システムを停止させ、CONFIG GLOBAL を使用して非同期レプリケーションを有効にします。

    CONFIG GLOBAL SYNCHREP=NO
    
  3. CONFIG GLOBAL REPLICAT パラメータが、次のとおりに設定されていることを確認します。

    ALWAYS

    VTV がマウント解除されるたびに、レプリケート要求が VTCS レプリケーションキューに追加されますが、この場合、VTV がマウント時に変更されたかどうかは関係ありません (デフォルト)。

    CHANGED

    VTV が次の状態の場合、レプリケート要求が VTCS レプリケーションキューに追加されます。

    • マウント時に変更された、または

    • マウント時に読み取り専用に設定されたが、VTV の MVC コピーの数が予期された数よりも少ない。

  4. 該当する MGMTClas 文で、非同期レプリケーションを指定します。

    MGMT (mgmtname) ..... REP(YES)
    
  5. JCL を作成して、非同期レプリケーションをモニターします。

    この場合、DRMONitr ユーティリティーを使用して、レプリケーションをモニターします。DRMONitr により、レプリケーションが正常に完了するまで、関連する MSP ジョブが一時停止します。次に例を示します。

    //MONITOR EXEC PGM=SLUADMIN,PARM='MIXED'
    //STEPLIB  DD DSN=hlq.SEALINK,DISP=SHR
    //* If HSC IS NOT OR MAY NOT BE ACTIVE, INCLUDE THE 
    //* FOLLOWING:
    //SLSCNTL DD DSN=primary.cds.name,DISP=SHR
    //SLSCNTL2 DD DSN=secondary.cds.name,DISP=SHR
    //SLSSTBY   DD DSN=standby.cds.name,DISP=SHR
    //SLSPARMP DD DSN=hlq.PARMLIB(BKPCNTL),DISP=SHR
    //SLSPARMS DD DSN=hlq.PARMLIB(BKPCNTL2),DISP=SHR
    //SLSPARMB DD DSN=hlq.PARMLIB(BKPSTBY),DISP=SHR
    //SYSIN          DD UNIT=SYSDA,SPACE=(TRK,1)
    //* THE FOLLOWING IS USED BY THE SNAPSHOT UTILITY:
    //SYSPRINT  DD  SYSOUT=* 
    //SLSPRINT   DD SYSOUT=* 
    //SLSIN         DD *
    DRMON MGMT(mgmtname) REPL MAXAGE(24) TIMEOUT(120)
    

この例では、DRMON ユーティリティーにより、指定したマネージメントクラスのレプリケートをモニターします。さらに、最近の 24 時間以内に更新された VTV のみをモニターし、120 分後に DRMON をタイムアウトします。

TCP/IP 接続によるクラスタ化

VTSS ネイティブ IP 接続機能で TCP/IP プロトコルを使用して、VTV レプリケーションの 2 つ以上の VTSS を「クラスタ化」(接続) します。ネイティブ IP クラスタ化では、各 VTSS が TCP/IP ネットワークに接続するための Ethernet ポートを持っています。これまで、レプリケーションは ESCON または FICON 接続に制限されていました。CLINK に TCP/IP を使用すると、ESCON または FICON プロトコルを介したレプリケーションのパフォーマンスが向上し、必要な場合は、RTD とホストの接続に既存の ESCON または FICON ポートを排他的に使用できますが、ここでは次の項目がサポートされています。

  • VSM5 間

  • VSM5 と VSM 6 間

  • VSM 6 間

このセクションでは、ネイティブ IP の VTCS 実装についてのみ説明します。StorageTek ハードウェアでは、VTSS 側の構成を担当者またはほかの QSP が行うことができます。

TCP/IP 環境

TCP/IP 接続の CLINK は、FICON または ESCON チャネル接続の CLINK と同様に機能しますが、TCP/IP CLINK は、ESCON または FICON ポートからではなく、VTSS の Ethernet ポートを使用して接続されます。図5-5 の例は、それぞれが Ethernet ポートを持つ 4 枚の IFF3 カードを搭載したピア VSM5 を示しています。IFF3 カードの Ethernet ポートからの Ethernet ケーブルは、ローカルエリアネットワーク (LAN、各 VTSS に 1 つ) に接続されており、LAN はワイドエリアネットワーク (WAN) を介して接続されています。

図5-5 2 つの VSM5 での TCP/IP 環境

図5-5 の説明が続きます
説明: 図5-5 2 つの VSM5 での TCP/IP 環境

TCP/IP CLINK の VTCS の構成

次に、CONFIG CLINK 文のパラメータを示します。

CONFIG CLINK 文

CONFIG CLINK 文では、次のパラメータにより 2 つのタイプの VTSS 間接続を提供します。

CLINK CHANIF=nn または nn:n

CLINK として使用する FICON または ESCON ポートを定義します。

CLINK IPIF=ci:p

CLINK として使用する Ethernet ポートを定義します。VSM5 および VSM 6 の場合、CONFIG RTD IPIF の値は、c=0 または 1、i=A または I、p=0 から 3 です。VSM5 の場合、この値は VSM5 「IFF Configuration Status Screen」で指定した値と一致している必要があります。VSM 6 の場合、この値は各 VTSS で一意である必要がありますが、VSM 6 TCP/IP ポートの実際の値には対応していません。

注記:

CLINK 文には CHANIF または IPIF パラメータのいずれかが含まれている必要がありますが、両方を含んではいけません。