この章の内容は次のとおりです。
関連項目:
|
個々の権限の付与および取消し。UPDATE
SQL文を実行する権限など、個々の権限を個々のユーザーまたはユーザーのグループに付与できます。
ロールの作成と権限の割当て。ロールは、ユーザーまたは他のロールに一括で付与する関連権限の名前付きグループです。
セキュア・アプリケーション・ロールの作成。セキュア・アプリケーション・ロールを使用すると、データベース・ロールを有効にできるタイミングを制御する条件を定義できます。たとえば、セキュア・アプリケーション・ロールを使用すると、ユーザー・セッションでデータベース・ロールを有効にするのを許可する前に、そのセッションに関連するIPアドレスをチェックできます。
権限は、表の更新や削除などの特定のアクションを実行する権利であるため、データベース・ユーザーに必要以上の権限は付与しないでください。権限の管理の概要は、『Oracle Database 2日でデータベース管理者』の「ユーザー権限とロールについて」を参照してください。『Oracle Database 2日でデータベース管理者』では、権限を付与する方法の例も示されています。
つまり、最小権限の原則とは、ユーザーに、効率的かつ簡潔に作業を行うために実際に必要な権限のみを与えることです。最小権限の原則を実践するために、次の制限を可能なかぎり行ってください。
ロールは、ユーザーまたは他のロールに一括して付与する関連権限の名前付きグループです。ロールの管理の基礎については、『Oracle Database 2日でデータベース管理者』の「ロールの管理」を参照してください。『Oracle Database 2日でデータベース管理者』の「例: ロールの作成」も参照してください。
ロールは、複数のユーザーに権限を迅速かつ簡単に付与するために役立ちます。Oracle Databaseで定義されているロールを使用することもできますが、必要な権限のみを含む独自のロールを作成すると、より継続的な制御が可能になります。Oracle Databaseで定義済のCONNECT
ロールの権限は変更または削除される可能性がありますが、このロールには現在、CREATE SESSION
権限しかありません。以前は他に8個の権限がありました。
定義したロールに含まれる権限が、特定の職務に必要な権限のみであることを確認します。アプリケーション・ユーザーが既存のロールに組み込まれている権限のすべては必要としていない場合は、適切な権限のみを含む異なるロールのセットを適用してください。または、権限をさらに制限するロールを作成して割り当てます。
ユーザーSCOTT
などの通常のユーザーには、CREATE DATABASE LINK
権限などの強力な権限は付与しないでください。(SCOTT
はよく知られているデフォルトのユーザー・アカウントで、侵入されやすい可能性があるため、特にこのユーザーにはいずれの強力な権限も付与しないでください。)かわりに、データベース・ロールに権限を付与してから、その権限を使用する必要があるユーザーにそのロールを付与してください。また、ユーザーが必要とする最小限の権限のみを付与するように注意してください。
PUBLIC
ロールから、不要な権限とロールを取り消す必要があります。PUBLIC
ロールは、すべてのデータベース・ユーザー・アカウントに自動的に割り当てられます。デフォルトでは、このロールに割り当てられる権限はありませんが、多くのJavaオブジェクトに対する権限があります。PUBLIC
ロールを削除することはできず、ユーザー・アカウントには常にこのロールが割り当てられるため、このロールの手動での付与または取消しに意味はありません。PUBLIC
ロールは、すべてのデータベース・ユーザー・アカウントに割り当てられるため、DBA_ROLES
およびSESSION_ROLES
データ・ディクショナリ・ビューに表示されません。
すべてのユーザーがPUBLIC
ロールを持っているため、すべてのデータベース・ユーザーがこのロールに付与されている権限を実行できます。この権限によって、最小限の権限を持つユーザーが、この権限なしでは直接アクセスできない関数にアクセスして実行できるようになる可能性があります。
セキュア・アプリケーション・ロールは、認可されたPL/SQLパッケージによってのみ有効にできるロールです。PL/SQLパッケージ自体は、アプリケーションへのアクセスを制御するために必要なセキュリティ・ポリシーを反映します。
この項の内容は次のとおりです。
セキュア・アプリケーション・ロールは、認可されたPL/SQLパッケージによってのみ有効にできるロールです。このパッケージは、アプリケーションへのアクセスを制御する1つ以上のセキュリティ・ポリシーを定義します。ロールおよびパッケージは通常、作成者(通常はセキュリティ管理者)のスキーマに作成されます。セキュリティ管理者は、データベースのセキュリティを維持する責任があるデータベース管理者です。
セキュア・アプリケーション・ロールを使用する利点は、ロール自体に付与された権限に加えて、アプリケーション・アクセスにセキュリティの追加レイヤーを作成できることです。セキュア・アプリケーション・ロールを使用すると、パスワードがアプリケーション・ソース・コードに埋め込まれたり表に格納されないため、セキュリティが強化されます。このため、データベースが行う決定はセキュリティ・ポリシーの実装に基づいて行われます。これらの定義はアプリケーションではなくデータベースにまとめて格納されるため、各アプリケーションのポリシーを変更するのではなく、このポリシーを一度に変更します。ポリシーはロールにバインドされているため、データベースに接続しているユーザー数に関係なく、結果は常に同じになります。
セキュア・アプリケーション・ロールには次のコンポーネントがあります。
セキュア・アプリケーション・ロール自体。このロールを作成するには、CREATE ROLE
文をIDENTIFIED USING
句とともに使用してPL/SQLパッケージに関連付けます。次に、一般的にロールに付与する権限をこのロールに付与します。
セキュア・アプリケーション・ロールに関連付けるPL/SQLパッケージ、プロシージャまたはファンクション。PL/SQLパッケージは、データベースへのログインを試行する人物にロールを付与またはロールを拒否する条件を設定します。PL/SQLパッケージ、プロシージャまたはファンクションは、定義者の権限ではなく実行者の権限を使用して作成する必要があります。実行者の権限のプロシージャは現行ユーザー(プロシージャを実行するユーザー)の権限で実行されます。このユーザーには、PL/SQLパッケージからアクセスされる、基礎となるオブジェクトに対するEXECUTE
権限が付与されている必要があります。実行者の権限のプロシージャは、特定のスキーマにバインドされません。様々なユーザーがこのようなプロシージャを実行でき、集中化されたアプリケーション・ロジックを使用することで複数のユーザーが自身のデータを管理できます。実行者の権限のパッケージを作成するには、プロシージャ・コードの宣言部でAUTHID CURRENT_USER
句を使用します。
ユーザーのロールを有効(または無効)にするために、PL/SQLパッケージにはSET ROLE
文またはDBMS_SESSION.SET_ROLE
コールも含まれている必要があります。
PL/SQLパッケージを作成してから、適切なユーザーにパッケージに対するEXECUTE
権限を付与する必要があります。
ユーザーがログオンしたときにPL/SQLパッケージを実行する方法。PL/SQLパッケージを実行するには、ユーザーがロールによって付与される権限を使用する前に、アプリケーションから直接PL/SQLパッケージをコールする必要があります。ユーザーがログオンしたときにPL/SQLパッケージを自動的に実行するログオン・トリガーは使用できません。
ユーザーがアプリケーションにログインすると、必要に応じて、パッケージ内のポリシーによるチェックが行われます。チェックを通過したユーザーにはロールが付与され、アプリケーションへのアクセスが許可されます。ユーザーがチェックを通過できない場合、アプリケーションへのアクセスは拒否されます。
このチュートリアルでは、2人のユーザーMatthew WeissとWinston TaylorがOE.ORDERS
表から情報を取得する場合を説明します。この表へのアクセス権は、EMPLOYEE_ROLE
セキュア・アプリケーション・ロールで定義されています。MatthewはWinstonのマネージャで、OE.ORDERS
表内の情報にアクセスできますが、Winstonは情報にアクセスできません。
このチュートリアルでは、次の手順を実行します。
セキュリティを強化するためには、システム管理者に職務を割り当てる際に、責務分離の概念を取り入れる必要があります。このマニュアルのチュートリアルでは、sec_admin
というセキュリティ管理者アカウントを作成し、使用します。
sec_adminセキュリティ管理者アカウントを作成するには、次のようにします。
Database Controlを起動します。
Database Controlを起動する手順については、『Oracle Database 2日でデータベース管理者』を参照してください。
管理者のユーザー名(SYSTEM
など)とパスワードを入力し、「ログイン」をクリックします。
SYSTEM
ユーザーの場合は、Normal
として接続します。
データベースのホームページが表示されます。
「サーバー」をクリックして、「サーバー」サブページを表示します。
「セキュリティ」で、「ユーザー」を選択します。
「ユーザー」ページが表示されます。
「作成」をクリックします。
「ユーザーの作成」ページが表示されます。
次の情報を入力します。
名前: sec_admin
プロファイル: Default
認証: Password
「パスワードの入力」および「パスワードの確認」: 「パスワードの作成要件」に示されている要件を満たすパスワードを入力します。
デフォルト表領域: SYSTEM
一時表領域: TEMP
ステータス: UNLOCKED
「ロール」をクリックして「ユーザーの編集: SEC_ADMIN」ページを表示します。
「リストを編集」をクリックします。
「ロールの変更」ページが表示されます。
「使用可能なロール」リストからSELECT_CATALOG_ROLEロールを選択し、「移動」をクリックして「選択したロール」リストに移動します。次に「OK」をクリックして、「ユーザーの編集」ページに戻ります。
「システム権限」をクリックして、「システム権限」サブページを表示します。
「リストを編集」をクリックします。
「システム権限の変更」ページが表示されます。
「使用可能なシステム権限」リストから次の権限を選択し、「移動」をクリックしてそれぞれを「選択したシステム権限」リストに移動します。(複数の権限を選択するには、[Ctrl]キーを押したままにします。)
CREATE PROCEDURE
CREATE ROLE
CREATE SESSION
SELECT ANY DICTIONARY
「OK」をクリックします。
「ユーザーの作成」ページが表示されます。
「管理者オプション」では、ボックスを選択しないでください。
「OK」をクリックします。
「ユーザー」ページが表示されます。「ユーザー名」リストにユーザーsec_admin
が表示されます。
MatthewとWinstonは、どちらもHR.EMPLOYEES
スキーマの従業員のサンプルです。従業員のマネージャIDや電子メール・アドレスなどの情報を含む列があります。以降でセキュア・アプリケーション・ロールをテストするため、これら2人の従業員のユーザー・アカウントを作成する必要があります。
ユーザー・アカウントを作成するには、次のようにします。
「ユーザー」ページで、「作成」をクリックします。
「ユーザーの作成」ページが表示されます。
次の情報を入力します。
名前: mweiss
(Matthew Weissのユーザー・アカウントを作成するため)
プロファイル: DEFAULT
認証: Password
「パスワードの入力」および「パスワードの確認」: 「パスワードの作成要件」に示されている要件を満たすパスワードを入力します。
デフォルト表領域: USERS
一時表領域: TEMP
ステータス: Unlocked
「システム権限」をクリックして、「システム権限」サブページを表示します。
「リストを編集」をクリックします。
「システム権限の変更」ページが表示されます。
「使用可能なシステム権限」リストからCREATE SESSION
権限を選択し、「移動」をクリックして「選択したシステム権限」リストに移動します。
「OK」をクリックします。
CREATE SESSION
がユーザーmweiss
のシステム権限としてリストされた状態で「ユーザーの作成」ページが表示されます。
CREATE SESSION
の「管理者オプション」が選択されていないことを確認し、「OK」をクリックします。
「ユーザー」ページが表示されます。
ユーザー・リストからユーザーMWEISSのオプションを選択し、次に「アクション」リストから「類似作成」を選択します。次に「実行」をクリックします。
「ユーザーの作成」ページで、次の情報を入力してWinstonのユーザー・アカウントを作成します。このアカウントはMatthewのユーザー・アカウントとほぼ同じになります。
名前: wtaylor
「パスワードの入力」および「パスワードの確認」: 「パスワードの作成要件」に示されている要件を満たすパスワードを入力します。
ユーザーwtaylor
に対し、デフォルト表領域および一時表領域、またはCREATE SESSION
システム権限を指定する必要はありません。すでに指定されているからです。
「OK」をクリックします。
wtaylor
にCREATE SESSION
権限を付与する必要はありません。これは、この処理が「類似作成」アクションによって実行されているためです。
Database Controlからログアウトします。
これで、Matthew WeissとWinston Taylorの両方にユーザー・アカウントが作成され、同じ権限が与えられました。
これで、employee_role
セキュア・アプリケーション・ロールを作成する準備ができました。これを実行するには、セキュリティ管理者sec_admin
としてログインする必要があります。sec_admin
アカウントの作成方法については、「手順1: セキュリティ管理者アカウントを作成する」を参照してください。
セキュア・アプリケーション・ロールを作成するには、次のようにします。
SQL*Plusを起動し、セキュリティ管理者sec_admin
としてログオンします。
SQLPLUS sec_admin
Enter password: password
SQL*Plusが起動し、デフォルトのデータベースに接続してから、プロンプトが表示されます。
SQL>
SQL*Plusの起動の詳細は、『Oracle Database 2日でデータベース管理者』を参照してください。
次のセキュア・アプリケーション・ロールを作成します。
CREATE ROLE employee_role IDENTIFIED USING sec_roles;
IDENTIFIED USING
句では、関連付けられているPL/SQLパッケージ(この場合はsec_roles
)内でのみ有効(または無効)にするロールを設定します。この段階では、sec_roles
PL/SQLパッケージが存在している必要はありません。
ユーザーOE
として接続します。
CONNECT OE
Enter password: password
OE
がロックされているというエラー・メッセージが表示された場合は、OE
アカウントのロックを解除し、次の文を入力してパスワードをリセットします。セキュリティを考慮して、以前のリリースのOracle Databaseで使用していたパスワードと同じパスワードは再利用しないでください。「パスワードの作成要件」に示されているパスワードのガイドラインに従って、任意のセキュアなパスワードを入力します。
CONNECT SYS/AS SYSDBA Enter password: sys_password PASSWORD OE -- First, change the OE account password. Changing password for OE New password: password Retype new password: password Password changed. ALTER USER OE ACCOUNT UNLOCK; -- Next, unlock the OE account.
次の構文を使用して、ユーザー・アカウントのロック解除と新規パスワードの作成する方法もあります。
ALTER USER account_name ACCOUNT UNLOCK IDENTIFIED BY new_password:
これで、ユーザーOE
として接続できます。
CONNECT OE
Enter password: password
次の文を入力して、OE.ORDERS
表に対するSELECT
権限をEMPLOYEE_ROLE
ロールに付与します。
GRANT SELECT ON OE.ORDERS TO employee_role;
ユーザーに直接ロールは付与しないでください。ユーザーがセキュリティ・ポリシーの条件を満たしている場合、ロールの付与はPL/SQLパッケージにより行われます。
employee_role
ロールを付与するユーザーを決定するプロシージャを作成します。このプロシージャは、マネージャID 100のSteven Kingに報告を行うマネージャにのみemployee_role
を付与します。この情報はHR.EMPLOYEES
表にあります。ただし、この表には給与情報などの機密データが含まれており、また、使用した場合すべてのユーザーがアクセスする必要があるため、このプロシージャでは使用できません。実際にはほとんどの場合に、必要な情報のみが含まれている参照ビューを作成します。(参照表を作成することはできますが、ビューに最新データが反映されます。)このチュートリアルでは、従業員の名前、従業員ID、マネージャIDのみを含む独自の参照ビューを作成します。
HR.HR_VERIFY参照ビューを作成するには、次のようにします。
SQL*Plusで、ユーザーHR
として接続します。
CONNECT HR
Enter password: password
HR
がロックされているというエラー・メッセージが表示された場合は、そのアカウントのロックを解除し、次の文を入力してパスワードをリセットします。セキュリティを考慮して、以前のリリースのOracle Databaseで使用していたパスワードと同じパスワードは再利用しないでください。「パスワードの作成要件」に示されているパスワードのガイドラインに従って、任意のセキュアなパスワードを入力します。
CONNECT SYSTEM Enter password: password PASSWORD HR Changing password for HR New password: password Retype new password: password Password changed. ALTER USER HR ACCOUNT UNLOCK; CONNECT HR Enter password: password
次のCREATE VIEW
SQL文を入力して参照ビューを作成します。
CREATE VIEW hr_verify AS SELECT EMPLOYEE_ID, FIRST_NAME, LAST_NAME, EMAIL, MANAGER_ID FROM EMPLOYEES;
次のSQL文を入力して、このビューに対するEXECUTE
権限をmweiss
、wtaylor
およびsec_admin
に付与します。
GRANT SELECT ON hr.hr_verify TO mweiss; GRANT SELECT ON hr.hr_verify TO wtaylor; GRANT SELECT ON hr.hr_verify TO sec_admin;
次に、セキュア・アプリケーション・ロールのプロシージャを作成します。多くの場合、プロシージャを格納するパッケージを作成しますが、このチュートリアルは、1つのセキュア・アプリケーション・ロールのみをテスト(プロシージャで定義)するシンプルなチュートリアルであるため、プロシージャのみを作成します。複数のプロシージャを作成してロールをテストする場合は、パッケージ内にプロシージャを作成します。
PL/SQLパッケージを使用すれば、SQL文からアクセスできる特定の関連プロシージャやタイプを、単純で明確なインタフェースとして定義できます。またパッケージを使用することでコードが再利用可能になり、メンテナンスもしやすくなります。パッケージをセキュア・アプリケーション・ロールに使用した場合の利点は、複数のセキュリティ・ポリシーを1つのグループにまとめることで、アプリケーション保護のための堅牢なセキュリティ計画を実装できることです。セキュリティ・ポリシーに失敗したユーザー(潜在的な侵入者)については、監査チェックをパッケージに追加して、その失敗を記録できます。
セキュア・アプリケーション・ロールのプロシージャを作成するには、次のようにします。
SQL*Plusでユーザーsec_admin
として接続します。
CONNECT sec_admin
Enter password: password
次のCREATE PROCEDURE
文を入力してセキュア・アプリケーション・ロールのプロシージャを作成します。(最初の行のCREATE OR REPLACE
の前にカーソルを置くことで、このテキストをコピーして貼り付けることができます。)
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 |
CREATE OR REPLACE PROCEDURE sec_roles AUTHID CURRENT_USER AS v_user varchar2(50); v_manager_id number :=1; BEGIN v_user := lower((sys_context ('userenv','session_user'))); SELECT manager_id INTO v_manager_id FROM hr.hr_verify WHERE lower(email)=v_user; IF v_manager_id = 100 THEN EXECUTE IMMEDIATE 'SET ROLE employee_role'; ELSE NULL; END IF; EXCEPTION WHEN NO_DATA_FOUND THEN v_manager_id:=0; DBMS_OUTPUT.PUT_LINE(v_manager_id); END; / |
この例では、次のとおりです。
1行目: CREATE PROCEDURE
文に、実行者の権限を使用してプロシージャを作成するAUTHID CURRENT_USER
句を追加します。AUTHID CURRENT_USER
句は、現在のユーザーの権限を使用し、実行者の権限を使用してパッケージを作成します。
パッケージを機能させるには、実行者の権限を使用する必要があります。実行者の権限は、パッケージがアクセスするすべてのオブジェクトに対するEXECUTE
権限をユーザーに与えます。
実行者の権限のプロシージャ内で有効になっているロールは、プロシージャが終了した後でも有効なままですが、ユーザーは、セッションを終了するとセキュア・アプリケーション・ロールに関連付けられている権限を失います。この場合は、セッションの残りでロールを有効にする専用プロシージャを持つことができます。
ユーザーは、定義者権限のプロシージャ内のセキュリティ・ドメインを変更できないため、セキュア・アプリケーション・ロールは実行者権限のプロシージャ内でのみ有効になります。
実行者の権限を使用したプロシージャの作成の重要性については、「セキュア・アプリケーション・ロールについて」を参照してください。
3行目: ユーザーのセッション情報を格納するv_user
変数を宣言します。
4行目: v_user
ユーザーのマネージャIDを格納するv_manager_id
変数を宣言します。
6行目: ユーザー・ログオンのユーザー・セッション情報(この場合は、MatthewまたはWinston)を取得します。ユーザー・セッション情報を取得するには、SQLファンクションSYS_CONTEXT
をネームスペース属性USERENV
('userenv
'、session_attribute
)とともに使用して、この情報をv_user
変数に書き込みます。
このファンクションから返される情報は、ユーザーが認証された方法、クライアントのIPアドレスおよびユーザーがプロキシを介して接続したかどうかを示します。SYS_CONTEXT
の詳細は、『Oracle Database SQL言語リファレンス』を参照してください。
7から8行目: 現行ユーザーのマネージャIDを取得します。SELECT
文によって、マネージャIDがv_manager_id
変数にコピーされ、HR.HR_VERIFY
ビューで現行ユーザーのマネージャIDがチェックされます。従業員の電子メール・アドレスはユーザー名と同じであるため、この例では従業員の電子メール・アドレスを使用します。
9から13行目: IF
条件により、ユーザーにsec_roles
ロールを付与すべきかどうかテストされます。この例の場合は、MatthewのマネージャであるSteven King(従業員番号は100)に報告を行うかどうかが条件となります。Matthewのように、Kingに報告を行う場合、ユーザーにはセキュア・アプリケーション・ロールが付与されます。報告を行わない場合は、ロールは付与されません。
結果として、Matthew WeissはSteven Kingの直属の部下であるためセキュア・アプリケーション・ロールを付与されますが、WinstonはSteven Kingの直属の部下ではないためロールは付与されません。
10から12行目: IF
条件内では、THEN
条件によってSET ROLE
文がすぐに実行され、ロールが付与されます。これが実行されない場合は、ELSE
条件により、権限付与が拒否されます。
14から15行目: データが検出されない場合は、EXCEPTION
文を使用してv_manager_id
を0
に設定します。
16行目: マネージャID(ここでは0
)をバッファにコピーしてすぐに使用できるようにします。
この段階で、MatthewとWinstonはOE.ORDERS
表にアクセスを試行できますが、アクセスはできません。次の手順で、彼らにsec_roles
プロシージャのEXECUTE
権限を付与し、sec_roles
プロシージャは実行できますが、OE.ORDERS
表から選択したときに、アクセスが許可または拒否されます。
sec_rolesプロシージャのEXECUTE権限を付与するには、次のようにします。
SQL*Plusで、ユーザーsec_admin
として次のGRANT
SQL文を入力します。
GRANT EXECUTE ON sec_admin.sec_roles TO mweiss; GRANT EXECUTE ON sec_admin.sec_roles TO wtaylor;
MatthewとWinstonとしてログオンし、OE.ORDERS
表にアクセスを試行して、employee_role
セキュア・アプリケーション・ロールをテストします。MatthewとWinstonがログオンすると、OE.ORDERS
表でSELECT
文を発行する前に、sec_roles
プロシージャが実行されてロールの検証が行われます。
ユーザーMWEISSとしてemployee_roleセキュア・アプリケーション・ロールをテストするには、次のようにします。
ユーザーmweiss
として接続します。
CONNECT mweiss
Enter password: password
次のSQL文を入力してsec_roles
プロシージャを実行します。
EXEC sec_admin.sec_roles;
この文により、現行セッションに対してsec_roles
プロシージャが実行されます。(実際のシナリオでは、ユーザーがアプリケーションにログインしたときに、この文は自動的に実行されます)。
OE.ORDERS
で次のSELECT
文を実行します。
SELECT COUNT(*) FROM OE.ORDERS;
MatthewにはOE.ORDERS
表へのアクセス権があります。
COUNT(*) ---------- 105
次に、Winstonがセキュア・アプリケーションにアクセスしようとします。
ユーザーWTAYLORとしてemployee_roleセキュア・アプリケーション・ロールをテストするには、次のようにします。
SQL*Plusでユーザーwtaylor
として接続します。
CONNECT wtaylor
Enter password: password
次のSQL文を入力してsec_roles
プロシージャを実行します。
EXEC sec_admin.sec_roles;
この文により、現行セッションに対してsec_roles
プロシージャが実行されます。
OE.ORDERS
で次のSELECT
文を実行します。
SELECT COUNT(*) FROM OE.ORDERS;
WinstonはSteven Kingに直接報告を行わないため、OE.ORDERS
表へのアクセス権がありません。SELECT
文を実行した場合でも、ORDERS
表に含まれる実際の注文数はわかりません。
ERROR at line 1: ORA-00942: table or view does not exist
このチュートリアルで作成したコンポーネントを削除します。
コンポーネントを削除するするには、次のようにします。
SQL*PlusでユーザーSYSTEM
として接続します。
CONNECT SYSTEM
Enter password: password
次のDROP
文を入力します。
DROP USER mweiss; DROP USER wtaylor;
ユーザーsec_admin
は削除しないでください。このマニュアルの以降のチュートリアルで、このユーザーが必要になります。
SQL*Plusでユーザーsec_admin
として接続します。
CONNECT sec_admin
Enter password: password
次のDROP
SQL文を入力します。
DROP ROLE employee_role; DROP PROCEDURE sec_roles;
ユーザーHR
として接続してから、HR_VERIFY
ビューを削除します。
CONNECT HR
Enter password: password
DROP VIEW hr_verify;
SQL*Plusを終了します。
EXIT
表4-1に、ユーザー権限を保護するために使用する初期化パラメータを示します。
表4-1 権限セキュリティに使用される初期化パラメータ
初期化パラメータ | デフォルト設定 | 説明 |
---|---|---|
|
|
|
|
オペレーティング・システムが各ユーザーのロールを識別および管理するかどうかを決定します。 |
|
|
他のロールに含まれるロールを含め、ユーザーが有効にできるデータベース・ロールの最大数を指定します。 |
|
|
オペレーティング・システム・ロールがリモート・クライアントに対して許可されるかどうかを指定します。デフォルト値の |
|
|
|
初期化パラメータを変更するには、「初期化パラメータ値の変更」を参照してください。初期化パラメータの詳細は、『Oracle Databaseリファレンス』および『Oracle Database管理者ガイド』を参照してください。