Oracle HTTP ServerはOracle Fusion MiddlewareのWebサーバー・コンポーネントです。このコンポーネントは、Oracle WebLogic Serverのリスナーと、Webを介して静的ページ、動的ページおよびアプリケーションをホストする際のフレームワークを提供します。
この章の内容は、次のとおりです。
Oracle HTTP Serverは、Apache 2.2.10インフラストラクチャに基づいており、特にOracleで開発されたモジュールを含みます。シングル・サインオン、クラスタ化されたデプロイ、および高可用性の機能により、Oracle HTTP Serverの動作は拡張されます。Oracle HTTP Serverには、クライアント・リクエストを処理するための次のコンポーネントが含まれます。
モジュール(mod): Oracle HTTP Serverの基本機能を実装および拡張します。Oracle HTTP Serverには、多くのApache標準モジュールが組み込まれています。Oracleには、Oracle Fusion Middlewareに固有のモジュールもいくつか組み込まれており、Oracle HTTP Serverと他のOracle Fusion Middlewareコンポーネント間の統合がサポートされます。
Perlインタプリタ: mod_perlを介してOracle HTTP Serverに埋め込まれている永続Perlランタイム環境です。
Oracle HTTP Serverでは、開発者は次のような様々な言語およびテクノロジでサイトをプログラミングできます。
Perl(mod_perlおよびCGIを使用)
C(CGIおよびFastCGIを使用)
C++(FastCGIを使用)
PHP(mod_phpを使用)
Oracle PL/SQL
Oracle HTTP Serverは、フォワード・プロキシ・サーバーにも、リバース・プロキシ・サーバーにもなります。リバース・プロキシを使用すると、様々なサーバーから提供されたコンテンツを、1つのサーバーから提供されたように表示できます。
図1-1は、OracleインスタンスとOracle WebLogic Serverドメインが含まれるOracleホームを示しています。このマニュアル全体を通じて、例ではこの図のコンポーネントを使用します。ファーム(farm1)は、OracleインスタンスとWebLogic Serverドメインで構成されています。OracleインスタンスにはOracle HTTP Server(ohs1)とOracle Web Cache(wc1)が含まれ、WebLogic Serverドメインには2つの管理対象サーバーが含まれます。
関連項目: 『Oracle Fusion Middleware概要』 |
次の項では、Oracle HTTP Serverの主要機能の一部について説明します。
Webサイトを安全に運用するには、Secure Sockets Layer(SSL)が必要です。Oracle HTTP Serverでは、業界標準の特許アルゴリズムに基づいたSSL暗号化をサポートしています。SSLは、一般的にサポートされるインターネット・ブラウザとシームレスに連動します。セキュリティ機能は次のとおりです。
SSLハードウェア・アクセラレーション・サポートでは、nCipher SSL用に専用ハードウェアを使用します。ハードウェア暗号化は、ソフトウェア暗号化より高速です。
ディレクトリ別変数セキュリティでは、ディレクトリをそれぞれ異なる暗号化強度で保護できます。
Oracle HTTP ServerとOracle WebLogic Serverは、暗号化と認証の両方を提供するためにHTTPプロトコルを使用して通信します。また、クライアントがブラウザを使用せずにWebLogic Serverサービスにアクセスできるように、T3またはIIOPプロトコルに対してHTTPトンネリングを有効化することもできます。
関連項目: 『Oracle Fusion Middlewareセキュリティ・ガイド』 |
HTTPサーバーのBasic認証では、暗号化パスワード付きのフラット・ファイルを使用します。Oracle HTTP Serverでは、シングル・サインオンと同様に標準の認証がサポートされます。シングル・サインオンをサイト間およびアプリケーション間でサポートするために、mod_ossoモジュールが組み込まれています。このセキュリティ機能により、ユーザーは1回ログインするだけで済むため、エンド・ユーザーの利便性が向上します。また、セキュリティのほとんどが宣言的に処理されるため、開発サイクルが簡略化されます。
WebDAVは、HTTPベースのプロトコルです。このプロトコルを使用すると、Microsoft OfficeやMicrosoft Windows ExplorerなどのDAV対応クライアントでサーバー上のファイルを編集できます。Oracle HTTP Serverでは、mod_oradavモジュールによりDAVサポートが拡張されています。このモジュールにより、WebDAVクライアントはOracle Databaseに接続し、内容の読取りと書込み、および各種スキーマ内のドキュメントの問合せとロックを実行できます。
アクティブなWebサイトでは、Webページが更新されるのは普通のことで、ディレクトリの内容は頻繁に入れ替わり、URLも変更される可能性があります。Oracle HTTP Serverでは、URLリライティングをサポートする組込みのエンジンによりこのような変化に容易に対応できるため、エンド・ユーザーはブックマークを変更せずに済みます。
また、Oracle HTTP Serverではリバース・プロキシ機能もサポートされるため、様々なサーバーにより提供されるコンテンツを1つのサーバーから簡単に表示できます。
Oracle Fusion Middlewareは、Oracle Process Manager and Notification Server(OPMN)と統合された高可用性インフラストラクチャであり、Oracle HTTP Serverプロセスのプロセス管理、障害検出およびフェイルオーバーに対応しています。
関連項目:
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Oracleには、Microsoft Internet Information Server(IIS)をOracle HTTP Serverと連携させるために使用できる次のプラグインが用意されています。
Oracle Proxy Plug-Inは、単独で使用可能なコンポーネントです。このコンポーネントにより、サード・パーティのHTTPリスナーはリクエストをOracle HTTP Serverにルーティングできます。ユーザーは、自分の会社の標準により(たとえば)Microsoft IISの使用が求められる場合でも、Oracle HTTP Serverの機能を利用できます。Proxy Plug-Inは、シングル・サインオンやロード・バランシングなど、サード・パーティのHTTPリスナーの使用時にアクセスされるOracle HTTP Serverの機能を提供します。
Oracle SSO Plug-Inは、単独で使用可能なコンポーネントです。このコンポーネントにより、サード・パーティのHTTPリスナーをOracle Fusion Middleware Single Sign-Onと統合できます。たとえば、Oracle Single Sign-onインフラストラクチャを使用して、基本ディレクトリ構造と同様にMicrosoft IISアプリケーションを保護できます。ユーザーは、シングル・サインオンのパスワードで、これらのリスナーの認証を受けることができます。この機能は、mod_ossoモジュールがOracle HTTP Serverに提供する機能と類似しています。
PL/SQL Server Pagesは、JavaServer Pagesと概念的に類似しています。mod_plsqlモジュールにより、PL/SQLをスクリプト言語としてHTMLページ内で使用できます。PL/SQL Server Pagesはストアド・プロシージャに変換され、ストアド・プロシージャはこのモジュールを使用して出力をブラウザに送信します。
サーバー側インクルードにより、サイトのすべてのページで、動的コンテンツまたは同一の静的コンテンツを簡単に追加できます。サーバー側インクルードは、通常、ヘッダーおよびフッターの情報に使用されます。Oracle HTTP Serverでは、特定のファイル・タイプまたは特定の仮想ホストに対してのみサーバー側インクルードを有効にする特別なディレクティブがサポートされています。
Perlは、動的コンテンツを提供するためによく使用されるスクリプト言語です。Perlスクリプトは、CGIプログラムとしてコールすることも、mod_perlモジュールから直接コールすることもできます。Oracle Fusion Middlewareでは、Perlバージョン5.10を使用します。
Hypertext Preprocessor(PHP)は、HTMLに埋込み可能なスクリプト言語であるため、Web開発に非常に適しています。mod_phpモジュールはOracle Fusion Middlewareに付属していませんが、PHPをOracle HTTP Serverとともにインストールして使用する手順が詳しく示されています。詳細は、『Using PHP with Oracle HTTP Server 11g R1』を参照してください。
CGIプログラムは、通常、Webアプリケーションのプログラミングに使用されます。Oracle HTTP Serverは、リクエストのライフサイクルよりも長く有効な状態に保つメカニズムを提供することでCGIプログラムを強化します。
Oracle HTTP Serverには、Oracle WebLogic Serverにリクエストをルーティングするmod_wl_ohsモジュールが含まれます。mod_wl_ohsモジュールは、Apache HTTP Server用のOracle WebLogic Serverプラグイン(mod_weblogic)と同じロード・バランシング機能を提供します。
Oracle WebLogic Serverでのmod_wl_ohsモジュールのロード・バランシング機能の詳細は、『Using Web Server Plug-Ins with Oracle WebLogic Server』の動的サーバー・リストに関する項を参照してください。
注意: mod_wl_ohsモジュールは、Apache HTTP Server用のOracle WebLogic Serverプラグイン(mod_weblogic)とほぼ同じロード・バランシング機能を提供しますが、「mod_wl_ohs」で説明する微細な違いがあります。 |
Oracle HTTP Serverのディレクトリは、OracleホームとOracleインスタンスに分割されます。Oracleホーム・ディレクトリは読取り専用で、Oracle Fusion Middlewareのバイナリを含みます。Oracleインスタンス・ディレクトリは、Oracle HTTP Serverのモジュールとコンテンツ・ページを含みます。表1-1に、Oracleホーム・ディレクトリ内のOracle HTTP Server用のサブディレクトリを示します。
表1-1 Oracleホーム・ディレクトリ
ディレクトリ | 目次 |
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Oracle HTTP Serverのバイナリ・ファイル。 |
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Oracle HTTP Serverテンプレート構成ファイル。Oracle HTTP Serverコンポーネントが構成されるときにOracleインスタンスにプロビジョニングされます。 注意: これらのファイルは、Oracle HTTP Serverの上級ユーザー以外は編集しないでください。 |
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Oracle HTTP Serverのモジュール |
表1-2に、Oracleインスタンス・ディレクトリ内のOracle Fusion Middleware用のサブディレクトリを示します。
表1-2 Oracleインスタンス・ディレクトリ
ディレクトリ名 | 目次 |
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Oracle HTTP Serverの構成ファイル。 |
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Oracle HTTP Serverの静的コンテンツおよびCGIスクリプト。 |
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Oracle HTTP Server構成に自動的に含められる構成ファイル。構成に含めないファイルで拡張子が |
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Oracle HTTP Serverコンポーネント・インスタンスのログ・ファイル。 |
Oracle HTTP Serverの構成は、Apache HTTP Server構成ファイルとまったく同じ方法で、構成ファイル内のディレクティブを介して指定します。Apache HTTP Server構成ファイルの詳細は、『Apache HTTP Server 2.2 Users Guide』を参照してください。
オラクル社では、次に示すOracle HTTP Serverの機能および状態について、テクニカル・サポートを提供しています。
Oracle製品に組み込まれているモジュール。Apache Software Foundationなどの他のソースから入手したモジュールはサポートされません。ただし、Oracle以外で提供されるモジュールが組み込まれている場合でも、Oracle HTTP Serverはサポートされます。報告された問題に、Oracle以外で提供されたモジュールが関係している疑いがある場合は、それらのモジュールを組み込まない状態で問題を再現するように依頼されることがあります。
サポート対象のOracle Apacheモジュールのみで構成されているApache構成内で再現できる問題。
Perlインタプリタの使用(サポート対象のApache構成に含まれている場合)。