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Oracle Enterprise Manager管理
11gリリース1(11.1.0.1)
B61022-01
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1 監視

今日のエンタープライズにおけるIT業務の規模、複雑性および重大性を考えると、IT担当者には、アプリケーションとそのテクノロジ・スタックを構成するすべてのコンポーネントについて、高水準のコンポーネントの可用性とパフォーマンスを維持できることが要求されます。これらのコンポーネントのパフォーマンスを監視して、ビジネス業務に影響が出る前に問題を迅速に修正することが重要になります。Enterprise Managerは、包括的で柔軟性が高く、簡単に使用できる監視機能を提供し、エンタープライズ全体で発生するITに関する緊急の問題を適時に検出して通知する作業をサポートします。

この章では次のトピックについて説明します。

システム監視: 範囲および深さ

Enterprise Managerのシステム監視機能により、より多くの即時利用可能な値、自動化およびグリッド監視のサポートが提供され、IT組織の作業効率を最大化し、高品質のサービス提供できるようになります。Oracleで構築されるアプリケーションの場合、Enterprise ManagerによってOracle Grid環境の最も包括的な監視機能が提供されます。Oracleで構築される膨大かつ多様なアプリケーションをサポートするため、Enterprise Managerは監視の有効範囲をサード・パーティのアプリケーション・サーバー、ホスト、ファイアウォール、サーバー・ロード・バランサおよびストレージなどのOracle以外の製品にまで拡大しています。

Enterprise ManagerはすべてのOracle製品に対して最も包括的な管理機能を提供します。たとえば、Enterprise Managerの監視機能は、Oracle Databaseのサーバー生成アラートなどの管理機能と緊密に統合されています。これらのアラートは、データベース自体が自己検出した問題に対して生成します。サーバー生成アラートはEnterprise Managerコンソールから管理でき、問題の解決上の推奨事項が含まれます。SQLのパフォーマンスの低下の問題、および自動データベース診断モニター(ADDM)と呼ばれるデータベースの自己診断エンジンによって生成されるパフォーマンス問題に対する推奨事項も、Enterprise Managerコンソールで取得および公開されます。これによりEnterprise Manager管理者によるADDM推奨事項の実装が簡単になり、利便性が向上します。

また、Enterprise Managerにより、個別のコンポーネントを超えてシステム監視の有効範囲を簡単に拡張できます。Enterprise Managerのグループ管理機能を使用すると、監視可能なターゲットを簡単にグループ化でき、多数のコンポーネントを1つのものとして集中的に監視および管理できます。

監視の基本

システム監視機能により、使用中のIT環境の無人監視が可能になります。Enterprise Managerにはパフォーマンスおよび状態メトリックの包括的なセットが付属しており、アプリケーション、アプリケーション・サーバー、データベース、およびこれらが依存するバックエンド・コンポーネント(ホスト、オペレーティング・システム、ストレージなど)の環境内の主要コンポーネントの監視を可能にします。

各管理対象ホストの管理エージェントによって、そのホストのすべての管理対象コンポーネント(ターゲットとも呼ばれる)のステータス、状態およびパフォーマンスが監視されます。ターゲットが停止した場合、またはパフォーマンス・メトリックが警告またはクリティカルのしきい値を超えた場合は、アラートが生成され、Enterprise Managerおよび通知を受信するよう登録したEnterprise Manager管理者に送信されます。システム監視機能およびこの機能をサポートするメカニズムは、後述の項で説明します。

IPトラフィック・コントローラまたはリモートWebアプリケーションなど、ITインフラストラクチャの特定のコンポーネントを監視するように管理エージェントを配置することが実用的でない場合に備えて、Enterprise Managerでは拡張ネットワークおよびクリティカルURL監視機能が用意されています。この機能により、エージェントがそのデバイスに物理的に存在することなく、エージェントのビーコン機能によって、可用性および反応性について、リモート・ネットワーク・デバイスおよびURLを監視できます。必要な作業は、特定のビーコンを選択し、主要ネットワーク・コンポーネントおよびURLをネットワークおよびURL監視リストに追加するのみです。この機能の使用方法の詳細は、Enterprise Managerのオンライン・ヘルプを参照してください。

即時利用可能な監視

Enterprise Managerの管理エージェントは、デプロイおよび起動されるとすぐに、ホストのシステム(ホストのハードウェアおよびソフトウェア構成データを含む)の監視を自動的に開始します。Enterprise Managerが提供する自動検出スクリプトにより、これらのエージェントは、すべてのOracleコンポーネントを自動的に検出し、Oracle推奨のしきい値が設定されたメトリックの包括的なセットを使用して監視を開始できます。この監視機能には、NetApp Filer、BIG-IPロード・バランサ、Checkpoint Firewall、IBM WebSphereおよびOracle WebLogicアプリケーション・サーバーなどの、Oracleエコシステムの他のコンポーネントも含まれます。すべての監視対象コンポーネントからのメトリックは、管理リポジトリに格納および集計され、管理者に診断情報と傾向分析データの豊富なソースを提供します。クリティカル・アラートが検出されると、通知が管理者に送信され、管理者は迅速な解決に向けてその問題に対処できます。

Enterprise Managerには、即時利用可能な次の監視機能があります。

  • Oracle推奨のメトリックおよびしきい値を使用した詳細な監視。

  • リアルタイム・パフォーマンス・グラフへのアクセス。

  • 管理リポジトリでのメトリック・データの収集、格納および集計。これにより、傾向分析およびレポート作成などの戦略的タスクを実行できます。

  • 検出されたクリティカル・アラートに対する電子メール通知。

Enterprise Managerでは、ITインフラストラクチャの多様なコンポーネント(データベース、ホストおよびルーターなど)を監視できます。

監視対象のメトリックの例を次にいくつかあげます。

  • アーカイブ領域使用量(データベース)

  • コンポーネント・メモリー使用量(アプリケーション・サーバー)

  • 最大エクステントに近づいているセグメント数(データベース)

  • ネットワーク・インタフェースの合計I/Oレート(ホスト)

一部のメトリックは、しきい値と呼ばれる事前定義の制限パラメータに関連付けられています。収集されたメトリック値がこれらの制限を超えると、アラートがトリガーされます。Enterprise Managerでは、次の2つのレベルのアラート重大度に対してメトリックしきい値を設定できます。

  • 警告: 特定の領域で注意が必要ですが、その領域はまだ有効です。

  • クリティカル: 特定の領域に対して即時アクションが必要です。領域が無効であるか、差し迫った問題を示します。

したがって、しきい値は監視対象のメトリックと比較される境界値です。たとえば、ディスク使用状況(%)メトリックに関連付けられた各ディスク・デバイスごとに、警告しきい値をディスク使用領域80%に、クリティカルしきい値を95%に定義します。

メトリックしきい値

前述のように、一部のメトリックしきい値は事前定義されており、即時利用可能です。これらの値はほとんどの監視条件で使用可能ですが、環境によっては操作基準をより正確に反映するため、しきい値のカスタマイズが必要になります。ただし、パフォーマンス・メトリックなどの特定カテゴリのメトリックでは、正確なしきい値の設定は困難な場合があります。

たとえば、1トランザクション当たりレスポンス時間のデータベース・メトリックでは、適切な警告およびクリティカルしきい値はどのようになるか考えます。このようなメトリックの場合、パフォーマンス・メトリックに対する管理対象の値が通常動作から逸脱した場合のアラート発生がより有効です。Enterprise Managerでは、ターゲットについて通常のパフォーマンス動作を取得し、そのパフォーマンス基準からの逸脱を示すしきい値を決定可能な機能が提供されます。


注意:

Enterprise Managerの管理者がメトリックしきい値を変更するには、ターゲットに対するOPERATOR以上の権限が付与されている必要があります。

メトリック・スナップショット

メトリック・スナップショットは、特定の時点で収集されたターゲット・パフォーマンス・メトリックの名前付きコレクションです。メトリック・スナップショットを使用して、ターゲットの過去のパフォーマンスに基づいてメトリックのしきい値を計算できます。

ターゲットに対するメトリック・スナップショット定義のポイントは、ターゲットのパフォーマンスが通常のワークロード下で受け入れられた日付を選択することです。この日付が指定されると、ターゲットの通常または予想パフォーマンス動作を表す、パフォーマンス・メトリックの実際の値が取得されます。これらの値を使用して、Enterprise Managerでメトリックに対する警告およびクリティカルのしきい値を計算できます。実際のメトリック・スナップショット値よりも指定したパーセント分下回る値がこれらのしきい値になります。これらのしきい値は、その値を超えた場合はパフォーマンスに問題があることを示す値です。しきい値を計算後も、必要に応じて計算された値を編集できます。

日付および(オプションで)時刻に基づいて、ターゲットに対するメトリック・スナップショットを定義できます。日付のみを指定すると、ターゲットのその日付でのパフォーマンス・メトリックの日次平均値のセットがメトリック・スナップショットになります。その日付の時刻を指定すると、その時刻より前の低メトリック値および高メトリック値のセットがメトリック・スナップショットになります。

メトリック・スナップショットは、10.2以上のデータベース、サービスおよびWebアプリケーションを除く、すべての管理対象ターゲットに適用されます。これらのターゲットでは、メトリック・ベースライン機能がサポートされています。

メトリック・ベースライン

メトリック・ベースラインは、明確に定義された期間に対するシステム・パフォーマンスの統計的特性です。特定のパフォーマンス・メトリックに対する適応アラートしきい値の実装、およびシステム・パフォーマンスの正規化されたビューの提供にメトリック・ベースラインを使用できます。適応アラートしきい値は、異常なパフォーマンス・イベントの検出に使用されます。メトリック動作のベースラインで正規化されたビューにより、管理者はそのようなイベントを説明および理解できます。メトリック・ベースラインは、明確に定義された時間間隔(ベースライン期間)であり、この期間内にEnterprise Managerがシステムのパフォーマンス・メトリックを取得します。メトリック・ベースラインの基礎となる前提は、比較的パフォーマンスが安定したシステムが、同程度のワークロードの期間においては、類似したメトリックの観察結果(すなわち、値)を示すということです。変動ウィンドウ・ベースライン期間および静的ベースライン期間の、2つのタイプのベースライン期間がサポートされます。変動ウィンドウ・ベースライン期間は、現在の日付より過去の数日間として定義されます(たとえば、過去7日間)。これにより、現在のメトリック値と最近観察された履歴の比較が可能になります。変動ウィンドウ・ベースライン期間は、ワークロード周期が予測可能な業務系システムに対して有効です(たとえば、日中および夜間バッチのOLTP)。静的ベースラインは、使用者が必要に応じて定義する期間です(たとえば、会計年度終了時点)。これらのベースラインを使用して、ワークロード期間の特性を解析し、将来そのワークロードが発生した場合に比較できます(たとえば、あるカレンダ年と次のカレンダ年の会計年度終了時点の比較)。

適応しきい値

メトリック・ベースラインの定義後、それらを使用して統計上重要で時間的変化に適応するアラートしきい値を設定できます。たとえば、100回に5回発生する値をHIGH重大レベルしきい値とするなど、重大レベルに基づいて生成するアラートしきい値を定義できます。また、ベースライン期間内に観察された最大値の割合に基づいたしきい値の生成も可能です。これらを使用して、その期間内に通常のピークを超過するパフォーマンス・メトリック値が観察された場合にアラートを生成できます。

正規化されたベースラインのビュー

Enterprise Managerは、観察されたパフォーマンスおよびワークロード・メトリックの値をベースラインに対して正規化し、グラフィカルに表示するグラフを提供しています。これらのグラフを使用すると、統計的に重要な値をグラフ上の誤差として簡単に識別できます。管理者はこれを使用して、イベントを時間的に相関関係付けできます。たとえば、パフォーマンス・イベントを増加率の高い要求または異常度の高いワークロードに関連付けできます。

メトリック・ベースラインは、データベース(バージョン10.2以上)、およびサービスおよびWebアプリケーションのターゲット・タイプに対してサポートされています。

アラート

メトリックしきい値に達すると、アラートが生成されます。アラートは潜在的な問題、つまり監視対象のメトリックに対する警告またはクリティカルのしきい値のいずれかを超えていることを示します。アラートはまた、次のような各種ターゲット可用性状態に対して生成される可能性があります。

  • ターゲットの停止。

  • Oracle Management Agentが監視中のターゲットが到達不可能。

アラートが生成されると、そのアラートの詳細にEnterprise Managerコンソールからアクセスできます。アラート情報表示の詳細は、監視情報へのアクセスに関する項を参照してください。

Enterprise Managerには、アラートへの応答のための各種オプションが用意されています。管理者はアラートのトリガー時に自動的に通知を受信でき、またアラート状態を自動的に解決する修正処理を設定できます。

通知

ターゲットが使用不可になるか、パフォーマンスのしきい値を超えると、Enterprise Managerコンソールでアラートが生成され、適切な管理者に通知が送信されます。Enterprise Managerは、電子メール(e-mail-to-pageシステムを含む)による通知、SNMPトラップによる通知、およびカスタム・スクリプトの実行による通知、またはそのいずれかをサポートしています。

Enterprise Managerでは、通知メソッドを介したこれらの様々な通知メカニズムがサポートされます。通知メソッドを使用して、電子メールにどのSMTPゲートウェイを使用するか、トラブル・チケットを記録するのにどのOSスクリプトを実行するかなど、特定の通知メカニズムに関連する詳細を指定します。スーパー管理者は、使用可能な様々なタイプの通知メソッドを1回設定します。通知メソッドが定義されると、他の管理者は、通知の送信時期や送信方法を決定する基準のセットを指定する通知ルールを作成できます。通知ルールに定義される基準には、ターゲット、メトリックと重大度の状態(クリア、警告またはクリティカル)、および基準に一致するアラートが生成されたときに使用される通知メソッドが含まれます。たとえば、いずれかのホスト・ターゲットのCPU使用率の重大度がクリティカルになった場合に管理者に電子メールを送信するよう指定する通知ルールや、いずれかのデータベースが停止したときにトラブル・チケットを作成する別の通知ルールを定義できます。

定義した通知ルールは、管理者間で共有するために公開できます。たとえば、各管理者がルールに定義されたものと同じ基準でアラートを受信する場合、それぞれの管理者は同じルールにサブスクライブできます。また、Enterprise Managerのスーパー管理者は、ルールに定義されたとおりにアラートの通知を受信するよう他の管理者に通知ルールを割り当てることができます。

通知は、管理者へのアラート送信以外にも使用できます。通知メソッドを拡張してカスタムOSスクリプトまたはPL/SQLプロシージャを実行でき、また通知メソッドを使用して任意のタイプのアラート処理を自動化できます。たとえば、管理者は、トラブル・チケット・システムのコール、アラート情報を他の監視システムと共有するためのサード・パーティAPIの起動、または製品に対する不具合の記録を行う通知メソッドを定義できます。

通知のカスタマイズ

管理者に送信される通知は、メッセージ・タイプおよびオンコール・スケジュールに基づいてカスタマイズできます。メッセージのカスタマイズは、通知の受信手段として電子メールとページング・システムの両方を使用している管理者には便利です。これらのシステム間では、メッセージの書式は通常異なります。電子メールで送信されるメッセージは長く、URLを含む可能性があります。ページャに送信されるメッセージは短く、文字数に制限があります。これらのタイプのメカニズムをサポートするため、管理者はEnterprise Managerを使用して長いメッセージ書式および短いメッセージ書式を各電子メール・アドレスに関連付けできます。通常の電子メール送信に使用される電子メール・アドレスは、長い書式に関連付けでき、ページ送信に使用される電子メール・アドレスは、短い書式に関連付けできます。長い書式にはアラートの詳細が完全な形で含まれ、短い書式には情報の最も重要な部分のみが含まれます。

通知は管理者のオンコール・スケジュールに基づいてもカスタマイズできます。オンコールの管理者には、業務時間中は本人のページャおよび会社の電子メール・アドレス、業務時間外には本人のページャのアドレスのみで連絡を受ける場合があります。Enterprise Managerは、多様なオンコール・スケジュールをサポートする柔軟な通知スケジュールを提供しています。管理者はこのスケジュールを使用して、オンコール時の連絡用の電子メール・アドレスを指定し、自身のオンコール・スケジュールを定義します。オンコール以外の期間、またはアラート通知を受信しない期間については、単にスケジュールの該当部分を空白のままにします。管理者に送信されるすべてのアラートが、指定したスケジュールに従って自動的に処理されます。

修正処理

修正処理により、アラートへの自動レスポンスを指定できます。修正処理により、アラートに対して決められたレスポンスを自動的に実行できるため、管理者は時間を節約でき、ユーザーに対して顕著な影響が出る前に問題を処理できます。たとえば、Enterprise ManagerがSQL*Netリスナーなどのコンポーネントの停止を検出した場合に、自動的にバックアップを開始する修正処理を指定できます。つまり、修正処理は、メトリックによって警告またはクリティカルの重大度のアラートが発生したときに実行されるユーザー指定の任意のタスクです。デフォルトでは、修正処理はアラートがトリガーされたターゲット上で実行されます。管理者は、修正処理の成功または失敗についての通知も受信できます。

修正処理は、それぞれ別のターゲットで実行される複数のタスクで構成することも可能です。たとえば、WebLogic Serverが、処理可能なリクエスト数の制限に近づいていることを示す警告アラートをトリガーした場合、別のWebLogic Serverを別のホスト上で自動的に起動し、複数のWebLogic Server間でアプリケーション・ロードを分散する修正処理を定義できます。この例で示すように、修正処理を使用すると要求の増大に応じてリソースを動的に割当てでき、アプリケーション全体の可用性に影響する前にパフォーマンスのボトルネックを回避できます。

ターゲットの修正処理を定義できるのは、そのターゲットに対するMANAGE_TARGET_METRICS以上の権限を付与されているすべてのEnterprise Manager管理者です。すべてのメトリックについて、そのメトリックがトリガーした重大度が警告かクリティカルかに応じて異なる修正処理を定義できます。

修正処理は、特定のEnterprise Manager管理者の資格証明を使用して実行する必要があります。そのため、修正処理を作成または変更する場合は、常に変更した処理を実行するための資格証明を指定する必要があります。

ブラックアウト

ブラックアウトにより、緊急メンテナンスや予定されているメンテナンスを実行するための計画停止期間をサポートできます。ターゲットがブラックアウト状態になると、監視は一時停止されます。そのため、データベース・バックアップやハードウェア・アップグレードなどの予定されているメンテナンス作業でターゲットを停止するときに、不要なアラートが送信されるのを回避できます。ターゲットの全体的な可用性を計算する場合、ブラックアウト期間は自動的に除外されます。

ブラックアウト期間は、個々のターゲット、ターゲットのグループ、またはホスト上のすべてのターゲットに対して定義できます。ブラックアウトは、即時実行または将来において実行、あるいは無期限に実行または特定期間実行後に停止のいずれかにスケジュールできます。ブラックアウトは必要に応じて作成でき、また定期的に実行するようスケジュールできます。メンテナンス期間中にメンテナンス・タスクの完了までにより長い(または短い)時間が必要であることがわかった場合は、その時点で有効なブラックアウトを簡単に延長(または停止)できます。ブラックアウト機能は、Enterprise Managerコンソールと、Enterprise Managerコマンドライン・インタフェース(EMCLI)のどちらからでも使用できます。EMCLIは、通常、管理者がメンテナンス・スクリプト内にターゲットのブラックアウトを組み込むために使用できます。ブラックアウトが終了すると、管理エージェントによって、ターゲットのすべてのメトリックが自動的に再評価され、ブラックアウト後のターゲットの現行のステータスが表示されます。

管理者が、先にターゲットをブラックアウトせずに、そのターゲットで予定されたメンテナンスを誤って実行すると、その期間は計画されたブラックアウト期間ではなく、ターゲットの停止時間として認識されます。これは、ターゲットの可用性レコードに悪影響を与えます。このような場合、Enterprise Managerでは、前に戻ってその期間に発生する予定だったブラックアウト期間を定義できる機能をスーパー管理者に提供しています。これらの遡及ブラックアウト作成機能により、スーパー管理者は、ターゲットの可用性のより正確な記録を柔軟に定義できます。

監視テンプレート

監視テンプレートを使用すると、監視設定を1回指定するのみでの設定を監視対象ターゲットに適用できるため、エンタープライズの監視設定を簡単に標準化できます。これにより、エンタープライズ全体で特定の監視設定をターゲットの特定のクラスに簡単に適用できます。たとえば、ある監視テンプレートをテスト・データベース用に定義し、別の監視テンプレートを本番データベース用に定義できます。

監視テンプレートでは、ターゲットを監視するために通常設定している次のようなすべてのEnterprise Managerパラメータが定義されています。

テンプレートを変更した場合は、その新しい変更を伝播するために、影響を受けるターゲット全体にテンプレートを再適用できます。監視テンプレートは、必要に応じて何度でも再適用できます。どのターゲットでも、テンプレートによる上書きが不可能なメトリック設定を指定することで、カスタム監視設定を保持できます。

ターゲットと監視テンプレートの差異の比較

テンプレートの適用方法や適用時期の決定は、監視テンプレートの比較機能を使用して簡略化できます。この機能を使用すると、テンプレートに定義されているメトリックおよびポリシーの設定と、比較対象のターゲットに定義されている設定との差異を一目で確認できます。監視テンプレートの比較は、グループやシステムなどの集計ターゲットを使用している場合は特に便利です。たとえば、グループへの監視テンプレートの適用後に、グループ・メンバーの監視設定がテンプレートと同一であることを確認するとします。監視テンプレートの比較機能を使用すると、確認が簡単になります。また、レポートとしてスケジュールし、グループ・メンバーの設定がテンプレートの設定と同一であるかどうかを定期的に確認することもできます。

ユーザー定義メトリック

ユーザー定義メトリックでは、カスタム・スクリプトまたはSQL問合せおよびファンクション・コールを使用し、Enterprise Managerの監視範囲を特定の環境に固有の条件に拡張できます。ユーザー定義メトリックを定義すると、監視対象となり、リポジトリに集約され、Enterprise Managerの他のメトリックと同様にアラートをトリガーできます。オペレーティング・システムおよびSQLの2つのタイプのユーザー定義メトリックがあります。

ユーザー定義メトリックの作成

特定の条件(たとえば、毎月のシステム・メンテナンス・ルーチンの正常完了のチェック)を監視するには、その条件を監視するカスタムOSスクリプトを作成してから、Enterprise Managerにユーザー定義メトリックとして登録できます。Enterprise Managerでメトリックが評価される場合は常に、このスクリプトが使用されて条件が評価されます。SQLユーザー定義メトリックでは、外部スクリプトを使用しません。メトリックの作成時にEnterprise Managerコンソールに直接SQLを入力します。ユーザー定義メトリックが定義されると、アラート、通知、履歴収集、修正処理などの監視機能が、そのメトリックに対して自動的に使用可能になります。

カスタム監視スクリプトの固有のライブラリをすでに持っている場合は、Enterprise ManagerにOSユーザー定義メトリックとしてこれらのスクリプトを統合することによって、Enterprise Managerの監視機能を活用できます。同様に、現在データベース条件の監視に使用されている既存のSQL問合せまたはファンクション・コールは、SQLユーザー定義メトリックとしてEnterprise Managerの監視フレームワークに簡単に統合できます。ユーザー定義メトリックの詳細は、『Oracle Enterprise Managerアドバンスト構成』を参照してください。

監視情報へのアクセス

Enterprise Managerコンソールからはすべての監視情報にアクセスでき、監視対象の環境の状態が迅速に表示されます。

Enterprise Managerコンソールのホームページ

図1-1に示すEnterprise Managerコンソールのホームページには、監視対象環境の全体的なステータスが一覧表示されます。次の図に示すように、ホームページには、すべての監視対象ターゲットの可用性、オープン・アラート、ポリシー違反およびジョブ実行での最近の問題など主要な監視領域のサマリーが示されます。このページのリンクから、詳細なパフォーマンス情報にドリルダウンできます。

リソース・センターは、Oracle Technology Network(OTN)の包括的な技術リソースであると同時に、Enterprise Managerドキュメントの中央アクセス・ポイントでもあります。

図1-1 Enterprise Managerコンソール

これはEnterprise Manager Grid Controlコンソールです。
「図1-1 Enterprise Managerコンソール」の説明

ホームページからは、アラート情報に簡単にアクセスできます。たとえば、「すべてのターゲットのステータス」の凡例の「停止中」リンクをクリックすると、現在停止中のターゲットを判別できます。「すべてのターゲットのアラート」で、「警告」アラートの値をクリックすると、すべての監視対象ターゲットの警告アラート・リストにアクセスできます(図1-2)。

図1-2 「警告アラート」ページ

これはシステム・アラートが表示された「警告アラート」ページです。

最新のアラートがリストの最初に表示されます。該当する列ヘッダーをクリックすると、ソート方法を変更できます。特定のアラート・メッセージをクリックすると、アラート内のメトリックに関するわかりやすい詳細にドリルダウンできます。

図1-3 警告アラート: メトリック詳細

これはメトリック詳細のページです。
「図1-3 警告アラート: メトリック詳細」の説明

デフォルトでは、このページに表示されるメトリック値は、過去24時間に収集されたデータを反映しています。別の時間間隔を選択することも、最近または長期間にわたって問題が発生した場合にメトリック・データを表示して簡単に評価するための独自の時間間隔を指定することもできます。Enterprise Managerではメトリック・データが管理リポジトリに収集および集計されるため、「ターゲットの比較」関連リンクをクリックすると、複数のターゲットのメトリック・データが同時に表示され、これにより複数のターゲット間のパフォーマンスを比較できます(図1-4)。

時間をかけて収集されたメトリックを表示しない場合、「実行時間」メトリックの次のいずれかのリフレッシュ期間を選択できます。

図1-4 ターゲットの比較

図1-4は、周囲のテキストで説明されています。

「アラート履歴」表には、選択された時間間隔で生成されたアラートが表示されます。「詳細」列の眼鏡アイコンをクリックすると、この表の特定のアラートに関するわかりやすい詳細を参照できます。図1-5に、「アラート詳細」ページを示します。

図1-5 アラート詳細

この図は「アラート詳細」ページを示しています。

「アラート詳細」ページには、アラート、実行された修正処理、アラートのケース・チケットのオープンといったカスタム通知など、すべての通知が示されます。このページでは、他の管理者に表示する注釈やコメントの追加もできます。