Sun Cluster 3.0 データサービス開発ガイド

多重ホストデータを配置するためのシンボリックリンクの使用

この節では、データサービスのコードを変更しないようにするために、シンボリックリンクを使用する方法について説明します。既存のデータサービスの中には、そのデータファイルへのパス名が固定されており、しかも、固定されたパス名を変更する機構がないものもあります。データサービスのコードを変更せずに、シンボリックリンクを使用できる場合もあります。

たとえば、データサービスがそのデータファイルに固定されたパス名 /etc/mydatafile を指定すると仮定します。このパスは、論理ホストのファイルシステムの 1 つにあるファイルを示す値を持つシンボリックリンクに変更できます。たとえば、/global/phys-schost-2/mydatafile へのシンボリックリンクに変更できます。

シンボリックリンクの使用には、潜在的な問題があります。つまり、データファイルの名前を内容とともに変更するデータサービス (または、その管理手順) もあります。たとえば、データサービスが更新を実行するとき、まず、新しい一時ファイル /etc/mydatafile.new を作成すると仮定します。次に、このデータベースは rename(2) システムコール (または mv(1) プログラム) を使用し、この一時ファイルの名前を実際のファイルの名前に変更します。一時ファイルを作成し、その名前を実際のファイルの名前に変更することにより、データサービスは、そのデータファイルの内容が常に適切であるようにします。


rename("/etc/mydatafile.new", "/etc/mydatafile");

rename(2) の操作はシンボリックリンクを破壊します。このため、/etc/mydatafile という名前は通常ファイルとなり、クラスタの広域ファイルシステムの中ではなく、/etc ディレクトリと同じファイルシステムの中に存在することになります。/etc ファイルシステムは各ホスト専用であるため、テイクオーバーまたはスイッチオーバー後はデータが利用できなくなります。

このような状況の根本的な問題は、既存のデータサービスがシンボリックリンクに気付かない、つまり、シンボリックリンクを考慮するように作成されていないことです。シンボリックリンクを使用し、データアクセスを論理ホストのファイルシステムにリダイレクトするには、データサービス実装がシンボリックリンクを消去しないように動作する必要があります。したがって、シンボリックリンクは、論理ホストのファイルシステムへのデータの配置に関する問題をすべて解決できるわけではありません。