Sun Cluster 3.0 データサービス開発ガイド

VALIDATE メソッド

リソースが作成されたとき、および、リソースまたは (リソースを含む) リソースグループのプロパティが管理アクションによって更新されるとき、RGM は VALIDATE メソッドを呼び出します。RGM は、作成または更新が行われる前に、VALIDATE メソッドを呼び出します。任意のノード上でメソッドから失敗の終了コードが戻ると、作成または更新は取り消されます。

RGM が VALIDATE メソッドを呼び出すのは、リソースまたはリソースグループのプロパティが管理アクションを通じて変更されたときだけです。RGM がプロパティを設定したときや、モニターがリソースプロパティ StatusStatus_msg を設定したときではありません。


注 -

PROBE メソッドがデータサービスを新しいノードにフェイルオーバーする場合、MONITOR_CHECK メソッドも明示的に VALIDATE メソッドを呼び出します。


VALIDATE の概要

VALIDATE メソッドを呼び出すとき、RGM は追加の引数 (更新されるプロパティとその値など) を他のメソッドに渡します。したがって、サンプルのデータサービスの VALIDATE メソッドは、追加の引数を処理する parse_args 関数を実装する必要があります。

サンプルのデータサービスの VALIDATE メソッドは、単一のプロパティである Confdir 拡張プロパティを確認します。このプロパティは、DNS が正常に動作するために重要な DNS 構成ディレクトリを指します。


注 -

DNS が動作している間、構成ディレクトリは変更できないため、Confdir プロパティは RTR ファイルで TUNABLE = AT CREATION と宣言します。したがって、VALIDATE メソッドが呼び出されるのは、更新の結果として Confdir プロパティを確認するためではなく、データサービスリソースが作成されているときだけです。


RGM が VALIDATE メソッドに渡すプロパティの中に Confdir が存在する場合、parse_args 関数はその値を取得および保存します。次に、VALIDATE メソッドは、Confdir の新しい値が指すディレクトリがアクセス可能であるかどうか、および、named.conf ファイルがそのディレクトリ内に存在し、データを持っているかどうかを確認します。

parse_args 関数が、RGM から渡されたコマンド行引数から Confdir の値を取得できない場合でも、VALIDATE メソッドは Confdir プロパティの妥当性を検査しようとします。まず、VALIDATE メソッドは scha_resource_get 関数を使用し、静的な構成から Confdir の値を取得します。次に、同じ検査を実行し、構成ディレクトリがアクセス可能であるかどうか、および、空でない named.conf ファイルがそのディレクトリ内に存在するかどうかを確認します。

VALIDATE メソッドが失敗で終了した場合、Confdir だけでなく、すべてのプロパティの更新または作成が失敗します。

VALIDATE メソッドの構文解析関数

RGM は、他のコールバックメソッドとは異なるパラメータを VALIDATE メソッドに渡します。したがって、VALIDATE メソッドには、他のメソッドとは異なる引数を構文解析する関数が必要です。VALIDATE メソッドや他のコールバックメソッドに渡される引数についての詳細は、rt_callbacks(1HA) のマニュアルページを参照してください。次に、VALIDATE メソッドの parse_args 関数を示します。


##############################################################################
# Validate 引数を構文解析する。
#
function parse_args # [args ...]
{
	typeset opt
	while getopts 'cur:x:g:R:T:G:' opt
	do
						case "$opt" in
						R)
									# DNS リソースの名前
									RESOURCE_NAME=$OPTARG
									;;
						G)
									# リソースが構成されるリソースグループ
									# の名前
									RESOURCEGROUP_NAME=$OPTARG
									;;
						T)
									# リソースタイプの名前
									RESOURCETYPE_NAME=$OPTARG
									;;
						r)      
									# メソッドはシステム定義プロパティ
									# にアクセスしていない。したがって、
									# このフラグは動作なし。
									;;
						g)
									# メソッドはリソースグループプロパティ
									# にアクセスしていない。したがって、
									# このフラグは動作なし。
									;;
						c)
									# Validate メソッドがリソースの作成中に
									# 呼び出されていることを示す。したが
									# って、このフラグは動作なし。
									;;
						u)
									# リソースがすでに存在しているときは、
									# プロパティの更新を示す。Confdir 
									# プロパティを更新する場合、Confdir 
									# がコマンド行引数に現れるはずである。
									# 現れない場合、メソッドは
									# scha_resource_get を使用して 
									# Confdir を探す必要がある。
									UPDATE_PROPERTY=1
									;;
						x)
									# 拡張プロパティのリスト。プロパティ
									# と値のペア。区切り文字は「=」
									PROPERTY=`echo $OPTARG | awk -F= '{print $1}'`
									VAL=`echo $OPTARG | awk -F= '{print $2}'`

									# Confdir 拡張プロパティがコマンド行
									# 上に存在する場合、その値を記録する。
									if [ $PROPERTY == "Confdir" ]; then
												CONFDIR=$VAL
												CONFDIR_FOUND=1
									fi
									;;
						*)
								logger -p ${SYSLOG_FACILITY}.err ¥
								-t [$RESOURCETYPE_NAME,$RESOURCEGROUP_NAME,$RESOURCE_NAME] ¥
								"ERROR: Option $OPTARG unknown"
								exit 1
								;;
						esac
	done
}

他のメソッドの parse_args 関数と同様に、この関数は、リソース名を取得するためのフラグ (R)、リソースグループ名を取得するためのフラグ (G)、RGM から渡されるリソースタイプを取得するためのフラグ (T) を提供します。

このメソッドはリソースが更新されるときに拡張プロパティの妥当性を検査するために呼び出されるため、r フラグ (システム定義プロパティを示す)、g フラグ (リソースグループプロパティを示す)、c フラグ (リソースの作成中に妥当性の検査が行われていることを示す) は無視されます。

u フラグは、UPDATE_PROPERTY シェル変数の値を 1 (TRUE) に設定します。x フラグは、更新されているプロパティの名前と値を取得します。更新されているプロパティの中に Confdir が存在する場合、その値が CONFDIR シェル変数に格納され、CONFDIR_FOUND 変数が 1 (TRUE) に設定されます。

Confdir の妥当性検査

VALIDATE メソッドはまず、その MAIN 関数において、CONFDIR 変数を空の文字列に設定し、UPDATE_PROPERTYCONFDIR_FOUND を 0 に設定します。


CONFDIR=""
UPDATE_PROPERTY=0
CONFDIR_FOUND=0

次に、VALIDATE メソッドは parse_args 関数を呼び出し、RGM から渡された引数を構文解析します。


parse_args "$@"

次に、VALIDATE は、VALIDATE メソッドがプロパティの更新の結果として呼び出されているのかどうか、および、Confdir 拡張プロパティがコマンド行上に存在するかどうかを検査します。次に、VALIDATE メソッドは、Confdir プロパティが値を持っているかどうかを確認します。値を持っていない場合、VALIDATE メソッドはエラーメッセージを記録し、失敗状態で終了します。


if ( (( $UPDATE_PROPERTY == 1 )) &&  (( CONFDIR_FOUND == 0 )) ); then
			config_info=`scha_resource_get -O Extension -R $RESOURCE_NAME ¥
				-G $RESOURCEGROUP_NAME Confdir`
			CONFDIR=`echo $config_info | awk '{print $2}'`
fi
# Confdir プロパティが値を持っているかどうかを確認する。持っていな
# い場合、状態 1 (失敗) で終了する。
if [[ -z $CONFDIR ]]; then
			logger -p ${SYSLOG_FACILITY}.err ¥
				"${ARGV0}: Validate method for resource "$RESOURCE_NAME " failed"
			exit 1
fi


注 -

上記コードにおいて、VALIDATE メソッドが更新の結果として呼び出されているのか ($UPDATE_PROPERTY == 1)、および、プロパティがコマンド行上に存在しないのか (CONFDIR_FOUND == 0) を検査し、両者が TRUE である場合に、scha_resource_get 関数を使用して Confdir の既存の値を取得するところに注目してください。Confdir がコマンド行上に存在する (CONFDIR_FOUND == 1) 場合、CONFDIR の値は、scha_resource_get 関数からではなく、parse_args 関数から取得されます。


次に、VALIDATE メソッドは CONFDIR の値を使用し、ディレクトリがアクセス可能であるかどうかを確認します。アクセス可能ではない場合、VALIDATE メソッドはエラーメッセージを記録し、エラー状態で終了します。


# $CONFDIR がアクセス可能であるかどうかを検査する。
if [ ! -d $CONFDIR ]; then
	logger -p ${SYSLOG_FACILITY}.err ¥
			-t [$RESOURCETYPE_NAME,$RESOURCEGROUP_NAME,$RESOURCE_NAME] ¥
			"${ARGV0}: Directory $CONFDIR missing or not mounted"
	exit 1
fi

Confdir プロパティの更新の妥当性を検査する前に、VALIDATE メソッドは最終検査を実行し、named.conf ファイルが存在するかどうかを確認します。存在しない場合、VALIDATE メソッドはエラーメッセージを記録し、エラー状態で終了します。


# named.conf ファイルが Confdir ディレクトリ内に存在するかどうかを
# 検査する。
if [ ! -s $CONFDIR/named.conf ]; then
			logger -p ${SYSLOG_FACILITY}.err ¥
				-t [$RESOURCETYPE_NAME,$RESOURCEGROUP_NAME,$RESOURCE_NAME] ¥
				"${ARGV0}: File $CONFDIR/named.conf is missing or empty"
			exit 1
fi

最終検査を通過した場合、VALIDATE メソッドは、成功を示すメッセージを記録し、成功状態で終了します。


# Validate メソッドが成功したことを示すメッセージを記録する。
logger -p ${SYSLOG_FACILITY}.err ¥
	-t [$RESOURCETYPE_NAME,$RESOURCEGROUP_NAME,$RESOURCE_NAME] ¥
	"${ARGV0}: Validate method for resource "$RESOURCE_NAME ¥
	" completed successfully"
exit 0

VALIDATE の終了状態

VALIDATE メソッドが成功 (0) で終了すると、新しい値を持つ Confdir が作成されます。VALIDATE メソッドが失敗 (1) で終了すると、Confdir を含むすべてのプロパティが作成されず、理由を示すメッセージがクラスタ管理者に送信されます。